Essay 22
古代犬の優雅な現代生活

2011年8月15日(修正2017年9月24日)
子供から大人へ
autumn
写真1:
8ヶ月令のこの頃、人の年令換算では約12才だった。思春期真っ盛り。行動がかなり変わり始めた。それでも、今から見ればまだ少年。良くも悪くも、子供っぽいところをたくさん残していた。良くもとは、何にでもじゃれるようなかわいさ。悪くもとは、遠慮会釈なく何でもかむようなくせだ。
(8ヶ月令)

このエッセイを書いている2011年8月の時点で、ラッキーは1年5ヶ月令になった。前のエッセイ( エッセイ17 )を書いてから、早くも1年が経ってしまった。
前回のエッセイを書いたときは5ヶ月令。このとき、ヒトの年令換算では約10才だった。現在は約20才に相当する。ピッカピカの若者だ。 体長は47センチ、体重は14キロ。バセンジーのオスの平均体長は40センチ強、体重は11キロなので、大型バセンジーになる。バセンジーの専門店からLサイズの服を買う。

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この1年の間、毎日ラッキーを見ていて、感情と行動が、子供から大人(大犬?)に急速に変わるのが、よく分かった。 思春期を通り越して、大人になるまでのラッキーの行動を、このエッセイと次のエッセイで追いかけることにする。

動画1:
理由はなんであれ、じゃれる。じゃれるときにかむ。イヌがかむのは愛情表現の一つ。かむのを無理に止めさせると、逆効果になる場合がある。
(8ヶ月令)

今回のエッセイでは、ハウツーもののようなことも、書くことにした。イヌの育て方で、苦労をしている人が多いので、少しでも役に立つ内容にしたい。

バセンジーのラッキーが主人公だが、バセンジー以外の犬種にも参考になる。イヌは一つひとつの犬種に属する前に、同じイヌという大きな種に属する。そして、イヌは人間と同じ哺乳動物なので、心理には、人間に相通じるところがある。
犬種紹介の本には、一つひとつの犬種が、共通の性格・感情や行動パターンを持っているように、書かれている。しかし、一つの犬種に属する全ての個体が、共通する性格・感情や行動パターンを、持っているわけではない。人間と同じように、イヌにも個性がある。個々のイヌも、個々の人間のように、それぞれが複雑な心理を持っている。

東洋人的なローレンツの動物理解

動物行動学の研究で、1973年にノーベル生理学医学賞を受賞した、動物学者のローレンツが書いている。
「もっとも家畜化の進んだイヌは、一般に、その行動において自由であり、かつ適応性に富んでいる」
少し脱線をして、ローレンツのことを書いておこう。

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農耕民族である日本人にとって、自分を自然の一部と考えることには、無理がない。自然との共生から、自然との一体感が生み出される。長い歴史を通して、日本人の精神の古層に、人間以外の動物を、人間の伴侶と感じさせる感性が、間違いなく確立された。
ところが、動物を狩って生きてきた、狩猟民族であるキリスト教徒にとっては、動物は人間とは全く異なる存在になる。食料になる動物を含めて、自然は人間が征服し、人間の都合のいいように変えるものだ。 ヴェルサイユ宮殿を訪れた日本人は、その人工的な庭が、人間の手によって、自然が完全にコントロールされた例であることを、理解すると思う。

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ローレンツは、ヨーロッパの人間には珍しく、仏教徒の農耕民族的な感性を持っていた。動物を、人間と同じレベルの存在ととらえたのだ。東洋人には当たり前の感性だが、20世紀中葉のヨーロッパ人には、動物行動学の彼の理論によって示された、動物の理解の仕方は驚くべきものだった。ノーベル賞委員会のお偉方をも、感動させることになった。

ローレンツの有名な著書「ソロモンの指輪」のタイトルに、キリスト教徒である、ローレンツの深層心理が現れている。ソロモンは旧約聖書に出てくる博学な王で、動物の知識がとても豊富だったという。そこから、ソロモンは魔法の指輪をはめて、動物たちと語り合ったという言い伝えが、生まれた。
動物がいつも身近にいる、農業従事者やペットの飼い主である日本人は、動物と自然に語り合っている。しかし、キリスト教徒が動物と語り合うには、心の障壁を乗り越えるために、ソロモンの指輪が必要になる。

遺伝的に変わりやすい体毛

生活の要素を概観的にいうと、「衣食住」になる。「衣」の問題は、イヌにとっては丸裸の人間よりも小さい。生まれつき、個性的で立派な毛を身にまとっている。本来ならば、飼い主が、余計なおせっかいを焼く必要はない。それでも、愛するイヌのために、人間の子供に対するのと同じように、おせっかいを焼きたがる飼い主が多い。イヌには迷惑な話になる。当然、服を着せられることを拒否するイヌがいる。
モンタは服どころか、肩だけしか被わないハーネスでさえも、身につけることを拒否した。ラッキーはモンタよりも従順で、ハーネスはオーケー。レインコート、Tシャツ、トレーナーも、いやいやながらも受け入れる。

tired
写真2:
トレーナーを着、ハーネスをつけて車の中で寝ている。ドッグランからの帰りなので、疲れている。疲れていれば、嫌いな車の中でも寝る。
(9ヶ月令)

