evolution

第1部では、高次元世界から誕生した宇宙の進化を、たどりました。地球型生命に必要な分子は、宇宙空間で作られます。生命は、環境の激変に耐えられるばかりか、大絶滅を大進化に使うことができます。
第2部で、常識では考えられない、驚異の生存メカニズムを探ります。地球型生命のしたたかさを考えると、「多くの惑星上で生命が誕生している」、と結論できます。私たちは、孤独ではありません。

第2部 無数の惑星に生命が誕生

2012年6月10日

とても柔軟な自己組織化によって組み上がる生体

self organization

遺伝子の融通無限な発現をコントロールするのは、自己組織化です。自己組織化とは、専門的にいえば、ランダムから秩序へ組み上がる現象、といえます。
温度、圧力、電界、磁界、イオン、大気組成など、生体外部や内部の物理化学的な環境は、常に変化しています。それらの変化に影響されて、遺伝子の発現の仕方や、タンパク質の高次構造の組み上がり方、それにタンパク質間の相互作用が、再構築されます。その再構築において、自己組織化が、決定的に重要な役割を果たしています。

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保守的な遺伝子に対して、自己組織化をもとに組み上がる生体の構造と機能には、環境変化に応じて急速に変化する、という特徴があります。すなわち、生物は、自己組織化のおかげで、環境の激変に積極的に対応できるようになるのです。


chemical interaction

自己組織化は、高校で習った、誰もが知っている、宇宙に普遍的な物理化学反応によって、成し遂げられます。
関与する化学結合は、水素結合、配位結合、疎水結合、クーロン力、ファンデルワールス力など。これらの単純な結合をもとに、アミノ酸は、1次、2次、3次と、より複雑かつ大きな分子構造へと組み上がります。最終的に、4次構造といわれる、とても複雑な機能タンパク質になります。

この全過程において、水素原子が重要な役割を果たしています。特に、4次構造は、水素結合やファンデルワールス力などの、弱い結合が関与しているところに、特に大事な意味があります。構造を決定する結合力が弱いおかげで、機能タンパク質は、柔軟に形を変えながら、複雑な機能を発揮することができるのです。


位置によって決まる細胞の専門化

cell division

精子と卵子が融合し、母親の胎内で胎児が成長し始めます。これを、細胞レベルでは、細胞の分化として見ることができます。からだのどのような細胞にでもなることができる、初期の胚細胞が、分裂を繰り返しながら、次第に特殊な機能を持った細胞に変わっていくことを、分化といいます。
専門化した細胞群が、複雑なネットワークを構築することによって、私たちのからだを機能させています。

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遺伝子発現と同様に、この細胞分化も、環境からの影響を受けて進みます。
受精4日目の桑実胚においては、各細胞が将来どのような細胞になるのかが、全く決まっていません。間もなく、周囲の液体のイオン濃度か何か、引き金は分かりませんが、桑実胚の一部の細胞が、より強く増殖を始めます。そこが将来の口、すなわち原口になります。
原口が決まれば、この原口に対する位置関係だけで、周囲の細胞の分化が決まってきます。普遍的な言い方をすれば、細胞分化は環境からの影響によって決定される、となります。

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個体発生が系統発生を繰り返すかどうかはともかく、以上の知見をもとにして、単細胞生物が多細胞生物に進化したときの有様を、想像できます。

原始の海の中で、1個の単細胞生物が分裂・増殖すれば、子孫の細胞群は、1箇所に集合することになります。しかし、周囲の環境が、1個1個の細胞の生存にとって理想的ならば、これらの細胞は、独立した生活を続けるはずです。環境が生存に困難になる、すなわち危機が到来することによって、細胞群は生存の仕方を変えます。
最外側に並んだ細胞が壁の役割を果たし、群の中へ有害物質が入るのを阻止しながら、有益な物質は通過させるようになる、と想像できます。ここまでくれば、多細胞生物へ進化するまでに、余り時間がかからなかったはずです。
原始の海を襲った初期の環境激変が、多細胞生物誕生の引き金になったはずです。


cell

からだのどの部分から取り出した細胞でも、培養液中で生きることができます。
顕微鏡下で見ると、一つひとつの細胞は独立生命体、という実感を持つことができます。サイズも見かけも、単細胞生物と驚くほどの違いがあるわけではありません。各細胞は自由に動き回り、周囲の細胞と情報のやり取りをします。時に応じて分裂をし、子孫を残します。これらの細胞の各々は、一つのからだを構築できるだけの遺伝情報を、持っています。

