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ウイルスと戦う免疫系の謎 (第3部)
Essay 70
日本でコロナ死者が少ない複合要因
2020年6月11日
新型コロナウイルスがヒトへ適応する過程

新型コロナウイルスは、コウモリからヒトへ感染したと言われる。ここで2種類の選択が働いたはずだ。
動物のウイルスがヒトに感染したとしても、最初はヒトの細胞内で増殖する能力が低い。遺伝子の突然変異によって産まれた、多様なウイルス粒子のうち、よりヒトに適応した遺伝子を持つ粒子が、子孫を増やすことになる。これが適応進化を推し進める、第1の選択になる。

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図1.新型コロナウイルスの感染爆発
コロナウイルスの感染史
(資料)外務省海外安全ホームページ

2019年11月17日に、武漢で、「原因不明のウイルス性肺炎」の最初の症例報告があった。しかし、中国当局はデータを公表しなかった。武漢市の発表によると、12月8日に最初の新型コロナウイルス感染者が、確認された。「ヒトからヒトへの感染リスクは、比較的低い」、と武漢の衛生当局が説明した。 WHOへ最初の報告が行われるまでに、さらに1カ月近くが経過した。12月31日にWHOへ報告。
中国の発表によると、2020年1月9日に最初の死者が出た。中国の専門家が、ヒトからヒトへの感染を認めたのは1月20日だった。最初の症例報告からここまでに、すでに2カ月が経過していた。

1月23日に武漢がロックダウンで完全に閉鎖された。中国が海外渡航を禁止したのは、1月27日だった。

1月に、中国以外の国々で、最初の感染者が次々と報告された。過去の生体サンプルを検査したフランスによると、新型コロナウイルスがフランスへ入ったのは、12月だった。日本では1月16日に最初の感染者が確認された。

以上の経過をたどると、2019年12月から2020年2月までの間に、新型コロナウイルスが世界中へ拡散したことは、間違いない。この期間における中国政府の対応が、この拡散を助けた。3月以降に、感染者と死者の数が世界中で爆発した。

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図2.感染から共生までのウイルス進化
ウイルスの進化

ウイルスが変異して宿主に適応し、感染性と病原性が増すと、強病原性のウイルスが、宿主を殺してしまう。これは、ウイルスの生き残りにマイナスになる。

第2の選択で、宿主を殺すことのない、病原性が低下したウイルス粒子が増える。生きながらえることが可能になった宿主の体内で、ウイルス増殖が継続し、ウイルスが体外へ排出される。共存の成立だ。さらにウイルスの進化が進むと、宿主を積極的に生かすことによって、自分も生き残る共生の関係に入る。

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新型コロナウイルスが、どの段階のウイルスなのかを明言はできない。武漢で初めてヒトに感染したのならば、弱毒化する前に、病原性がさらに強くなる可能性がある。しかし、ヒトの間で広範に広がっていたコロナウイルスが、亜種と分類されるほどに変異したのならば、今後は弱毒化すると思われる。

新型コロナウイルス以外に、6種類の亜種のコロナウイルスが知られている。このうちの4つは、通常の風邪の原因ウイルスだ。細胞内で爆発的な増殖をしないので、広範囲に渡る組織破壊が起こらず、病原性が低い。
ウイルスが大量に産生されないので、免疫が効率的に誘導されることがない。結果として、毎年繰り返し同じウイルスに感染することになる。動物からヒトへ感染したのは、かなり前だったと思われる。

コロナ感染爆発の条件がそろっていた日本

中国が海外渡航禁止を発令するまでに、大勢の中国人観光客が日本を訪れた。横浜港にクルーズ船が入港したのが2月3日。クルーズ船では、乗員と乗客計723人の感染が確認され、13人が死亡。クルーズ船へ検疫官や医師、自衛隊員、物資を供給する業者が入った。2月19日に乗客の下船が始まり、乗客乗員約3700人全員の下船が終わったのが、3月1日だった。

