図1は、筆者が、アメリカのFirsTrade口座に保有している、投信とETFの直近5年間の価格比較チャートだ。図2は、日本株の投信とETFの5年間価格比較チャート。「勢い」の差に注意していただきたい。
このエッセイで、アメリカに投資口座を開く方法と、世界への投資戦略、売買のタイミングの計り方などを、具体的に述べる。こういう話に慣れていない皆さんが、最後まで読むには、間違いなくかなりな忍耐力を必要とする。そこで、アメリカのネット証券会社FirsTradeに口座を開いてから、7年間の間に、筆者の投資資金がどれくらい増えたのかを、まず書いておきたい。皆さんが、最後まで読む気力を奮い立たせるための助けになれば、幸いだ。
リーマン・ショックの激動を乗り越えて、7年間で、ドル換算ではFirsTrade口座の資金が、2.6倍に増えた。
投資に与えた負の影響は、リーマン・ショックばかりではない。円高が大きく進み、円換算での保有資金は減ってしまった。それにも関わらず、円換算でも、FirsTradeに持っている資金は、1.8倍に増えた。
素人投資家が利益を確実に得るためには、「時の利」を有効活用することが大事になる。より具体的に書けば、市場が底を打ち、数年単位の上昇トレンドが始まったあとに、投資を開始すればいい。ここで大事なことは、底を打ったあとにやって来た上昇トレンドが、明確になっていることだ。
これは、株式投資では順張りになる。上昇トレンドが明確になってから投資を始めるので、失敗する可能性が小さくなる。欧米のプロの株式投資家が、よく使う手だ。
これに対して、 日本の素人の株式投資家は、逆張りを好む。株価が大きく下がった時点で株を買えば、あとは待っていても、株価は大きく上がると考える。大儲けを企んでいるわけだが、株価下落には下落する原因があり、この原因が取り除かれていなければ、株価は更に下がるので、失敗する可能性が大きい。
あとで説明するように、株や商品の数年に渡る上昇トレンドが、少し前に始まったと思われる。この推測が正しければ(正しいかどうかは数年後に分かる)、ここ1~2年が投資のチャンスという結論になる。このチャンスは、大雑把にいえば、10年に1~2回やって来るだけだ。
個人投資家は、世界の動きを大局的に判断した上で、株よりも投信を購入するほうがいい。なぜならば、新聞、雑誌、テレビなどの一般的なメディアから、大局的な世界の情報は容易に入手できるのに対して、個々の企業の内部情報を入手するのは、素人には困難だからだ。的確な情報を持たずに投資をすれば、あとは運頼みになり、勝率は宝くじと余り変わらなくなる。
企業の情報は、投資家にきちんと開示されていると主張する、その筋の関係者がいる。PER、ROE、PBRなどの財務指標や、株式売買の出来高を考慮すれば、投資すべき企業を選び、投資のタイミングを計ることができると、アナリストはいう。それを信じて株式投資をすると、損失をこうむる可能性がある。私の投資経験から、そう断言できる。
企業の業績は、1週間や1ヶ月で大きく変わるはずはないのに、株価は大きく変動する。この事実から、株価は、企業の業績とは余り関係のないところで、人為的に操作されていると、結論づけていいのではないか?