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夏になれば、トイプードルやミニチュアシュナイザーなどの長毛犬は、毛をカットされて貧相になってしまう。毛の衣を脱がせると、同じように見えてしまう犬種が多い。丸坊主にされたパピヨンを見たことがある。特徴的な白黒のカラーが、目につかなくなくなったばかりではない。耳や尾のフサフサと揺れる長毛がなくなったので、丸刈りにされたトイプードルと、見分けがつかなくなっていた。

この300~400年の間に、主にヨーロッパで作られた多くの犬種。ヨーロッパ人は、見かけ上最も差別化しやすい毛にまず注目をして、新しい犬種を作った。毛の色や長さ、縮れ具合などを規定する遺伝子は、住んでいる自然の環境に合わせて、変化しやすくなっている。近親交配を繰り返せば、人工的にも、特徴的な毛を、遺伝的に比較的容易に固定できる。

柴犬には、茶、黒、白など異なる毛の色のイヌがいる。バセンジーにも茶白と黒白のイヌがいる。ラッキーの鼻筋は白いが、兄弟姉妹にこの白い鼻筋のないイヌがいる。毛を規定する遺伝子が不安定なことは、これからも分かる。
柴犬のサポは純白だ。ソフトバンクのワンコによく似ている。ところが、飼い主の女性から話を聞いて驚いた。親は両方とも黒柴なのだ。恐らく、祖父母か、それより前の世代に純白の柴がいた。白い毛の遺伝子は、親の世代では発現しなかった。サポは、先祖返りで純白になったと思われる。

暑さに強いバセンジーの体質的な特徴

バセンジーの祖先は、サハラ砂漠が、今よりももっと緑の多かった3~4万年前に、サハラ砂漠で誕生したと、推測される。そこから、コンゴやエジプトへ広がっていった。 古代エジプト王朝が最も栄えたのは、紀元前3000年から紀元前30年頃だ。バセンジーは、古代エジプト王朝によって、厳密な意味で家畜化された。即ち、飼い主が住むところに居所を与えられ、食物は全て、飼い主によって供給されるようになった。

big ears
写真3:
バセンジーの大きな耳の裏側には毛がない。ここから体熱を放散するので、呼気からの熱放散は少なくて済む。暑さに強い。寒冷地に適応したイヌには、耳の裏側にまで毛が生えている。
(1年1ヶ月令)
foot
写真4:
前足の肉球。後足の肉球も、同じように盛り上がっている。写真を撮ったときは、足裏が汚れていたので黒ずんでいる。本当はきれいなピンク色で、黒っぽい斑点がある。肉球はおもに硬質の脂肪から成る。脂肪は熱伝導率が小さい。地面の熱が、足裏からからだへ伝わりにくい。この肉球のおかげで、バセンジーは灼熱の砂漠を歩くことができた。
(1年4ヶ月令)
eye
写真5:
虹彩の黒っぽい部分がとても大きいので、瞳が大きいように見える。しかし瞳孔はとても小さい。この写真では瞳孔を判別できない。虹彩の色が濃いことや、瞳孔が小さいことは、陽光の強い環境に適応したことを示している。アフリカに適応した犬種であることを、この眼から確認できる。
(9ヶ月令)

家畜化は、飼い主なしには生存が困難になることを、意味する。古代エジプト王朝の滅亡とともに、バセンジーは四散し、死に絶えたと思われた。幻のイヌは、エジプトの壁画にしか存在しなくなったのだ。ところが、この幻のバセンジーを、イギリスの探検隊が19世紀にコンゴで見つけた。 アフリカから何度か連れ帰ったバセンジーをもとに、欧米で増やす努力が積み重ねられたが、アフリカにはないジステンパーなどの病気にかかって、生き延びることができなかった。欧米で飼育がきちんと確立され、世界中でバセンジーの数が増えるようにってから、まだ100年も経っていない。

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ヨーロッパを中心にして作られた、他の多くの犬種は、寒冷な気候に適応した体質を持っている。バセンジーは、暑い気候によく適応した体質の持ち主だ。まず、体熱が体外へ出るのをブロックしない、短毛だ。からだに比べて大きく、ピンと立っている耳の裏には毛がない。薄い耳の内側に複雑な凹凸があり、血管が走っている。運動後はこの耳がとても熱くなる。体熱が、耳から放散されている。そのおかげで、夏など、他のイヌが安静にしていても息が荒くなるのに対して、ラッキーは涼しげな顔で平然としている。
さらに、祖先が誕生した熱い地域に適応したと思われるのが、足の裏の肉球だ。肉球は、網目状の弾性繊維に、脂肪が含まれてできている。表面は厚い角質層で被われている。肉球の周囲には汗腺が発達。脂肪は熱伝導度が低いので、大きな肉球を持っていれば、熱い地面の上を歩いても、地面の熱が足に伝わりにくい。

大きく盛り上がった肉球は、熱い岩礫を踏んで歩くのに最適なばかりではない。岩礫の上を走ったときに、からだへの衝撃をやわらげる効果もある。鋭くとがった岩を踏んでも、丈夫な肉球が損傷を受けることはない。
岩礫の上で獲物に近づくときには、音を消す役割も果たす。公園でラッキーが誰かの後から近づいても、音が全く聞こえないので、ラッキーを足元に突然に見た人は、驚いてしまう。