パンデミックの初期に、感染爆発の条件が日本でそろった。感染性が高いコロナウイルスが、各種規制がゆるい日本で感染爆発をしても、不思議ではなかった。

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厳しいロックダウンを実施した武漢で、感染者と死者が爆発的に増えた。中国以外で、世界で初めて、イタリアが3月12日に全国的なロックダウンを実行。3万人が死亡し、5月4日に段階的なロックダウンの解除が始まった。イタリアに続いてロックダウンに入った欧米の多くの国々で、感染者と死者の数が爆発した。

武漢のロックダウンの前に、500万人の住民が武漢を去ったと言われる。しかし、武漢以外で感染が爆発した形跡が、中国にはない。韓国では、集団感染が発生した大邱市で、厳しい防疫対策が取られたが、ロックダウンは行われなかった。それでも死者数が最低限に保たれた。

欧米で死者多数、アジアで少数の劇的な違い

表.新型コロナウイルスによる主な国の死者数
人口当たり死者数(注1) BCG接種(注2) ビタミンD 社会規制(注3)
ベルギー 10万3098人 1989年に停止 全国封鎖(≧1カ月)
スペイン 7万3758人 1981年に停止 血中量少 全国封鎖(≧1カ月)
イギリス 6万9804人 2005年に停止 血中量少 全国封鎖
イタリア 6万9206人 接種なし 血中量少 全国封鎖(≧1カ月)
フランス 5万5639人 2004年に停止 全国封鎖(≧1カ月)
スウェーデン 5万2181人 1975年に停止 血中量多 ほぼ規制なし
オランダ 4万3651人 接種なし 全国封鎖
アメリカ 3万8582人 接種なし 地域封鎖
スイス 2万8304人 1987年に停止 全国封鎖(≧1カ月)
カナダ 2万2893人 接種なし 地域封鎖
ドイツ 1万2747人 1998年に停止 全国封鎖
デンマーク 1万2392人 1979年に停止 全国封鎖(≧1カ月)
イラン 1万2088人 1984年から実施 全国封鎖(≧1カ月)
フィンランド 7167人 2006年に停止 血中量多 地域封鎖
ハンガリー 6621人 全員接種 行動制限
ノルウェー 5548人 2009年に停止 血中量多 地域封鎖
ロシア 3452人 全員接種 全国封鎖
ポーランド 3434人 全員接種 全国封鎖
ギリシャ 2098人 全員接種 全国封鎖
フィリピン 1058人 全員接種 地域封鎖
日本 846人 全員接種 Dを含む魚・キノコ多食 行動制限
インドネシア 692人 全員接種 地域封鎖
韓国 667人 全員接種 行動制限
ニュージーランド 558人 1963年後段階停止 全国封鎖
マレーシア 457人 全員接種 全国封鎖(≧1カ月)
中国 417人 全員接種 地域封鎖
インド 391人 全員接種 全国封鎖
アフリカ諸国、中南米諸国ではBCG接種義務

新型コロナウイルスの感染者と死者の数の報道について、注意が必要だ。特に各国の感染状況を比較するときに、意味のない結論を出さないようにしたい。分母になるPCR検査が多ければ、感染率が低くても感染者の数が大きくなる。人口が少ない国では、死者の数が小さくても死亡率が高くなる。

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死亡の判断には、世界のどこでも同じ簡単な基準が適用される。ウイルス核酸を検出する、PCR検査ほどのブレが生じない。そこで、各国の人口を日本と同じ1億2700万人と仮定して、ジョンズ・ホプキンス大学の元データから死者の数を換算した。主な国の死者数は上の表の通り。日本の人口を基準にした人口当たりの死者数なので、日本人に分かりやすい。トップのベルギーと同じ感染爆発が日本で生じたとすれば、10万3098人の死者が出たことが分かる。

一見して驚かされるのは、各国の死者数に極端に大きな違いがあることだ。最も多いベルギーの死者数が、ダントツの10万3098人。日本は846人。表で最下位になったインドの死者数は、391人にすぎない(アフリカの多くの国々はインドよりも少ない)。アメリカとカナダを除いて、ヨーロッパの8カ国が上位の10位までに入っている。