単細胞生物から多細胞生物への進化は、比較的容易に行われ、私たちのからだは、基本的には単細胞生物の集団から成る、と考えることができます。先祖の単細胞生物との違いは、からだを構成する細胞の一つひとつが、存在する場所によって、異なる機能発現をし、特殊化しているということだけです。


利己的な細胞

selfish cell

進化生物学者のドーキンスが、「利己的な遺伝子」という、センセーショナルな言葉を使いました。
生物は、遺伝子を生き残らせるためのロボットに過ぎず、遺伝子は、自らが生き残るためにプログラムを組む、というのです。これは、進化の過程において、多種多様な生物が出現するにも関わらず、遺伝子の基本的な骨格が、大きく変化することもなく保存されていることを、指摘した言葉と受け取ることができます。

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私は、「利己的な細胞」といったほうが、進化のダイナミズムをよりよく表現できる、と思います。

今までの話とこれから話すことから、私たちのからだを構成する60兆個の細胞は、一つひとつが、独立生命体として生きる能力を持っていることが、分かります。
これらの細胞は、30数億年前に地球上に誕生した単細胞生物の特徴を、色濃く残しています。生物の種が、サイズ、形、運動能力において極端に異なっているのに対して、どの生物種の細胞も、基本的には高度な同一性を保っています。
すなわち、 細胞は、自らが生き残るために、細胞の集合体としての個体のサイズ、形、運動能力を、変えてきたことになります。 環境の変化は余りにも激烈なので、多くの種が絶滅することも、細胞はいといません。多種多様な種が存在するおかげで、生き残る種があります。少数の種だけでも生き残れば、その種の個体を構成する細胞は、変化した環境によりよく適応できる種を、さらに進化させます。

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全体として生き残るための細胞の戦略は、一つの個体の構築において、自ら進んで自殺する細胞群まで生み出しました。

胎内で胎児が成長する過程において、手の指に分化する細胞が決まってきます。それらの細胞が、指の間に位置する細胞に、自殺を要求するシグナルを出します。その結果の細胞死を、プログラムされた細胞死・アポトーシスといいます。このおかげで、私たちの指が分離するのです。アポトーシスはからだ全体に渡ります。もしもアポトーシスがなければ、私たちは肉団子のように丸い形で生まれるのです。
アポトーシスは、初期のがん細胞や、体内へ進入した病原体を攻撃する、免疫細胞にも認められます。


驚異のカンブリア大爆発

cambria explosion

生物の進化において、最もドラマチックなできごとが、5億4200万年前から5億3000万年前の、1200万年間に起こりました。地質学的にはカンブリア紀になり、このできごとをカンブリア大爆発といいます。1200万年間は、人間の一生からは途方もなく長い時間になりますが、進化史においては、「アッ」という間の瞬間的な時間になります。

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単細胞生物が地球上に誕生してから30億年余の間に、カイメンやクラゲのような軟体性の動物が現れました。しかし、種類も数も極めて限定されていたのです。 カンブリア大爆発において、現世動物の全ての先祖がいっせいに誕生しました。

このような進化の爆発は、遺伝子の突然変異によって、達成されたわけではありません。当時の生物は、基本的には、9億年前に誕生したカイメンと同じ遺伝子しか、持っていなかったのです。
大爆発前に、全ての現世動物を生み出す遺伝子が準備された、という言い方をする進化論者がいます。この言い方は誤解を受けやすい。未来を予想し、その未来のために何かを準備する神は、この宇宙には存在しません。
保守的な遺伝子を、環境に合わせて柔軟に発現させる、自己組織化を含む生命の驚異のメカニズムが、発動されたと考えるのが理にかなっています。

既に述べたように、単細胞生物から多細胞生物への進化は、細胞の劇的な能力の増大などがなくても、可能だったと思われます。動物の種の多様化も、同じように容易に行われた、と考えていいのではないでしょうか?