指を広げると、指の間の皮膚が、水かきのように広がっているのが分かる。からだに比べて大きな足蹠とともに、砂漠で歩きやすくなるために、このように進化を遂げたと考えられる。水かきのおかげで、砂の上を歩いても足が砂に埋もれにくい。

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ラッキーの目は小さい。「日本人のような目ですね」と、言った人がいる。虹彩の色は2色になっている。外側は薄い茶色。内側の大部分は濃褐色。瞳孔の周囲の虹彩の色が濃いので、一見瞳孔が大きいように見える。しかし、よく見ると、瞳孔は、濃褐色の部分の中心の小さな点に過ぎないことが、分かる。これは、低緯度の強烈な陽光に適応した結果と、考えられる。強い光が目の中に入らないようになっている。

水嫌いラッキーの雨の日大作戦

アフリカ由来ということで、バセンジーは暑さには強いが寒さには弱い。気温が下がると、下痢をしやすくなるという噂がある。その噂を信じて、最初の冬の前に、バセンジー専門店の「さくらプラザ」から、冬用のトレーナーを2着買った。

snow
写真6:
初めての雪に最初はおっかなびっくりだったが、すぐに慣れた。においをかいだりなめたりして、雪を注意深く観察した。
(1年令)

ラッキーは、4~5ヶ月令だった最初の夏には、暑さにとても強く見えた。2度目の今夏は、暑さに弱くなったように見える。散歩では、歩くよりも木陰で涼むことが多くなった。それでも、他のイヌと一緒に走れば、息切れの度合いが違う。やはり他の犬種よりも暑さに強い。

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バセンジーが、肉体的にも心理的にも、乾燥地帯に適応した、雨や水に弱い犬種であることは、間違いがない。毛が短いので、雨でからだがぬれれば、体温が急速に失われてしまう。大きく開いた耳の無毛の内側に雨水が入れば、中耳炎を引き起こす。

水といえば、からだの洗浄が大変だ。バセンジーの毛は短く、毛の表面がワックスを塗ったように滑らかなので、汚れにくい。体臭も余りない。それでも、特に汚れが目立ったり、前回の洗浄から数ヶ月も経てば、からだを洗うことになる。
水嫌いのラッキーはこの洗浄で大騒ぎ。まずバスルームへ入れるために、にぼしで釣らなければならない。次に、シャワーの水からなんとか逃げようと暴れまくるラッキーに、有無をいわせずにシャンプーをつけてしまう。からだを洗ってしまう。洗浄後の乾燥は簡単だ。拭くだけだ。

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ところが、水嫌いなバセンジーであるはずのラッキーが、自分がバセンジーであることを、忘れてしまったことがある。ラッキーは、今夏、暑い日に2回、自分から進んで海に入ったのだ。ただし、散歩で走っていたときの勢いで入ったので、2回とも胸まで入ったところでビーチへ引き返してしまった。このことを、ラッキーを買い求めたブリーダーの「トップスターライト」に、ビーチのラッキーの写真つきで知らせた。ブリーダーはとても驚いた。
「バセンジーは水嫌いで、雨の日など、雨のにおいをかいだだけで、家から決して出ようとはしません。海に入ることなど、考えられません」

beach out lying on beach
写真7、8:
動きが余りにも速く、海に入った瞬間の写真を撮れなかった。上の写真は海から出たばかり。その後、下の写真のように波打ち際で寝そべった。いつも遠くを見ているバセンジー。ラッキーは、海の彼方のアメリカを見ていたのかもしれない。ブリーダーにこの写真を送った。バセンジーが海に入ったことを知って、ブリーダーはとても驚いた。これは海(水)を怖がらないバセンジーがいることを示す、とても貴重な写真だ。
(1年3ヶ月令)

ビーチから戻ると、からだを洗うことになった。海に入った日には、ラッキーを2回の水攻撃が襲うことになる。

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雨嫌いで問題になるのは、トイレだ。雨が降ろうが槍が降ろうが、人間ばかりか、イヌもウンチ、オシッコをしなければならない。家で両方をできれば、何も問題はない。けれども、家でトイレをしないイヌが、意外に多いのだ。
ラッキーが、家でオシッコをするようになるまでに、ある程度の時間がかかった。ウンチはまだ家ではしない。排尿も外でしかしなかったときには、1日に2回は外へ出していた。排便だけならば1日に1回出すだけで済む。

雨の日に外へ連れ出す訓練は、次のようにやった。
まず、雨の日の散歩のためにレインコートを買った。雨のにおいをかぐと、確かに部屋から出るのを嫌う。雨でぬれた階段を降りるのをいやがった。外へ出るマンション敷地内のドアーを通過させるのにも、一苦労。やっと外へ出しても、今度は水溜りへ入るのを怖がった。ぬれた草を踏むのをいやがった。排便は草の上でしかしない。草がぬれていると、雨には相当に慣れたはずの現在でも、排便をするのを躊躇する。

雨の日の外出は、食べ物で釣ることにした。食い意地の張ったラッキー。大好きなおやつを鼻の先に突きつけられれば、普通は大喜びだ。ところが、雨の日には、私の意図を敏感に察知して、鼻先におやつを突きつけられても、なかなか思う通りに動かなかった。そこで、階段を数段降りるたびにおやつを一つ。最後には、力任せの引っ張り合いになってしまった。

