Essay 58

海外株式の確定申告書作成

2018年2月27日
電子証明書などの事前準備

今まで、アメリカとオーストラリアにおける、株式等の売買に関するエッセイ評論をいくつか書いた(「セリング・クライマックス」「暴落局面で株式へ投資する方法」「不況でも年7%の利益を上げる投信」「アメリカに口座を開いて世界へ投資」)。

海外における株式などの譲渡分を申告するのは、かなり面倒だ。国内における譲渡分は、証券会社の特定口座を使っているならば、年間取引報告書に記載されているデータを、そのまま確定申告書に書き写すだけでいい。海外では、会計年度や取引報告書の様式が、日本とは異なる。年間取引報告書のデータをそのまま使うことはできない。個々の銘柄の売買を記載した取引明細書をもとに、自分で譲渡計算をしなければならない。国内の売買とは異なり、為替レートを考慮した計算になる。取引数が多くなると、計算がとても大変だ。

税理士に頼むにしても、様式が異なる、英文の明細書を読み解くことができる税理士は、多くない。確定申告書の様式が、海外譲渡を例外扱いしているので、データの記入箇所を探すのに苦労する。税務署員でさえも試行錯誤の状態だ。
私は今まで確定申告で苦労した。そのおかげで、全体的な流れを把握できたので、このエッセイ評論でまとめることにした。 電子申告(e-Tax)に多くの利点があるので、電子申告について述べる。最大の利点は、数値の一つひとつを入力すれば、全体的な計算が自動的に成されることだ。煩雑な計算を避けられるだけではなく、計算ミスがなくなる。

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図1:国税庁の申告書作成コーナー
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国税庁のウェブサイトで上のコーナーへアクセスし、「作成開始」をクリックする。

図2:事前準備に必要な項目
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ブラウザは、今では余り使われていないInternet Explorer。他のブラウザでは途中でつまづくことがあるので、極力避けたい。「マイナンバーカード」と「電子証明書(利用者識別番号)」は必須なので、市町村の役所で発行してもらう。「ICカードリーダライタ」には、公的個人認証サービスに対応していないものがあるので、購入時に確認する。初期登録にe-Taxソフトが必要。国税庁のページからダウンロードしインストールする。事前準備が終了したならば、図2下段の「動作確認方法」をクリックする。

図2の最下段に「入力終了(次へ)>」という名の緑色のボタンがあるが、ほとんどのページで、このボタンをクリックすれば次のステップへ進める。「<戻る」をクリックすると、入力したデータが消去されることがあるので、このボタンはクリックしないほうがいい。戻りたい場合は、「入力終了(次へ)>」をクリックし続ける。一周して前のほうのページが出てくる。

作成申告書の選択
図3:認証
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「利用者識別番号」と、役所へ行ったときに自分で設定した「暗証番号」を上のページに入力し、次へ進む。

図4:申告書の選択
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図5:入力方法の選択
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「左記以外の所得のある方」を選択すれば、全項目に対応できる。

図6:分離課税の選択
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海外譲渡分を含む場合、「分離課税の所得」を選択する。「株式等の譲渡所得等」の「入力する」をクリックして次へ進む。

図6最下段の「入力データの一時保存」をクリックすると、申告書をパソコンに保存できる。作業を一時中断する場合はここをクリックして保存し、あとで作業を再開する。随時保存することによって、間違ってデータを消去したときに、データを回復できる。このボタンは、多くのページに配置されている。

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図7:各入力項目への入り口
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海外譲渡分を入力する場合、図7上部の「申告分離課税」を選択する。海外の株式や投信は「一般株式」に分類される(要注意)ので、「一般株式等の取引がある。」に「✔」を入れる。「平成28年分の申告で譲渡損失を繰り越した方」は、「はい」を選択する。

次に「特定口座年間取引報告書の内容」、「株式等の取引明細」、「配当等の支払い通知書の内容」、「利子等の支払い通知書の内容」、「繰り越された譲渡損失」などを、緑色のボタンを順次クリックして入力する。

