和戸川の思い
和戸川 純
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小保方問題の本質

2014年3月14日

1月末に、小保方晴子さんが大発見をしたというニュースが、日本だけではなく、世界中を駆けめぐりました。特殊化した(分化した)細胞を弱酸性溶液につけるだけで、細胞は先祖帰りをし、からだのどのような細胞にでもなる万能能力を獲得する、というものでした。
写真写りのいい女性だったこともあって、実験中のエプロン姿まで話題になりました。マスコミばかりか、生物系の研究者までもお祭り騒ぎに加わりました。ところが、2月中旬に、小保方さんの論文の画像の不自然さが、インターネットで指摘されました。その後の彼女に対するバッシングは、見てのとおりです。
天国から地獄へ、たった1カ月余で突き落とされた小保方さん。マスコミで有名になるのは考えものです。
研究内容をよく理解できないマスコミは、分かりやすい論文のコピーなどを問題にしています。同じ研究分野の論文は、世界中には無数にあります。小説などとは違って、表現の独創性を競うわけではない研究論文。同じような実験をやっていれば、記述は同じようになります。また、実験を長期に渡ってやっていれば、異なる時期の結果を一つの論文にまとめることがあっても、おかしくはありません。

私は、小保方さんの仕事と、少し重なる分野でも研究をやってきたので、もっと本質的なことを問題にしたい。私は、このサイトの進化論や遺伝学のエッセイ評論で、何度も次のようなことを書きました。
「細胞内の遺伝子発現、一つの細胞の機能、そして細胞が集まった生体の機能は、環境と対話をしながらとても柔軟に変化する。地球環境の激変に合わせて生き延び、進化するために、生物はこのような本質的な能力を獲得した」
からだに障害を受けると、自然に治癒します。障害は、鋭利な物体、熱、紫外線、化学物質など、多様な環境要因によって発生します。障害箇所の異常な環境下で、すでに分化していた細胞が先祖帰りをし、からだのその部位に必要な皮膚細胞、腸管細胞、肝細胞などに再分化するとすれば、理にかなっています。
弱酸性溶液で分化細胞にストレスを与えると、未分化細胞に先祖帰りをするという、小保方さんの実験結果は、とても自然です。ただし、一卵性双生児のような純系マウスを実験に使っても、飼料などの環境要因が異なれば、体内の細胞の機能が異なってしまうかもしれません。実験室で同じ条件下で実験をやっても、培養液に加える試薬の純度などが異なれば、細胞が置かれた環境は異なることになります。それで、細胞の機能が異なってしまう。
生物系の研究者にとって、再現性実験が難しいことは常識なのです。

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下げられる電気料金

2014年3月10日

企業や政府を中心にして、原発再稼動の必要性が強調されています。原発を再稼動できなければ、さらに電気料金を上げるという脅しが、電力会社から流されています。ちょっと待った。本当に料金値上げが必要なのか?
原発が動いていた2010年の日本の産業用電気料金は、アメリカの2.3倍でした(国際エネルギー機関)。現在は約3倍になっています。日本では、電力会社が独占的な地位にあぐらをかいていることが、このような価格体系をもたらしているとしか考えられません。アメリカとの極端な価格差を見ると、企業努力をすれば、日本の電気料金は、原発なしでも大きく下げられることは間違いありません。
自分たちが努力をせずに、消費者に負担を押しつけるやり方を認めることはできません。日本の電力需要は減少する傾向にあり、人口減少や省エネ技術の発達を考えると、今後需要はさらに減っていきます。利益を維持するために、減った収入を料金値上げで補おう、と電力会社は考えているのではないか?

私が住んでいるマンションでは、東電からオリックス電力へ配電元を変えることにしました。東電とは各戸が個別契約をしています。オリックス電力は、大口契約者として、マンション居住者に代わって東電と契約します。マンションにオリックス電力が変圧器を設置し、各戸へ配電します。オリックス電力が、スマートメーターを無料で各戸に取りつけます。
この方式で、マンション全体で7~8%の料金削減が可能になります。オリックス電力が中間マージンを取っていても、これだけの値下げができるのです。東電が直接にこの方式を取れば、もっと値下げができます。特に、大口契約の産業用電気料金がアメリカの2~3倍にもなるので、東電の企業努力によっては、原発なしでも料金の大幅な値下げが間違いなく可能です。

なお、太陽光パネルの価格はヨーロッパの2倍にもなり、日本における価格の高さに、EUの関係者が驚いています。再生エネルギーのコストも、企業努力によって大きく下げることができます。

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アマゾンからさらに出版予定

2014年2月19日

昨日、「サイバー世界戦争の深い闇」の第2版を、アマゾンから発売しました。第1版発売後約1カ月で第2版発売です。電子書籍関連の技術進歩を取り入れると、こんなことが起こります。

アマゾンから電子書籍を出版すると、著者に価格の70%の印税が入ります。紙の本ならば普通は10%です。さらに、紙の本を自費出版すれば、100万円以上の出費になります。
電子書籍を自分で作れば、出版のためのコストは全くかかりません。ただし、この本作りはそう簡単ではありません。

電子書籍の基本形式はウェブ・サイトと同じで、HTMLといわれるものです。インターネットのすべてのウェブ・サイトが、HTML言語で構成されています。すなわち、ウェブ・サイトを作ることができる人は、電子書籍を作るために自分の経験を生かすことができます。
ただし、話はそう簡単ではありません。電子書籍を見るためのプラットフォームは多種多様です。アップル、アマゾン、その他のタブレットの画面サイズが異なるばかりか、HTML言語の使い方が異なるのです。
HTML言語側の問題として、文章だけの本(小説など)や画像だけの本(写真集、漫画など)は、比較的簡単に電子書籍を作ることができます。けれども、私の「サイバー世界戦争の深い闇」のように、イラストが文章の中にちりばめられている本の作成には、多くの困難をともないます。作成用のソフトを変えると、見え方が変わってしまいます。異なるタブレット間で、期待したような見え方にするのは困難です。
特に、タブレットを縦にしたり横にしたり、画面サイズを大きくしたり小さくしたりしても、著者の意図通りにすべてを表示できるリフロー型の本の作成は、極めて困難です。画面のレイアウトを固定してしまう固定型のほうが、安定した電子書籍を容易に作ることができます。
ということで、「サイバー世界戦争の深い闇」の第1版はリフロー型でしたが、第2版は固定型にしました。こうすることによって、プラットフォームとは無関係に、私が期待するような見え方にすることができます。ただし、見え方に柔軟性はありません。

この固定型を作るのにも、大変な努力が必要でした。現在、電子書籍の形式として、ePub2という古いものと、ePub3という新しいものが使われています。最もいい結果を得るために、いくつかのソフトを使ってみました。多くの試行錯誤の結果、次のやり方で最良の結果が得られました。
まず、ジャストシステム社のワープロソフト「一太郎」で、基本的な原稿を調整しました。それを固定型ePub3形式で保存。さらに、Sigilという電子書籍作成に特化したソフトで、細かい調整を行いました。
こうやって、文章とイラストが入り混じった、構成が最も難しい電子書籍を作る技術をマスターしました。この経験を生かして、世界最大の電子書籍販売会社アマゾンから、さらに何冊かの本を発売する予定です。

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和戸川渾身の1冊アマゾンから発売

2014年1月25日

電子本「サイバー世界戦争の深い闇」が、本日アマゾンから発売されました。時間と労力を降り注いだ、私の渾身の1冊になりました。
コンピューターやインターネットの発達と表裏一体の関係にある、不正プログラム・ウイルス(マルウェア)の進化の様子を述べました。放射性元素や遺伝子の発見・研究・応用の歴史と重ねながら、社会への功罪の視点から、文明史観に立って情報インフラの歴史を考察しました。

最近のサイバー攻撃のほとんどは潜入型なので、攻撃されたネット・ユーザーの大部分が、攻撃されていることに気づきません。個人だけではなく、強固なセキュリティで防御されているはずの、金融機関などの企業や政府機関(ホワイト・ハウス、ペンタゴンなど)も、容易に潜入されてしまうばかりか、目に見える被害が出るまで潜入の事実に気づきません。結果として、情報流出、金銭窃盗、インフラ破壊などの深刻な被害が多発しています。
アメリカ、中国、北朝鮮などが、何万人から何十万人単位の要員からなる、強力なサイバー部隊を持っています。しかもサイバー軍事力は急速に強化されています。

社会に入り込んでいる、コンピューター・ネットワークの高機能化と人工知能(AI)化を、グーグル社などを例にあげながら考察しました。人間の歴史が、全く新しい発展段階に入ったことは間違いありません。個人としてこのパラダイム・シフトにどう対応すればいいのかを、明確にしました。
私たちの周囲で起こっている目に見えない変化を知るために、ぜひこの1冊をお読みください。

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キムタクの実家の犬に遭遇

2014年1月8日

エッセイ23追記に書いたように、キムタクの実家が近くにあり、犬のハッチを連れて散歩しているキムタクのお父さんに、時々出会います。けれども、最近は散歩の時間が異なってしまい、木村さんに出会うことはありませんでした。

一昨日に、久しぶりに木村さんではなくハッチに会いました。ハッチを連れていたのは、エッセイ11に書いた、今住んでいる街でモンタの最初の友だちになった、北海道犬ホクの飼い主でした。ホクはすでに亡くなりました。木村さんは足の骨を折ってしまい、近所に住んでいるホクの飼い主に、ハッチの散歩を頼んでいるのです。
ハッチはとても喧嘩っ早く、いろいろな犬と問題を起こしています。ホクの飼い主は、ハッチがラッキーも攻撃すると思い、最初から距離を保とうとしました。ところが、ラッキーとハッチは相性が合い、初めて会ったときからじゃれあったのです。そのことを話し、ラッキーをハッチに近づけると、ラッキーは尻を高く上げた「さあ遊ぼう」の姿勢を取りました。ハッチも満更ではなく、尾を振ってラッキーに鼻をつけたのです。
ホクの飼い主は安心すると同時に、とても驚きました。ハッチとこんなに気の合う犬を見たことがなかったのです。それでいわく、「ハッチはヤクザだ。ハッチと気が合うラッキーもヤクザかも」。
許容力は明らかにラッキーのほうが大きく、ハッチが木立の中の何かに興味を示しているときに、ラッキーがちょっかいをかけると、少し怒ったのです。ラッキーはハッチとじゃれあいをしたかったけれども、出会った場所が公園ではなく道路だったので、そのまま別れました。

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バブルに突入したアメリカ株

2013年12月25日

リーマン・ショックでボロボロになったアメリカ市場が回復しました。シェール革命で安いエネルギー源を得ただけではなく、ITを中心にした先端技術が、アメリカ産業を牽引しています。

FRBが、今まで市場に大量のマネーを流していました。この金融緩和の量的縮小を、今月から始めました。市場に出回るマネーが縮小すれば、普通は株価下落の原因になります。ところが、今回は逆に株価を押し上げました。
緩和縮小の理由は、FRBが景気拡大に確信を持ったためでした。投資家心理が悪化していると、いろいろな要因のすべてを株価下落に結びつけてしまいます。けれども、投資家心理が良好ならば、何でも株価上昇に結びつけてしまうのです。緩和縮小が株価上昇に結びついたことは、投資家心理が極めて良好で、さらに大量のマネーが株式市場へ流れ込むことを示唆しています。

アメリカの株価指数ダウ・ジョーンズは、この2年間素直な右肩上がりになっていて、史上最高値を更新しています。2年前よりも約35%、1年前よりも約25%も上げています。分野別に見ると、ITやバイオ医薬品関連の企業の株価上昇が、特に顕著になっています。3Dプリンティングという言葉が、メディアで踊っています。この技術が、これからの製造業の中核技術になります。このような先端技術の研究と応用では、アメリカが群を抜いています。3D技術の代表的な企業は3D Systemsで、2年間の株価上昇は約9倍、1年間で約3倍になっています。
総合的な株価指数と業績が良好な企業の株価を見ると、各種指標(チャート)が、とても落ち着いていることが分かります。過熱の状態にはないので、上昇トレンドが継続すると思われます。即ち、右肩上がりが継続している株価は、既にかなり高くなっているにも関わらず、更なる株価上昇を見込んだ投資家が、大量の投資マネーをアメリカ市場に注いでいることを、示しているのです。
アメリカの景気が拡大すれば、やがて他の国々へも影響を及ぼし始めます。世界的な景気回復の兆しが出てきたと考えられます。

以下の私のエッセイを参考にしてください。
エッセイ4「セリング・クライマックス」
エッセイ7「不況でも年7%の利益を上げる投信」
エッセイ19「アメリカに口座を開いて世界へ投資する方法」

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女性の鋭い観察眼

2013年12月16日

先日、マンションのインターフォンの前に立っていた小学2年生の女の子が、いたずらの被害にあいました。後から近づいてきた男にスカートをめくられたのです。この子は、とても怖い思いをしました。
けれども、女の子は男の子と違って、常に鋭く人間観察をしています。とても怖い状況下でも、冷静を保っていることには驚きます。この子は、怖くて逃げながらも、男の特徴を次のように把握していました。「身長が約170センチの大人。赤っぽいチェックのシャツを着ていて、帽子やメガネは身に付けていなかった。イヤホンをしていた」。
警察に連絡し、防犯カメラの映像で男の人相の確認をしました。

妻の知人の中年の女性が、ピース・ボートで、3ヶ月間世界一周のクルージングに行ってきました。3ヶ月も休みを取れる人は主に退職者です。このクルージングの参加者にはシニアが多く、その中には「独身の男女」がかなりいました。他に行くところのない狭い船の中で、3ヶ月間も毎日顔をつき合わせていれば、恋が芽生えても不思議ではありません。既婚の知人は、「独身の男女」の人間関係にとても興味を持ち、しっかりと観察してきました。こんな人間観察は、いささか時間をもてあましている女性には、とてもうれしいのです。
シニアの女性は、コーヒーを飲みながらおしゃべりをすれば大満足。おしゃべりが済むと、一人で部屋へ帰りたがります。けれども、シニアの男性はそうはいきません。男性は、少しでもより親密な関係に入りたくて、涙ぐましい努力を続けるのです。
70才代の女性と80才代の男性の様子がおかしくなったので、知人の好奇心は最高潮に達しました。知人は、この80才代の男性の行動と心の機微を、細かく話してくれました。シニアの恋は成就しました。シニアの二人は帰国してから結婚したのです(エッセイ37「海外人間模様」に、オーストラリア人シニアの恋について書きました。そちらも読んでください)。

私の妻を含めて、女性はとても人間観察が好きで、得意です。そんな女性を観察するのが私は好きです。同じ男性の思考はかなり読めるのに対して、女性の思考は読みにくく、観察中に驚きがたくさんあることが、女性観察をおもしろくします。女性が人間観察を好きな理由とは、かなり異なります。

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アメリカ謀略仮説

2013年12月7日

秘密保護法案が参議院でも可決。下に書いたアメリカの動きについての私の推測を、具体的に書いておきます。これは私の純粋な仮説です。公務員から秘密情報は受け取っていないことを、政府機関の皆様にお断りしておきます(!!)。