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最初はそんな苦労をした。けれども、 雨に慣らすために、根気よく引っ張り合いを繰り返したかいがあった。小雨、水溜り、ぬれた草に、次第に慣れてきた。大雨の日には、さすがに今でも外へ出るのをとてもいやがる。それでも、ウンチ、オシッコのために、少なくとも1日に1回は外に出るようになった。

水嫌いと関係があるのかどうか分からない、ラッキーの行動がある。ラッキーのトイレ兼ダイニングのバルコニーで、ラッキーがオシッコをすると、シーツの外へオシッコがはみ出すことがある。そこで、水を流してバルコニーの床を洗浄。水は外壁の下の溝を流れる。この流れにとても興味を示すのだ。いつもじっと見つめる。洗浄水が下へ落ちるところまで、流れの先端を追いかける。

下痢に対する対応法

次に「食」の問題だ。

ラッキーには、食物アレルギーのあることが分かった。長さが30センチくらいもある、何かのペーストを骨型に固めたガムがある。表面は膜状のもので被われている。これは、かむのに時間がかかるので、ラッキーがひまを持て余さないようにとの心積もりで、与えた。ところが、激しい下痢ばかりではなく、後足の間が赤くかゆくなる、皮膚反応まで出た。このガムを与えるのは止めた。
イヌがたくさん集まる中央の公園で、飼い主が互いに食べ物をイヌにやる。ここから帰ると、下痢をするようになった。誰が与える食べ物がアレルゲンなのかは、分からない。そこで、全ての食べ物を断ることにした。他のイヌが、食べ物をもらっているのを見ているだけのラッキー。かわいそうだ。でも仕方がない。

ドッグスクールでは、イヌが食べ物をいろいろな人からもらうと、誰にでもなつくようになるといって、給餌を勧めているようだ。これは間違っている。イヌが食べ物をもらえる気配を感じると、食べ物をもらえそうな人のまわりに集まって、動かなくなる。運動をしなくなる。さらに悪いことに、バッグを持っている普通の通行人からも、食べ物をもらえると思って、バッグに鼻を突っ込もうとする。

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バセンジーは一般に胃腸が弱く、下痢をしやすいといわれる。ラッキーも、確かに、いつもコロコロとしたウンチをするわけではない。どちらかといえばやわらかめだ。特に、1回のウンチの最初は硬くても、最後のほうがやわらかくなる。

家へ来て間もなく、下痢が止まらなくなったことがあった。ペットクリニックへ連れて行って、抗生物質と下痢止めをもらった。効果は全くなかった。そこで、人間用の下痢止め市販薬を試みた。数種類を試したが、やはり効き目がなかった。最後に、とても効果のある下痢止めを見つけた。大正製薬の「大正下痢止め・小児用」だ。粉末で、人間の子供が喜んで呑むように、バナナ味になっている。食べ物に混ぜれば、ラッキーはちゅうちょなく呑む。

medicine
写真9:
大正製薬の「大正下痢止め・小児用」は、イヌにとてもよく効く人用の下痢止め。ビオフェルミンは人用乳酸菌。イヌにも整腸用に使える。同じ哺乳動物の人とイヌ。基本的に生理は変わらない。人用の薬は、動物実験で効果を確かめられているので、動物用ともいえる。

5~7才児に、1回で1包となっている。体重14キロのラッキーに、下痢が激しい場合には、1包を朝昼晩と3回に分けて与える。朝晩は食物に混ぜるが、昼時にはペーストのようなものに混ぜて与える。2~3日続ければ、どのような下痢も治る。

モンタが下痢をしたときには、まだ「大正下痢止め」の存在を知らなかった。カボチャ、サツマイモ、オカラを混ぜてふかした食事を、準備した。しかし現在は、下痢中でも、ラッキーの食事をほとんど変える必要がないので、とても楽だ。
整腸用に「ビオフェルミン」を与えている。こちらは錠剤だ。便の状態が余りよくないときに、半錠ずつ朝晩与える。「ビオフェルミン」の効果は、「大正下痢止め」ほど明確ではない。乳酸菌ということで、気休めにしかなっていないかもしれない。

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stretched body
写真10:
ラッキー得意の垂直姿勢。人間以上に姿勢がいい。ピンと伸びきったからだを見て、妻はうらやましがる。キッチンテーブルの上までは85センチある。からだがとてもよく伸びることが分かる。初めの頃は、ここまで伸びるとは思っていなかった。テーブルの上の食べ物をしばしば盗まれた。その後私たちは慎重になり、ラッキーの好きそうなものは、テーブルの奥に置いている。
1年5ケ月令の現在、体長も足も8ケ月令のときよりも長くなった。ラッキーの口は、この写真よりももっとテーブルの奥へ届く。
(8ヶ月令)

イヌの体内では乳糖分解酵素が十分に作られないので、牛乳や乳製品に多く含まれる乳糖が分解されず、下痢をすることがある(乳糖不耐症)。牛乳や乳製品は、イヌには与えないほうが無難だ。どうしても与えたければ、イヌ用のミルクにしたほうがいい。

