Essay 24
日本人女性専門のラブ・ハンターたち
ここに登場する人物は、プライバシーを考慮し、仮名にしました。
2012年3月9日
海外へ脱出する女性

日本の若者の内向き指向が、あちらこちらで指摘されている。それは、男性により強く認められる。女性には、逆に外向きな傾向がある。
日本の人口が減少し始めた。その原因のひとつとして、若い女性の日本脱出が考えられる。総務省の人口推計によると、20~40才代の女性の海外への人口流出が、同年代の男性よりも顕著になっている。海外で永住することを望む、若い女性が増えていることは、人口減少に直接的な影響を与える。さらに、女性ひとりの平均出産数は1.4人なので、出産適令期の女性の海外移住は、総出産数の減少によって、人口減少を加速させる。

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草食系男子の増加に物足りなくなった女性が、肉食系男子を求めて海外へ出ることが、女性流出のひとつの原因になっているかもしれない。このエッセイは、そんなことを想像させる事実にもとづいて、書くことにする。私が、まだオーストラリアに住んでいた頃に見聞きした事柄だ。海外脱出を果たした日本人女性にむらがる、オーストラリア人男性という、ちょっとキワモノ的な展開になる。

日本人女性ハントの手口

ジョージは30才代のオーストラリア人。シェア・ハウス(数人で借りる家)の元締めだった。即ち、その家のオーナーと、月いくらで個人的に契約をしていた。この家にシェア・メイト(共同借家人)を何人入れても、シェア・メイトにいくら部屋代を請求しても、一向にかまわない立場にいた。シェア・メイトを大勢入れたり、シェア・メイトに高い部屋代を請求すればするほど、自分のポケットに余分な収入が転がり込むことになる。日本ではとても考えられない、借家人システムだ。

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ジョージには、生活のために、このシェア・メイトからの上がりがとても大事だった。職業は屋根ふきだそうだ。名刺にそう書いてあった。けれども実際には、下に書くように、屋根ふきよりももっと楽しいことで、毎日とても忙しかったのだ。屋根ふきの仕事は、本当にやっていたとしても、もっと楽しい仕事が暇になったときに、ほんの少しばかりやっていたのに過ぎないのでは?
ジョージの楽しい仕事とは何か?女性のハントだった。 彼は、街で、若い日本人女性にとてもやさしく声をかけ、会ったその瞬間から、英語の間違いなどを親切に直した。すなわち、日本人女性専門のラブ・ハンターだった。
ジョージがハントする対象は、日本からその街へ来て間もない、ワーキング・ホリデイの女性。それに、語学学校の学生だった。日本人女性は、ジョージのやさしさにすぐに安心してしまい、部屋を探している人は勿論、今いる部屋を移る気のなかった人まで、ジョージの誘いどおりに、シェア・メイトになってしまう。

ジョージは、シェア・メイトにした日本人女性を、自分の思うとおりに扱うことができた。屋根よりも、日本人女性の心理とからだをふくほうが、性に合っているジョージ。日本人女性のハンティングは、天性の仕事といえた。

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オーストラリア人の女性は注意深く、普通は、友だちどうしでシェア・ハウスを借りる。また、中国人女性はとても大人で、男の金についても心理についても、全てをきちんと計算している。残念ながら、安全な国日本で生まれ育った、不用心な日本人女性だけに、こんな注意深さがない。ジョージのような男性にとてもひっかかりやすい。

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ジョージは、かつて全てを計算をした上で、「よし、日本人女性のスペシャリストになろう」と、決心したはずだ。そう決めた理由は...。

まず、慣れない海外生活で不安を感じている日本人女性は、一見やさしそうに見える現地の男に、とてもひっかかりやすいことを知った。
それに、ワーキング・ホリデイで滞在する女性や、語学学校へ入る女性は、短期間しか滞在しない。間もなく、日本へ帰国してしまう。つまり、関係が長くなることを心配する必要がない。たとえ妊娠させてしまっても、その女性はオーストラリアからいなくなってしまう。女性自身が、ジョージと関係を持ったことを、他人に知られるのはいやだ。帰国してから、こっそりと自分で妊娠中絶をしてしまうことだろう。
急用の金に困っていると言えば、ポケット・マネーくらいは渡してしまう日本人女性は、いくらでもいる。売春婦を相手にするよりも安くつくだけではなく、逆に特別な収入を得られるのだ。そして、都合のいいことには、若い日本人女性は、次から次へといくらでもオーストラリアへ来る。ジョージにとってはよりどりみどり。いつも違う若い日本人女性を相手にできる。