株価に対しては、機関投資家の影響が極めて大きい。機関投資家は、莫大な量の資金を動かして、企業の業績とは無関係に、株価を操作できる。更に、インサイダーまがいの取引が大がかりに行われていることは、ほぼ間違いがない。巨大投資企業のゴールドマン・サックスが、インサイダー取引疑惑で、アメリカで調査を受けている。
日本でも、インサイダー取引が摘発されたというニュースには、事欠かない。株式増資の情報が、証券会社に普通に流されているというニュースも、ある。
機関投資家がインサイダーまがいの取引をしたのでは、個人投資家などは赤子と同じになる。
このような機関投資家の動きに関する情報を、個人投資家は入手できない。株価の動きに決定的な影響を与える情報を持たずに、株式投資で利益を上げることは、極めて困難だ。
また、中国のような、政治が経済に甚大な影響を与える国では、政府が物価抑制のための食品価格統制を発表しただけで、食品メーカーの株価が急落する。中国政府の決定を、日本の個人投資家があらかじめ知ることは、不可能だ。
投信の価格は、多数の企業の株価の平均になるのだから、世界の大きな動きを見ていれば、トレンドはある程度予想がつく。世界のどの地域の、どの業種の投信へ投資すればいいのかを、素人でも判断できる。
まず大局的な観察をしてみよう。
この10年程、世界は驚くべき速さで一体化しつつある。グローバル化などという言葉は、もう古い。世界が一つの国になるような、人類が初めて経験する劇的な変化だ。
技術面では、インターネットの発達による、時間差のない情報の共有化が進んでいる。しかもこの情報は、ありとあらゆる分野に及ぶ。政治的には、NAFTA、EU、ASEAN、APECのような地域統合がある。経済面でも、FTA、EPA、TPPのような統合が進んでいる。金融の分野では、ヘッジ・ファンドに見られるように、莫大な量の資金が、瞬時に世界を闊歩してしまう。
また金融の世界化は、最近のニュースが明瞭に示している。リーマン・ショックに引き金を引かれたアメリカの金融危機が、すぐに世界各国、特に先進国へ飛び火し、経済停滞を含む甚大な影響を残した。EU圏GDPのわずか2.5%しか占めないギリシャの財政破綻が、EU全体の財政危機を顕現させた。その結果、アイルランド、ポルトガル、スペインなどへ、財政破綻が飛び火する可能性が語られている。
航空機による人と物資の大量輸送が進み、運賃が低下した。普通の庶民が、世界中の主要な街へ1日で行けるようになった。小さくなった世界では、経済的な平均化が進むだけではなく、食事やファッションを含む生活スタイルまで、平均化してしまう。
以上の時代状況を考慮して、 情報、政治、経済、金融、社会などの分野で、世界が一体化しつつあり、各国の経済は、世界平均へ向かって収斂していくという、大局観を持つことがまず必要になる。
世界平均よりも賃金や物価が高い、日本のような国においては、賃金も下がれば物価も下がる。下落圧力がかかるのだ。こう考えれば、日本のデフレは自然な流れと、捉えることができる。
世界平均よりも賃金や物価が低い新興国では、中国などのように、賃金にも物価にも自然な上昇圧力がかかる。先進国のデフレと、新興国のインフレが同時進行している現状は、世界の平均化が進んでいることを、如実に示している。
世界平均へ向かって収斂するとはいっても、日本の中でも、東京と沖縄が、賃金水準も物価水準も異なるように、ある程度の差は残る。ただし、各国の賃金や物価の差が、数倍あるいは10倍以上になっている現状では、平均化が間違いなく進行する。
アメリカのFRBが、2010年11月に、国債を金融機関から6000億ドル買い入れるという、大規模な金融緩和策を発表した。これは、金融機関を経由して、50兆円にも及ぶ資金が、市場へ流れ出ることを意味する。金融危機後の雇用、住宅、個人資産問題を解決するために、経済活性化につながる、このような緩和が必要だという。
この金融緩和は第2段だった。FRBが緩和へ舵をきったのは07年だ。状況次第では、アメリカは更なる緩和を実施する。アメリカ経済の弱さと、回復の目途が立たない現状を考えれば、緩和はこれからも実施されると、考えたほうがいい。
アメリカの金融緩和は、間違いなくドル安につながる。緩和が長期に渡れば、アメリカの国債を大量に保有している日本などに、財政面で大きなマイナスの影響が出てくる。日本が所有する、アメリカ国内の資産の価値が減少するからだ。
ドル安は、国際比較において、アメリカの賃金や物価を下げることになる。これは世界平均化の流れに沿ったものであり、アメリカ政府の思惑はともかく、客観的には自然な流れといえる。