下位10カ国の中に、アジアの国が7カ国入っている。何が、ヨーロッパとアジアの間の、この大きな違いを生み出したのだろうか?これが明確になれば、新型コロナウイルスの再感染に対する、対策を立てることができる。

アジアで死者が少ない理由(その1):BCG

その理由として、BCGワクチンの接種がしばしばあげられる。しかし、免疫がからむと、理解が一筋縄ではいかなくなる。

死者数上位10カ国の中に、現在BCGワクチンの接種を義務づけている国はない。これに対して、下位10カ国の中では、9カ国でワクチン接種が行われている。

上位10カ国のうち、6カ国で過去にBCGワクチンの接種が、義務化されていた。効果の継続は、抗原特異的なツベルクリン反応によって確認される。BCGの効果が続くのは、15年ほどと考えられる。6カ国の中で、最近まで接種をしていたのはイギリスで、2005年に停止。BCGの接種は幼児期に行われる。6カ国の国民におけるBCGの免疫効果は、2020年の現在、ほぼ消えていると思われる。
東欧諸国やギリシャでは、現在も接種が続けられている。これらの国々では、他の多くのヨーロッパ諸国よりも、死亡が抑えられている。6カ国とのこの違いも、BCGに効果があるとしても、生涯続くような長いものではないことを、示唆する。

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図3.BCGによる免疫亢進
BCG接種

コロナウイルスに対する、BCGの免疫効果を考えてみたい。

結核の予防に使われるBCGは、生ワクチンで、ミコバクテリアという結核菌が含まれている。結核菌の細胞壁リポ多糖体が、強い免疫活性能を持つ。結核菌も、マクロファージのエンドソーム内で断片化されたリポ多糖体も、マクロファージに炎症性サイトカインを大量に産生させる。サイトカインは、NK細胞やT細胞の活性化に貢献するだけではなく、マクロファージ自身の活性を高める。
即ち、BCG接種によって、結核菌に対する獲得免疫を得られるばかりではなく、非特異的な自然免疫が亢進する。この自然免疫によって、コロナウイルスに対する特異的な獲得免疫が、容易に誘導される、と結論できそうだ。

BCGの劇的な効果に対する疑問

ここで大きな疑問が湧く。BCG接種は幼児期に行われるので、現在接種を義務化している国でも、15~16歳までの人々にしか効果を期待できない。接種国の大人でBCGの効果が失われているならば、死者が極めて少なくなることは考えられない。
ツベルクリン反応では検出できない、自然免疫の高まりが、一生持続するのだろうか?それが事実ならば、過去に接種が義務化されていた、上記の6カ国の多くの大人たちに、新型コロナウイルスに対する抵抗性があるはずだ。死者数の爆発と矛盾する。

結核菌の一部が、数十年に渡って、マクロファージ内に潜伏感染することがある。ストレスなどによって免疫力が落ちると、結核菌が再増殖して、2次結核を発症する。これによって再び炎症性サイトカインの産生が増し、コロナウイルスへの免疫力が高まるかもしれない。場合によっては、サイトカインの産生が爆発的になり、新型コロナウイルスで認められている、サイトカインストームが生じる。
このようなことが起こっても不思議ではない。しかし、これが事実ならば、15年以上前に接種を止めた国々でも、死者数が抑えられていなければならない。また、新型コロナウイルスとの関連で、2次結核の発症は報告されていない。現時点では私の仮説の域を出ない。

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免疫誘導の特異性の面からも疑問が生じる。結核菌であるBCGは、コロナウイルスと抗原的に異なっている。コロナウイルスに対して劇的な効果があるならば、BCGが誘導した非特異的な自然免疫が、その役割を担っていなければならない。
それならば、あらゆる種類のウイルスの感染が、BCG接種を受けた人々では抑制されるはずだ。ウイルスばかりではない。細菌感染にも効果がなければならない。全ての感染病が、BCG接種国で抑制されている、という事実はない。ただし、いくつかの感染病において、限定された条件下で抑制効果がある、という報告はある。