最下段の「計算明細書の内容を入力する」には触れない。売買数が多い場合、ここから明細を入力するとページ数が膨大になってしまう。「株式等の取引明細などの内容を入力する」から入って、ページを辿るうちに、取引明細を簡潔に入力できるページにたどり着くことができる。

取引明細の入力
図8:海外株式等の取引明細書
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各銘柄の売買において、100株を取得し、その100株を譲渡したならば、譲渡所得の計算は簡単だ。ところが、20株、50株、30株を異なる日に取得し、その後80株を譲渡した場合は、計算法によっては計算がとても厄介になる。

「総平均法」では、3日かかって取得した100株について、1株当たりの平均取得費を計算する。その80倍が、譲渡した80株の取得費になる。
「移動平均法」ならば計算が簡単になる。時期的により早く取得した株を、譲渡した株に順次割り当てる。上の例では、まず20株、50株を譲渡したことにする。譲渡数が80株なので、最後の30株のうちの10株を、この80株に割り当てる。残りの20株は、今後譲渡する株だ。私は、移動平均法で譲渡所得を計算している(図8の銘柄「BABA」)。BABAの欄の「2回以上にわたって取得している。」に「✔」を入れ、取得が複数回に渡ったことを示す。

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全く当たり前なことだが、海外に所有している口座内で売買する場合、売買はその国の通貨だけで完結する。円が入る余地はない。ところが、申告書では、譲渡額も取得額も円で表示しなければならない。譲渡の場合は、譲渡額のドルをTTB(外貨売却レート)で円に換算する。取得の場合は、取得額相当のドルをTTS(外貨購入レート)で円に換算する(図8)。

ここで、上の譲渡所得の計算と同じような問題が発生する。為替レートは日々変わるので、取得日が異なる株式の取得総額を円換算するには、毎日の為替レートを確認する作業が必要になる。売買数が多くなると、とても大変だ。
これには簡易法がある。年平均の為替レートを使って、特定の年に行った全ての株式について、譲渡額と取得額を計算できるのだ。三菱UFJ銀行のサイトで、各年平均の為替レートを確認できる。

国税庁が求める奇妙な譲渡所得の計算法は、投資家に利益をもたらすことを指摘しておきたい。2017年の米ドルのTTS(外貨購入レート)は113円で、TTB(外貨売却レート)は111円だった。すなわち、申告書を書くために円換算するおかげで、投資家は、申告する譲渡所得を2%近く減らすことができる。

図9:海外株式等の譲渡・取得費総額
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取引明細書の最下段に、自動的に計算された譲渡・取得費の総額が示される。それらをここに入力。

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図10:配当額の入力
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海外の株式や投信は、このページでは非上場株式に分類される(要注意)。「2非上場株式等の配当等に関する事項」で、配当を入力するために「個別に配当等を入力する。」の「入力する」をクリック。

図11:配当の入力
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図12:利子の入力
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海外で利子を得た場合、図7の「利子等の支払い通知書などの内容を入力する」から計算した利子額を、上の図の2の「収入金額」に入力する。

外国税額の控除
図13:全項目をチェックできる第一表
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入力が進むと、上の「第一表」の表示が可能になる。この表で、申告する全項目の入力状況を確認できる。未入力の項目がある場合は、そこをクリック。海外で納付した所得税は控除されるので、「外国税額控除」をクリックして下図のように入力する

図14:海外で納付し控除される所得税
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以上、海外で株式等を譲渡した方が、申告書を容易に作成できるように、私の経験を書いたのでぜひ参考にしていただきたい。

国税庁は、個人の海外資産を把握するのに躍起になっている。けれども、申告書の作成が困難では、きちんと申告したい個人の意欲をそいでしまう。確定申告書作成用紙の最後に申告者のコメント欄があるので、申告のたびに私はこの問題を指摘してきた。けれども、残念ながら、一庶民の意見が国税庁を動かすことはない。

<和戸川 純>

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