リーマン・ショック後に、新興国経済は比較的早期に回復し、2008年末から09年初めにかけて、株価が底を打った。新興国への資金の流れは、その当時から既に始まっていた。
アメリカの金融緩和が、アメリカ経済を活性化させるのではなく、投資効率の高い新興国への資金の流れを、加速させることになった。アメリカの金融緩和が、新興国の株価上昇のダメ押しになったのだ。
新興国へ流れ込む資金は、国際金融協会によると、2010年に8250億ドル(70兆円)に達するという。前年よりも4割の増加だ。
投機資金は、国際商品市場へも流れ込んでいる。金、銀、銅、鉛、原油、穀物などの価格が、軒並み高騰している。商品価格の上昇は、先進国よりも、もともと物価が極端に低かった新興国に、より大きな影響を与える。新興国のインフレを加速させる。これも、世界平均化の流れの一環と捉えられる。
日本企業は、製造部門を新興国へ移転しているばかりではない。市場として重みを増している新興国において、製品の販売を強化している。
日本企業にとって、新興国の重みが急速に増している。
地域別利益を比較すると、2000年には、日本74%、アメリカ15%、新興国9%、ヨーロッパ2%だった。これが2010年には、日本52%、新興国36%、アメリカ10%、ヨーロッパ2%となっている。
間もなく、日本企業の利益は、国内よりも新興国が多くなるという、逆転現象が起こる。これは、日本にとっては決定的な時代の変化を意味する。
日本企業が手元に持っている現金・預金は、200兆円を越えている。新興国需要の拡大で、現金収入が増えたことが、現預金増加の主要な原因だ。
企業は、手元資金の多くを預金や債券などで運用しているが、年率換算の運用利回りはたった0.8%。この資金は、間違いなくいずれ動き出す。その一部は、既に海外企業の買収に回されている。新興国の成長に確信を持てれば持てる程、より多くの資金が新興国へ向かうと考えるのが、自然だ。
国内投信市場の変化も明確になってきた。新規購入から解約・償還を差し引いた、公募投信への資金流入額は、2010年11月まで、20ヶ月連続で入超になっている。
ところが、国内最大の投信であるグローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)の残高が、2008年の6兆円弱から、2010年11月の3兆円弱にまで減っている。
グロソブは先進国の債券で運用されている。先進国の金融緩和政策だけを考えれば、この減少は驚くべきことだ。投資家は、先進国の金融、財政、経済に確信を持てなくなっている。リーマン・ショックと欧州の財政不安が原因になった、先進国の国債や株の価格下落は当分続くと、判断をしている。
アメリカ・ドルやEU・ユーロなどの先進国通貨は、円に対して切り下がっている。しかし、新興国の通貨のトレンドは異なる。ブラジル・レアルは、2009年以降、円に対して切り上がっている。インド・ルピーやロシア・ルーブルのレートは、ほとんど一定だ。オーストラリアは先進国だが、オーストラリア・ドルは切り上がっている。メディアは円高、円高と喧伝するので、全ての通貨に対して円が切り上がっていると思いがちだが、現状はそんなに単純ではない。
時代状況を考えると、いずれ、ほとんどの主要通貨に対して、円は安くなると思われる。
900兆円を越える日本の国家債務は、急速にふくらんでいる。政府への資金供給源になっている、国民の金融資産が、近い将来に底をつく。債務は余りにも巨大すぎて、債務を解消するための抜本的かつ具体的な対策を考えることは、不可能に近い。金融資産が底を突いたときに想定される事態は、あちらこちらで述べられているが、間違いなく円安を誘導する。最悪の場合は、財政破綻によって円は暴落する。
円安は、ドル換算で、日本の賃金と物価水準の低下を意味するのだから、世界平均化の流れからは自然だ。ただし円の暴落は、食料価格の暴騰などで庶民を直撃する。自分の身は自分で守るしかない個人は、このことも考えて、今行動せざるを得ない。
少し長くなったが、ここまでが、このエッセイの導入部分だ。以上を踏まえた上で、世界の投信へ投資することを考える。国内にも、海外へ投資する投信を扱っている証券会社が、数多くある。しかし、アメリカはやせても枯れても、やはりアメリカだ。 世界を見つめた投資は、アメリカの証券会社経由のほうが、情報量においても本数においても手数料においても、勝っている。