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未解決の問題が多々あるが、それでもBCGには注目すべき特徴がある。実験動物において、抗原に特異的な免疫反応(獲得免疫)を高めるために、アジュバントと抗原を混ぜて接種することが、普通に行われている。このアジュバントが、結核菌などのミコバクテリアなのだ。その死菌をミネラルオイルに懸濁したアジュバントが、抗原に対する強い特異的な免疫反応を誘導する。

アジュバントが、がん免疫も誘導するとされ、丸山ワクチンとして応用されている。ただし、アジュバントの免疫系への影響が余りにも複雑かつ広範なので、がん治療薬として誰もが納得するところまでは、行っていない。コロナウイルスに対してもこの問題が残り、適切な予防薬あるいは治療薬として確立するには、ハードルが極めて高い。

アジアで死者が少ない理由(その2):ゆるい規制

「苦しい、怖い、悲しい、寂しい、不安だ、腹が立つ」のような精神面のストレスによって、情動をつかさどる交感神経が緊張する。交感神経の高まりが、内分泌系の器官に伝達され、ステロイドに属するコルチコイドホルモンの産生が増す。コルチコイドは免疫細胞に機能低下や死をもたらす。

免疫系を混乱させるストレスによって、ウイルスなどの病原体の病原性が増すばかりではない。がんや自己免疫疾患、心臓発作や脳溢血などの病気のリスクも高めてしまう。

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特定の病気が、直接的あるいは間接的な原因になって死者が出る。その死者数を推定するために、「超過死亡」という統計を取る。過去の死者数から推定した、「流行がないときの死者数」が、算定基準になる。その数を上回った数が、該当する感染病による死者数になる。

3~5月の間に、ロックダウンされたニューヨークで感染が爆発した。この期間(3月11日~5月2日)の全死者数が、3万2107人。過去の死者数と比較し、2万4172人が超過死亡と判断された(日経新聞2020年5月25日)。コロナウイルスの感染がなければ、死者数は7935人だった。

超過死亡者の中にいる、ストレスが原因になって、余病が悪化したために死亡した人の数は、分からない。しかし、コロナウイルスで死亡したと報告される数よりも、5~6割程度死者数が多い、という報道がある。ストレスがコロナウイルスの重症化をもたらし、死者を増加させたはずだが、その数を知ることはさらに難しい。少なくとも、ストレスの影響が甚大であることだけは、疑いようがない。

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十分な睡眠が、ストレス解除に極めて有効なことが、知られている。ロックダウン下では、運動もせずに家に閉じ込もるので、睡眠不足になってしまう。NK細胞の活性化には適度な運動が必要。運動の少ない生活が、さらに免疫力低下をもたらす。食料の十分な供給がなければ、栄養不足が免疫力の低下につながる。医療を満足に受けられないロックダウン下で、持病が悪化すれば、結果が深刻になる。

ロックダウンがもたらすストレスによって免疫力が低下し、死者数が増加したのならば、上の表にそれを示唆する結果が現れているはずだ。

死者数上位10カ国のうちの7カ国で、全国封鎖の厳しいロックダウンが実施された。下位10カ国で、全国封鎖のロックダウンが実施されたのは、4カ国だった。

上位と下位の間で、全国封鎖国の数に違いがあるだけではない。4月10日までの期間で、上位グループのうちの5カ国において、1カ月以上に渡る長期ロックダウンが実施された。下位グループのうちで、同期間内にロックダウンが1カ月以上に渡った国は、1カ国しかなかった。生活を困難にするロックダウンの長期化が、死者数を増やす要因の1つになることは、間違いがなさそうだ。

アジアで死者が少ない理由(その3):ビタミンD摂取

免疫力を高めることが確認されている微量栄養素として、ビタミンC、ビタミンD、亜鉛がある。イギリスの大学と病院が、ヨーロッパの20カ国を対象に、ビタミンDの血中濃度を調査した。ビタミンDの血中濃度と、新型コロナウイルスの感染率や死亡率との間に、相関があった。 死亡率が高い、イタリア、スペイン、イギリスなどの国民のビタミンDの血中濃度が、北欧人よりも低い。

太陽光(紫外線)をあびると、皮下脂肪に存在するコレステロールの化学反応によって、ビタミンDが作られる。太陽光が弱い北欧人の血中濃度のほうが高い理由として、2つが考えられる。