スノーデン告発後に、オバマがドイツのメルケル首相などに、今後決して電話の盗聴をしないことを約束しました。NSAの活動に厳しい制約が加わったのです。また、NSAの手口が公にされたことによって、他国が、アメリカの情報収集システムに対する効果的な防御網を張り巡らしたことが、考えられます。
NSAが主導しているといわれる、アメリカ政府が存在さえも認めていない超極秘諜報システムに、エシュロンがあります。このシステムのメンバーは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどのアングロサクソン諸国です。世界中の大使館や軍事施設に傍受システムを持っていて、1分間に300万の通信を盗聴できる、世界最大の盗聴システムです。 無線通信や海底ケーブルなどによる有線通信など、あらゆる種類の通信を傍受できます。

小泉元首相の時代に、アメリカが、日本をエシュロンに加える検討をしました。しかし、日本の守秘能力に対する疑念がアメリカ側にあったことや、日本国内で反対意見が出たこともあって、日本が「名誉アングロサクソン」になることはありませんでした。
今、日本をエシュロン・メンバーにする意向をアメリカ政権が持っても、不思議ではありません。日本が参加することが、NSAの活動の制約を打ち破る一つのファクターになります。世界各国が、アメリカの情報収集活動は警戒しても、日本にはほとんど注意を向けないからです。「非アングロサクソン」の日本がメンバーに加わったことを公表しなければ、日本の参加はとても有効に働きます。

そして、重要なチャイナ・ファクター。地理的に中国に近い日本。人種的に中国人と見分けがつかない日本人。対中国の情報活動において、アメリカよりも有利な立場に日本が立つことができます。日本にとっても、強大になる中国に対抗するために、アメリカの情報世界戦略に組み込まれることは、大きなメリットになります。

私の仮説が真実ならば、秘密保護法を持ち出した真の理由を、安倍が述べることはありません。秘密保護法は首相にも適用されます。

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秘密保護法案の裏側

2013年12月6日

安倍政権は、「今なぜ、この特定秘密保護法案が早急に必要なのか?しかも、議論をする時間を封じてでも」という点について、説明をしていません。人間がやることには完璧はありません。表に出ている種々の状況を考慮すれば、当事者が隠したい裏側の真実が見えてきます。

この法案提出の背景を、私は次のように推測します。
6月に、元CIA職員のスノーデンが、アメリカの極秘情報機関・国家安全保障局(NSA)の活動を暴露しました。これがアメリカの世界戦略に大打撃を与えました。NSAは、職員や関係者の秘密保持を確実にするために、以後心理的・技術的な種々の対策を打ち出しています。
これは、NSAというアメリカの一政府機関だけの問題ではありません。アメリカから監視・盗聴を広範に受けていたことを知った各国政府が、アメリカの世界戦略に非を唱え始めました。アメリカは、世界戦略の一環である情報活動の全体的な見直しを始めた、と考えるのが理にかなっています。
安倍政権は、10月に唐突にこの法案の閣議決定をしました。その後は、話し合い無視のごり押しが続きました。政権幹部がチラッと言っています。「秘密を守るシステムが日本になければ、重要な情報を海外からもらえない」。このような言葉に、有無を言わせない、アメリカからの強力な圧力を感じます。10月に閣議決定というタイミングも、アメリカの世界情報戦略再構築の一環として、日本への圧力があったことを思わせます。
安倍首相は、以上のようなアメリカの圧力を口外できません。アメリカの極秘の情報戦略に触れることになるからです。

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欧米系男性は女性にやさしいのか?

2013年11月27日

先日、某所(「某所」が多くてすみません)で某女性(またもや「某」!)が私に言いました。「ヨーロッパ系の男性は、エレベーターに乗るときには女性を優先するなど、女性にやさしいですよね」
この女性は外資系企業で働いているので、ヨーロッパ系男性の生態をかなり見ています。自分の印象を、私に補強してもらいたかったのだと思います。
でも、私は本来は科学者。自分が知っている客観的な事実しかいえません。エッセイ13「オーストラリアと日本の夫たち」で書いたように、ヨーロッパ系オーストラリア人の夫の中には、とても細かいところまで妻を厳しく管理する人がいます。

先日、私のマンションで、「夫を家庭で働かせる方法」という、奥様方向けのレクチャーがありました。自治会主催だったので、このレクチャーの準備をした男性役員が、他の役員に、「AさんやBさんは家事を手伝っていますか?」と聞くことがありました。動揺したAさんとBさんが、「ゴミ捨てを手伝っています」とか、「家のカギをいつもポケットに入れています」というような、どうでもいい答えを発しました。
日本人男性は、欧米系男性に比べて、こんなところがとてもヤワです。欧米系男性は、こんな質問には動揺しません。家庭内で妻がやる仕事と自分がやる仕事は、夫がきっちりと決めていて、他人に何をいわれようとも変えることはありません。

アメリカ人と結婚した日本人女性がアメリカへ渡ると、サイフを握っている夫に、毎日の買い物の内訳を細かく説明して、夫から小銭をもらうことになります。日本人女性にはこれが耐えられず、離婚して帰国するという話を聞きます。日本では、家計を握り子供の教育を妻が決めるのは当たり前ですが、海外ではこれが非常識になることがあるのです。
外国人と結婚した日本人女性のドキュメンタリーを放映している、テレビ番組を見ている人は、欧米の夫が家庭内で最大の権力者であることを、よく理解していると思います。

さて、最初の女性の質問に戻ります。私は、民族性を考えるときには、その民族が置かれていた歴史的な環境を考慮しなければならない、と考えています。
農耕民族だった日本人。農耕に必要なのは闘争心ではなく、忍耐力です。農耕民族においては、女性と男性の地位は基本的に同列になります。日本では、武力で社会が再構築された戦国時代以降に、男性優位の社会が築かれました。しかし、それ以外の時期には、今の普通の家庭を見れば分かるように、女性が中心になって諸事をきりまわしていたのです。
狩猟あるいは遊牧民族の社会では、男性が、社会を存続させるための仕事に、圧倒的な責任と権限を持っています。欧米の男性にとっては、女性は、肉体的にも能力的にも男性よりも弱い存在になります。それで、エレベーターには先に女性を乗せても、家庭では夫が家計を握るというような生活様式が、できあがったのです。

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過去への旅

2013年11月25日

このところ過去への旅(Back to the Past)が続いています。
5月に、フランスのレンヌに住んでいるチェコ人を訪問しました。昔からの友だちで、久しぶりに会っていろいろな思い出話に花を咲かせました。レンヌからモン・サン=ミシェルまで、車で2時間しかかかりません。

6月には、大学の同窓会があり、久しぶりに参加しました。社長や教授といういかめしい肩書きがつくようになった昔の悪友たちは、そんな肩書きがつくようになった理由が分からないと、互いを冷やかしあいました。
10月に、中学の同級会があり、名前と顔が一致しない元級友を前にして、「こいつは誰か?」というクイズに挑戦しなければならなくなりました。中学の同級会では初恋の話で盛り上がり、変貌してしまった初恋の人を前にして、特に男性陣が複雑な感慨に浸ったのでした。
先日、研究所の同窓会(?)がありました。この研究所は閉鎖されてしまったので、他の同窓会と同様に昔話が中心になってしまいました。元同僚が若くして亡くなったことを知り、ショックを受けました。

来月は、久しぶりに親類縁者の集まりがあります。いとこ同士が、子供の頃の話で盛り上がることになりそうです。
過去から現在へ、そして現在は未来の過去になっていく。時間の流れは不思議ですね。

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対中国で必要な権謀術

2013年10月24日

世界の政治・外交・軍事に関して、いろいろなところで議論をします。まるで中国が陰で世界を動かしているかのように、話の中にいつも中国が入ってきます。中国の存在感が圧倒的になっているのです。中国に関する論評は人によっていろいろ変わりますが、全てに共通しているのは、視点が外側からになっていることです。中国から押し寄せる脅威、それに対して軍事的・経済的な反撃をどのようにやるのか、というところに収束します。

隣国の日本人には、もっと中国の権力内部へ手を伸ばすような権謀術策が、必要です。中国には親日的な政治家から反日的な政治家まで、幅広くいるはずです。親日的とはいえなくても、権力の上部へ登りつめれば、日本にとって好都合な政治家もいるはずです。
まず注意深く観察・分析をして、政治家を分類します。次に、親日的政治家と日本にとって都合のいい政治家が、より上の権力を握るためには、日本が何をすればいいのかを考えます。ただし、日本がやるべきことは、特定の政治家を露骨に支援するものになってはいけません。日本からの支援を受けている、あるいは日本が好意を持っていることが分かれば、中国の政治家にはマイナスになります。特定の政治家とは関係がないような形で、支援のための政策などを打ち出すことが必要になります。
日本にとって都合の悪い政治家に対しては、逆のことをやります。

権謀術策が苦手な日本人には、上のようなことをやるのは困難ですが、隣国中国の動きが経済・外交・軍事に大きな影響を与えるのですから、この程度の権謀術策の努力をすることは当然、と考えたほうがいいのです。これで失敗したのが野田前政権です。胡錦濤前主席は、マスコミの報道を裏読みすると、かなり親日的だったようです。
2012年9月9日に、ロシアのウラジオストックで開催されたAPEC会場で、胡と野田が立ち話をしました。このときに、野田は尖閣国有化の話をしなかったのです。その2日後の11日に、尖閣国有化の閣議決定をしてしまいました。これが、胡に対して計り知れないほどの打撃を与えたことは、容易に想像できます。胡にとっては、日本に対して強硬な姿勢を取る以外に、選択の道がなくなりました。日本にとって不都合な現実を、日本人自身が作ったことになったのです。

「サイバー戦争」の闇はとても深い。「サイバー世界戦争の深い闇」の執筆に時間がかかりすぎて、他の創作ができなくなっています。

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オス(男性)とメス(女性)の浮気

2013年10月14日

某所で話をしていて、こんなことを言う男性がいました。「男の本性を考えたら、電車の中で女性に触るなどの痴漢行為をするのは当たり前。ストーカーとしてつけねらっていた女性を殺しても、不思議ではない」。その場の話し合いの雰囲気が余りにもリラックスし過ぎていたこともあって、冗談半分に言った言葉です。もっとも「冗談半分」ならば、あとの半分は「本音」ということになります。この男性は、その場にいた女性からひんしゅくを買っていました。この言葉を「完全な冗談」にするために、私が発言しました。「女性の皆さん、今後はAさんと一緒には決して電車に乗らないようにしましょう」。
実は、上の男性の言葉は奥が深いのです。メス(女性)とオス(男性)という二つの性が進化の過程で生まれた理由は、遺伝子を混ぜ合わせることによって、遺伝子プールに多様性を持たせ、環境の激変に適応できる子孫を残すためでした。女性と男性がいるのは子孫を残すためですから、セックスが二つの性の係わり合いで決定的に重要な意味を持つことは、当然です。しかしこれは種の保存のための本能で、個の保存のための本能も私たちには備わっています。この二つの本能をうまく使い分けながら、私たちは集団性動物として生きています。

性交渉をする相手を選ぶとき、メスにとってもオスにとっても、優秀な子孫を残せるかどうかが判断の基準になります。ただしこの基準はオスのほうが甘い。オスにとっては、相手になるメスが数多くいれば「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」で、たくさん生まれた子供の中には優秀な子もいるだろう、ということになります。どう頑張ってもほんの一握りの子供しか生めないメスにとっては、相手選びが極めて慎重になります。このあたりのことを、エッセイ10に書きました。
ここまで書けば、察しのいい皆さんにはもうお分かりでしょう。トリでもイヌでも、発情期のメスにオスたちが一生懸命に求愛の行為を繰り広げます。けれども、気に入らなければメスはつれない。気に入らないオスを受け入れることはありません。努力が報われなければ、オスたちは清くあきらめます。
男性が女性の気持ちを無視して強姦などに走るのは、人間が作った法律の枠を超えたところにある、生物の法律に反していることになります。生物の法律に従っている動物以下の存在ということになります。

メス性善説に走り過ぎたかもしれません。バランスを取るために、こんな「事実」も書いておきます。サルなどの高等哺乳動物の世界では、サル山のボスの雄ザルの目を盗んで、メスが周辺を徘徊しているオスザルと愛を交わすことが珍しくないのです。このような例では、メスが、ボス以外のオスと交わることによって、より優秀な子を生むことができると判断したことになります。遺伝子診断医の告白によると、人間の場合でも、女性が生む子の25%が夫以外の男性を父親としているそうです。そうはいっても、「正常な夫婦生活」を送っている男性の皆さんが、心配することはありません。遺伝子診断を依頼する夫の妻は、他の普通の妻よりも浮気をしている確率がずっと高いことに、疑いの余地がありません。

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フィルはノーベル賞を狙える

2013年10月13日

エッセイ28「天才を育てる楽しみ」で、私がオーストラリアの大学で研究を指導した、「天才」フィリップ・ホジキンのことを書きました。
今年度のノーベル化学賞受賞者に、二人のアメリカ人研究者がいます。タンパク質やDNAなどの生体高分子の分子間相互作用を、コンピューターでシミュレーションするモデルを構築しました。
エッセイ28で紹介したように、フィルは、免疫反応に関与する細胞や分子の間の相互作用シミューレーションモデルを、構築しています。免疫反応には、多様な細胞、高分子、低分子が複雑に関与しあうばかりか、一つの免疫細胞が反応の過程で機能の異なる細胞に分化してしまいます。生体高分子のみの分子間相互作用のシミュレーションモデル構築よりも、はるかに難しい作業になります。世界のトップの大部分の免疫学研究者にとっても、想像をはるかに超えた難しい研究テーマということができます。
エッセイ28に書いた時点で、モデル構築は相当に進んでいました。このシミュレーションモデルの構築が完成すれば、免疫反応よりももっと単純な他の生体機能のシミュレーションモデル構築に、間違いなく大きな貢献をします。

私は、学生時代にフィルを直感的に「天才」と判断しました。フィルがノーベル賞を受賞すれば、この私の直感が正しかったことが、最終的に証明されることになります。ノーベル賞受賞者が出るのが当たり前な研究所で仕事をしているフィルは、ノーベル賞受賞を私ほど大きな夢とは思っていないかもしれません。

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危険な偽メールを見破る方法

2013年10月1日

私は、書籍購入でアマゾンをよく使います。今のところ、注文はありません。ところが、昨日、3通の注文確認メールがアマゾンから送られてきました。これらのメールは、アマゾンを装った偽メールです。単なる偽メールという以上に、かなり深刻に受け止めています。サイバー攻撃に巻き込まれることがないように、私が偽メールと判断した根拠を、皆さんの参考のために書いておきます。