アメリカに口座を開いて投資をするには、円をドルに変えなければならない。今後円高に動けば、交換レートで損失が出ると思う人が、いるかもしれない。アメリカ国内の株で運用する投信ならば、その可能性を否定はできない。しかし、アメリカ以外の国に投資をするのであれば、その心配は小さくなる。ドル安になれば、投資先の国における株価に変動がなくても、ドル換算では投信の価格が上昇することになる。即ち、ドル安は相殺される。
日本やアメリカを含むどの国にも、その国に住んでいない人(非居住者)が、口座を開くことを認めない証券会社が、数多く存在する。 非居住者が口座を開くことを認めている、アメリカの最も使いやすいネット証券会社は、FirsTradeだ。 まずFirsTradeのトップ・ページ を開こう。図3のトップ・ページが出てくる。
口座の開き方を具体的に説明する。下の説明を追いかければ、理解できると思う。難しいことではない。なお記入者は、最も一般的な日本人を想定している。
口座開設記入の仕方
私は、これ以上は進まなかった。なぜならば、これ以上進むと、新しい口座を開いてしまうからだ。このあとは、暗証番号の設定や、手紙のやり取りでの確認作業がある。基本情報は既に入力されているので、難しいことはない。
FirsTradeは、つい最近、サイトの全面改定を行った。今までとは違う手続きになっているかもしれないが、旧サイトでの口座開設手続きについて、ネットに書いている人がいるので、参照されたい。
Firstrade 口座開設方法
口座開設後に、図3のFirsTradeトップ・ページに、User IDとPasswordを入力し、New Site!にチェックを入れる。SUBMITをクリックする。図4の自分のトップ・ページが現れる。なお、以下、筆者の個人情報が載っている箇所は、黒く塗りつぶしてある。
FirsTradeが扱っている投信ファンド(fund)数は2万2589もあり、手数料のかからないノーロードも数が多い。手数料が安いかゼロの株価指数連動ETFは、1099ある。自由に換金ができるOpen End ETFの数は、1074だ。株(stock)の銘柄数は9178。
ファンドの売買は、申し込んでから2~3日で確定される。ETFと株は、成り行きの場合、市場が開いていれば即売買が成立する。
購入したいファンド、ETF、株のスクリーニングには、まずResearch and Toolsをクリックする。次に、Screenersをクリックすれば図5が出るので、Stock Screener、ETF Screener、Mutual Fund Screenerのいずれかをクリックする。
Fund Screenerを開くと、図6のように、SELECTED CRITERIAの箇所に、選択項目がいくつかあることが分かる。面倒なことは止めておこう。たった一つの基準で十分だ。Portfolio and Riskをクリックして開き、Objectiveにチェックを入れる。次にObjectiveウインドウをプル・ダウンすれば、地域や分野・業種の項目が出てくる。
貴金属投資に将来性があると考えれば、プル・ダウン・メニューから、Precious Metalsを選ぶ。赤文字で、74本の貴金属ファンドのあることが示される。SHOW ALL RESULTSをクリックすると、それら74本のファンドの全てが表示される。更に絞り込むには、図7のようなファンド・リストから、残高(Total Net Assets)の多いものや、1、5、10年のリターンを見て、リターンの高いものを選べばいい。
以後の操作は、売買を含めて、ファンドのフル・ネームではなく、全て5文字のSymbolを使うことになる。選んだファンドのSymbolは必ず控えておく。
他の業種や国・地域でもスクリーニングをかければ、何十本ものファンドがリスト・アップされるはずだ。熱意のある人は、何百本も選ぶかもしれない。この中から、購入するファンドを最終的に決定する方法として、下に書くテクニカル解析を勧めたい。
注意しなければならないのは、ETFや株は購入に何の問題もないが、ファンドにはアメリカ非居住者が購入できないものが、かなりあることだ。 自分が選んだファンドが購入可能かどうかを知るには、ログイン後にサイト内supportページから、mailで問い合わせればいい。また購入不可であれば、注文を出してから、サイトのmailページにrejectedという内容のメールが届くので、購入できないことが分かる。
図8がファンド購入の画面だ。TradingからMutual Fundsをクリックすれば、このページが出る。Buyにチェックを入れ、ファンドのSymbolをSymbolウインドウに、購入金額をAmountウインドウに入力する。配当金などを再投資するならば、Dividents and Capital Gainsで、上の○にチェックを入れる。PREVIEWをクリックして手続きを終える。
