Google Playブックスの前身のGoogle Printは、書籍データを勝手に印刷できるサービスと誤解され、出版業界から反発を買った。さらに、世界中の図書館が所蔵する書籍を、著作権者に無断でデジタルスキャンし、その書籍データをネット上で公開したことが、問題になった。アメリカの作家協会や出版社協会が、提訴にまで及んだ。Google Playブックスのサービス開始は、2012年だったが、その後、電子書籍の新規登録が中止された。2年前に、新規登録の受付が再開された。このような紆余曲折を経て、現在のGoogle Playブックスがある。
過去の問題はともかく、「あのグーグル」の電子書籍販売サービスだ。世界の20億人以上のアンドロイドユーザーがアクセスする、Google Playに自著が並ぶ。読者にとっては、Google Playブックスで購入した電子書籍を、あらゆる端末で読むことができるという、利点がある。本能的に牙城を守るiPadやiPhoneでも、Google Playブックスの無料アプリをインストールすれば、問題なく電子書籍を読める。書籍を世界で売りたい著者や出版社にとっては、グーグルのサービスは魅力的だ。
残念なことに、過去のトラブルが原因になって、Google Playブックスで販売されている電子書籍は、まだ数が少ない。アマゾンkindleやアップルiBooksの後塵を拝している。しかし、電子書籍の販売に本腰を入れる意気込みが、Google Playブックスのアカウント登録ページ「ブックス パートナー センター」に現れている(図1)。このページを下へスクロールすると、「Google Playブックスでは、この 2 年間で他のどのプラットフォームよりも読者数が増えました(New York Times ベストセラー作家)」などの惹句が現れる。アマゾンやアップルとぜひトップ争いをしてほしい。それが、読者ばかりか、著者や出版社にとっても大きなプラスになる。
アマゾンKindleで、著者が70%の収益分配金を受け取るには、電子書籍の独占販売権をKindleに与えなければならない(「アマゾンKindleで出版・販売」)。私はその契約をしていず、収益分配金は35%になっている。Google Playブックスでは、独占販売権なしでも、販売条件を満たしていれば、70%の分配金を受け取ることができる。このあたりに、業界トップのKindleを意識したGoogleの決意が見える。
電子書籍の販売を開始するには、アメリカの税務情報登録と電子書籍ファイルのアップロードが、必要になる。グーグルの登録方法は、アマゾンやアップルと基本的には変わらない。しかし、微妙な相違があるので、アカウントと税務情報の登録には「SHIBUYA Google Play Books編」、電子書籍の登録には「SHIBUYA Google Play Booksで漫画の電子書籍を出版する方法」を参考にしていただきたい。
税務情報の登録において、プルダウンメニューで現れる住所などの情報が、日本語で書かれているので、登録者の名義をつい日本語で手入力してしまうかもしれない。しかし、この情報は、アメリカの税務当局へ提出されるので、名前をアルファベットで書かなければならない。
グーグルは、著者の銀行口座確認を他社とは異なる方法でやっている。「ペイメントセンター」に著者の分配金振込口座を登録すると、その口座の有効性を確認するために、100円未満の金額が振り込まれる。この金額はランダムに決められ、パスワードの役割を果たしている。私の場合は81円だった。銀行口座への入金を確認してから、その金額を「支払いプロフィールの編集」欄に記入する。これでやっとアカウント開設の手続きが完了する。入金額はデポジットということになっていて、電子書籍が売れると、分配金からこの金額が差し引かれる。本が売れなければグーグルの損失になる。
個々の著者にとっては、100円程度の金額はとても少ない。ネット空間にはあらゆる種類の「悪者」がいる。このデポジットを目当てに、本を売る気がないのにアカウントを多数開設すれば、かなりな金額を入手できる。販売を開始しても、1冊も売れない本が多数あるはずだ。グーグルほどの金持ち企業にとっては、その程度の損失は平気で無視できるのだろう。
上に書いたように、Google Booksは、著作権や販売権で過去にいろいろな問題を経験した。そのためか、著作権と出版権にとても神経質になっている「気配」を感じる。あなたが、アマゾン以外にグーグル(アップルや楽天を含む)でも電子書籍の販売を望むならば、アマゾンのサイトで、「KDPセレクトに本を登録する」に「チェック」を入れない。これに「チェック」を入れれば、アマゾンに書籍の独占販売権を与えたことになる。アマゾンKindleからはいろいろな優遇策を得られるが、他社での販売が認められなくなる。
グーグルで販売されている電子書籍には、いかにもグーグルらしい機能がついている。図2右上の「虫眼鏡」をクリックすると、その下に書籍内検索のウインドウが現れる。書籍の索引よりも有効だ。