extrasolar habitable planet

第3部では、NASAなどが次々に発表している観測結果が、このエッセイ評論のストーリーに一致していることを指摘します。私たち地球上の生物は、宇宙で孤独ではありません。

Essay 55
無数の惑星に生命が誕生

2012年6月10日(修正2017年6月19日)

地球型惑星は至るところに存在

habitable zone
最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリを周回する惑星の想像図(ESO, M.KORNMESSER提供)

ビッグバン後の宇宙から生物に至るまでの壮大な進化を見てくると、次のような結論を出さざるを得ません。

宇宙に存在する原子の大部分は、ビッグバンのときに作られた水素原子です。この水素原子は、今でも宇宙に存在する原子のうちの75%を占め、圧倒的な存在感を示しています。
水素原子と酸素原子から、地球型生命の誕生と維持に必須な水が作られます。宇宙には水(氷)が大量に存在しています。また、水素原子それ自体が、原子・分子レベルで、生体反応の中心的な役割を担っています。
宇宙に普遍的な物理化学反応によって作られた、宇宙空間の至るところに存在する原子や分子をもとに、惑星上で生命が誕生します。ここに奇跡が入る余地はありません。

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2016年のNASAの発表によると、宇宙には、今まで考えられていたよりも10倍も多い、2兆個の銀河(いわゆる島宇宙。私たちの銀河は「銀河系」、または「天の川銀河」と呼ばれる)が存在します。私たちの銀河系には約2000億個の恒星が含まれているので、この数を銀河の平均的な恒星数とすれば、宇宙には4X10 23 個ほどの恒星が存在します。 どれくらいの数なのか、イメージするのが困難ほどの大きな数です。
主系列星に含まれるとても平凡な太陽の周囲を、8個の惑星が回っています。太陽系誕生の過程を勘案すれば、他の恒星にも複数の惑星が随伴している、と考えるのが自然です。 それらが太陽系外惑星と呼ばれます。全宇宙の太陽系外惑星の数が、恒星の数倍になると仮定することに、大きな無理はありません。

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中心の恒星から適当に離れていて、そこに惑星があれば液体の水が存在するような宇宙空間を、生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)と呼びます。地球は、太陽系のハビタブルゾーン内に存在し、1気圧の大気中で、気温が0~100度Cの範囲内ならば、水は凍結もせず沸騰もしません。 この水が、炭素系の地球型生命を育みます。

このような惑星が存在する確率は、8個の惑星が周回する太陽系では8分の1です。今までの観測結果から、太陽系は特別な存在とは考えられません。 すると、地球型生命を育む惑星が、多くの恒星の周囲を回っている、と結論することに不都合がありません。
一歩ゆずって、地球がやや特別な存在とします。惑星がハビタブルゾーンに存在し、気温が生物の誕生に最適でも、気圧によっては水が蒸発してしまうからです。そこで、 地球のような惑星が存在する確率を、8分の1よりもはるかに小さい100分の1と見積もります。それでも、銀河系だけで、20億個の海を持つ惑星が存在していることになります。宇宙全体で4x10 21 個。「宇宙は生命でいっぱい」である可能性が、とても大きいのです。
これらの生物を、SFによく登場する、ケイ素系やイオウ系などの、おどろおどろしい異形の化け物と考える必要はありません。 宇宙空間の塵や、彗星、地球など、至る所に炭素化合物が存在するので、他の惑星の生物も、炭素から構築されたタンパク質から成る、地球型生命と考えて良いと思います。


次々に発見される地球型惑星

上の章を書いたのは、2012年6月のことでした。翌年の1月に、三鷹の国立天文台で研究に従事している、若手天文学者の講演を聞きました。テーマは、「太陽系外惑星探索の現状」でした。
その研究者は、1月に得られた、まだ公表していない最新のデータまで含めて、太陽系外惑星に関する研究結果を包括的に講演しました。

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宇宙望遠鏡ケプラー(NASA提供)
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それまでは、主に視線速度測定によって、太陽系外の惑星探索が行われていました。視線速度測定とは、恒星の光のドップラー効果を測定することによって、恒星の動きを明らかにする技法です。惑星が周囲を公転していれば、恒星の動きに変化が生じるので、随伴する惑星の大きさなどを推定できます。この技法では、地球よりも質量がかなり大きい惑星でなければ、発見が困難です。