今まで海外のアマゾンへ注文したことはありませんが、これらのメールは英文なので、海外から送られたと思われます。ただし、英文だからといって、アメリカやイギリスが発信元とは限りません。
差出人の欄に、<auto-confirm1116@amazon.com>などというメールアドレスが、表示されています。これを見て、アマゾンからのメールと受信者が誤解することを狙っているのです。ここに表示される文字列は、送信者が何とでも書けるのです。普通は、自分の名前がここに表示されるようにします。注意すべきは、差出人名の後にある <>の中です。ここに送信者のアドレスが表示されます。3通の偽メールでは、<mkiernan41@yahoo.com>などとヤフーのメールアドレスになっています。アマゾンがヤフーメールを使うはずがないので、これだけでもアマゾンからのメールではないことが分かります。
次に、宛先にもCcにも私のメールアドレスがありません。このことは、サイバー攻撃の踏み台にされたパソコンから、これらのメールが一斉に送信されたことを疑わせます。どういう経路で私のアドレスへたどり着いたのかは、分かりません。私のどのアドレスが標的になったのかも分かりません。
これらのメールには、注文確認のためと称するファイルが添付されています。しかし、注文確認のファイルにしては容量が大きすぎます。144KBもあります。この容量は、多くの遠隔操作マルウェア(ウイルス)に似ています。添付ファイルを開くと、マルウェアが私のパソコンに潜入する可能性が大きいのです。
これらのメールがとても危険らしいことは分かりますが、上に書いたように、不正メールとしては余りにも欠陥が多く、注意深い受信者にはすぐに見破られてしまいます。

もっと巧緻なのは、下に書いたウエルズ・ファーゴからのメールです。先日のメールは、9月29日までに入金をしなければ、送金を停止するというものでした。
この2日間に、さらに2通のメールが送られてきました。それらにも、保険の資料と称するファイルが添付されています。容量は136kbという危険水準にあります。差出人名はWELLS FARGOになっていて、 <>欄に示されたメールアドレスに、ウエルズ・ファーゴという文字が入っています(<sansga@WellsFargo.com.postfix.casesmaker.ru>など)。WellsFargoと大文字を使うことによって、ウエルズ・ファーゴからのメールと受信者を早合点させるようになっています。ただし、このアドレスの最後が.ruになっていることに気づく人には、効果がありません。.ruはロシアの国別コードです。アメリカの金融機関ウエルズ・ファーゴが、ロシアのメールアドレスを使うことはありません。
ロシアからは、金融機関へ多くのサイバー攻撃が行われています。私が金融機関でしか使っていないメールアドレスを入手したことなどを考慮すると、ロシアのかなり有能なハッカーが、私に不正メールを送っていると考えられます。これが今後も続くならば、金融機関に登録したメールアドレスを変えることになります。

なお、メールソフトはMozilla Thunderbirdを使っているので、Internet Explorerとは表示が若干異なります。

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Stranger is danger

2013年9月27日

オーストラリアでは、語呂合わせで覚えやすいということもあって、「Stranger is danger(知らない人は危険)」という標語を、学校や家庭で子供たちの頭の中へ徹底的にたたきこみます。それだけ、子供たちが犯罪に巻き込まれる可能性が高いということです。
インターネットの世界では、身近なところに「Stranger」が大勢います。子供ではなくても、「Stranger is danger」という標語を、頭の中に入れておきたいものです。

3~4日前から、アメリカのウエルズ・ファーゴという金融機関から、メールが何通も届いています。「送金依頼を受けましたが、あなたの口座にある資金が不足しています。大至急入金をお願いします」という内容です。ウエルズ・ファーゴには私の口座はありません。メール・アドレスをいくつか持っていて、金融機関に登録してあるアドレスを、安全のために他では使いません。なぜか、ウエルズ・ファーゴはこのアドレスを知っているのです。メールには添付ファイルがあります。
ウエルズ・ファーゴという金融機関は確かに存在しています。しかし、「Stranger is danger」と考えていい状況下にある私の選択は、このメールに全く反応しないということです。添付ファイルも開きません。

現在執筆中の「サイバー世界戦争の深い闇(仮題)」で、サイバー犯罪の手口についても詳しく述べています。出版後にこの本を読んでいただく方に、私の上の反応が最善の対応であることを、理解してもらえると思います。

134

裏庭のサイバー戦争

2013年9月13日

少し前に、知人がこんなことを言っていました。「私が住んでいるマンションに警察が来て、住民4~5人のパソコンを押収しました」
その知人には、パソコン押収の理由は分かりませんでした。現在、私はサイバー戦争の電子本を執筆中です。調べれば調べるほど、この闇の戦争が恐ろしいほどの広がりを見せていることが、分かります。
普通の庶民である私が攻撃される可能性があります(既に攻撃されているかもしれません)。私が知らないうちに、私のパソコンが攻撃の踏み台にされる可能性があります(既に踏み台にされているかもしれません)。すると、身に覚えのないことで、警察にパソコンを押収されるような事態が、起こり得ます。

サイバー戦争を科学史的に位置づけようと思い、核分裂と遺伝子の研究・開発・応用の歴史に、コンピューターとサイバー攻撃の歴史を重ねてみました。とても単純な事実が明瞭になりました。マリ・キュリーが放射性元素を発見してから約半世紀後に、最初の原発が稼動し、原爆が日本に落とされました。DNAの分子構造が解明されてから約半世紀後に、遺伝子組み換えトマトが栽培されました。最初のノイマン型コンピュータが作られてから約半世紀後に、ウェッブ(WWW)が構築され、ネットを介した組織的なサイバー犯罪が発生するようになりました。
人間社会を変えてしまう、イノベーションの正と負の側面が顕現する過程を追い、利益も被害ももたらすイノベーションの社会的な位置づけを、「サイバー世界戦争の深い闇(仮題)」で述べることにします。

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さらに深刻になる放射性汚染水漏れ

2013年9月3日

福島第一原発の高濃度汚染水貯蔵タンクから漏れた汚染水は、最初は数百ミリリットルと報道されました。ところが半月のうちに300トンになり、タンク1個だけではなく他のタンクやパイプからも漏れ出ている、ということになったのです。
東電のズサンさは驚くべきだが、この漏れ自体は「想定内」になる。拙著「地震・原発列島」で書いたように、海岸沿いの原発構造物は、塩風と放射線の影響で劣化が速く進みます。耐用年数4~5年のタンクも、塩風と汚染水からの放射線で、予想以上に劣化が早く進んでいることが考えられます。しかも巨大地震で緩んだ地盤が今も動き続けているので、これもタンクにダメージを与えます。私が住んでいるマンションは福島からかなり離れているが、地盤が動き続けているので、重いドアが入り口にはまらなくなるようなことが、今起こっています。
特に恐ろしいのは海水で冷却されている原子炉です。炉自体や遮蔽壁が破壊されているので、塩水がひび割れのどこにでも入り込むと同時に、メルトダウンした核燃料が周囲の構造物の劣化に拍車をかけます。さらに劣化が進むと、今までの地震に持ちこたえた構造物が、より震度の小さな地震でも決定的な破壊を受けることが、考えられます。

世界の目が福島に集まっています。日本は原発再稼動ではなく、福島の処理に全力を注がなければなりません。死者が出なかったから福島の事故は大したことがない、などと発言した閣僚がいました。事故直後に対応に当たった臨時工の中に、その後の行方が分からない人がかなりいます。事故で死者が出なかったと断言できる状況ではありません。

1945年から半世紀に渡って、2400回もの核実験が世界中で行われました。大量の放射性物質が大気・土壌・海洋を汚染しました。今、世界中でがん患者が増えています。その患者の何割が核実験の影響でがんを発症したのかを、誰にも正確には計算できません。しかし、人類のがんの発症に影響を与えていることには、疑いの余地がありません。人類以外の生物にも、何らかの影響を与えているはずです。深刻な影響を与えていてもはっきりとは分かりません。これが放射線の恐ろしいところです。

酷暑の今夏でさえも、原発なしで電力を十分に供給できました。原発は安価というが、ランニングコストだけはなく、地域対策・事故処理・事故が及ぼす経済へのマイナス効果・コストの計算が不可能な核燃料廃棄物処理までも含めると、極めて高価な発電になるに違いありません。全ての原発を廃炉にしたほうがいいのです。

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創ることへの思い

2013年8月25日

随分前に、「性の進化(男と女の進化)のエッセイをいつ書くのか?」、と知人から聞かれました。男と女や、オーストラリアの日常生活をテーマにしたエッセイを書くと、アクセス数が増えることはよく分かっています。けれども、仕事ではなく趣味として2つのウェッブサイトを運営している手前、人気よりも創作への自分の情熱を優先してしまうのは、致し方ありません。
その結果、宇宙論とラッキー関連のエッセイが多くなってしまいました。現在、全ての創作に優先して、電子本「サイバー戦争(エッセイ評論33では「サイバー攻撃」)で原発爆発、核ミサイル暴発」を書いています。これもクリエイターとしての情熱を優先した結果です。電子本の字数はエッセイ33の3~4倍になると思います。それだけサイバー戦争に深く切り込んだ内容になります。サイバー戦争は、関与している当事者にも全容を把握するのが不可能な状態になっています。当事者ではない私が、この闇の世界に光を当てるのは至難のわざですが、だからこそクリエイターの挑戦する心を奮い立たせます。
この電子本を市場に送り出したあとで、男と女や、オーストラリアの生活をテーマにしたエッセイを書く予定です。

アニメ創作は、軽い作品でも労力と時間をかなり必要とし、次々と創り続けるわけにはいきません。アニメは純粋に私の楽しみで創っています。時間と余裕があれば、いつでも創ることができます。

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誰にでも作れる電子書籍

2013年8月18日

先日、写真家杉山宣嗣氏の講演を聞きました。演題は「Kindleで写真集を出そう!」。講演は1回の予定でしたが、参加申し込みが多く、主催者のセルフプロモーション研究会が、急遽予定を変更して2回実施しました。電子出版で本を出したい人たちが、急増していることは間違いありません。
電子書籍の基本形式はHTMLなので、ウェッブサイトを構築できる人には、電子書籍の作成は難しくありません。Sigilなどの便利な作成ソフトがあります。
杉山氏の知人の写真家の中には、2~3日で写真集を1冊ずつ作ってしまう、猛者がいるそうです。プロの写真家は膨大な数の写真を短時間で撮ることができるので、このような猛者が現れても不思議ではない。しかし、文章や絵を創る人たちには、写真家のようなスピードで作品を生産するのは、不可能です。私は前回の電子書籍ブームの頃から本を作っています。趣味でやっていることなので出版を急ぐ必要はなく、今までに出版した電子書籍数は、12冊程度にしかなりません。

杉山氏は販売で苦労をしました。最初は電子書店だけで販売していましたが、売れませんでした。私も同じことを経験しています。アマゾンのKindleで販売するようになってから、やっと売れ始めたそうです。アマゾンは世界の電子書籍市場の約5割を握っているといいます。
このプロモーションの話が私には最も興味深かった。趣味でやっていることとはいえ、電子書籍の作成までには膨大なエネルギーを降り注いでいます。その努力の結果が市場で評価されれば、それに越したことはありません。
現在執筆中の電子書籍「サイバー攻撃で原発爆発、核ミサイル暴発」は、エッセイ33を下書きにしています。元CIA職員スノーデンの告発が、世界中に衝撃を与えました。このような最も新しい事件も考慮に入れて、巨大な闇の世界の実態に少しでも近づきたい。Kindleでの販売を考えています。

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経験したことのない大雨

2013年8月10日

一昨日から昨日にかけて、東北地方に「今までに経験したことのない大雨」が降りました。気象庁が予報で使っていた言葉です。科学的とはいえない表現をせざるを得ないほどの大雨が降る、と予想したのです。実際の大雨は、気象庁の予想を超えていました。

このような異常気象をテーマにした小説を、私の「アニメと小説の工房」に載せました。小説3「大きな不幸と小さな幸せ」がそれです。5年前に書いた作品です。「経験したことのない大雨」以外に、「経験したことのない巨大地震」、「経験したことのない巨大森林火災」、「経験したことのない海面上昇」を書いています。
この作品を書いたあとで、大震災、スマトラ島大火災、モルダビなどの海進、今回の大雨が発生しました。私は、未来を予言するために小説を書いているのではありませんが、現実が小説の後追いをしているようで不気味です。これからもさらに「経験したことのない自然災害」が発生するかもしれません。そのスケールが時とともに大きくなれば、小説の世界と同じになってしまいます。そうならないことを祈るだけです。
「大きな不幸と小さな幸せ」は、ユーモア小説のスタイルで書いています。空想の世界でイメージを楽しんでください。

129

遺伝子の退化を伴う進化

2013年8月3日

遺伝学に素人の人と話をしました。この人は、進化した生物ほど遺伝子を多く持つ、と思っていました。人類が進化の頂点にいるので、人類が持つ遺伝子の数は、他のどの生物よりも多いということになります。
人類の遺伝子数は2万2000個。動物のみならず、植物の多くも2万~3万個の遺伝子を持っています。植物の中には、人類の2倍の4万個の遺伝子を持つものがあります。
このことを話すと、この人はとても驚きました。植物の構造は、人間のからだよりもはるかに単純なので、2倍の遺伝子を持つ植物があることは、想像外だったのです。

この話はとても奥が深いのです。遺伝子の基本構造は、30億年前の単細胞時代に既に構築されてしまいました。
多細胞生物である動物も植物も、機能を分担している単細胞の集団によって、構築されています。卵子も精子も単細胞です。それら2個の細胞が融合すると、1個の単細胞になります。受精卵は、細菌が分裂して数を増やすのと同じように、子孫の細胞を増やし、最終的に私たちのからだを構成する、60兆個の細胞集団になります。
60兆個に増えた細菌の集団と異なるのは、体細胞の1つひとつが、特殊な機能だけを発現しているということです。ただし、全ての細胞が、どの機能でも担うことができる遺伝子を持っています。

進化とは、特定の環境へのより高度な適応、と考えることができます。個体レベルの進化のみならず、細胞レベルの分化でも、この原則が当てはまります。進化あるいは分化の過程で、不必要になった遺伝子の機能が停止します。人類の先祖は、ビタミンCを含む植物を食べるようになり、ビタミンCを合成する遺伝子を失いました。道具や言葉を使うことによって生存が有利になった人類。敵の襲来を感知したり、獲物を探知するための鋭敏な嗅覚を持つ必要がなくなり、嗅覚関連の遺伝子が退化しました。
進化が高度になればなるほど、特殊な遺伝子しか機能しなくなるので、適応していた環境が激変すると絶滅することになります。また、異なる環境に適応できる遺伝子を失うことによって、進化の頂点に達した生物が、それ以上進化することはなくなります。