ファンド購入で、購入可・不可の確認が面倒な人は、ファンドの代わりに、希望する国、地域、業種に投資するETFを探せばいい。図9のETF Screenerのウインドウから、基準を一つだけ設定する。ETF Typeにチェックを入れ、プル・ダウン・メニューから、いつでも売買可能なOpen Endを選ぶのだ。SHOW ALL RESULTSをクリックすれば、1076のETFが示されるので、忍耐強く投資の候補を選ぼう。ETFのSymbolは3文字だ。これも控えておく。
下で述べるテクニカル解析の結果、最終的にEWZ(ブラジル株価指数ETF)を選んだとする。購入する場合は、TradingからStocks/ETFsとクリックすれば、図10が出る。下段に市場価格が示されるので、Last(現在の1株価格)を確認。Buyを選び、Sharesに株数、SymbolにEWZ、市場価格の成り行きで買う場合は、Order Typeのプル・ダウン・メニューでMarketを選ぶ。最後にSEND ORDERをクリック。
購入法の説明が先になったが、次に、ファンドの最終的な選別法に入る。 個人投資家は、往々にして、希望的観測即ち夢を、客観的な判断と思い違いしてしまう。このような心理的弱点を克服しなければ、投資で勝つことは難しい。余計な感情を排除して判断するために、もっぱらチャートのテクニカル解析に頼りたい。
解析は
YAHOO! FINANCE
で行う。INVESTINGをプル・ダウンすれば、Mutual Funds、ETFあるいはStocksを選ぶことができる。Fundsを選んで、Enter Symbolに、上で調べたファンドのsymbolを入力し、Get Quoteをクリックする。出てきたページにあるチャートをクリック。
このチャートを自分の好みに変える。取り合えず、Range: 5y(ファンド設定以来5年以上経っていなければ、1yか2yを選ぶ)、Type: Line、Scale: Linear、Size: Lをクリックしておこう。
このチャートを使って各ファンドを比較し、絞り込む。Compare: TEFQX(最初のチャートをこのファンドにした場合) vsの後のウインドウに、選択したファンドのうちの5本のsymbolを入力する。symbolの間は、,(コンマ)で区切る。1回に5本以上は比較できない。Compareをクリックすれば、図11のようになる。この比較チャートは、5年前を起点に、価格変動を%で示している。ここから、拾うファンドと捨てるファンドを判定する。
まず、5年間に渡って、価格がよりスムースに右肩上がりになっているものを、選ぶ。ほとんどのファンドが、リーマン・ショックのときに大きく落ち込んでいる。この落ち込みが特に大きいファンドは、ボラティリティが高いことを示唆している。
次にrangeを2yにして、2年間の動きを比較する。これは、時期的にリーマン・ショック後の価格比較になる。素直な右肩上がりのファンドを選ぶ。
直近の勢いは1yのチャートで比較する。直近が下落傾向のものではなく、上昇傾向が強くなっているものを選びたい。近い将来に、価格の上昇を期待できるからだ。
短期間で上昇が特に大きいものは、短期に、大きな落ち込みを示す可能性がある。しかし、短期間で変動が激しくても、長期で右肩上がりならば、長期投資には向いている。短期間で素直な右肩上がりでも、長期で上昇が低ければ、長期投資には向かない。5年チャートも考慮し、自分が考える投資期間から判断して、どれを選ぶかを決定する。
以上で、候補ファンドの数はかなり絞れたと思う。最後に、テクニカル解析で購入するファンドを決定する。
まず、価格チャートに、図12のようにテクニカル指標を付け加える。
MACD(移動平均手法)、MFI(マネー・フロー・インデックス)、ROC(変化率)、RSI(相対力指数)、Slow Stoch(スロー・ストキャスティックス)、Fast Stoch(ファースト・ストキャスティックス)、Vol(出来高)など、使ったことのない人には暗号としか思えない指標を、価格チャートの下にクリック一つで加えることができる。
指標の意味は、ほどほどに知っていればいい。
最も大事なことは、価格のチャートとこれら指標をよく見比べ、指標の動きから、売買のタイミングを判断できるようになることだ。
この能力は、いろいろなファンドの指標の動きを、注意深く分析することによって、養うしかない。