イヌの食事はドライフードだけで完全だ、という話がある。そこで、ラッキーにも最初はドライフードだけを与えた。けれども、食事が楽しそうには見えないのだ。食べながら、次のように言っているように思われた。
「まあ、取り合えず食べてやるよ」
そこで、 ドライフードに、缶詰フードを混ぜることにした。ラッキーの反応は驚くべきものだった。食事を準備している間、喜びの余りに部屋中を飛び回った。自分のおもちゃを口にくわえ、思いきり振り回した。かと思うと、準備中の私に飛びついて直立不動になり、私の背中や腕をたたき、私の手元を狂わせた。ここまで喜びを表現されると、私までもがとても幸せになった。

脂肪分の多い食事は下痢体質にはよくない。それに体重管理にも要注意だ。そこで、ペットショップで、脂肪分とカロリーが比較的少ない食物を選んだ。幼犬用は脂肪分が多く、カロリーが高い。ドライフードの粒を手で触ると、指が油でギトギトするものがある。幼犬用は、選択の範囲からまず除外した。

dog food
写真11:
脂肪分が比較的少なくカロリーも低め、という理由で選んだアイムスドライフード。同じ理由で選んだペディグリー缶詰フードは、もとの材料の形が保たれている内容なので、安心できる。嗜好と少量多品種の観点から、両方のフードを混ぜている。ドライフードは硬いので食べられない小型犬がいる。缶詰フードを混ぜれば食べやすくなる。

最終的に、ドライフードは「アイムス体重管理用1~6才チキン小粒」を選んだ。6ヶ月令のときから、このドライフードを与え始めた。缶詰フードは「ペディグリー成犬用ビーフ緑黄色野菜魚入り」だ。こちらもカロリーは比較的少ない。ペディグリーの缶詰フードにはいろいろあるが、野菜と魚が入っている缶を選んでいる。魚は人間にもイヌにもいい。ペディグリー缶の魚、肉、野菜は、もとの材料が余りつぶされていない。形が分かるので、確かに入っていることが分かり、安心できる。

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日本人がとても長生きなのは、いろいろなものを少しずつ食べることが、大きな理由になっている。イヌも少量多品種の食事が健康にいいはずだ。そこで、主食はドライフードと缶詰フードを混ぜているが、 昼時には間食として、乾燥小魚や牛皮ガム、クロロフィル入りガムなどを与える。クロロフィル入りガムは歯の掃除になる。

家に来たとき、3ヶ月令の終わりのラッキーの体重は、10キロだった。1年5ヶ月令の現在、14キロだ。ペットクリニックは、これ以上は体重を増やさないようにと、注意をする。いくら食べても満足感を覚えないワンコ。やればやるだけ食べる。家族が何かを食べていれば、近くに寄ってきて物ほしそうにする。体重管理は、今までのところはうまくいっているが、これからもコントロールが必要だ。

ストレス解消になる硬い食べ物
food toy
写真12、13:
上の写真はおやつ。小魚、牛皮と、クロロフィルの入った硬めのガムを一緒に与える。ここでも少量多品種。下の写真はおもちゃ。上端中央部に3個のウシのつめ。いずれも根元がかじられている。プラスチックには好みがある。硬すぎずやわらかすぎず、弾力性のある硬めのプラスチックを好む。青い食事用のさらが一番よくかまれた。ふちが毛羽立って見えるのが、かんだ痕だ。右にロボット犬の「てつ」。

ブリーダーがラッキーを私たちに引き渡すときに、ドライフード、粉ミルク、乾燥魚、クロレラ錠、ウシのつめなどを送ってきた。ラッキーはウシのつめが大好きだ。イヌはかむことによって、あごが強くなるばかりではなく、ストレス解消にもなる。ウシの乾燥づめは、かんでもなくなることはない。根元の部分はやわらかいが、つま先の部分が硬く厚いので、つま先までかむことができないのだ。そこで、同じつめを長い間かみ続ける。今は、おもちゃと一緒に、乾燥づめが部屋のどこかにいつも転がっている。ラッキーは気が向けばつめをかんでいる。
牛革のガムなども硬い。そんな硬いものをおやつとしてやっているおかげで、ラッキーの歯は白い。 他の人たちが、私たち家族はラッキーの歯磨きをしっかりやっていると、誤解する。ラッキーは歯磨きを受けつけない。硬いものの効果は歯磨き以上だ。

動画2:
前足を使って果物のキンカンにじゃれるラッキー。キンカンは食べない。このじゃれ方がネコに似ているので、バセンジーを、ネコとイヌの中間の動物と考える人がいる。
(9ヶ月令)
動画3:
牛皮のガムにじゃれている。じゃれてから食べる。
(9ヶ月令)

ペットショップで売っているイヌのおやつには、わざわざ「やわらかい」と、断り書きが入っているものがある。主食以外では硬いものをかませたほうがいいのに、やわらかいものを与えてしまう。硬いものをかめないイヌがいる。人間と同じで、生活が文明化するほど、硬いものをかめない個体が増える。

硬いものをかめないのは、歯とあごが弱いためばかりではない。前足で、食べ物を押さえることのできないイヌがいる。 トイプードルのマイケルの飼い主が、「硬いものをやっても、前足で押さえられないので、口にくわえたまま走り回ります。食べたいのに食べられないのが、ストレスになってしまいます」と、言った。
マイケルばかりではない。フレンチブルドッグのクリップは、硬いものをもらうと、前足で押さえるのではなく、机の隅などに押しつけて固定をするそうだ。