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夜遊びが大嫌いなラッキー

2013年8月2日

夏、真っ盛りです。ラッキーを連れての散歩は、暑さを避けて夕方になってしまいます。ここで問題発生。
他のイヌと楽しく遊んでいたラッキーが、突然に「家へ帰ろう」モードのスイッチを入れてしまうのです。すると大変。家の方向に行く手をさえぎるフェンスがあれば、必死になって抜けられる穴を探し、がけがあれば高くても飛び降りようとします。ラッキーはともかく、飛び降りれば私がけがをしてしまう。
その豹変ぶりは尋常ではなく、他の人たちは何が起こったのかと不思議がります。私には分かっています。街灯が点灯する時刻になると、ラッキーは帰宅すること以外には何も考えなくなるのです。しかも、街の道路図が頭に入っているので、寄り道は全くせず、最短距離を足早に歩きます。暗闇が怖いわけではありません。家では暗くても平気です。ただ、夜に外を出歩くのが嫌いなのです。
このことをワンコ仲間に話すと、驚きながら返す言葉が、「ラッキーって、とっても分かりやすいわね。カワイイ」。
女性が使う「カワイイ」という言葉は、意味不明です。
私は取り合えず、「犬は狼の子孫なのに、ラッキーがなぜ夜を嫌うのか訳が分かりません」、と言います。
すると、「家の子供も、ラッキーのように暗くなる前に家に戻れば、とっても助かるわ」、という反応が返ってきます。
現在、ラッキーエッセイを執筆中です。長いので時間がかかっています。

127

善、悪、真理

2013年7月20日

某所で話し合っているときに、私が次のように自分の考えを述べました(以下は、2ヵ所での議論をまとめたもの)。
「哲学者や宗教者が、しばしば善、悪、真理という言葉を持ち出します。彼らがこれらの言葉を持ち出すときは、絶対的な善、悪、真理が存在する、という前提に立っています。これらの哲学者や宗教者は、自分たちがこのような概念を体現している、と主張します」
いろいろな意見を持った人たちの集まりですが、ここまではほぼ同意を得られたようです。ところが、次の意見には不満らしい表明がありました。

「哲学者や宗教者は、自分たちの主張を突き詰めて検証しているのでしょうか?善と悪の判断と真理の規定は、時代により、地域・民族・国・宗教により異なります。一人の人間を見ても、人生経験を積むと変わってしまいます。すなわち、全ての時と空間と個人を超えた善、悪、真理は存在しないのです。存在しないものを存在すると規定すれば、人間社会のあちらこちらにひずみが生じます。キリスト教徒が、自分たちが信じる善、悪、真理を、普遍的なものとしてイスラム教徒に押し付ければ、最後は殺し合いになります」
次の結論を言ったときに、厳しい反論を受けることになりました。
「善、悪、真理はあくまでも相対的なものです。絶対的なものとして、他人に押し付けられるものではありません。自分が信じる概念は自分だけのもの、他人が信じる概念は他人だけのもの、そういう現実を受け入れなければ、人間社会に平和は永遠に訪れません」

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日本政府が和戸川に反応?

2013年7月10日

作者の思いNo.109に、「まるで私の書き込みに反応したような北朝鮮の声明」と題する書き込みを、しました。似たような経験が今までに何度もあったことも、書きました。
今度は、3週間前に書いた、No.123「世界から取り残された日本」に、日本政府が反応しました(?)。
今日の新聞によると、日本に3年間滞在する技術者や企業経営者に、永住権を与えることになったのです。移民受け入れの大きな一歩になります。
けれども、世界は日本のはるかに先を行っています。オーストラリアは、技術者を中心にして、年間23万人の移民を受け入れています。日本の年間移民受け入れ数ははっきりしませんが、数百人から千人というところだと思います。人口に占める外国人の割合は、日本ではたった1.1%。OECD32カ国のうちで31番目、すなわち下から2番目になっています。

オーストラリアは資源の国というイメージが強い。けれども、マネーを持ち込む膨大な数の優秀な移民が、オーストラリアの発展に継続的に大きく貢献している、という現実があります。
オーストラリアは、500万ドル(5億円)以上を持ち込む外国人に、市民権(永住権)を即与えるという新政策を、実行に移しました。中国人を中心にして、応募者が多いようです。
さらに、年間の外国人留学生の数は、日本の13万人に対して、人口が日本の5分の1のオーストラリアで、36万人に達しています。日本では、日本政府が留学生に対して膨大な資金援助をしていますが、オーストラリアへの留学生は、ほとんどが私費留学生です。教育が、オーストラリアの3大収益源の一つになっています。

アジアを含めて、今後世界的に高齢化が進みます。若い移民の取り合いが激しくなります。日本は、オーストラリアのような国と競争して、移民の取り合いで競り勝つことができるのでしょうか?競り勝てなければ、食料までも海外に大きく依存している日本は、食糧の確保さえも困難になることを、覚悟しなければなりません。

この書き込みに、日本政府がさらに反応することを期待しています。

125

世界の情報をリアルタイムで(英語で)知りたい皆さんへ

2013年7月3日

日本時間で本日(7月3日)の午後4時に、ヨーロッパ各国の株式市場が開きました。私は、ヨーロッパ各国の株価が大きく下落していることを知りました。
その理由を知ろうと、日本の新聞社のウエッブサイトを訪れましたが、答はどこにもありませんでした。そこで、いつも最も注意深く多種多様な情報を収集するために訪れている、本国版ロイター<http://www.reuters.com/>にアクセスしました。いつものように答はそこにありました。
ポルトガルの政局混乱が、ヨーロッパ各国の株式市場下落の引き金を引いたのです。しばらくしてから、このニュースは日本語版ロイター<http://jp.reuters.com/>にも掲載されました。

他のところにも書きましたが、ロイターが無料で提供しているサービスは、驚くべきものです。日経新聞やFinancial Timesなどのウエッブサイトでは、重要なニュースは最初の2~3行しか無料で読むことができません。それ以上に記事を読みたければ、購読料が必要になります。ロイターは完全無料で、長文のニュースを誰もが読めるようにしています。
本国版ロイターには、さらに重要な無料サービスがあります。いろいろな分野における、最も重要なニュースの動画も無料で提供しているのです。英語の読解力をつけるばかりではなく、リッスニングの力をつけるためにも、趣味と実益を兼ねてぜひ本国版ロイターを訪れることをお勧めします。英語の勉強をしながら、広く深い世界の最新情報を入手できます。

124

困った時の和戸川頼み

2013年6月28日

先日、知人から相談を受けました。「手持ちのK社株が値下がりしてしまいました。損切りしたほうがいいですか?」
この知人は、株式投資で困った時にいつも私に相談します。そこまで頼られているのはうれしい限りですが、株価下落時にもうける方法までは、私は知りません。
株価が変動するのは「想定内」の当たり前なことです。この変動を長期的に使って利益をあげるのが、投資です。株価が下落した時にだけ対策を考えていたのでは、結果として損失を積み上げます。....ということを、この知人にはいつも最初に言います。

まず大局観を持つこと。どの地域、国、業種、商品に将来性があるのか?ここで基本的な投資先の選択をします。この大局観を持つために、世界情勢に常に注意を払っていなければなりません。
次に特定の企業やファンドに絞り込みます。今までの価格変動と配当金の合計(トータルリターン)から、投資候補を選び出します。私はこの5年間から1ヶ月間のリターンを考慮しています。具体的な売買は、チャートの指標をみながら行います。底で買い、天井で売る。このリズムが身につけば、株価下落は危機ではなくチャンスになります。

知人へのアドバイスは、今は売却を待つということでした。季節要因、チャート、世界情勢を考慮すると、6~8月の間に株価が底を打つ可能性が高いからです。私ならば、たとえ損失が出ても、次の小さな天井でK社株を売ってしまいます。資金はK社よりも希望が持てる株に回します。
知人は、損失を大きくしないために、購入価格から株価が5%下がった時に、自動的に損切りすることの是非をたずねました。5%下落あるいは上昇で売ることを繰り返しても、長期的な株価のトレンドがフラットならば、利益は出ません。右肩下がりの時にこれをやれば、上昇よりも下落の回数が多くなり、損失を拡大してしまいます。利益を5%あげようと思って、下落時は5%で損切りし、上昇時は10%で利益確定をするとします。長期的な下降トレンドにおいては、損切りはしばしばやるけれども、利益確定のチャンスがないので、やはり損失を積み重ねます。プロ投資家の意見をそのまま受け入れるのは、危険です。

大局的な判断が最も大事で、この判断に誤りがなければ、小さい失敗はあっても大きくつまずくことはありません。私の投資法はエッセイ評論4、7、19に書いてあります。

123

世界から取り残された日本

2013年6月19日

現在、CNN、BBC、ロイターなどの海外メディアに、もっともしばしば登場するニュースは、シリア内戦、トルコ騒乱、G8、元CIA職員が暴露した情報を含む、サイバー戦争(エッセイ評論33「サイバー攻撃で原発爆発、核ミサイル暴発」を参照)です。
政治・経済・外交・軍事には国境がなくなっています。世界の中で生き延び繁栄するためには、「世界の中における日本」という位置づけを明確にし、リアルタイムで行動しなければなりません。日本のメディアの内向き指向は、メディアが日本を没落させることを目論んでいる、と結論づけたくなるほどです。

日本の今後の繁栄の一端は、海外からの移民に頼らざるを得ないことは、明白です。その世論形成をメディアが担わなければ、世論が移民を受け入れることはありません。世界中の人たちが、夢の国日本へ移住することを望んでいる、というイリュージョンに国民がとらわれている間に、時代が大きく変わりつつあります。
海外留学を希望する世界の若者にとって、日本は魅力的とはいえません。オーストラリアにさえも、後塵を拝しています。しかもその差は、加速度的に大きくなっています。海外からの介護関係の働き手も、日本が極めて難しい永住許可条件を出している間に、減りつつあります。インドネシアなどで、希望者が募集人員を下回るようなことが起こっています、そのうちに、こちらからお願いをしても誰も来てくれなくなります。
日本の大学新卒者の1万人以上が、日系を中心にしているとはいえ、タイの企業に職を得ているといいます。日本が海外からの移民受け入れを躊躇している間に、日本の若者が海外へ移住する時代になってきたのです。移民にかたくなにドアーを閉ざしている国日本からの移民を、他の国が歓迎することは、将来的には考えにくい。

122

冷酷な国際政治・外交・軍事

2013年6月15日

ユーラシア大陸の東端の朝鮮海峡を越えたところに存在する、小さな日本列島。そんな辺境に住んでいる日本人でも、さすがにシリアで内戦が継続していることくらいは、知っています。
シリアの面積は日本の半分。人口は2000万人。2年超の内戦で、はっきりと確認されているだけでも、9万3000人が殺されました。死者は15万人を超えるという計算もあります。総人口の0.5%以上が既に殺されたことになります。この割合を日本の人口に当てはめると、60万人以上という恐ろしい数になります。
殺戮は加速されています。シリアの隣国のレバノンに地盤を持ち、イスラエルと長い間戦っているヒズボラが、シリア政府の側に立ってシリア内戦に参戦しました。劣勢だったシリア政府軍が、ヒズボラの援助を受けて攻勢に転じています。
イスラム教にはシーア派とスンニ派の二大宗派があり、歴史上ずっと争っています。シリア政権は、シリア国内では少数派のシーア派から成り、シーア派の大国イランから全面的な支援を受けています。ヒズボラもシーア派。反政府軍は、シリア国内では多数派のスンニ派です。スンニ派の強国であるサウジアラビアが、反政府軍を支援。

欧米諸国は、中近東に歴史的に大きな権益を持ちがらも、シリア内戦には及び腰でした。欧米・イスラエルと敵対関係にあるイランが後押しする、シリア政権の自国民に対する残虐な殺戮。人道主義を掲げる欧米諸国なのだから、反政府軍を援助する口実を容易に見つけられるだろうと、日本人はつい考えてしまいます。ところが冷酷な現実は複雑。
アメリカが戦っているアルカイダは、もともとはスンニ派の組織。シリアでも反政府軍に混じって、シーア派の政府軍と戦っています。軍事援助を反政府軍に与えるようにという圧力を、国際社会から受けながらも、アメリカ政府が躊躇していた理由はここにあります。
昨年8月にオバマ大統領が言いました。「化学兵器を自国民に使うことで、シリア政権は最後の一線を越えることになる」。直接的には、化学兵器を使ったならば、アメリカが軍事介入をするという意味です。うがった見方をすれば、政権側が化学兵器を使っていなかったということを理由にして、昨年8月までアメリカが軍事介入をしなかったことを正当化した、となります。
シリア政府軍が、化学兵器を昨年後半に自国民に対して使い、CIAなどの情報機関がその証拠をつかんだことは間違いないようです。ところがオバマは、声明に反してアクションを取らなかった。
6月13日に、シリア政府軍が化学兵器を使った確証をつかんだ、とオバマが突然に言いました。それで、反政府軍に軍事援助を開始するというのです。軍事援助として、対戦車ミサイルや対空ミサイルの供与、シリア空域内における飛行禁止区域の設定などが考えられています。

オバマはなぜ態度を急に変えたのか?
誰もが知っているように、アメリカ政治はユダヤロビーの強い影響下にあります。イスラエルと戦っているヒズボラが支援する、シリア政府軍が反政府軍を完全に鎮圧すれば、イスラエルにとっては状況は極めて深刻になります。隣国のシリアが、ヒズボラの絶対的な本拠地になるのです。アルカイダへ武器が渡る可能性がありながらも、オバマが反政府軍への軍事援助を決めた裏には、ユダヤロビーからの圧力があると考えるのが自然です。ユダヤ人にとっては、アルカイダの脅威よりも、ヒズボラがシリア国内で強大な力を獲得するほうが怖いのです。

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村上春樹の秘密

2013年6月12日

先月、ヨーロッパへ行ってきました。成田ーパリ間は11時間の飛行。時間があり過ぎるので、本を持っていくことにしました。そこで選んだのが村上春樹。
私は村上には特に興味を持っていず、それまでに彼の本を読んだことはありませんでした。けれどもせっかくの長旅。機中で一度村上を読んでおく気になったのです。
私の興味は、村上作品の内容よりも、村上が、日本ばかりか世界中の読者をなぜそれほど魅了しているのか、という社会学的あるいは心理学的または文化的なところにありました。もっと素直に書けば、世界中の読者に読まれる小説とはどのようなものかを知りたかった、となります。出版前から予約が殺到するということなので、メディアの宣伝が功を奏している面があることは、否定できません。しかし、宣伝だけでは世界中で読まれることはありません。世界中の人間に共通な心の琴線に触れる何かがある、と考えなければなりません。

アマゾンで購入したのは「ノルウエイの森」と「海辺のカフカ」。ところが成田の書店で驚きました。私の関心を先取りしたように、「ニューズウイーク日本版」が村上春樹の特集を組んでいたのです。勿論、この「ニューズウイーク」を買いました。
機中ではまず「ニューズウイーク」を読みました。アメリカ、韓国、フランス、ノルウエイ、中国などのジャーナリストや作家が、各々の国で大人気の村上の評をやっていました。読みやすいにもかかわらず、評者の評価は一致せず、そのことから、村上作品の傾向が漠然とながら推測できました。