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それでは、何がその引き金になったのでしょうか?まだ定説はありません。しかし、次のような地球環境の激変を考えることができます。

5億5000万年前頃に、パノティア超大陸が、ローラシア大陸、バルティカ大陸、シベリア大陸、ゴンドワナ大陸に分裂しました。
この頃、莫大な量のリンが海へ流れ込みました。リンは岩石に含まれているので、大規模な造山運動と大量の降雨が組み合わされて、海へ流れ込んだと思われます。リンは、動植物の栄養源になると同時に、骨などの硬組織の材料になります。

この時期に、それまで繁栄していた、軟体性のエディアカラ生物群が絶滅したことが、環境変化がいかに激烈だったかを示しています。エディアカラ生物群の絶滅は、広大な海という生活圏が、新しい種のために準備されたことを、意味します。

全地球的な地殻変動の結果、複雑な地形から成る浅海、内海、湾が形成され、海流の動きが複雑になったと思われます。大気の流れが変われば、それが海洋環境にも影響します。地球上に多種多様な生活圏が形成されたことが、種の爆発的な増加につながったと考えるのが、自然です。


cambria explosion

カンブリア大爆発によって、脊椎動物の先祖になる直泳動物が誕生しました。そして魚類が両生類に進化し、さらに爬虫類と哺乳類に進化しました。

爬虫類から分かれした恐竜類は、6500万年前の巨大隕石の落下によってに絶滅し、子孫の鳥類が今生きています。人類を含む哺乳類には、4000数百の種があります。


わずらわしい恋や愛が必要な理由

sex

ただ単に生命を存続させるのならば、単細胞生物だけで十分です。ところが、単細胞生物は多細胞化したばかりか、性の分離まで試みるようになりました。
多細胞生物は、子孫を残すために、雌雄という性に分かれる必要はありません。からだの断片は、完全な個体にまで成長することが可能です。このような現象は、多くの軟体動物に認められます。

なぜ、進化は、雌雄という二つの性を作り、「愛した」、「恋した」という面倒な手続きを経なければ、子が誕生できないようにしたのでしょうか?子孫を残すために、二つの個体の合体が必要なのでは、子孫誕生の効率を下げてしまいます。
環境の変化が突然に生じることを考えると、この効率の低下が、決定的な危機を招きかねません。このような犠牲を払ってでも、性を分けた理由は何でしょうか?

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環境の激変の頻度は余りにも高い上に、原因はとても多様です。遺伝子プールに少しでも多くの多様性を持たせることが、将来の危機に対する対応力を、強化することにつながります。
多彩な細胞群が協調して、個体を機能させなければならない高等生物において、遺伝子プールの多様性への必要性が特に高まります。これが、性の分離の原因になったと思われます。

性の分離のための遺伝子の準備は、30数億年前の単細胞生物時代になされました。性の基本はメスで、そこへオスのMID遺伝子が付け加わったのです。メスが基本であることは、出産をしないオスに乳首があることからも、分かります。また性同一性障害になる人は、女性よりも、性的により不安定な男性に圧倒的に多くなっています。
多細胞生物が誕生してから雌雄器官が分かれ、カンブリア大爆発後に、雌雄は個体として分離しました。


私たちのからだは超共同体

cooperation

生物の危機対策は、さらに巧妙になっています。最大級の危機に対しては、完全に独立した生物種だけでは、対処しきれなかった進化史があるはずです。地球上の生物が互いに協力し合って、生き残りを図るという、驚くべきメカニズムが進化の過程で構築されました。

私たちのからだの中に、60兆個もの生体細胞が存在しています。ところが、それよりも多い100兆個もの細菌が、主に腸管に定住しているのです。
腸管周囲に、膨大な数の免疫細胞が集合しています。腸管は、とても重要な免疫系活性化の役割を担っています。細菌がその原動力になっています。細菌を完全に取り除いた無菌動物では、免疫系の活性化が極端に低下していて、ちょっとした感染によっても、すぐに死亡してしまいます。
すなわち、 私たちと腸内細菌の間には、共生関係が成立しているのです。私たちは、腸内で細菌を生かすと同時に、腸内の細菌によって生かされています。

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共生関係を極限にまで高めた細菌は、ミトコンドリアです。

私たちの先祖が、まだ単細胞の嫌気性細菌だった頃、シアノバクテリアの登場によって、地球上に酸素が蓄積されるようになりました。この頃、酸素を用いた糖類の好気性分解によって、エネルギー代謝を行うATPを効率よく産生する、好気性細菌が誕生しました。
私たちの先祖は、この好気性細菌のミトコンドリアを、細胞内に取り込みました。ミトコンドリアは、私たちとは全く無関係な、独自の遺伝子を持っています。ミトコンドリアのおかげで、酸素が含まれる大気の中で、私たちは生きることができるのです。