最近は、重力レンズ効果法や、探査機ケプラーの直接観測によって、太陽系外惑星の探索が加速されるようになりました。特に、NASAが宇宙空間に設置した宇宙望遠鏡ケプラーが、威力を発揮しています。

ケプラー計画では、最終的には、太陽系周辺の10万個以上の恒星を調べます。望遠鏡による直接観測には短所があり、地球よりも小さな惑星の観測は困難です。中心星から遠く離れたところに存在する、巨大惑星が主に発見されます。講演があった2013年1月までに、2740個の太陽系外惑星が確認されました。2017年5月の時点で、この数が4496個に増えました。
2740個の太陽系外惑星のうち、約50個の惑星が、ハビタブルゾーンに存在しています。観測された惑星の約2%に当たります。けれども、地球程度、あるいは地球よりも小さい惑星の発見が困難な状況を考えると、ハビタブルゾーンにある惑星の割合は、間違いなくこれよりも大きくなります。

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ケプラー計画でのもう一つの重要な発見は、各恒星が、少なくとも1個の惑星を持っているということです。 太陽系誕生の歴史を考慮すると、全ての恒星に惑星が随伴しているのは、当り前のことと考えられます。 惑星が発見された恒星のうち、少なくとも6分の1の恒星の周囲を、地球サイズの惑星が回っています。このようなことからも、太陽系が、極めて平凡な存在であることが分かります。
この割合から、銀河系だけでも330億個ほどの地球サイズの惑星が存在することになり、全宇宙では、その2兆倍という膨大な数の地球サイズ惑星の存在が、示唆されます。

2016年に、イギリスの研究チームが、NASAの観測結果を裏づける研究結果を発表しました。 太陽に最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリの周囲を、地球サイズの惑星が回っているのです(最初に示した想像図)。軌道がハビタブルゾーンに入るので、液体の水の存在が予想されます。 この観測結果も、地球型惑星がどこにでも存在することを示唆しています。

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恒星トラピスト1を回る惑星の想像図(NASA提供)

2017年に、NASAが、 地球から39光年離れたところにある恒星が、地球類似の惑星7個を持つことを発見し、Natureで発表しました。7個の惑星の大きさは、地球の0.8~1.1倍と、地球とほぼ同じです。少なくとも3個の惑星(上図のd, e, f)に、液体状の水が存在している可能性があります。

この発見からも、海を持つ惑星が、宇宙ではありふれていることを予想できます。 ここまで述べてきたように、地球型生命は、海があれば、奇跡などがなくても自然に誕生すると考えられます。

太陽系外惑星の表面の物理化学的状態を、直接に観測できるような状況になりつつあります。 高度な文明を持った高度知的生命体が、惑星に人工的な現象を引き起こしていることを、直接の観測によって証明できる日が、やがて来ると思われます。

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講演した研究者への私の質問。 「地球型生命のもとになる水と炭素化合物は、星間雲の中で大量に作られています。今ここに私たち人類が存在しているのは、偶然ではなく必然ではないでしょうか?」
注意深い研究者の答。 「そういう意見もありますが、別の意見もあります」

Hawaii tmt
ハワイ山頂の次世代TMT望遠鏡(TMT天文台コーポレーション提供)

銀河系中心部には、私たちの太陽系が存在する銀河系の腕の部分よりも、古い恒星の数がより多いと予想されます。即ち、もしもそこに地球型惑星があれば、その惑星の年令は地球よりも古く、人類よりも進化した高等知的生命体が住んでいる可能性があるのです。

そこで私の質問。 「銀河系中心部の恒星が持っている惑星の数は、太陽系周辺よりも多いのか少ないのか、予想できますか?」
慎重な研究者の答。 「その質問に答えるためのデータを、持ち合わせておりません」

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ハワイに、口径30mの次世代望遠鏡が建設されています(TMTプロジェクト)。 日本、アメリカ、カナダ、中国、インドの国際協力のもとに、プロジェクトが進められています。この望遠鏡が完成すれば、太陽系外惑星の探索にも大きな威力を発揮します。


光速では遅すぎる通信速度

ここまで書いてきたように、知的生命体が住んでいる太陽系外惑星は、とてもたくさんあると考えられます。 もしも多くの惑星に、私たちのような生物が住んでいるならば、その中には高度な文明を築き上げた高度知的生命体が、いるはずです。今までに、私たち人類は、なぜコミュニケーションを取れていないのでしょうか?