「ノルウエイの森」と「海辺のカフカ」を読んでの私の感想は、以下のようになります。
ストーリーに明確な起承転結がなく、ストーリーの舞台は時間と場所を越えて、あちらこちらへ飛びます。これが読者一人ひとりの心に異なるインパクトを与えます。別の言葉でいえば、作者が意図的にストーリーをがっちりとは組み立てていないので、自分の想像の翼を自由に広げることができる余裕を、読者は与えられていることになります。これが、人生経験も生活環境も異なる、多くの国々の読者を引き付ける、村上作品の大事な要素になっています。
しかも、日本の私小説の雰囲気を残しながらも、カフカやドストエフスキーのようなヨーロッパ的な心理描写を、展開しています。私小説を、ヨーロッパ的な感覚で仕上げているということができます。これも、読者層を国内だけではなく世界へ広げる、小説の大事な要素になっています。
以上の2つ理由で、村上作品が世界中で読まれている、と私は判断しました。現在64歳の円熟した村上。若者の感受性を描いてもギラギラしたものにはならず、それが読者である若者に安心感を与えていると思います。

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意外に面倒なビデオ編集

2013年6月7日

現在、ヨーロッパで撮ってきたビデオと、歌の集まりで撮ったビデオの編集をやっています。撮影したもとのビデオの長さは、各々2~3時間。これを簡潔かつ印象に残るような短いDVDにして、関係者に配ります。

家庭用ビデオ編集ソフトは、以前はRoxio Creatorを使っていました。このソフトは使いにくいので(エッセイ12)、現在はPower Directorを使っています。
編集過程で、画面の中の特定の人物などへズームアップします。特に写真を挿入した場合に、そのままでは画像には何の動きもないので、ズームアップや画面を移動させることが、重要になります。印象深いビデオにするために、フェードイン、フェードアウトのような、画面全体を変える効果も多用することになります。暗い画面を明るくしたり、逆に暗くしたりする調整も行います。文字には、色や形を美しくすると同時に、多様な動きを付け加えて動画らしくします。音声のボリュームも調整し、聞きやすいようにします。最後にBGMを挿入。
このように、私がやっているビデオ編集は、ホームビデオの作成としては、かなりレベルが高いといっても差し支えありません。その分、編集にとても時間がかかります。小さな修正も全体的なバランスの中で行うので、長いビデオを何度も何度も見直しながら作業を進めます。

やっとビデオが完成したからといって、まだ安心はできません。私のビデオカメラは、ソニーハンディカムの新しいモデルです。このビデオカメラで撮った動画形式は、DVDにしてから、視聴の段階で一筋縄ではいかないのです。動画形式をHD(高精細度ビデオ)にして撮影したビデオを、HDのDVDにしても、私が持っている2台のDVDプレーヤーは、全く認識しません。ちなみに、2台ともソニーの製品ではありません。
動画形式を、HDではなく、普通のDVD並みに編集の段階で変えても、作成したDVDを、私のDVDプレーヤーは認識しません。ソニーはかなり特殊な動画形式を使っているようです。ごく一般的なDVDプレーヤーを使って、テレビで見ることができるようなDVDを作ろうと、現在奮闘中です。
パソコンでは見ることができるので、最終的にはテレビ視聴をあきらめることが、選択肢に入っています。

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新サイトへの移行完了

2013年6月3日

旧サイト「創作工房:エッセイ評論、アニメ、小説」を、2つの新サイト「夢と現実のエッセイ評論」と「アニメと小説の工房」に分割し、新しいドメインへ移行させました。

HTML言語の記述を統一。ページ毎に見え方が異なる欠点を修正しました。また、ページの背景画像を固定したので、本文だけがスクロールされるようになり、文章が長いエッセイ評論が読みやすくなったと思います。
タブレットやスマホで見やすくするには、まだ大きな変更が必要です。私のサイトには長文のページとアニメがあり、タブレット、スマホでの閲覧を容易にすることは難しい、というのが本音になります。パソコンでの閲覧をおすすめします。

これから、新サイトの検索エンジンへの登録をすることになります。サイトがより専門化したことや、分かりやすい新ドメインにしたことで、検索エンジンへの登録は容易になります。

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ヨーロッパ人男性気質

2013年5月26日

フランスとスイスを旅行してきました。

スイスアルプス山中の田舎町クールで、ラッキーそっくりのバセンジーに会いました。バセンジーの数は世界でも少ない。エジプト原産のバセンジーは寒さに弱いので、スイスのような気温が低い山国では、さらに少なくなると思われます。日本に置いてきたラッキーを思い出し、偶然の一致に不思議な感じを受けました。

パリのノートルダム寺院の近くでのできごとです。フランス人と思われる若い男性が、セーヌ川にかかった橋の橋げたに寄りかかっていました。橋げたの上には、30センチくらいの幅の平らな手すり面があり、リュックをそこに置いていました。男の左腕のひじも橋げたの上。男が少し動いた途端に、ひじがリュックに触れてしまいました。
リュックは川面へ向かって落ちたように見えました。私たちから三~四メートル離れていた上に、橋げたの下は見えなかったので、リュックがどこまで落ちたのかを、確認はできませんでした。
男は、どこ吹く風とばかりに平然と前方を向いたまま。その余りのクールさに、私と妻は、リュックが落ちたことに気づかないものと判断しました。そこで男性に近づき、英語で声をかけました。英語では通じないかもしれないので、ジェスチャー入りの説明になりました。
「リュックが落ちましたよ。あなたの後です。川へ落ちたようです」

その男は、間違いなく私たちの言い分を理解しました。ところが反応が意外だった。男はとても怒ったのです。後の川を振り向きもせずに、フランス語で妻に何かをまくし立てました。
リュックが落ちた方向を全く見もせずに、妻に対して吠える男性。橋げたの下に友だちがいて、リュックを受け止めた可能性を私は考えました。すなわち、若者たちが「リュック落とし」の遊びをやっている。観光客を驚ろかすドッキリかもしれない。
橋げたに身を乗り出し、下方の出っ張りに別の男がいるかどうかを確認しました。しかし、下方に人間が乗ることのできる橋の出っ張りはなく、落ちたリュックが川に沈んでいく様子が見えました。

妻が私の腕をグイグイと引っ張りました。少し離れてから、状況を正確に把握できない私に妻が言いました。
「あの男は、リュックを川へ落としたことを皆に知られたくないの。『あっちへ行け』って言ってるのよ。ヨーロッパの男は、こういう馬鹿げた失敗をやって、他人に笑われるのをとってもいやがる。リュックを落としたことを、誰にも知られたくないのだわ」

ヨーロッパ系の女性である妻は、ヨーロッパ男性のささいなプライドを、私よりも正確に把握していたのです。ヨーロッパで男性をやるのはなかなか大変です。

117

このサイトの大改造

2013年5月11日

このウエッブサイトを開設してから、5年が経ちました。その間に、タブレットやスマホでネットに接続する人たちが、急激に増えています。時代の流れに少しでも合わせるために、私のサイトの再構築を今やっています。

1.専門化したサイトのほうが、ネット検索されやすい。そこで、現在のサイトを、「夢と現実のエッセイ評論」という名のサイトと、「アニメと小説の工房」という名のサイトに分割。簡単で憶えやすい独自ドメインを取得。前者のURLは、 https://essay-hyoron.com/ 、後者のサイトのURLは、 https://anime-shosetsu.com/ になる。
2.パソコン、タブレット、スマホなど、環境が大きく異なっても見やすいサイトにする。フォントスタイルや画像の配置などを修正・変更。
3.5年間に渡って少しずつページを増やした結果、HTML言語に混乱が生じた箇所がある。異なるブラウザでも安定して同じように見えるように、簡単かつ統一された言語を使用。

今やっていることをまとめればこれだけですが、細かく気の張る膨大な作業になります。プログラマーの仕事が大変なことを、実感できます。そのときの気分で変わってしまう文体まで、統一したいところですが、さすがにそこまでやることは不可能です。作業が膨大になりすぎます。

116

簡単にコントロールされてしまう人間の心

2013年5月9日

今週、アメリカオハイオ州で、10年間も監禁されていた3人の女性が発見されました。加害者の男の家は、郊外の普通の住宅街の中にあります。周囲には家が建てこんでいる。
監禁が始まったときの女性たちの年令は、14~20歳でした。警察の家宅捜索で、ロープやチェーンが見つかりました。けれども、拘束のために、常時使われてはいなかったようです。すなわち、女性たちは、家の中で比較的自由に生活をしていたのです。

類似の事件は、ヨーロッパや日本でもありました。新潟県柏崎市で、9年以上も男の自宅に監禁されていた女性が、2000年に発見されました。女性は、小学4年生のときから監禁されていたのです。この加害者の自宅も、周囲に家が建てこんでいる、普通の住宅地にありました。最初は、殴られたりナイフで脅されたりしたけれども、やがて家の中で自由に生活するようになったのです。

こういう事件を、「むごい」というように、ひと言で片づけることはできません。加害者も被害者も、心理的には、正常の範囲内を揺れ動く心の持ち主である可能性が、大きいのです。すなわち、普通の人たちが、加害者にも被害者にもなり得る、と考えたほうがいい。
この人間心理の延長線上に、社会全体の異常な動きがあります。ナチスドイツや大日本帝国が、そのような実例の一つになります。人々は、周囲に監視の目を意識すると、個人的な危機を避けるために、自由な判断のもとに行動するのを、ためらうようになります。監視下で問題が生じない生活を、安逸に感じるようになります。集団生活をする動物である人間は、悪い方向へぶれれば、このような本能から発する危険性を、常に持っています。

人間の心の闇の部分を直視し、その闇が実体化しないような環境を、意図的に作り上げる努力を続けなければ、個人にも社会にも、いつ不運が襲いかかるかわかりません。これとの関連で、個人の生活の全てが監視されるネット社会には、とても大きな危険が潜んでいる、と私は理解しています(エッセイ34「人間が制御できない究極のリスク」)。

115

人体の大きな可能性

2013年5月4日

私たちは、多くの絶滅の危機を乗り越えてきた、生物の子孫です(エッセイ2「絶滅をバネに進化する生物」、エッセイ27「生き残りのための総力戦」)。人間を機械論的に見る人たちは、生物である人間生体の驚くべきしたたかさを、知りません。西洋医学は、人間機械論に立っています。故障したならば、すぐに直さなければならない。すぐに直らない異常は、永遠に直らない。
自らのからだの可能性を理解し、その可能性を現実化する努力を続ければ、生体機能を大きく改善することができます。ただし、生体機能は、西洋医学が求めるような、急速な変貌を遂げることはできません。時間をかけて徐々に変える。これが要点になります。

関節の軟骨は、損傷すると元通りにすることはできない、といわれています。私は、この損傷によって、痛みのためにあぐらをかくこともできなくなりました。私は、生物系の研究をやってきました。生体が、極めて大きな可能性と、危機に対応するための柔軟性を持っていることを、知っています。そこで、効果がなくてもともとと、サプリメントのグルコサミンとコンドロイチンを、毎日のみ続けました。半年以上経ってから、関節の痛みが完全に消えました。
知人が、腎機能低下によって入院し、治療薬の投与を受けることになりました。西洋医学の観点からは、低下した腎機能をもとどおりに直すことはできません。医学的には、低下を遅らせるだけとなります。
私も、以前に、クレアチニン値の異常上昇によって、腎機能低下と診断されたことがあります。軟骨損傷改善の経験があったので、治療薬投与という医者の勧めに反して、まずサプリメントを試みました。腎機能改善に効果があるといわれるサプリメントは、冬虫夏草とCoQ10です。これらのサプリメントをのみ続けた結果、医学的には不可能なはずの腎機能改善に、成功したのです。現在は何の問題もありません。

生物生体のしたたかさを知ることによって、自らのからだを、抜本的に改善することができます。

114

ナマケ者が必要な社会

2013年4月29日

イソップ寓話の「アリとキリギリス」の話に反して、アリの社会には、常に10%のナマケ者がいます。このナマケアリを、人間が実験的に巣から取り除いてしまっても、すぐに10%のアリがナマケ者になってしまいます。逆に、ナマケアリを除いたアリ集団を他へ移動させても、すぐに10%のナマケアリが誕生します。
快適な巣の中で、働きアリがせっせと運んでくる食べ物を、ただ食べているだけの働かないアリ。アリ社会の機能の最大効率化を考えれば、社会の敵のような存在です。しかし、進化は常に大局観に立って、生物の社会を構築してきました。
ナマケ者の存在には、種の保存のための大きな意味があるのです。敵が襲いかかって、ハタラキアリの多くを殺してしまうと、ナマケアリが突然に働き者になってしまいます。夏の繁忙期に、ハタラキアリが消耗して弱ってしまうと、ナマケアリが働き者になってしまいます。
ナマケ者の存在が、アリ集団の長期的な生き残りを保障しているのです。

このような余裕が、人間社会の長期的存続にも必要です。進化の観点からは、失業者を悪と見ることはできません。失業者ゼロの極度に効率的に動いている社会は、環境の変化に極端に脆弱になります。それまでの環境に適応し、それまでの環境下でフルに働いていた人たちが、根本的に異なる環境下に放り出されれば、その社会は機能不全におちいります。
失業率10%程度の国は多く、いつの間にか、社会の長期的存続を保障する人間集団を、多くの国が確保していたことになります。10%という数字が、アリ社会と同じなのが象徴的です。日本も、10%程度の失業率は、日本社会の永続性保障のめに必要な条件と、視点を変える必要があります。

社会の生き残りのために失業者が必要ならば、社会全体が、アリのように失業者を真正面から受け入れなければなりません。失業者自身は、社会の永続性を保障する集団であることを自覚し、自分がやりたいことに精を出せばいい。その経験が必要になる環境の変化が、やがて生じるかもしれません。すなわち、失業者は、集団の多様性を保障する人たちと、社会全体がとらえ直す必要があります。

113

コンピューターのセキュリティ対策

2013年4月24日

エッセイ評論33、34「サイバー攻撃で原発爆発、核ミサイル暴発」と関連したテーマで、某所で話をしました。正規軍の兵士数万人から数十万人と、人数不明の多数のゲリラが参戦している戦いが、世界中で繰り広げられているにもかかわらず、「闇の中の戦争」が普通の人たちの注意を引くことは、余りありません。おかげで、なじみのない話に興味を持った人たちと、自分には関係のない話と割り切った人たちに、聴衆が分かれてしまいました。

話が終わったあとで、私自身が、自分のパソコンのセキュリティをどのようにやっているのかを、問われました。ここに書いておきます。
まず、作業は、デスクトップとラップトップの2台でやっています。高度なセキュリティを要する作業はデスクトップでやり、リスクの高い作業はラップトップでやっています。具体的には、金融機関とのやりとりをデスクトップで、メールの送受信をラップトップでやっています。とても簡単なことですが、作業するコンピューターを物理的に引き離すことが、最も基本的かつ重要なセキュリティ対策になります。
ウイルスソフトのインストールとファイアウオールの設定は、当然のことです。それ以外に、Glary Utilities、CCleaner、Disc Cleanup、不要ファイル掃除機などで、定期的にクリーニングをやっています。不要なデータに、危険なウイルスが潜んでいる可能性がゼロではない、と考えてのことです。勿論、コンピューターの高速化に、クリーニングは貢献します。