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進化の過程で、さらに驚くべきことが起こりました。

DNAには遺伝情報が書き込まれているので、私たちのDNAは、先祖からずっと受け継いできたもの、とつい考えがちです。しかし、ここにも驚くべき共生関係があるのです。
DNA鎖の全長のなんと34%もが、ウイルス由来なのです。 遺伝子として機能しているDNA鎖の部分が、全体の2%しかないことを思い出してください。私たちの先祖に感染したウイルスがDNAに入り込み、DNA鎖の大きな部分を占有してしまいました。
DNAのジャンクと呼ばれる部分に、イントロンという領域があり、ここにウイルス由来のDNAが存在しています。ここは、機能タンパク質を書き出すための遺伝子部分とは、異なる領域になります。イントロンは、主としてDNAの切り出しや翻訳の仕事をしています。 遺伝子情報の発現に、ウイルス由来のDNAが、決定的に重要な役割を担っているのです。環境が激変しても、ウイルスDNAのおかげで、生物は生き延びることができます。

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増殖因子という、ホルモンに似た作用をするタンパク質があります。細胞の増殖において、とても重要な役割を果たしています。従って、胎児期には、大量の増殖因子が体内で産生されています。ある種の増殖因子DNAはウイルス由来なのです。

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こうやって、私たちは、細菌やウイルスによって生かされると同時に、これらの細菌やウイルスの生存に貢献しています。幼少の頃から手洗い慣行を強制され、大人になると、空気中の雑菌やウイルスを殺すという、怪しげなスプレーを使うのが当り前、と思わされている私たち。自然の摂理に反する、危険を内包した日常生活を送っている、という意識を頭のどこかに留めておいてください。


生物の柔軟性をもとに考えた新しい進化論

evolution

ここで、生物の環境への適応力をもとに考えた、新しい進化論を書いておきます。

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これまでの突然変異と自然淘汰をもとに構築された進化論には、決定的な弱点があります。
大絶滅の原因になる環境の激変が、繰り返し地球を襲いました。しかも、この激変が、進化史的な時間のスケールからは、瞬間的に生じる場合が多々あります。
超新星爆発の結果、地球に降り注ぐ大量のガンマ線の照射時間は、わずか数分と考えられます。ここまで極端に短くはなくても、何度も地球に落下した巨大隕石は、極めて短時間に環境を激変させてしまいます。
地殻変動も繰り返し生物を襲います。日本列島の下に沈み込む太平洋プレートが、年に10センチも動いているのです。進化の時間スケールからは、これは驚くべき速さです。大陸を乗せている卵の殻のように薄い地層は、短時間で形を変えてしまいます。

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遺伝子DNAの突然変異はランダムに起こります。突然変異の結果として生じたDNAの変異は、通常は修復されてしまいます。修復されない場合、変異が有害ならば、その変異を持つ個体は死亡し、その変異は子孫には伝わりません。無害な変異は中立の変異となり、保存されます。
激変する地球環境下で、ある特定の環境変化に適した遺伝子を持つ個体が、ランダムな突然変異によって生まれる可能性は、極端に低くなります。事実上、ゼロといえます。
これでは、生物は進化するどころか、簡単に絶滅してしまいます。 突然変異と自然淘汰が進化の原動力ならば、地球上に現在生物は存在していません。

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今まで述べてきたように、生物は極端に単純で安定したDNAに、数少ない遺伝情報を書き込んでいます。機能タンパク質を作り、最終的にからだを構築するまでの過程で、自己組織化を中心にした物理化学反応を使っています。 環境と動的に対話しながら、遺伝子の基本的な構造を大きく変えることなく、自らのからだを変えているのです。
環境への積極的な適応、それが新しい進化論になります。