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door protector
写真14:
ラッキーは、ドアーレバーを、人間がやるように押し下げてしまう。食べ物が豊富な息子の部屋。遠慮会釈なくドアーを開けるようになった。写真は、私が作った対策だ。上から前足でレバーを押すので、カバーをつければレバーを押し下げることができない。

ラッキーは、ウシのつめのように硬いものを、前足でしっかりと押さえてかじることができる。ラッキーは、長い前足をいろいろなことに器用に使う。コミュニケーションのために、私たちに前足で触れる。他のイヌと遊ぶときに、前足でたたく動作をする。ドアーのレバーを押し下げて、ドアーを開けてしまうことまでやる。
息子の部屋には、ラッキーには魅力的な菓子袋などが転がっている。そこで、息子の秘密の部屋に、ノックもせずに遠慮なく入るようになった。人間がやるように、レバーを片方の前足で器用に押し下げると、両前足を使ってドアーを押し開けてしまうのだ。私は、ラッキー対策にレバーカバーをつけた。このカバーがあると、レバーに前足をかけることができないので、ラッキーは上からレバーを押し下げることができない。

トイレ大作戦

次は「住」の話だ。住居については前のエッセイに書いたので、住居との関係で、飼い主には大きな問題になるトイレに触れたい。

ラッキーのトイレ兼ダイニングルームとして、ベッドルームに面したバルコニーを使っている。バルコニーには、トイレ用のシーツだけではなく、木や草が置いてある。トイレと食事の場所を一緒にした理由は、食事とウンチ、オシッコを条件づけるためだ。即ち、朝晩の食事のあとで排尿、排便をすることを、習慣づけようとした。トイレの時間が決まると、飼い主は楽になる。
この作戦では、食事をバルコニーに置いてラッキーを誘い出し、食事中はドアーを閉める。食後にウンチ、オシッコをするまで、バルコニーに放置する。

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初めの頃はなかなかうまくいかなかった。いつの間にか、部屋の中でオシッコをしてしまった。しばしばターゲットになったのは、ソファーや床に敷いてあるシープスキンだった。そのやわらかさが、草の生えている地面のように感じられたに違いない。トイレとしては使わせたくない、表のバルコニーでやってしまうこともあった。
やわらかいベッドも、シープスキンと同じ理由でターゲットになった。これには妻がとても怒った。そこで、トイレ訓練が終了するまで、昼の間は、ベッド全体を厚いビニールシートで被った。つるつるしたビニールシートの上では、排尿の本能が刺激されないようで、オシッコをすることはなかった。
トイレ以外のところでオシッコをしたときには、叱るのではなく、トイレのバルコニーへ連れて行き、床のシーツを指差しながら、「オシッコ、オシッコ」と繰り返し言った。

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オシッコをしたいときに、トイレバルコニーへ出るドアーが開いていれば、自分でトイレへ行くようになったのは、1才の頃だった。ウンチは、今でも普通はまだバルコニーではやらない。下痢気味で、外へ出るまで待てないときにだけ、バルコニーでウンチをする。部屋の中で、ウンチをしてはいけないことをわきまえるようになったのは、7~8ヶ月令の頃だ。排便についても、若干の進歩があったことになる。

ドアーが閉まっている寒いときには、部屋中を忙しく走り回るのが、オシッコのサインになる。そのときには、パンのかけらなどをバルコニーに置いて誘い出し、オシッコをするまで、ドアーを閉めたまま置き去りにする。
オシッコが終わると、ラッキーはすぐにドアーのガラスをガリガリと引っかく。オシッコをすれば、中へ入れてもらえることが分かっているからだ。 オシッコをしたならば、オシッコを指差して、毎回本気で大げさにほめる。とてもほめられるので、ラッキーはちょっと得意そうになる。悪いことをすれば叱り、良いことをすればほめる。これはぶれないようにやっている。

イヌは、早朝の空腹時に、黄色い胃液を吐くことがある。この胃液を吐く場所も、ラッキーには分かってきた。気分が悪くなると、ドアーが開いていれば、自分で外へ出て、バルコニーに置いてある草のところで吐く。開いていなければ、ドアーの前で苦しそうにするので、すぐにドアーを開ける。

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夏の今は、バルコニーへ出るドアーは、いつも開けられている。ラッキーは必要に応じて、自分から進んでバルコニーへ出る。トイレ大作戦がほぼ成功したので、もはやベッドをビニールシートで被うことはない。トイレがきちんとできるようになってから、家族の皆の緊張がほぐれたことが分かった。ラッキーのオシッコ、ウンチ爆弾による攻撃の心配が、なくなったからだ。

家での遊び

表のバルコニーから裏のバルコニーまで、マンションの部屋の一番長い動線を、ラッキーはほぼ毎日弾丸のように走る。そのきっかけは、しばしば上階に住んでいるパグのメイだ。音かにおいか、人間には分からないワンコの気配が、ラッキーにスイッチを入れる。ラッキーは上を見ながら走る。
それ以外のスイッチに、散歩のときのハーネスと首輪がある。 ハーネスと首輪をつけるのを、遊びと心得ている。私につかまらないように、部屋中を走り回る。おかげで、床のカーペットはあっちへ飛んだりこっちへ飛んだり。ハーネスの次にリードをつける。そのときにも、遊びと心得て尻を高く上げる。そうなればしめたものだ。動きが止まっている。簡単につかまえられる。