  1. 南欧人、特に高齢者が陽光を避けたがる(イタリアの高齢者施設で死者が爆発的に増加)。北欧人は陽光を求めて外へ出る。

  2. 北欧人は、ビタミンDサプリメントをよく摂取するばかりか、タラの肝油を食べる。調査を主導したバックマン教授によると、ビタミンDを重度に欠如した場合、コロナウイルス感染で死亡する可能性が2倍に高まる。

そういえば、コロナウイルスによる死亡率が低い日本人が、ビタミンDを多く含む、サケ、サンマ、アジ、サバなどの魚をよく食べている。ビタミンDがたっぷり含まれている、マイタケ、ほしシイタケ、エリンギなどのキノコ類もよく食べる。
日本人以外のアジア系の人々も、魚やキノコをよく食べるばかりではない。十分に降り注ぐ、太陽の光に当たることをいとわない。中国人の太極拳や日本人のゲートボールが、新型コロナウイルスから高齢者を守る。

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新型コロナウイルスでは、免疫系が、ウイルスに過剰反応する感染者がいる。体内で大量の炎症性サイトカインが産生される。サイトカインが適量ならば、免疫系を活性化させて自然免疫と獲得免疫を誘導する。過剰になると、免疫系のみならず、神経系や内分泌系も暴走させてしまう。発熱や倦怠感、血液凝固が過剰に起こり、全身性の症状悪化や血栓形成につながる。このサイトカインストームをビタミンDが抑制する。

栄養素の欠如が感染爆発をもたらすので、十分に栄養を取れなくなるロックウダウン下で、状況がより深刻になる。

まとめ:日本で感染が爆発しなかった理由

●「笑い」がもたらす免疫効果

新型コロナウイルスの感染が、日本で爆発しなかった理由は、複合的だ。そのうちの1つが「笑い」。「笑い」が交感神経の緊張を解き、免疫系を正常に機能させる。日本での落語を聞かせる実験では、サイトカインストームが抑制され、リューマチ(自己免疫疾患)に顕著な改善が認められた。NK細胞の活性化が認められるので、「笑い」はがん免疫のみならず、ウイルスに対する自然免疫と獲得免疫の亢進に貢献することが、明らかだ。

他国に例がないほど、「笑い」がいっぱいの日本のテレビが、コロナウイルス感染で有効に働いたと思われる。日本の高齢者は、スマホよりもテレビの画面を見ている。高齢化が進んだ日本で、ヨーロッパの国々よりも高齢者の死亡が少なかったことが、示唆に富む。

●ゆるい規制でストレス減少

さらに、規制がゆるかったために、免疫力低下につながるストレスが大きくなかった。それだけではない。人間にはなすすべがない地震や台風によって、日本人は被害を受け続けている。コロナウイルスは、それらの自然災害に比べれば、日本人にとっては恐れるほどのものでない。この精神的な「余裕」が、ストレスの低下につながったはずだ。

●BCGによる免疫力強化

BCG接種国では、新型コロナウイルスの感染が明らかに抑制されている。今までの免疫学の知識からは、BCG接種が、これほど大きな影響をウイルス感染に与えることは、理解しがたい。この興味深い知見に関して、免疫の専門家による注意深い研究が必要だ。

●免疫力を高める食事

栄養素は、免疫を含む代謝に影響を与える。特に、ビタミンDの効果が顕著で、魚とキノコを多く食べる習慣が、新型コロナウイルスの増殖を抑制する方向で働いたことは、間違いない。日本周辺のアジア各国でも、食生活が、新型コロナウイルス感染の拡大抑制に貢献した。

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日本人はハグやキスをしない。生活習慣の違いが、日本での感染爆発を止めた、という意見がある。厳しいロックダウンをしたイタリアで、感染が長引いた。こういう生活習慣の違いが、感染に影響を与えることはない。