なんだか、特に悪気のない普通の男性でも、「こんな生活をしてみたい」と、エッチな心をくすぐられてしまいますね。何しろ、この世はインスタントな愛でいっぱいなのです。

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ジョージは獲物を見つけると、まず、「以前日本へ行ったときに、日本人にとても親切にされた」と、殺し文句の口火を切る。そして、「お返しに、自分も日本人に親切にしたい」と、続けた。これだけで、日本人は、すぐに気を許してしまうくらいお人よしなことを、その道のプロのジョージはよーく知っていた。特に、ヨーロッパ系の男性にこんなことを言われると、多くの日本人女性は、「あなたを愛しています」と言われたのと、同じような反応をしてしまう。もともと無防備な日本人女性が、さらに無防備になってしまう。
「あなたの国が好きだ」と言われて、それを自分に対する、好意的な感情の表現ととらえてしまう人は、いくら世界が広いといっても、日本人以外には余りいない。日本人の男性が、オーストラリアへ行って、オーストラリア人の女性に、「オーストラリアが好きだ」と言っても、そこから個人的な関係は発展しない。あるいは、ドイツへ行って、「ドイツが好きだ」と言っても、ドイツ人女性を自分のものにはできない。

ジョージはさらに知能犯だった。街で出会った女性を言いくるめると、自分の家へ連れて行った。ジョージの家の中は、どこで手に入れたのか、日本の民芸品でいっぱいだった。それらを見た日本人女性は、さらにうれしくなってしまう。

ハンターの成功と失敗の実例

普通の仕事をしている普通の人ならば、仕事の真っ最中で、とても忙しいはずのウイーク・デイの日中のことだった。語学学校で英語を勉強している、とてもかわいい千佳が、ジョージと街で会うことになった。千佳はシェア・ハウスを探していて、友だちの友だちが、ジョージの家へ移ったことがあるという関係で、ジョージに会うことになったのだ。
典型的なかわいい日本人女性である千佳。一目見たジョージは、若くてとてもキュートな新しい獲物を見て、すっかりうれしくなってしまった。でも、狩猟のプロでも間違うことがある。どうしても、彼女を手に入れたくなったジョージは、千佳に対して、いつもよりもずっとやさしく、そして親切になってしまったのだ。度を越えたやさしさと親切ぶりに、千佳はとても不安になってしまった。 女性の防衛本能に、警鐘が鳴らされたのだ。それでも、ジョージの家は取り合えず見に行くことにした。

そこで、雅恵に出会った。1週間前に、ジョージのシェア・メイトは全て入れ替わった。それまで住んでいた女性は、全員が一度にその家を出てしまった。そして、雅恵が移って来た。雅恵は、「居間で寝起きしているので、部屋代は払っていない」と、千佳に言った。実は、ジョージのベッドで寝起きし、性関係を持っていたので、ジョージは部屋代を取っていなかったのだ。
雅恵は、その家での生活のことも、ジョージのことも、千佳にはほとんど何も話さなかった。そんな雅恵を観察している間に、千佳は、雅恵は相当に男なれしていると判断した。こんなことが全部、千佳の自己防衛本能に、さらに警鐘を鳴らした。それで、千佳はその家には移らなかったのだ。

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千佳の判断は正しかった。

間もなく、友だちの友だちである芳野と、韓国人の女性3人がジョージの家へ移り、その家をシェアし始めた。その2週間後に事件が起こった。
韓国人女性のひとりが、真夜中の2時か3時頃、友だちも誰も知らない間に、突然家から消えてしまった。同時に、ジョージも消えてしまった。ふたりが、いっしょに連れだって消えたのかどうかは、誰にも分からなかった。
残った4人の女性は、とても不安になった。4人とも、ワーキング・ホリデイや学生として、オーストラリアへ行き、まだ日が浅かったのだ。周囲の事情はよく分からない。 シェア・ハウスの元締めが失踪してしまったのでは、引き続いてその家に住めるのかどうかも分からなかった。特に、ふたりの韓国人女性は、友だちの失踪でさらに不安になった。

回りまわって、1週間後に、その街に住んでいた私のところへ、相談が来た。私は、「10日間行方不明のままだったならば、警察へ届けたほうがいい」と、言った。その直前に、街で売春婦が行方不明になり、警察が捜索していることを思い出したからだ。

ちょうど10日後に、ジョージだけが家に戻って来た。そして、雅恵といざこざがあったらしい。でも、ジョージは、男と女の間のそんないざこざを解決する、プロなのだ。ジョージの期待どおりに、雅恵はその家を出てしまった。雅恵が家を出たあとで、失踪していた韓国人の女性が戻って来た。この韓国人女性は、雅恵よりもかわいかったそうだ。
しばらく新しい女性を楽しんでから、ジョージはまた、シェアをする女性の総入れ替えを行なうのだ。

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ジョージと同じ理由で、日本人女性を標的にするハンターは多い。 駅周辺に出没する男が、「日本の女ならば、会ったその日のうちに、100%間違いなく寝ることができる」と、豪語していた。この言葉が、地方紙のコラムに書かれてしまった。日本人女性の一方に偏ったイメージ作りに、貢献したことになる。常識的に考えれば、こんな自慢話は、そのまま受け取るわけにはいかない。しかし、日本人女性の扱いやすさは、その気のある男たちの間では、間違いなく常識になっている。 似たような話は、他にいくらでもあるのだ。