地球型生命体は宇宙に満ちあふれている

universe

ビッグバン後の宇宙から生物までの壮大な進化を見てくると、次のような結論を引き出さざるを得ません。

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宇宙に存在する原子の大部分は、ビッグバン後に作られた水素原子です。この水素原子は、今でも、宇宙に存在する全ての原子のうちの75%を占め、圧倒的な存在感を示しています。
水素原子が、地球型生命の誕生と維持に必須な水を作ります。宇宙には水(氷)が大量に存在しています。また、水素原子それ自体が、原子・分子レベルで、生体反応の中心的な役割を担っています。
宇宙に普遍的な物理化学反応によって作られた、宇宙空間の至るところに存在する原子や分子をもとに、生命は誕生しました。ここに奇跡が入る余地はありません。

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宇宙には数千億個の島宇宙が存在し、各島宇宙には、数千億個の恒星が含まれるといわれます。nX10 22-23 個が、全宇宙に存在する恒星の数、と書くことができます。どれくらいの数なのか、イメージをするのも困難です。
主系列星に含まれるとても平凡な太陽の周囲を、8個の惑星が回っています。太陽系誕生の過程を考察すれば、他の恒星にも複数の惑星が随伴している、と考えるのが自然です。全宇宙の惑星数が、全恒星数の数倍になると仮定することに、大きな無理はありません。

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地球型生命が存在する惑星は、太陽系では1/8の確率になります。太陽系だけが特別と考えるよりも、太陽系は特別な存在ではないと考えるほうが、自然です。そうすると、地球型生命が、他の多くの恒星の周囲を回っている惑星にも存在する、と結論づけざるを得ません。
一歩ゆずって、太陽系がやや特別な存在とします。このような惑星が存在する確率を、1/8よりもはるかに小さい、1/1000と見積もります。それでも、銀河系だけで、数十億個の惑星に、地球型生命が存在していることになります。「宇宙は生命でいっぱい」である可能性が、とても大きいのです。

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もしもそれほど多くの惑星に、私たちのような生物が住んでいるのならば、中には高度な文明を築き上げた知的生命体が、いるはずです。今までに、私たち人類は、なぜコミュニケーションを取れていないのでしょうか?

DNA末端にテロメアと呼ばれる部分があり、細胞分裂のたびに短くなっていきます。それから計算をすると、医療がどのように発達しても、私たちの寿命は120歳程度までしか伸びません。
進化の時間スケールからは、極端に短い寿命です。「アッ」という間に世代が交代していかなければ、急激な環境変化に種として適応できない、と考えられます。
同じような宇宙環境下で誕生した他の惑星の生物も、遺伝的に規定された寿命は、とても短くなっているはずです。そうでなければ、進化することは不可能になります。

100歳程度の寿命しかない生物にとって、宇宙空間は余りにも広大です。太陽に最も近い恒星でさえも、4光年も離れています。地球型生命にとって、星間飛行をするのは極端に困難です。

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実際に遭遇はできなくても、コミュニケーションはできるかもしれない、と誰もが考えます。他の知的生命体から発信された電波を受信する努力が、続けられています。あるいは、人類が発した電波が、他の惑星に住む知的生命体によって、受信される可能性を考える人がいます。

ここでも、宇宙空間が余りにも広大であることを、認識しなければなりません。 100年前に人類が初めて発した電波は、まだ100光年先までしか届いていません。しかも、3次元空間を進む電波は、距離の3乗に比例して減衰します。知的生命体が住む他の惑星に到達する頃には、宇宙の最もかすかなノイズの中にさえも埋もれてしまいます。
逆も真です。他の惑星に住む知的生命体が発した電波を、人類が受け取る可能性は極端に小さい、としか考えられません。

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人類よりももっと文明が進んだ知的生命体は、コミュニケーションに原始的な電波を使っていないかもしれません。ニュートリノか重力子か、あるいは人類には思いもつかないような方法で、コミュニケーションを取っているかもしれません。広大な宇宙空間を考えると、その可能性が高くなります。
そのような高度知的生命体は、この銀河系だけでも、無数の惑星に地球型生命体が住んでいることを、知っていると思います。地球に人類が存在していることを知っても、特に関心を持たないかもしれません。何しろ、人類程度の文明を持つ原始的な地球型生命体は、恐らく数限りなく存在しているのですから。

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こう考えても、私たちは悲観する必要はありません。夢を見ることができます。

