異種の動物と完全に共生できるのは、人間だけだ。犬を飼うことは、高度に人間的な行為といえる。本書は、エッセイと多数の写真でつづった、種の垣根を越えた愛と命の物語になっている。
2~3才児と同程度の知能を持っている犬は、人間と過ごす生活の場で多くのことを学習し、人間化する。飼い主は、幼児に対するように注意深く犬を庇護する。両者のきずなは、本能によって強化される。
オーストラリア滞在中に貰い受けた、捨て犬だった雑種の大型犬モンタ。犬でも狼でもない亜種ディンゴの血が入っている、強烈な個性の持ち主だった。純系ディンゴの輸出は禁じられている。モンタは雑種だったので、日本へ連れて来ることができた。当初は戸惑っていたが、やがて日本的なものの全てに慣れた。多くの笑いと驚き、そして喜びをもたらしたモンタは、誰からも愛され、幸せな犬生をおくった。
1年間のがん治療のあとに永眠。最後まで大きく燃えた命の炎。最後の日もいつものように散歩をし、いつもの就寝時刻に自分のベッドに入り、そのまま息を引き取った。家族にとっては突然の死だったが、全てを予感していたモンタは、最後の日々にとても不思議な行動を取った。それを本書で詳述した。
短命な犬は、飼い主よりも先に死ぬ。子が親よりも先に死ぬことは、普通はあり得ない。親は、本能的に子の死を受け入れることができない。犬の死によって、飼い主は、子に先立たれた親のような深い悲しみに落ち込む。著者の家族は、深刻なペットロス症候群を経験した。この体験をもとにして、ペットロス症候群の心の出どころに深く切り込んだ。この章が特に重要で、命の物語として書き上げた。愛犬の死に遭遇した皆さんに、本書を読んでもらえるならば、ペットロス症候群を理解することによって、悲しみがいくらかでもやわらぐと思う。
モンタの死後に、不思議な因縁が、最古の犬種バセンジーを家族の一員にした。バセンジーは、人類が初めて家畜化した犬といわれる。遺伝子解析から、現存する犬種の中では最古であることが分かっている。古代犬ラッキーも、普通の犬とは違う強烈な個性を持っている。モンタとは起源も由来も異なるが、両犬の間には不思議な類似性がある。
著者は、大学で獣医学を専攻し、日本、オーストラリア、チェコの大学や研究所で、免疫学とウイルス学の基礎研究をやってきた。その経験を本書で生かした。
プロローグ 最初の犬の死
第1部 オーストラリアの生活で人間化
第1章 オーストラリアで運命の出会い
第2章 犬を人間化する方法
第3章 強い自己主張
第2部 とても楽しんだ日本の生活
第1章 困難だった移住
第2章 日本での優雅な生活
第3部 ペットロスの深淵に迫る
第1章 がんとの戦い
第2章 最後に取った奇妙な行動
第3章 ペットロス症候群
エピローグ モンタ2世の真実
販売: アマゾン (紙書籍、電子書籍:紙書籍本文に光沢紙使用、カラー写真64枚)