デスクトップには、ブラウザとして、Mozilla Firefox、Google Chrome、Internet Explorerを、インストールしています。ブラウザには、クッキーなどで、アクセス時のいろいろな記録が残されます。安全性が高いといわれるFirefoxを、金融機関とのやり取りに使っています。
アニメの作成は、デスクトップのほうがやりやすいので、デスクトップで創作活動をやっています。同じHTMLで書かれていても、ブラウザによって見え方が異なります。3つのブラウザをデスクトップに入れているのは、各ブラウザで私のウエッブサイトがどう見えるのかを、チェックするためです。
Firefoxには、セキュリティ関連アドオンをいくつか入れています。特に大事なのが、WOTというアドオンです。このアドオンは、Googleでキーワード検索したときに出てくる、サイトの一つひとつに、安全かどうかのマークを表示します。危険なサイトにアクセスするのを、避けることができます。
JavaScriptは、ウエッブサイトの機能を高めていますが、同時に攻撃者の入り口になる脆弱性を備えています。アクセスするサイトのJavaScriptを機能させるかどうかを、FireFoxアドオンのNoScriptで設定できます。
それ以外にも、ブラウザのポップアップウインドウ設定などで、セキュリティを高めることができます。

112

NASAが地球に似た惑星を3個発見

2013年4月19日

温暖な環境と、水が存在する可能性のある惑星を、NASAが3個見つけました。1200光年先にある恒星「ケプラー62」の周囲に2個と、2700光年先にある「ケプラー69」の周囲に1個です。
エッセイ評論27「宇宙の壮大なドラマから生まれた生命」の追記で述べた、ケプラー宇宙望遠鏡による実測の結果です。このエッセイ評論で書いたことが、次々に実証されていくことになると思います。
これら3個の惑星に生命が存在するかどうかは、まだ分かりません。NASAのチームは、「地球型惑星は、宇宙に数多く存在しているかもしれない」、と述べています。控え目な言い方です。エッセイ27に書いたように、人類のような地球型生命が誕生する可能性のある惑星は、宇宙には数限りなく存在する、と考えるのが自然です。数多く存在するならば、それらの惑星の中には、知的高等生命体を育んでいるものがあるはずです。

「和戸川が自慢そうに仮説を述べているが、それでは、人類はなぜ知的高等生命体に接触できないのだろうか?」、という疑問を持つ方がいるかもしれません。その理由を、私はエッセイ27に書いています。

111

長期減少傾向にある電力需要

2013年4月10日

4月になって、またまた夏の電力需給逼迫のニュースが、流されるようになりました。電力料金値上げは、既成事実になっています。こういう押せ押せムードの裏に、原発再稼動の魂胆が潜んでいます。

原発支持派が無視するならばいざ知らず、原発反対派も触れない事実があります。下の電力需要の年次経過を見てください。

2005年 販売電力量 8826億kWh
2006年 販売電力量 8894億kWh
2007年 販売電力量 9195億kWh
2008年 販売電力量 8889億kWh
2009年 販売電力量 8585億kWh
2010年 販売電力量 9064億kWh
2011年 販売電力量 8598億kWh
2012年 販売電力量  ー
『電気事業連合会』

電力需要は、2007年がピークになっています。電力需要が長期減少トレンドに入ったことは、間違いありません。人口減少、高齢化が進んでいるだけではなく、省エネ工業製品の開発が進み、省エネ意識が高まっています。さらに、太陽光発電などによる小規模発電の増加が、上述の統計にあらわれる、大電力会社の販売電力量を減らします。
原発、火力、水力などの大規模発電所を、今後間違いなく減少させなければなりません。

電力需要は、2011年には、2007年よりも6.5%減っています。
こういう事実が、電力料金値上げの背景の一部になっているはずです。販売電力量が減っているので、収入を維持するためには、料金値上げをせざるを得ません。日本社会の大きなトレンドを考えると、このような対応は間違っていると思います。大電力会社は、事業縮小で対応するのが本筋です。
拙著「地震・原発列島」で、以上のことに触れています。

110

アメリカの対北朝鮮深謀遠慮

2013年4月3日

日本の米軍基地も攻撃対象にする、という北朝鮮の声明があってから、日本のメディアにも、朝鮮半島関連の報道が増え始めました。それでも、海外メディアに比べれば随分と控え目。
各国の報道は、北朝鮮の現状と、金の意図の推測にかたよっています。私は、アメリカの意図のほうに、もっと大きな危険が宿っている、と推測しています。

アメリカ本土が他国によって破壊されることは、9.11までありませんでした。9.11の衝撃は、日本人には理解し難いほど、アメリカ人には大きかった。
北朝鮮の長距離ミサイルの飛行能力向上や、核爆弾の小型高性能化が、アメリカの予想をはるかに超えたスピードで、進んでいます。北朝鮮は、核ミサイルによるアメリカへの先制攻撃を公言し、核ミサイルによってアメリカ本土が炎上するCG動画を、公開しました。
こういう状況を、オバマをはじめとするアメリカの政治・軍事のトップは、どうとらえているのでしょうか?

2~4月の米韓共同軍事演習で、アメリカは、核爆弾を搭載できるステルス戦略爆撃機B2とB52を、投入しました。3月31日には、F22ステルス戦闘機も投入。こういうトップシークレット飛行機の動きは、通常は公開しません。ところが今回は、投入前から動きを詳細に公表しました。空母、イージス艦、ミサイル駆逐艦などは、すでに北朝鮮周辺海域に展開しています。
韓国の朴大統領が、4月1日に、北朝鮮から挑発を受けた場合、強固かつ迅速な軍事的対応を取る、と明言しました。
アメリカの本気度はどれだけなのでしょうか?大部分の論者が推測するように、北朝鮮からの威嚇に対する、けん制程度のことなのか?北朝鮮が、アメリカ本土を攻撃できる核ミサイルの開発に成功する前に、北朝鮮をたたくことを主張している人たちが、アメリカの政治・軍事のトップにいる、と私は推測しています。

アメリカが北朝鮮を挑発しているために、金は米韓に対して戦争宣言をしました。アメリカは、後戻りのできないところにまで、金を追い詰めようとしているのではないか?振り上げたこぶしを黙って降ろせば、国内での影響力が減じる金が、攻撃を仕掛ければ絶好のチャンス。米韓は、大規模な反撃を開始するような気がします。
真珠湾攻撃を思い起こしてください。追い詰められた日本が、攻撃を開始することを知っていながら、不意打ちされたようなことを言って、アメリカは日本に対する全面戦争を開始しました。アメリカは、ソ連や中国のような、勝つのが困難な大国との軍事衝突は避けるのに対して、ベトナム、イラク、アフガニスタンのような、「弱小国」とはためらわずに戦うことも、憶えておく必要があります。

109

まるで私の書き込みに反応したような北朝鮮の声明

2013年3月31日

テレビのニュース・チャンネルTBSニュースバードで、夜10時のニュースを見ていて驚きました。
31日付けの北朝鮮の「労働新聞」が、「日本の沖縄、横須賀、三沢の米軍基地も、攻撃の範囲内に入ることを忘れてはならない」、という声明を載せていたというのです。No.108の書き込みに反応したような声明ですが、勿論これは偶然の一致です。
ただし、私は他でも似たような偶然の一致を、経験しています。余り危険な予想をすると、偶然の一致で、それが現実化してしまうのであぶない。...と、これは冗談ですが、こんなネタでSFが書けそうです。

日本のメディアが報じない情報を得るために、テレビのニュース・チャンネルでは、BBC、CNNをよく見ています。日本のチャンネルの中では、常時最新のニュースを報じている、上記のTBSニュースバードが、大事な情報源になっています。これはケーブルテレビのチャンネルです。
ネット新聞でのお勧めはロイター(日本語版)です。ニュースは「早く、広く、深い」。さすがは世界のロイターです。これだけの情報を無料で流してくれるのは、とてもありがたい。

世界の動きに関心があるために、海外の複数の情報源を確保しています。ただし、好奇心を満たすという以上の意味があります。マーケットは、毎日のいろいろな動きに敏感に反応します。投資には、まず世界情勢を正確に把握しておくことが、必要なのです。

108

日本メディアが報じない北朝鮮戦争突入宣言

2013年3月30日

この数日間、奇妙なことが起こっています。北朝鮮が、アメリカと韓国に対して、戦争状態に突入したことを宣言しました。これを、日本のメディアはまともに報道していないのです。日本は、アメリカや韓国よりも大人なので、北朝鮮の子供っぽい舌戦は無視するのだ、ということなのでしょうか?それにしても、これは隣の朝鮮半島の厳しい現実。日本に危機をもたらす可能性のあるニュースを、日本のメディアが完全に無視していることは、理解し難い。裏に何かあるのでしょうか?

私は、日本語版、英語版の各国メディアのニュースを、毎日ネットで確認しています。本日3月30日に、各メディアのトップページに現れた北朝鮮関係の記事の見出しを、あげておきます。

朝日新聞:なし。
毎日新聞:なし。
読売新聞:なし。
産経新聞:なし。
日経新聞:下のほうの国際欄に、『北朝鮮「今から戦時状況に」特別声明で米....』。
ロイターズ(日本語版):トップニュースに、『北朝鮮が特別声明、「韓国と戦争状態に突入」』。
ロイターズ(英語版):『North Korea says enters "state of war" against South』。 The New York Times:『Pyongyang Blusters, and U.S. Worries About Quieter Risks』。 The Wall Street Journal:『Tensions Bolster Tokyo Military Bid』(安倍総理は、北朝鮮が米軍基地を攻撃したときの対応を検討)。
ブルームバーグ(日本語版): 『北朝鮮:韓国と戦時状況入り、特別声明で表明-米国に「最後の警告」』。

日本以外の報道機関の報道によると、北朝鮮の金第一書記が、『米本土やハワイ、グアムなどの太平洋地域、および韓国にある米軍基地を攻撃できるよう、ロケット部隊に待機命令を出した』のです。さらに、北朝鮮から、『北南関係は戦争状態に突入し、北朝鮮と韓国の間のすべての問題が、戦時に準じて処理される」との警告が出ています。そして、『北朝鮮の中・長距離ミサイル発射場で、車両や兵士の活動が急速に活発化している』のです。
北朝鮮の声明は、攻撃目標を、日本以外のところにある米軍基地としています。日本をわざわざ除外した金の意図と、これらのニュースを報道しない日本のメディアの意図は、どこにあるのでしょうか?
戦争は、「まさか」という状況下で始まるのが普通です。私が特に危惧するのは、北朝鮮で金が置かれている現在の状況です。独裁者は、国内における自分の立場に問題が生じると、国民の関心を国外の敵に向けるために、当たり前のように戦争を始めます。

107

メールアドレスを盗むロボットをだます方法

2013年3月24日

ウエッブサイトを持っている人には、訪問者からのメールがとてもうれしい。ところが、ここに大きな問題があります。自分のサイトにメールアドレスを書いておくと、ネット上のアドレスを自動収集するロボットに、見つかってしまうのです。他人のメルアドは、ある種の人たちにとっては貴重な収入源。自動収集ロボットが集めた何百万、何千万というメルアドを、いろいろなネット通販業者に売ることができるのです。
自分のメルアドがこの流通システムに乗せられると、大変なことになります。膨大な数の迷惑メールが毎日届きます。メールの中には、危険なウイルスを忍ばせたものがあります。

私の対策。私のサイトだけで使うメルアドを作りました。最悪の場合にはこのメルアドを閉鎖します。他では使わないので、閉鎖しても被害は最小限になります。
そこへ行くまでの対策。まずエンティティ化 という方法で、メルアドを暗号化してから、トップページのHTMLにアドレスを書き込んでいます。ちなみに現在のアドレスzifzof10@gmail.com(文字が全角なので、ここに書いても大丈夫。説明は以下に)を暗号化すると、zifzof10@gmaIL.com(半角から全角へ変換)となります。これはレベルの低い暗号化。前はもっとレベルの高い暗号化をしていましたが、トップページからメールを送れないことがあり、レベルダウンせざるを得なくなりました。
この暗号化レベルでも、トップページからメールがうまく送れない可能性があり、次の対策を取りました。トップページにメルアドを直接に表示したのです。ただし、メルアドはご覧のように絵の一部になっています。ロボットは絵までは読み取れません。メルアド収集業者が私のサイトへアクセスすれば、簡単にメルアドを収集できますが、ロボットで何百万、何千万のアドレスを集めている業者が、アドレス収集のために、私のサイトに直接にアクセスする可能性は極端に低くなります。

ロボットは半角英数字に注意を向けます。従って、上のように全角文字でメルアドを書けば、このページへロボットが来ても、私のメルアドに気づくことはありません。

便利な社会には意外なリスクがあり、新しい対策を考えなければなりません。

106

タブレットやスマホへの対応

2013年3月22日

タブレットやスマホでネットに接続する人が増え、パソコン対応のウエッブサイトでは、アクセスを増やすのが難しくなりました。タブレットやスマホの特徴は、パソコンよりも画面が小さいだけではありません。Flashアニメを見ることができないのです。

ウエッブサイトをタブレット、スマホ対応にするために、小さい画面でも見やすいウエッブデザインにする必要があります。タッチパネルでの操作も考慮しなければなりません。それよりも大変なのは、一つひとつのアニメの形式の変更です。全てのコンテンツをタブレット、スマホに完全に対応させるためには、ウンザリするほど多くの細かい作業をこなさなければなりません。

取りあえず、小説23「幻影の森」を、最も一般的なデザインにしてみました。字間、行間、段落などのスペースの取り方には、ウエッブサイトのデザインを書き込むHTMLにおいて、いろいろな約束事があります。原稿用紙に書くほど簡単ではありません。何しろ同じHTMLで書かれていても、ブラウザが異なれば、ページの見え方が違ってしまうのです。私は、Internet Explorer、Mozilla Firefox、Google Chromeの3つのブラウザを使って、見え方を調べています。3つのブラウザで、ある程度見え方が満足できるまで、HTMLを何度でも書き換えます。
オープンな技術であるインターネット。HTMLには多種多様な文法があります。どのような書き方にするのかは、ウエッブデザイナーが自分で判断しなければなりません。

パネル上で読んでもらう文章は、文章周囲のスペースを十分に取らなければ、読者を疲れさせてしまいます。そこで、私は、今までは標準よりももっとスペースを取る、自己流でやってきました。小説23からは、小説とエッセイの両方で、最も一般的なデザインにします。読者にとって、見慣れたデザインのほうが、特に画面が小さいタブレットやスマホでは、取りつきやすくなると思います。

105

40回近くも生物を死滅させた巨大隕石

2013年3月10日

先日ロシアに落ちた隕石は、死者こそ出さなかったものの、広島型原爆の30倍の威力があり、1200人を超える負傷者を出しました。けれども、これは直径がわずかに17メートルの隕石。この程度の大きさの隕石は、地球に無数に降り注いでいます。