DNA末端にテロメアと呼ばれる部分があり、細胞分裂のたびに短くなります。それから計算をすると、医療がどのように進歩しても、私たちの寿命は120歳程度までしか伸びません。 世界最長寿の人の寿命が、これくらいです。
進化の時間スケールからは、極端に短い寿命です。「アッ」という間に世代が交代していかなければ、急激な環境変化に種として対応できない、と考えられます。
同じような宇宙環境下で誕生した他の惑星の生物も、遺伝的に規定された寿命は、とても短くなっているはずです。そうでなければ、進化することが不可能になります。

100歳程度の寿命しかない生物にとって、宇宙空間は余りにも広大です。太陽に最も近い恒星 (アルファ・ケンタウリとプロキシマ・ケンタウリを含む3重連星) でさえも、4光年余も離れています。 現在の技術で何とか製造が可能な、 太陽系脱出速度の秒速30kmを出せる宇宙船でも、到着するまでに4万年以上かかる距離です。地球型生命にとって、星間飛行をするのは極端に困難なのです。

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遭遇はできなくても、コミュニケーションはできるかもしれない、と誰もが考えます。 他の知的生命体から発信された電波を受信する努力が、続けられています。あるいは、人類が発した電波が、他の惑星に住む高度知的生命体によって、受信される可能性を考える人がいます。

ここでも、宇宙空間が余りにも広大であることを、認識しなければなりません。 100年前に人類が初めて発した電波は、まだ100光年先までしか届いていません。しかも、3次元空間を進む電波は、距離の3乗に比例して減衰します。高度知的生命体が住む他の惑星に到達しても、電波は、宇宙の最もかすかなノイズの中に埋もれてしまいます。
逆も真です。 他の惑星に住む高度知的生命体が発した電波を、人類が受け取る可能性は極端に小さい、としか考えられません。

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人類よりももっと文明が進んだ高度知的生命体は、コミュニケーションに原始的な電波を使っていないかもしれません。広大な宇宙空間を考えると、その可能性がとても大きくなります。
そのような 高度知的生命体は、この銀河系だけでも、無数の惑星に地球型生命体が住んでいることを、知っていると思います。地球に人類が存在していることを知っても、特に関心を持たないかもしれません。何しろ、人類程度の文明を持つ地球型生命体は、恐らく数限りなく存在しているのですから。

電波は光速でしか空間を伝わらず、 宇宙が膨張を停止していると仮定しても、電波媒体で情報を地球から宇宙の端まで送ると、到達するのに465億年もかかります。 実際には、宇宙の端は光速の約3倍で遠ざかっているので、電波を通信に使ったのでは、情報が宇宙の端に到達することは永遠にありません( エッセイ41「外側から見た私たちの宇宙」 )。

電波(光も)は、宇宙規模の通信媒体としては明らかに不適当です。光速の媒体を使ったのでは、とても近い50光年先の惑星上の知的生命体とも、発信者の存命中にコミュケートできません。けれども、時間の流れを全く気にせず、瞬時にコミュケートできる方法があります。


量子もつれで他の惑星と瞬時に交信

アインシュタインは、量子の非局所性という概念で示された量子もつれに、拒否反応を示しました。アインシュタインによると、「神はサイコロ遊びをしない」。大御所アインシュタインの批判によって、非局所性の議論が物理学の表舞台から消えました。量子もつれが真剣に議論されるようになったのは、アインシュタインの死後でした。 特殊相対性理論が発表されてから100年ほど経ってから、量子もつれが量子力学の主要なトピックの1つになったのです。

SF用語のテレポテーションは、量子もつれと同義語です。SFでは、テレポテーションで人間が空間を瞬間移動します。 エッセイ54「時空を超える量子ネットワーク」 で、この量子もつれを解説しましたので、ぜひお読みください。量子もつれはとても奇妙な物理現象ですが、量子コンピューターは量子もつれによって動作するので、既に実証された現象と言うことができます。

quantum entanglement
物理法則を破たんさせる量子もつれ

2つの量子が、数万光年離れていても、数億光年離れていてもかまいません。両量子の特性を決定する物理場が、状態の重ね合わせという現象によって、瞬時に同期します。
量子もつれは、瞬時に空間を跳躍するだけではありません。特定の量子状態を未来へ瞬間転送できることを、物理学者が数学的に証明しました。

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この量子もつれを使えば、宇宙のどこに住んでいる高度知的生命体とも、情報のやり取りを瞬時にできるだけではありません。未来の宇宙や過去の宇宙の生命体とも、コミュケートできるようになります。SF的に発想すれば、未来や過去の自分自身と会話することもできます。 それが、必ずしも幸せをもたらすとは限りませんが。。。