マスクも余り大きな影響を与えることはなさそうだ。極微のウイルス(「万能免疫系を抑えるストレス」図1)はマスクの生地の網の目を通過する。
ロックダウンで外出を厳しく制限した国々で、感染爆発が長期に渡った。マスクを使う必要がないほど、ソーシャルディスタンスが保たれたが、感染爆発を止めることができなかった。感染を恐れて家に閉じこもった人々や、太平洋の真ん中の島の住民にも感染が広がった。

ウイルスそれ自体、あるいは微粒子に付着したウイルスは、風に乗って遠くへ飛ぶ。鳥のからだに付着すると、鳥がウイルスを運ぶ。食品や衣料品の製造、輸送、販売の過程で、ウイルスがそれらの品物に付着すれば、消費者の家庭へウイルスが運ばれる。ウイルス感染を完全に止めることは不可能だ。共存しか選択の余地がない。

複合的な要因によって、死者数に大きな違いが出る。最善の対策は、ここまで書いたことから明らかだ。対策には、やったほうがいいことと、やらないほうがいいことがある。複合要因を考慮することによって、重症者を増やすことなく、感染を収束させることができる。死者を減らしながら、集団免疫を誘導することが可能になる。この対策においては、余病があって重症化しやすい人々のために、迅速かつ効果的な治療を施す体制の構築が、必要になる。


追記:先入観で失敗するコロナ対策
2020年6月20日

上の本文の最後に、「対策には、やったほうがいいことと、やらないほうがいいことがある」、と書いた。私の主張を具体的に書くと、個人攻撃になりかねない箇所があるので、あいまいな書き方をした。その後、皆さんからいただいたご意見を読んで、具体的に書くことを決めた。

メディアは何でも単純化したがる。メディアを自分の都合に合わせて使う、専門家や政治家がいるために、多くの人々が問題を曲解してしまう。おかげで、激しいコロナパニックが世界をおおってしまった。

私のウイルス免疫3部作(他のエッセイ6869を含む)で、ウイルスと免疫の関わり合いのダイナミズムを描いた。ウイルスに遭遇した私たちのからだは、1+1=2と割り切れるような反応をするわけではない。ウイルスの攻撃と免疫の防御の微妙なバランスの上に立って、感染が進行する。さらに、この感染には複合的な要因が関与するので、頭を柔軟にしなければ、全体像を把握するのが困難になる。

 最も重要な対策

●BCG接種の継続

上の表で示した解析結果から明らかなように、BCG接種が、コロナウイルス感染で死者を減らしている。免疫系に強い影響を与えるBCG接種を、今後も継続しなければならない。
清潔な生活環境と、充実した医療体制に恵まれている先進国では、結核は過去の病気と考えられる。ヨーロッパの多くの国々が、BCG接種を停止したのは、そのような判断があったためだ。その信念を変えなければならないことが、新型コロナウイルスで明らかになった。オーストラリアで、コロナウイルスのワクチンとしてBCGを使う研究が進んでいる。

●ビタミンDの摂取

ビタミンDが、新型コロナウイルスの感染抑制に効果があることが、分かった。ビタミンCがウイルス感染に有効であることは、すでに知られている。老人ホームのような高齢者施設では、日常的に、魚やキノコの食事から、ビタミンDを入居者に摂ってもらうことが、必要。新型コロナウイルスのような感染が勃発したときには、躊躇せずに、錠剤などでビタミンDの補給を行いたい。

この対策は、高齢者だけではなく、リューマチなどで免疫抑制剤を使っていたり、がんなどの余病を抱えている人々にも、適用したほうがいい。

●ロックダウンは不可

ロックダウンがもたらす過酷なストレスが、免疫系に大きなダメージを与える。通常の環境であれば、コロナウイルスが感染しても無症状に終わる人が、重症化することが考えられる。余病があれば、コロナウイルスに感染しなくても、ストレスによってその病気が悪化する。
人体に潜伏感染しているウイルスが、数十種類知られている。ロックダウン下の免疫力低下で、どれほどのウイルスが活性化され、人々がどのような病気を発症するのかは、全く未知。今後の研究が待たれる。

ロックダウン下では、ソーシャルディスタンスがきちんと保たれるので、ウイルス拡散が少しは抑えられるかもしれない。しかし、そのプラスよりも、免疫抑制によるマイナスの効果のほうが、はるかに大きいことを上の表が示している。