6550万年前にユカタン半島に落下した隕石が、1億3000万年間も地球上で栄えていた恐竜を、「アッ」という間に消滅させました。このとき、生物種の70%が絶滅したのです。私たち人類の先祖は、この危機を乗り越えました。そのおかげで、私たちは今ここに存在しています(エッセイ2「絶滅をバネに進化する生物」)。
このときに落ちた巨大隕石(小惑星)の直径は、約10キロでした。このサイズの隕石は、およそ1億年に1回の頻度で、地球に落下すると考えられています。地球上に最初の単細胞生物が誕生してから、38億年が経ちました。既に40回近くも、巨大隕石が地球に落下したことになります。
多くの生物が死滅する危機が、これほどの頻度で地球を襲ったことに対して、想像力を働かせる必要があります。今この時点で地球上に存在している生物は、とても貴重です。

104

性の進化

2013年3月2日

エッセイ10「父の体臭を嫌う娘から進化が見える」にとても興味を持ってくれた知人(男性)から、性の進化についてのエッセイを書くことを、以前に要望されました。雑事に追われる今日この頃。このテーマでエッセイを書くことに、集中できません。
罪ほろぼしに、こんなことを書いておきます。

私たちの体細胞の中に、ミトコンドリアという小器官が存在しています。ミトコンドリアは酸素をエネルギーに変換します。そのおかげで、私たちは、酸素が含まれている大気中で生きることができます。ミトコンドリアがなくなれば、まるで無酸素状態に置かれたように、私たちは「アッ」という間に死んでしまいます。
これほど大事なミトコンドリアが、私たちの細胞の本来の成分ではないのです。私たちの先祖がまだ単細胞だった時代に、別の単細胞だったミトコンドリアの先祖が、私たちの先祖の細胞に寄生しました。そして、互いを生かす共生関係に入ったのです。
構造がとても単純な精子に、ミトコンドリアはありません。細胞が持つべき機能を、全て持っている卵子だけに、ミトコンドリアが含まれています。すなわち、ミトコンドリアは、メス(女性)からメス(女性)へと受け継がれていきます。
ミトコンドリアのDNA遺伝子解析から、現世人類(ホモサピエンス)の先祖の女性が、約15万年前に東部アフリカで誕生したことが明らかになりました。

これでは、進化の過程で、オス(男性)は付随的な意味しか持っていないような感じを受けます。男性のためにひとこと。男性の性は、女性が持っていないY染色体で決まります。このY染色体は、男性から男性へと受け継がれます。
進化のためには、女性と男性の両方の性が必要なのです。

103

まだ高すぎる円

2013年3月1日

国の財政が破綻したときには、貨幣価値が下がることが、その国の再生のために必要な条件になります。ドル換算の国際比較で賃金が低下することになり、産業の国際競争力が高まります。工業製品の輸出ばかりか、観光業にとっても大きなメリットがあります。直近では、韓国とドイツが好例。
ギリシャはユーロを導入したために、他のヨーロッパ諸国に対して、通貨の面では有利になれません。ドラクロを今でも使っていれば、暴落したドラクロのおかげで、他国からの観光客が増え、工業製品の輸出競争力が増していたはずです。ただし、輸入品の価格が上昇するので、経済が再生するまで、庶民は困難を経験することになります。

日本の政府債務は先進国で最大です。ギリシャ、イタリア、スペインなどの名だたる(?)債務国を、はるかに凌駕している。国民の金融資産の1000兆円が、既に国債に化けてしまいました。政府が残りの500兆円を使い切るまでに、長い時間は残されていません。
こんな国の通貨が、今まではとても高く評価されていました。国際貿易の視点からは、日本だけが、他国を豊かにするための犠牲になっていたのです。リーマンショック以前の1ドル=110円に円安にするだけでは、まだ足りません。債務の状況は、当時よりもさらに悪くなっているので、130円、140円になっても不思議ではありません。
政府債務の膨大さを考えると、国民は、どこかで財政破綻の苦難を経験することになります。円安が物価の上昇に結果するので、生活は大変になりますが、財政破綻の規模をできる限り小さくするために、さらに円安を加速させる必要があります。

102

海外所得の確定申告

2013年2月23日

円安が進めば進むほど、海外に置いてある資金は、円換算で増えていきます。昨年10月に、アメリカに10万ドルの預金を持っていたひとは、わずか4ヶ月で、780万円から930万円まで、20%近くも資産を増やしたことになります。今後、短期的に円高になることはあっても、長期トレンドが円安であることに、変わりはないと思います。
海外に投資口座を持って投資をすれば、為替レートの分の利益を、上乗せすることができます。海外の証券口座に口座を開く方法は、エッセイ7と19を参照してください。

税務署は、個人の海外資産把握にやっきになっています。100万円以上の海外への送金、あるいは海外からの入金は、銀行が税務署に報告します。海外所得の確定申告は、しっかりとやる必要があります。
ただし、これは簡単ではありません。普通の税理士は、英語が分からず、海外の税務も分かりません。海外の税務に通じた税理士を見つけても、手数料が高く、企業ならばともかく、個人ではなかなか払う気にはなれません。最初は大変でも、自分でやるようにしたいものです。
国内の口座を特定口座にしておけば、証券会社や銀行が年間取引報告書を送ってくるので、一つひとつの売買における損益を計算する必要はありません。海外の口座で株やファンドの売買をやると、一つひとつの損益を自分で計算しなければならなくなります。売買の頻度が高いと、これはとても大変な作業になります。
オーストラリアのColonial First(エッセイ7)は、年間取引報告書を送ってくれます。ところが、会計年度が日本と違い、7月から翌年の6月までなので、この報告書は、日本で確定申告書の作成に使えません。アメリカのFirsTrade(エッセイ19)には、そもそも日本の年間取引報告書のような、売買記録をまとめた報告書がありません。私は、FirsTrade口座での取引を、ファンド中心からETF中心に昨年変えました。そのおかげで取引数がとても多くなり、現在計算で苦労しています。

海外所得の確定申告書作成においてやっかいなのは、為替レートを考慮しなければならないことです。たとえば、2005年に購入した株やファンドを、今までに買い増したり、一部売却したりした状況を考えてください。為替レートは毎日変わるのです。売買する株やファンドの数が多ければ、売買時のレートの検索だけでも時間がかかります。
税務署は、さすがにそこまでの労を要求していません。三菱東京UFJ銀行などのサイトに、年平均の為替レートが載っています。昨年の分の計算ならば、2012年の平均レート一つを使えばいいのです。ただし、株やファンドの購入にはTTS(外貨購入レート)、売却にはTTB(外貨売却レート)を使います。
海外投資には、為替レートにおいて利点があります。レートはTTSよりもTTBのほうが安くなります。この差は、1米ドルで2円ほどになります。10万ドルで株やファンドの売買をすれば、円換算では20万円ほど売却額が少なくなります。これは、確定申告上は損失という計算になるのです。

面倒な計算をやっているおかげで、私は、普通の税理士ができない、海外所得の確定申告をできるようになりました。

101

若さを保つ生物学

2013年2月16日

食べないで若さを保つことができる、という内容の本がベストセラーになり、テレビに登場するようになった医者がいます。若さと美貌をいつまでも保つことができるという、ブタ胎盤のサプリメントの宣伝を、テレビがやっています。この種の簡単に夢がかなうという話は、投資にもあります。からだもマネーも、安直には自分の思い通りにはなりません。それを心得ていなければ、あちらこちらでだまされることになります。

600万年前に現世人類(ホモサピエンス)の祖先が誕生しました。肉体能力が他の動物よりも劣る人類。生き延びるために大変な努力をして、食べ物を確保してきました。飢餓すれすれのところで、食べられる植物を採集したり、食用の動物を捕らえていました。人間のからだは、このような生活に順応していることを、頭に入れておく必要があります。すなわち、摂取カロリーが生存可能な最低限のレベルで、運動を毎日長時間行うときに、からだの全機能が最高の状態になるのです。
ホモサピエンスがアフリカを出発したのは、約5万年前です。わずか5万年の間に、人類は徒歩で地球の隅々にまで居住地を広げ、黒色人種以外に、黄色人種と白色人種を生み出しました。
過酷な環境下で、生存のために必死の努力を続けた人類。金を出せば、楽にいくらでも食料が入手できるようになったのは、つい最近のことです。私たちのからだの機能は、現代生活には全く適応できていません。
自分の健康を維持し、若さを保つことを考えるときには、上のことを決して忘れないようにしたいものです。

腹八分目が長寿の秘訣ということを、日本人は長い経験から知っています。上記の医者は、そういう日本人の常識を実践しているにすぎません。ただし、この医者は、毎日30分歩けば十分と考えているところで、誤りをおかしています。足腰が、気味が悪いほど貧相なこの医者。間違いなくもっと長時間の運動が必要です。

コラーゲンを皮膚に塗れば肌が若返る、という種類の話もあります。コラーゲンを塗る以上の努力が必要になりますが、からだの全機能を活性化させる方法があります。頭を使うことです。脳が、神経系もホルモン系も免疫系もコントロールしています。脳自体から、大事なホルモンが産生されています。脳がホルモン産生に関与していることは、誰でも知っています。免疫系も、脳と密接な関係があります。免疫系は、液性の神経系といわれるくらいに、脳と一体化しています。
読書をすれば頭を使ったことになる、と考える人がいます。読書は、脳の使い方が受身になるので、意外に脳の活性化にはつながりません。絵を描くときには、頭の中に立体像を作り、それをいろいろな角度から観察します。絵を描くのは、頭をフルに使うことになります。画家には、若さと長寿を保つ人が大勢います。ピカソは、80歳近くなってから子供を作りました。

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知らないことを否定しない

2013年2月9日

某所で「面接もどき」の話し合いをやりました。私が面接される側でした。私は、もともとは免疫学とウイルス学の研究者です。「面接官もどき」のひとがたずねました。「なぜ免疫学を選んだのですか?現在、なぜ、超ひも理論などの最先端宇宙論に興味を持っているのですか?」
私の答。「私は、既に分かっていることには興味がありません。私が免疫学を始めた頃は、未知の領域が免疫学分野に大きく広がっていました。免疫学はサイエンスではなく、フィクションといわれていました。それで、免疫学をやりたくなったのです。超ひも理論は、まだ大部分がフィクションといってもかまわないような状況です。それで超ひも理論にとても興味があるのです。私には生物学でも物理学でも、どちらでも同じことです」
「面接官」は、私の答に少しあきれたような顔をしました。もっと本音をいうと、アニメや小説の創作、ITテクノロジーの活用、投資、哲学の勉強など、今やっていることの全てが、生物学や物理学のように、未知への挑戦の部分が大きいので、私は強い興味と関心を持っているのです。

超ひも理論が背景にある最新宇宙論を、分かりやすく説明した本を見つけました。「宇宙は本当にひとつなのか」村山斉著講談社BLUE BACKSです。簡単なことを、難しくいったり書いたりする人がいます。けれども、この本の著者は、素人には難解なテーマをとても分かりやすく書いています。素粒子物理学を専門にしている著者は、当然のことながら、この分野において持論を持っているはずです。しかしそれにこだわらず、分からないことは分からないといい、可能性は可能性として一つも否定しない、という態度を取っています。
「間違いと証明されていない全ての仮説には意味がある」、という素粒子研究者に必要な信念を、大事にしているのです。
もっともこれは、理屈っぽい科学者だけではなく、普通の生活を送っている庶民にも大事なことですね。日常生活において、つい「知らないことはないことにする」誘惑に駆られがちです。新しいことを知るには、相当なエネルギーと努力が必要になるので、面倒になってしまうのです。生活のどの場面にも可能性はいくらでもあり、それらを否定しなければ、より興味のある豊かな人生を送るきっかけを、つかむことができます。

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太陽系外惑星探査の現状

2013年2月2日

先日、国立天文台で研究に従事している、若手天文学者の講演を聞きました。テーマは「太陽系外惑星」でした。
エッセイ27に書いたように、宇宙には無数の惑星が存在し、その中の多くの惑星に、人類のような高等生物が住んでいると、私は推測しています。
講演した研究者は、今年得られた最新のデータも含めて、太陽系外惑星に関する研究成果を、講演しました。

詳細は省略しますが、「ケプラートランジット惑星探し」という新探査法が、他の太陽系に存在する惑星の探索に、劇的な効果をあげています。「ケプラー計画」では、太陽系周辺の10万個以上の恒星が調べられています。まだ、私たちの太陽系の近傍に存在する、地球よりも大きな惑星しか検出は困難ですが、今年1月の時点で、既に2740個の惑星の存在が確認されています。中心の恒星から適当に離れていて、液体の水が存在できるような宇宙空間を、「生命居住可能領域」といいます。この領域に、約50個の惑星が観察されました。
もう一つの重要な発見は、各恒星が、少なくとも一つの惑星を持っているということです。しかも、これら恒星の6分の1が、地球型惑星を持っているのです。私たちの銀河には1000億個の恒星が存在し、宇宙には数千億個の銀河が存在します。全宇宙に存在する地球型惑星の数は、膨大になります。人類のような知的生物が住んでいる惑星は多数存在する、と結論するのが自然です。
人類は、この宇宙で間違いなく孤独ではありません。

講演者への私の質問。「地球型生命のもとになる水と炭素化合物は、星間雲の中で作られています。今ここに私たち人類が存在しているのは、偶然ではなく必然なのではないでしょうか?」
注意深い研究者の答。「そういう意見もありますが、別の意見もあります」

私たちの太陽系が存在する銀河の腕の部分よりも、銀河中心部には、古い恒星の数がより多いと予想されます。即ち、もしもそこに地球型惑星があれば、その惑星の年令は地球よりも古く、より進化が進んだ知的高等生命体が住んでいる可能性があります。
そこで私の質問。「銀河中心部の恒星が持っている惑星の数は、太陽系周辺よりも多いのか少ないのか、予想をできますか?」
慎重な研究者の答。「そのご質問に答えるためのデータは、持ち合わせておりません」

ハワイに、口径30メートルの望遠鏡が建設されています(TMTプロジェクト)。日本、アメリカ、カナダ、中国、インドの国際協力のもとに、プロジェクトは進められています。この望遠鏡が完成すれば、太陽系外惑星の探索にも大きな威力を発揮します。
この建設に1万円以上の寄付をした方の名前が、施設内の記念碑に刻まれます。希望する方は、三鷹の国立天文台に問い合わせてください。

(この情報はとても大事です。「作者の思い」だけでは次第に下のほうへ下がってしまい、見えなくなります。エッセイ27に付記として残しておきます)

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元祖やわらか戦車

2013年1月28日

アニメ50「やわらかい戦車」を見て、一世を風びした、「やわらか戦車」を思い出す方がいるかもしれません。無名の「やわらかい戦車」が、有名な「やわらか戦車」のコピーではないことを知っていただくために、「やわらかい戦車」の由来を書いておきます。