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家での遊び相手といえば、うなり声を上げる掃除機は、ちょっと怖い遊び相手だ。掃除機の後を、少し距離を保ちながら追いかける。
私がつめを切っているときには、金属製のつめ切りが遊び相手になる。 ラッキーのつめ切りに最初は成功したが、2回目からは、1回目で学習したラッキーが受けつけなくなり、つめ切りに成功したことがない。けれども、私がラッキーのつめを切る振りをすると、ラッキーはスリルを感じるのだ。つめ切りを拒否しながら、遊びのつもりで鉄のつめ切りを攻撃する。

遊び相手にはロボット犬がいる。以前はただかんでいただけだったが、今はもっと高度な遊び方をする。ロボット犬のスイッチを入れてしまうのだ。

switch
写真15:
ロボット犬のスイッチは、向かって右側、腹部の下にある。とても小さい出っ張りだ。これを前方へ押し上げなければ、スイッチはオンにならない。腹部の張り合わせ布を口ではがしてから、ラッキーはこのスイッチを歯でオンにしてしまう。

これはイヌにはとても難しいはずだ。まず腹部の張り合わせ布をはがす。上の写真の、腹部右側にあるスイッチはとても小さく、指先が器用なはずの人間でさえも、注意深くつめ先に引っ掛けて押し上げなければ、スイッチはオンにはならない。ラッキーはこれを自分の歯でやってしまう。スイッチが入ると、ロボット犬は吠えたりしゃべったり歌ったりする。けれども、ラッキーはオンにしたスッチをオフにすることはない。オフにするのは家族の仕事と心得ている。

かみぐせを直す方法

ラッキーを就寝させるときは、リビングのソファーで寝ている14キロのラッキーを抱いて、ベッドルームに置いてあるケージへ運ぶ。現在は、自分から進んでケージに入ることがある。

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10ヶ月令くらいまでは、ハウスつきケージの中で朝まで寝ていた。ドアーは閉めていた。10ヶ月令の頃のある日の未明のことだった。苦しそうに食べ物を吐いた。吐きたいものがまだ胃に残っているのか、気分が落ちつかなかったので、そのまま私たち夫婦のベッドに入れて寝かせた。これが翌朝から習慣になってしまった。早朝の4~5時頃に、「クオン、クオン」とうるさく鳴くので、ベッドに入れざるを得なくなった。
それから毎朝ケージのドアーを開け、朝の2~3時間の睡眠を、私たちはラッキーと一緒にベッドで取るようになった。早朝に一度起き上がるのは厄介だが、必ずしも悪いことばかりではない。

ラッキーは、それまでは、何かにつけて、ありとあらゆるものをかんでいた。靴、シープスキン、タワシ、空のプラスチックボトル、牛乳の空きカートン、衣服、はし、ボールペン、ぞうきんばかりではなかった。部屋を歩いているときに、家族が身につけているズボン、スカート、服の袖がかまれた。それに足や腕、指もかまれた。
私はラッキーから特別待遇を受けていて、かみ攻撃の対象にはならなかった。家族内の序列をラッキーがどう考えているのかが、これで分かった。自分よりも序列が下、あるいは序列が同等と思われる家族が、自分の思い通りに動かないときに、かんでいたように思われる。同時に、物事が自分の期待通りに動いていないときには、ストレスを感じて、代償行為として何かをかむ。

ベッドに一緒に寝るようになってから、このかみぐせが大幅に直ったのだ。この事実から、小さなイヌにも、人間の子供と同じように、濃密なスキンシップが必要なことを悟った。スキンシップがなければ、精神的に落ち着かなくなり、何かちょっとしたことにも、不満を感じる。代償行為として、かんではいけないあらゆるものをかむ。 スキンシップが十分ならば、精神的に落ち着いて、少しのことでは、不満を感じたりストレスを感じることはない。

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昨日の朝、妻が久しぶりに指をかまれた。横になった妻の背に、ラッキーが寄り添っていた。妻が手を足の間に入れた。ラッキーの目の前に、足の間から指を差し出す格好になった。この指をラッキーはかんだ。この行為は、私とラッキーがやっている遊びになる。私は、ラッキーが床に寝転んでいるときに、ラッキーの目の前に足を投げ出して坐る。足の下から靴下や指を見せ、ラッキーにじゃれさせるのだ。

handling mouth
写真16:
かみぐせを強制的に直すやり方。かんだならば、鼻の上からしっかりと上あごをつかまえる。親指と中指を使って、上のほほ肉を、犬歯の後の隙間に押し込む。これで頭を動かすことができなくなる。口を閉じることもできない。「かんだらダメ」としっかり言う。見えやすいように、この写真では左手を使っている。実際には右手のほうがやりやすい。
(1年3ヶ月令)

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かみぐせを直した濃密なスキンシップ。冬の間は余りにも濃密すぎた。ラッキーは寝ているときに、長い4本足を思いきり伸ばす。その強靭な足は、私の腹部ばかりか顔も直撃した。さらに、上半身を私の顔の上に乗せて熟睡するので、私の呼吸が苦しくなった。それでも私は耐えた。「愛」があれば、恐ろしいものは何もない!