ここまでに書いたように、私たちはこの宇宙で孤独な存在である、と考えることには無理があります。上のスライドで示した地球の風景は、地球から数百光年離れたところにある、他の惑星上の風景と瓜二つかもしれません。その惑星上でカメラを回すと、人類によく似た生命体がビーチに寝そべっている写真を、撮ることができるかもしれません。
他の惑星の地球型生命体も、手の届かないところに住んでいる、「他の人類」に思いをはせているかもしれません。そう考えるのが自然です。
アインシュタインが言いました。「新しい理論は自然でなければならない。無理や不自然さがなければ、その理論は真理により近くなる」、と。
アインシュタインの言を待つまでもなく、宇宙に生命体が存在する惑星は地球だけ、と考える天動説よりも、そのような惑星は無数に存在する、と考える地動説のほうが、ガリレオ以来の宇宙観にとってより自然です。


追記:170億個以上の地球型惑星

2013年2月3日

1月に、三鷹の国立天文台で研究に従事している、若手天文学者の講演を聞いた。テーマは、「太陽系外惑星探索の現状」だった。
その研究者は、今年得られた最新のデータも含めて、太陽系外惑星に関する研究成果を、包括的に講演した。

宇宙望遠鏡ケプラー(NASA提供)
kepler
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今までは、主に視線速度測定によって、太陽系外の惑星探索が行われていた。最近は、重力レンズ効果法や、探査機ケプラーの直接観測によって、太陽系外惑星の探索が加速されるようになった。特に、NASAが宇宙空間に設置した宇宙望遠鏡ケプラーが、威力を発揮している。
ケプラー計画では、最終的には、太陽系周辺の10万個以上の恒星が調べられる。まだ、地球よりも小さな惑星の検出は困難だ。中心の恒星から遠く離れた巨大惑星が、主に観測されている。それでも、今年の1月までに、既に2740個の太陽系外惑星の存在が確認された。
中心星から適当に離れていて、液体の水が存在できるような宇宙空間を、生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)という。地球はこの領域にある。2740個の太陽系外惑星のうち、約50個の惑星が、この領域に存在している。全惑星の約2%になる。しかし、地球よりも小さい惑星の検出が困難な現状を考えると、生命居住可能領域にある惑星の割合は、実際にはこれよりも大きいと思われる。

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もう一つの重要な発見は、各恒星が、少なくとも一つの惑星を持っている、ということだ。しかも、恒星の少なくとも6分の1は、地球型惑星を持っている。私たちの銀河には1000億個の恒星が存在し、全宇宙には数千億個の銀河が存在する。このことは、 銀河に170億個以上の地球型惑星が存在し、全宇宙ではその数千億倍の地球型惑星が存在することを、意味する。
エッセイ26、27に、私が物質存在の本質から割り出した、地球型惑星の存在の可能性について書いた。私の推測は最近の観測結果と一致する。推測も観測結果も無理のない自然なものなので、両者が一致するのは当然といえば当然だ。

太陽系外惑星の表面の物理化学的状態を、直接に観測できるような状況になりつつある。高度な文明を持った知的生命体が、惑星に人工的な現象を引き起こしていることを、直接の観測によって証明できる日が、やがて来ると思われる。

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講演者への私の質問。「地球型生命のもとになる水と炭素化合物は、星間雲の中で大量に作られています。今ここに私たち人類が存在しているのは、偶然ではなく必然なのではないでしょうか?」
注意深い研究者の答。「そういう意見もありますが、別の意見もあります」

銀河中心部には、私たちの太陽系が存在する銀河の腕の部分よりも、古い恒星の数がより多いと予想される。即ち、もしもそこに地球型惑星があれば、その惑星の年令は地球よりも古く、人類よりも進化が進んだ知的高等生命体が住んでいる可能性がある。

ハワイ山頂の次世代TMT望遠鏡(TMT天文台コーポレーション提供)
tmt

そこで私の質問。「銀河中心部の恒星が持っている惑星の数は、太陽系周辺よりも多いのか少ないのか、予想をできますか?」
慎重な研究者の答。「その質問に答えるためのデータを、持ち合わせておりません」

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ハワイに、口径30メートルの次世代望遠鏡が建設されている(TMTプロジェクト)。日本、アメリカ、カナダ、中国、インドの国際協力のもとに、プロジェクトは進められている。この望遠鏡が完成すれば、太陽系外惑星の探索にも大きな威力を発揮する。
この建設に1万円以上の寄付をした方の名前が、施設内の記念碑に刻まれる。希望する方は、三鷹の国立天文台に問い合わせていただきたい。


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