 やったほうがいい対策

●野外の活動

ウイルスは、一般に高温、多湿、陽光(紫外線)に弱い。新型コロナウイルスも例外ではないことが、研究から分かった。低温で乾燥している暗い室内よりも、屋外の環境で、コロナウイルスは容易に不活化される(感染性を失う)。
ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアなどの、中国に近い東南アジアの国々で死者が少なかった。これらの国々では、コロナウイルスが不活化されやすい、3条件がそろっている。

今回の感染で実行された、公園や海浜の閉鎖は間違いだった。野外では、上の3条件が満たされているだけではなく、常に風が吹いているので、ウイルスは容易に飛ばされ拡散してしまう。感染防止のために、室内の空気の頻繁な入れ換えが、推奨されている。こんなことは、自然が休みなくやっている。

運動をすることによってNK細胞が活性化される。外に出て遊ぶことがストレス解消につながり、免疫反応の亢進に役立つ。

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屋内活動だが、テレビのお笑い番組を見るのもいいし、好きな映画を見に行くのもいい。コロナウイルスを忘れて没頭できるエンタテインメントが、必要だ。パチンコだって好きな人にはいい。もっとも、負けてしまっては逆にストレスが溜まってしまう。

●コロナに強い子供、免疫獲得者、女性が防御壁

感染が爆発したどの国においても、子供の感染者が極めて少ないことが、注目された。長期休校によるストレスが免疫力低下をもたらし、ウイルスに対する感受性が高まったはずだ。それでも、子供の感染者が少なかった。休校などの規制は明らかに見当違いだ。

わざわざワクチン接種をしなくても、自然感染から回復した人々が、ウイルスに対する免疫を獲得している。新型コロナウイルスでは、感染しても無症状の若い人たちが多い。集団に対する理想的なワクチン接種と同じ効果を、期待できる。若い人たちに厳しい行動制限を押しつければ、社会にとっては逆効果になる。

コロナウイルス感染では、女性の感染者が、男性よりも少ないことが知られている。疫学的な対策において、頭に入れておかなければならない。

子供、免疫獲得者、女性が集団の中に散らばることによって、新型コロナウイルスに対する防御壁が、社会に築かれる。私たち人間は、コロナウイルスよりも知能が高いはずだ。社会の構成員全員が、一方向へ突っ走るのではなく、集団の多様な構成員に、多様な役割と行動を期待したい。

 場合によっては効果がある対策

●マスクの着用

一般的なマスクの生地の穴の直径は、5μm程度だ。この穴はリンパ球を通さないが、細菌をほぼ通過させる。ウイルスは簡単に通過してしまう(エッセイ68「万能免疫系を抑えるストレス」)。くしゃみによって飛び散る、巨大な飛沫粒子に含まれているウイルスしか、マスクでブロックされない。
もしもマスクが効果的に飛沫を付着するならば、別の問題が生じる。フィルター作用をするマスクに、ウイルスの凝集塊が留まる。飛沫の水分が蒸発すると、何かの拍子に、乾燥したウイルス塊がマスクから飛び出す。

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中国で、高校の体育時間中に、マスクをして徒歩競争をやった高校生がいた。何人かが死亡してしまい、体育でマスクを付けることが禁止された。死亡とまでは行かなくても、マスクをすると息苦しい。ストレスが高まるばかりか、コロナウイルスに感染していれば、呼吸が難しくなることによって、重症化が進む。

夏にマスクを着用すれば、呼吸の体温調節能が落ちる。体温調整に困難をきたして、熱中症の可能性が高まる。

マスクの効用を期待するならば、まず医療関係者だ。マスク着用がストレス増大をもたらすが、耐えてもらうしかない。次に、PCR検査が陽性になった人々。ウイルスを含む、飛沫の飛散をある程度防ぐことができる。すでに呼吸が苦しくなっているならば、マスクをしてからだを動かすことは、止めたほうがいい。マスクにウイルスを留め込まないために、マスクの頻繁な交換が必要。

<和戸川 純>

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