sleeping together
写真17:
ラッキーは私に背中を向けている。この姿勢が逆になると、強靭な両足が繰り出す強烈なパンチを、じかに受ける。人間のパンチよりも怖いのは、鋭いつめがついている指先が、私の腹部を直撃することだ。これは冬の写真。夏の今は、このようにベッタリとつくことがなく、私は命拾いしている。
(1年3ヶ月令)

添い寝には、ラッキーばかりか私にも良いことがある。ラッキーと密着している間の2~3時間の睡眠が、とても深くなったのだ。動物とのスキンシップは大事だ。動物セラピーに効果があることは疑いがない。

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現在のラッキーは、かんでいい自分のおもちゃしかかまない。ただし、皆が留守をし、食事の時間になっても、誰も食事を作らなければ、かんではいけないものをかむ可能性は、今でもある。期待通りにならないときに、ストレスを発散させる代償行為として、何か目的以外のものをかむ。食事前に、ウシのつめをかむことが多いラッキーを見ていると、このことに私は確信を持つ。

このように、1才の頃までに大分直ったかみぐせ。最後まで残ったくせは、ソファーに敷いてある4枚のシープスキンを、かむことだった。特に、食事時に、食事を期待しているのにまだもらえない、イライラの状態下でよくかんだ。シープスキンからかみ取られた毛が、床に散乱した。これを見た私は、手にヒツジの毛を持ってラッキーに突き出し、「ダメ、ダメ、ダメ」と、繰り返し言った。なぜ叱られているのかを、はっきりと分からせなければ、叱っても意味がない。
私は本気で怒った。怒り方が中途半端になると、遊んでもらっている気持ちになってしまう。しょげるどころか逆に喜んでしまうのだ。2~3日のうちにスキンがみを繰り返した場合には、丸めた新聞紙でたたくこともやった。

最後にかんだ、かんではいけないものは妻のハイヒールだ。 1ヶ月ほど前のことだった。ラッキーは、このハイヒールに特に興味を持っていて、それまでに何度も部屋の中へ持ち込んだが、かむことはなかった。それが、夕食前のイライラ時についにかんでしまった。私は勿論本気で叱った。長い間の望みを遂げて満足したラッキーに、私の怒りが届いたかどうかは、定かではない。

ラッキーにきたえてもらっている私

遊ぶときには、首に負担がかからないハーネスと、行動半径が広がる伸びるリードを使う。体力があって猛烈に遊び走るラッキー。 伸びるリードは、今は危険な細ひもではなく、幅の広いひもを使っている。細ひもは、イヌが動いているときにうっかり握ると、自分の手を傷つけるばかりではない。誰かのからだをこすれば、その人に怪我をさせる。
最初は、ラッキーのからだのサイズに合わせて、中型犬用を使っていた。ところが、約2ヶ月毎に買い換える事態になった。リードが伸び縮みをしなくなったり、こすれるリードで巻き込み口が壊れたり、リードそれ自体が切れたりするのだ。いくらなんでも、頻繁に買い換えすぎる。今は大型犬用を使っている。こちらのほうが長持ちする。冬の間は手袋も長持ちしなかった。手の中で滑るリードを握ってしまうので、手袋に穴が開いてしまったのだ。

ラッキーのように力の強いイヌが、縮めたリードを突然に引っ張ると、ロックがはずれて、リードが伸びてしまうことがある。車道の横の歩道を歩いているときにこうなると、危険だ。そこで、公園までは普通のリードをつける。

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昨年の夏は猛暑日が続いた。散歩中に、突然に立ち止まり、突然に前後へ走り、突然に左右に回り、突然にジャンプするラッキー。私には、1分も休むことのない猛烈な全身運動になった。朝夕1回、各1時間半の散歩に付き合った私は、頭から大量の水を浴びたように、いつも汗でびしょぬれになった。おかげで、ひと夏で体重が3キロも減った。
ワンコ仲間のちょっとおデブな女性にそのことを話すと、体重が減ったというところだけしか聞こえなかったらしく、うらやましがられた。楽をしてやせられるようなことを、テレビ番組でいつも誰かが言っている。やせたければバセンジーを飼って、真夏に毎日散歩をすることだ。

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動画4:
家でも外でも、とにかく猛烈に走る。走りながらジャンプをする。それでも見事に急停止する。
(8ヶ月令)

ラッキーの強靭なからだは、成長とともにさらに強靭さを増した。ラッキーの強靭さはジャンプで示される。家でソファーに坐っているときに、突然に飛び上がることがある。高さ1メートルの背もたれを、助走もなしに軽々と飛び越え、反対側の床に着地する。まさに強靭なバネだ。

2度目の夏はやや落ち着いて、動きが若干単調になった。しかし、力が一層強くなったので、一緒に散歩をする私のからだには、大きな負担がかかる。今までタコのなかった私の足の側面に、新しく3個のタコができた。左足に特に力が入るので、左足の2本の指のつめが変形してしまった。
それでもラッキーに感謝。 ラッキーとの散歩には、スポーツジムのトレーニングよりも、からだ全体をバランスよくきたえる効果がある。ジムへ通うことは止めた。

ラッキーなしで一人で歩いているときには、からだがとても軽く感じられる。私自身がそう感じるだけではなく、歩いている私を見る他の人もそう感じる。仲間とウオーキングをしているときに、私の後方を歩いていた人が言った。
「和戸川さん、空中を飛んでいるように、とても軽々と歩いていますね」

<和戸川 純>

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