指標は、全てを使えるようになる必要はない。自分が一番使いやすい指標、即ち今後の価格の変動を予想するのに、最も信頼性が高いと思われる指標を、使えばいい。私は、中長期的な値動きを判断する指標として、特にMACDとRSIを重視している。
指標から、価格が底を打ち、長期トレンドが右肩上がりになったと確信できれば、買い出動の準備をする。ここで大事なことは、価格が底を離れ、上昇傾向に入っていることを、指標が明確に示しているかどうかだ。
MACDとRSIの、短期的な一つひとつの底と天井が上昇傾向にあることが、買い出動の大事なサインになる。このサインが出たならば、短期指標が底を打った時点で、買う。
売りのタイミングは、買いとは逆になる。指標の短期的な底と天井の位置から、大きなトレンドが右肩下がりになったかどうかを、まず判断する。右肩下がりの長期トレンドに確信が持てたならば、短期的に指標が天井を打った時点が、売りになる。
最終的に買いの日を決めるために、Stochを使う。Fast Stochが短期的に底を打ち、上昇し始めると、Slow Stochが遅れて底を打つ。ここが買いの日になる。売りの日はその逆だ。
FirsTrade口座における、筆者の成績に触れておきたい。勿論、どのファンドとETFを選ぶかによるが、アメリカでの成績は、アメリカの投資環境が悪化しているといわれる割には、極めて順調だ。
2003年に、FirsTrade口座を使って投資を始めたが、最初に書いたように、7年後の2010年12月には、合計評価額がドル換算で2.6倍、円換算で1.8倍になった。
上に書いたような大局的な判断をもとに、個々のファンドの売買やスイッチングを、常に行なってきた。時間的には、株よりも長いスケールでいいが、 時機を見て売買やスイッチングを行うことは、大事だ。世界経済は急速に変化している。ただ単に保有し続けたのでは、儲けが出るどころか、損失を呼び込むことになる。
筆者の判断では、過去の大きな転換点は2006年だった。それまでは、RYSEX(Special Equity)、AVALX(Value)、BURKX(Financial Services)、FBRVX(Small Cap)などのアメリカ国内の株へ投資するファンドを、多く持っていた。しかし、2006年に、LETRX(Russia)mEKWCX(Global Precious Metals)、EMGCX(Emarging Markets)、EMGIX(India)、IGCAX(Global Real Estate)などのアメリカ国外へ投資するファンドを、主にした。
2008年9月にリーマンが破綻したことから、筆者の判断は正しかったことになる。
世界の経済・金融の現状を鑑みて、2010年11月から11年2月にかけて、更なるスイッチングを行いつつある。この方向転換後に所有するファンドとETFは、TEFQX(Technology)、EKWCX(Precious Metals)、JJP(Precious Metals)、EWM(Malaysia)、GAF(Middle East、Africa)、GML(Latin)、LETRX(Russia)、EMGCX(Emerging)になる。状況が変われば、今後も保有ファンドとETFを変える。
リーマン・ショック後のこれらファンドの2年チャートは、図13のようになる。TEFQXの価格曲線は、安定した右肩上がりになっている。各指標にも問題がない。貴金属へ投資するEKWCXやJJPも、中長期指標は、価格の騰勢が保たれていることを示している。
アジア投資のために、マレーシア株価指数のETFであるEWMを選んだ。このETFは、他のアジア投資ファンドやETFよりも、安定した右肩上がりになっている。日本を除いたアジアへの投資を重視しているが、他の投資口座との兼ね合いで、FirsTradeではEWMを選んだ、という事情もある。ラテン・アメリカやアフリカなどの新興国も、重視している。中国、ロシア、インドなどのBRICsは、確信が持てないので、国単独では比重を下げている。
なお納税は、 日本での確定申告が必要になる。 ネットを調べれば、海外投資の納税を親切に説明している人がいる。売買記録、利益、手数料、引かれた税金などの記録は、FirsTradeの自分のサイトで、My AccountsからE-Docsをクリックすれば、辿りつける。Search CriteriaでTax Docsにチェックを入れると、各年の確定申告用資料を、プル・ダウン・メニューで入手できる。
書くと長くなるが、まず自分でやってみれば要領が分かってくる。仕事で苦労しながら収入を得るのよりは、楽だ。
頑張ってください。Good luck!