私は、以前に、InterWat Fun Siteという名のウエッブサイトを持っていました。そのサイトに、2000年4月に、「やわらかい戦車」の一こま漫画を載せたのです。それは、「やわらか戦車」の誕生以前の話になります。アニメ50は、その一こま漫画をアニメ化したものです。すなわち、「やわらかい戦車」は、完全に私のオリジナルアニメになります。
アニメ49を載せてから、4ヶ月が経ってしまいました。その間に、アニメ創作以外にやることが多すぎました。アニメは、私の純粋な遊び心から生み出されています。アニメ創作にかける時間を、もっと増やしたいと思っています。
アニメを作ったことのある方ならば、かなりの時間を割いて、私が「やわらかい戦車」を作ったことを、理解できると思います。完成した一作一作が、実の子のようにかわいくなります。

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アルジェリア人質事件の意味

2013年1月26日

この事件に関して、日本人のガラパゴス思考から抜け出ていない、メディアの論調があります。「日本は植民地主義でアフリカを略奪したことがなく、軍事的に抑圧したこともないので、今回の事件はあり得ない」、というものです。

視点をもっと冷徹な世界の現状の中に置いて考えれば、テロリストの思考は以下のようになるはずです。
「敵の友は敵。日本企業が、欧米の開発会社と共同で資源開発をやっているならば、欧米人と同じように扱う。資源開発はアルジェリア政府の意向に沿ったものなので、日本人も政府の側に付いていると判断する」。
権力を握っている者と権力者を倒そうとする者の戦いは、壮絶を極めます。後進国ばかりか、北アイルランドやバルカンのような先進地域でも、その状況は同じです。
今回の人質事件においては、外国人死者の中では日本人が最も多く、10人になりました。テロリストによって殺害された人もいるでしょうが、政府軍の攻撃の巻き添えになって亡くなった人の数のほうが、多そうです。

アルジェリア内戦では、10万人単位の人々が死んだと言われています。アルジェリア政府の本音は、次のようになるのではないでしょうか?「ここで弱腰になれば、同様の人質事件が多発するばかりか、人質事件で利益を得たテロリストが勢力を拡大し、人質事件以上のリスクを、アルジェリアにもたらすことになる。ここで徹底的にたたくことが、アルジェリアの国益にかなう」。

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ファンド収益の実体

2013年1月23日

今日の日経新聞に、一面全面を使って、配当金の多いファンドの問題点を指摘する記事がありました。高配当にするために元本を取り崩すので、最終的には損失をもたらす結果になることが多い、となっています。私のNo.95の書き込みを批判するような内容です。
この記事は、決定的に重要なポイントを指摘し忘れています。REITファンドや債券ファンド(あの有名なグロソブなど)の配当金を毎月の収入のように考え、普通預金の口座に移しているひとには、日経新聞で指摘されているようなリスクがあります。しかし、配当金を再投資に回しているひとには、日経新聞の指摘は完全な間違いになります。
毎月の配当金を元本に組み入れれば、分配された配当金の分だけ、元本が増えることになります。元本になった配当金は、翌月に配当金を増やすもとになります。毎月の配当金が、複利の利息のような働きをするのです。
売り込みに精を出す証券会社がどう言おうとも、ファンドを毎月の生活費のもとにするのは、投資の本質を考える立場からは間違いになります。毎月の生活費は、別の資金源から捻出しなければなりません。

日経新聞は、投資家ではなくセールスマンに近い澤上氏を重宝がって、いろいろな場面で使っています。権威がある新聞にも、自社の利益を最優先する体質があります。個人投資家は、自分の頭で考え判断しなければ、あらゆる投資の場面で「いいカモ」になってしまいます。
高い手数料を取っている証券会社が、「投資は個人の責任で」といつも言っていることを、肝に銘じておいてください。証券会社は手数料で儲けていながら、結果責任を取る気は全くありません。

なお、No.95にあげたファンドは為替のヘッジがないので、円安が進めば進むほど価格が上昇し、利益が増えることになります。このあたりのことも、自分の頭で考え判断することが必要になります。

95

ミニバブルの気配

2013年1月21日

世界は金余りの状況にあります。行き場のないマネーが、金融機関や企業の中で眠っています。世界経済の方向性がはっきりすれば、動き出すマネーです。

日本の株価が上昇しています。日本が、世界の株価上昇をリードしているという論評がありますが、これは間違いです。日本よりも先に、世界のマーケットが上昇トレンドに入りました。
日本株の上昇が鮮明になったのは昨年の11月からで、リーマンショック前の高値からは、まだ25%程度も低いレベルにあります。アメリカの株価は、昨年の3月にショック前を上回りました。イギリスや香港などの株価が底を打ったのは、昨年の5~6月で、株価はショック前に近づいています。
アメリカの財政の崖の議論は、3ヶ月引き伸ばされます。アメリカ、中国などの景気が、回復する傾向を見せています。EUは取りあえず落ち着いています。アメリカを中心にして、リスクの高い株などへマネーが動き始めました。だから、株式投資万々歳というわけではありません。こういうときにこそ、リスクの低い投資の比重を大きくし、一部の資金を、思いきってハイリスクの投資に回すことが、必要になります。

ローリスク・ミドルリターンの投資先は、債券やREITのファンドになります。その中でも、価格が安定していて配当利回りが高いファンドが、お勧めです。以下に、そのようなファンドの年間トータルリターン(価格上昇率+配当利回り)をあげておきます。

アジア高利回りリート・ファンド・リラ:66.3%
エマージング・プラス・成長戦略コース:38.8%
新興国公社債(通貨選択型)豪ドル:35.1%
エマージングボンド豪ドルコース:32.6%
(通貨選択S) 新興国債券<豪ドル>:31.0
フィデリティ・USリートB:29.3%

以上のファンドは、銀行や証券会社で販売しています。日本株の投信が上の成績を上げ続けるのは、ほぼ不可能です。残念ながら、新興国中心で、対象の通貨は豪ドルが多くなります。

さわかみ投信の澤上会長が、テレビで、日経平均株価が5~10万円に上がる可能性を、述べていました。その根拠は馬鹿げています。国民が、自分の金融資産を全て株式投資に回すことを、前提にしています。国民の金融資産の大部分は、銀行などを介して国債購入に当てられてしまいました。政府債務は1000兆円に達しています。このマネーを株式投資に回すためには、政府が、1000兆円規模の現金を、国民に返済しなければなりません。こんなことをやれば、株価上昇ではなく、日本が破滅してしまいます。
このところ、日本株ファンドは急速に値を上げています。さわかみファンドの年間トータルリターンも、13.1%になりました。しかし、このファンドのランキングは、全ファンドの中で578位に過ぎません。澤上氏のような、子供だましの理屈を考える投資家には、だまされないようにしたいものです。

94

過剰管理社会の若者

2013年1月14日

日本で生まれ育った日本人は、日本が厳しい管理社会であることに、なかなか気づきません。海外旅行をしても、他国との管理レベルの違いを肌で感じるのは難しい。
「これをしてはいけない」「あれをしてはいけない」「こうしなければならない」「ああしなければならない」という無数の規制、規則、習慣によって、保育園、幼稚園から老人ホームまで(ゆりかごから墓場まで)、日本人はがんじがらめに縛られています。生活の場であるマンションに、多数の規制や規則があります。道路を歩いていても、無数の規制と規則の中にいます。

今の若者は内向き思考になっている、とよく言われます。その理由として、日本の生活は快適すぎるので、内向きであることに完全に満足しているのだ、と説明されます。本当でしょうか?
私は異なる指摘をしたい。過剰管理社会で生まれ育った若者は、自分ががんじがらめになっていることを、意識することがありません。管理の枠内で生きることを、無意識的に選んでいます。管理の枠からはみ出ることは、意識の上に上がってきません。外向きになって世界に目を向け、海外へ雄飛しようなどという発想は出てきません。

ところが、海外へ出て、自分の判断と責任において、自由な生活ができることに気づく若者がいます。日本の管理社会がとても息苦しかったことに、突然に気づくのです。
No.93に書いたテレビ番組に、そのような若者が登場しました。日本にいたときには、ブタに触ったことのない若い女性が、カンボジアでブタ農場を見た途端に、ブタ飼育のとりこになってしまいました。自分にその気があれば、いつでもブタ農場の経営者になれる!有り金をはたいて十数頭のブタを買い、カンボジアでブタ農場を始めてしまったのです。別の若い男性は、日本でマッサージをやった経験がなかったにも関わらず、カンボジアで受けたマッサージの乱暴さに驚いて、日本式マッサージの店を開店してしまいました。
このような若者は、金銭的にはとても苦労しています。けれども、晴れ晴れとした表情が印象的です。抑圧から解放された人間の表情です。自分の責任と判断において、自由に自分の人生を動かせることに気づいた若者。管理されきった安逸な生活をおくるよりも、一人の人間として自由に生きることに、大きな喜びを感じるのです。

いつの時代においても、前の世代は次の世代の行動を批判します。しかし、現在の日本の若者は、今までの世代とは違って、大きな可能性を秘めている、と私は思っています。上記の若者は目立たないけれども、ニュースなどで目立つ若者がどんどん出てきています。国内では普通の若者の範疇に入っていたのに、突然に世界へ出て、世界のトップに躍り出てしまいます。そういうことを何のてらいもなくやってのけます。活躍する分野は、スポーツ、音楽、ダンス、料理、デザイン、建築など多岐に渡ります。
日本の若者は、必要に応じてどこへでも気軽に出て行くことができる、ボーダーレスな心理を、間違いなく身に付けてきました。若者の心理の奥底は、内向きではなく外向きになっているのです。

93

異質を悪とする間違い

2013年1月9日

日本人だけではなく、世界中の人たちがおちいりやすい誤解があります。
宗教も含めた広い意味での風俗習慣は、住んでいるところの自然環境と生活環境によって、作られます。長い時間をかけて作られた風俗習慣は、そこに住んでいる人たちにとっては、合理的なものです。ところが、環境が異なる別の土地に住んでいる人たちには、他の民族の風俗習慣は、しばしば異様に見えます。メディアや交通の発達によって、人々が異なる風俗習慣に接する機会が、飛躍的に増えました。異質な風俗習慣に衝撃を受ける機会が増えたのです。このとき、人々は、異質な習慣を悪いと即断してしまいます。

フランスで政治問題になったイスラム教徒のチャドルは、その典型的な例になります。目しか見えないチャドルを着た女性は、日本人の普通の感覚からも異様です。ところが、歴史的な背景を探れば、遊牧民族にとっては、チャドルは極めて合理的な女性の服装であることを、理解できます。
家畜を追って長距離移動する遊牧民族の男性。オアシス周辺の集落に残されるのは女性、子供、年寄りだけになります。遠方の土地から移動してきた見ず知らずの男たちが、そのような集落に到着したときのことを、考えてください。強姦されないために、女性が全身を隠していることは、とても合理的な行動になります。

先日、世界のへんぴな土地に住み着いた日本人のドキュメンタリーを、テレビで見ました。アフリカのニジェールに住んでいる、現地人と結婚した日本人女性が登場しました。女性は間もなく出産します。子供の名前は夫が付け、出産するまで、夫は自分が考えている名前を妻にも知らせません。ここの人たちはイスラム教徒です。
この番組を見ていたヨーロッパ系の妻の感想。「あきれたわ。奥さんと相談もしないで、父親が自分だけで名前を決めるなんて。女性蔑視だわ」
私は次のように推測します。その土地には、生まれる子供の父親が、誰か分からなくなるような生活環境があると思います。夫が子供の名前を付けることが、子供の父親であることを、公に認める儀式になっているのではないでしょうか?

クジラを食べるのは、日本人の伝統的な食習慣ですが、グリーンピースを代表とする欧米人は、クジラ猟を激しく攻撃します。これなども、異なる風俗習慣のぶつかり合いです。地球上にはいろいろな民族が住んでいるので、異質な人たちがいるのは当たり前。異質であることは悪いことではなく、人類の多様性を保つためには必要なのです。

92

ラッキーと長男の最終決戦

2013年1月2日

長男は、ラッキーを抱えて振り回す遊びをよくやります。振り回されながら、ラッキーは長男の腕を大きな口でかんでいます。下に降ろされると、四方八方から長男に飛びついて猛烈にじゃれます(攻撃します)。家族の中でのふたりのランキングは、今までははっきりしていませんでした。

私たち夫婦はラッキーに甘く、ラッキーが背伸びをして、キッチンテーブルの上を物色していても、怒ることがありません。逆に、スラッと伸びたラッキーのからだの美しさに、感動してしまいます。
ところが長男はラッキーに厳しい。当然、自分のほうがラッキーよりもランクが上と、思っています。キッチンテーブルを物色しているラッキーを見るたびに、大声でしかります。長男よりも自分のほうがランクが上と思っていたラッキーは、長男の言うことを聞かないばかりか、長男に怒りの表情を見せていました。
1月1日のことでした。ダイニングテーブルに皆が坐る前に、すきを見て、ラッキーがテーブル上のかまぼこを取ってしまいました。長男の堪忍袋の緒が切れました。今まで以上の激しさでラッキーを叱責。かまぼこを急いで食べてしまうと、犬歯をむき出しにして、ラッキーも長男に激しく応戦。中腰になったラッキーと長男が顔を突き合わせて、しばらくにらみ合いました。
折れたのはラッキーでした。前足で長男にそっと触れると、恭順の意志表示をしたのです。ラッキーはそのまま伏せの姿勢になり、しばらく身動きをしませんでした。その後、ラッキーはダイニングテーブルを物色しなくなりました。
ラッキーと長男のランキングが決まり、我が家に静けさが戻りました。

91

モンタのクリスマス

2012年12月29日

ラッキーは、居間にあるモンタの遺骨と遺影の前で、しばしばスフィンクスのポーズを取ります。遺骨と遺影を背に、頭をスッと持ち上げたラッキーの美しい姿は、まるでモンタを守っているようにりりしく見えます。
モンタはディンゴ系の雑種犬、ラッキーは純系のバセンジー。オーストラリアと古代エジプトが原産の2頭。由来は全く異なるのに、大人になったラッキーの顔は、モンタにとてもよく似てきました。妻は、スフィンクスになったラッキーを、つい「モンタ」と間違えて呼んでしまいます。私は、冗談交じりに、「モンタがラッキーになって、私たちのところへ戻ってきてくれた」、と言います。

長男は、長い間私たちから離れて住んでいましたが、クリスマスには必ず家へ戻りました。次男も含めて家族全員がそろうと、モンタはソファーの真ん中に坐って大満足。ところが、モンタの犬生最後のクリスマスに、長男は家に戻りませんでした。イヴの日の夕方に、モンタは玄関に横になって、帰るはずの長男をずっと待ち続けたのです。その2週間後にモンタは永眠しました。
モンタは、シャンパンの栓を開けるときの「ポン」という音が、大嫌いでした。私たちがシャンパンを手に持っただけで、怒ったのです。シャンパンはいつも別室で開けていました。ところが、ドアーを閉めても「ポン」は聞こえます。モンタは怒って「ワン、ワン」と大声で吠えました。
ラッキーは、シャンパンの栓開けを全く気にしません。ラッキーに興味があるのは、コルク栓をかじることです。かじっても食べることはないので、しばらくおとなしくさせるために、自由にかじらせておきます。
犬にも、いろいろな個性があります。

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