大量の情報を送信するには、数多くの量子の量子もつれを、思うように制御しなければなりません。これが極端に難しいのです。不確定性で特徴づけられた大量のもつれを、送信者の意図通りに制御する方法は、確立されていません。 受信者側にも同じ問題があります。
制御されていない電子の集団を通信に使えば、通常の電子物理場の特性を維持したまま、電波が光速で空間を移動し、情報を送り届けます。これが、電波を利用した通常の物理的通信になります。光を使用しても同様です。

物質が大きくなると、特定の量子状態が壊れやすいという問題があります。実験室レベルでは、原子までの瞬間移動にしか成功していません。 あなたや私が、テレポテーションで他の惑星へ瞬間移動することは、今の段階ではまだ夢に過ぎません。

大量の情報を伝達するために、大量の量子もつれを制御することだけが、難しいのではありません。 半減期なしで量子もつれが突然に消える現象が、困難をもたらします。通常の物理現象では、このようなエネルギー場の突然死はあり得ません。
量子もつれが高次元時空を介した現象ならば、突然死を容易に理解できます。ただし、もつれた量子が高次元時空へ消失するならば、私たちには突然死を止める方法がありません。逆に、量子もつれが、高次元時空から突然に現れる可能性があります。 このもつれの誕生も制御不能です。

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人類よりも、100万年ほど先へ進化した高度知的生命体がいるならば、量子もつれを完全に制御しているかもしれません。 この程度の進化の時間差は、宇宙スケールからは瞬時に過ぎません。すると、 量子もつれをコミュケーションだけではなく、空間の移動に使っている高度知的生命体が、無数に存在することを予想できます。他の惑星上の生命体ばかりではなく、私たちの未来の子孫が、このようなことをやっている可能性があります。

彼らが私たちと接触できるとしても、接触に興味がなければ、彼らの存在に関して、私たちには何の兆候もつかめないと思います。あるいは、私たちが既に兆候をつかんでいたとしても、それを高度知的生命体の存在の表象とは思わず、自然現象の一部として理解している可能性があります。 後者の可能性が大きいのです。
石器時代人には、飛行機やテレビが、何を意味するのかを理解できません。 技術や文明の進歩が加速しているので、100万年後の人類と現代人の差は、石器時代人と現代人の差よりもずっと大きいことは、間違いありません。


他の知的生命体を夢見る

habitable planet
多くの惑星で自然に誕生する地球型生命

上に書いたことが事実としても、私たちは悲観する必要がありません。夢を見ることができます。

肉眼で見える6等星までの星の数は、全天で8600個です。これは南北両半球で見える星の数なので、夜に空を見上げると、半分の4300個を見ることになります。

NASAの発表によれば、これらの星の全てに惑星が随伴しています。 NASAの結論から計算すると、地球サイズの惑星を持つ星は、夜空に見える星のうち、720個ほどになります。 ハビタブルゾーン内に存在する惑星を持つ星は、約90個です。中心星に近い、地球サイズの惑星の発見は極めて難しいので、実数がこれを上回ることは間違いありません。 ここまで述べたように、地球上の生物の誕生に奇跡が入る余地はありません。他の地球型惑星にも、生物が誕生していると考えるのが自然です。

生物の進化が当り前ならば、頭上の星のうち、数百個の星の周囲を回る惑星上で、知的生命体が、私たちが見ている夜空を見上げ、自分たちに似た他の知的生命体に、思いをはせていると思います。

上の写真で示した地球の風景は、地球から数十光年離れたところに存在する、他の惑星上の風景と瓜二つかもしれません。 その惑星上のビーチでカメラを構えると、人類によく似た生物が、海へボートを出そうとしている写真を撮ることができると思います。

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アインシュタインが言いました。「新しい理論は自然でなければならない。無理や不自然さがなければ、その理論は真理により近くなる」と。

アインシュタインの言を待つまでもなく、 宇宙に生命体が存在する惑星は地球だけと考える天動説よりも、そのような惑星は無数に存在すると考える地動説のほうが、ガリレオ以来の宇宙観にとってより自然です。私たちは、宇宙の中心的な存在から、全くありきたりな存在になりつつあります。そのおかげで、ありきたりな他の多くの存在にいつか遭遇できるという、大きな夢を持つことができます。

<和戸川 純>

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