オーストラリア人の男性ひとりと、日本人女性ひとりの組み合わせで、家をシェアをしている例ばかりではない。オーストラリアに住み始めて間もない光子から聞いた、こんな話がある。まさにインスタント・ラブだ。
彼女もシェア・ハウスを探していた。それで、オーストラリアで知り合った、日本人女性の住んでいるアパートへ、何度も出かけた。
そのアパートに、若いオーストラリア人の男性が住んでいた。昼間でも部屋にいて、仕事を持っているようには思えなかった。というよりも、日本人女性をひっかけるのが、この男の仕事のように思えた。違う日本人女性を、次々に自分の部屋へ連れ込んでいたのだ。部屋の中で何があったのかまでは、光子は観察できなかったので、私もここに書くことはできない。まあ、想像はできるが..。

純真無垢な男性

勿論、全てのオーストラリア人男性が、日本人女性を狙う野獣というわけではない。次のように純真無垢な男性だっている。これは、私がオーストラリア人女性と結婚したあとの話だ。

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英語の語学学校で勉強をしている女性の中に、利江がいた。年令は20才前後。「オーストラリアへ来たのは、白馬に乗ったオーストラリア人の男性を見つけて、白人の子供を生むため」と、その街に住んでいる日本人に公言していた。
ただし、男を引きつけるには、自分の見かけをもう少し変えたほうがよかった。いつも黒っぽい服を着ていた。前髪を垂らしていたので、非常にしばしば、口よりもコミュニケーションに役立つ目が、他人からはよく見えなかった。しゃべり方がおとなしいので、さらに暗い雰囲気になってしまった。服の色も髪形も、それに話し方も、もっと外へ向かって発散するようなものにすれば、明るく魅力的に見え、男性の注意をもっと引きつけたことだろう。女性は、本能的に男性を引きつけるものを持っている。

語学学校には、オーストラリア人の学生がいないこともあって、利江の希望は、なかなかかないそうもなかった。そんな話を聞いた妻の妹のアンナが、ひとつのアイディアを思いついた。
大学を出て間もない息子のニールに、ガールフレンドがいなくて困っていると、友だちの女性がいつもぼやいていたのだ。それで、アンナは、利江とニールのために、ディスコでのデートをオーガナイズした。ニールはとても過保護に育てられたらしい。本人よりも親のほうが、いろいろと心配をしているように思えた。デートの前に、彼の父母が、特に何の関係もない私の家にまで、電話をかけてきた。
ニールはディスコへ、ひとりではなく妹といっしょに来た。その後、利江とニールふたりだけのデートもアレンジされた。けれども、過保護の男性と、自分を抑えている女性ではなかなかうまくいかない。間もなく、白馬に乗った王子様を探して、利江は別の街へ移ってしまった。

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白人の男性と刹那の恋を楽しむために、オーストラリアへ行く日本人女性は、間違いなくいる。日本にいればとてもおとなしく、普通の女性のように振るまっていても、海外でそんなアドベンチャーを試みる。雅恵はそんな範ちゅうに入る女性だ。勿論、千佳や利江のように、ふわふわした夢を追っているように見えながらも、ちゃんとした人間関係しか受け入れない女性もいる。

男性どうしの奇妙な関係

オーストラリア人と日本人のちょっと奇妙な関係を、次に書いておこう。

その当時、私はまだ独身だった。大学の近くのアパートに、ひとりで住んでいた。そんなに遠くないところに、50才台の独身のオーストラリア人男性が、住んでいた。その男性マイクは小太りで、頭がサムライの頭のようにはげ上がっていた。声はとてもやさしく柔らかだった。女性的といってもいいくらいに、いつも静かな話し方をしていた。
マイクは日本人が大好きで、日本人の男子学生ばかりを選んで、自分の家の部屋に住まわせていた。いつも日本人学生が2~3人、彼の家に住んでいた。けれども、学生の入れ替わりは激しかった。
その中に、私が友だちづき合いをしていた、実という学生がいた。実は、イージー・ゴーイングな男だった。いつもノンビリ、話し方もゆっくり。つかみどころのない、ボサッとした感じの男性だった。でも、そんなところが母性本能を刺激し、女性には魅力的らしく、あるとき、とてもかわいいオーストラリア人のガール・フレンドを作った。

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それからしばらくして、マイクが私のアパートに来た。マイクの顔は紅潮していた。そして、次のように言ったのだ。勿論、英語に女言葉はないが、女言葉で訳をすると、このときの雰囲気がとてもよく出るので、マイクの言ったことを、女言葉で書いておく。

「ねえ、純さん。実ちゃんが、この頃、ボクに対してとっても冷たいの。夜は遅く帰って来るし、話かけても返事をしてくれないことが、しばしばあるのよ。とっても悲しいわ。ボクちゃん、どうしたらいいのかしら?」
そう言うと、マイクは一歩前に踏み出した。太った中年男性のあから顔が、目の前に近づき、彼の息が私にかかった。マイクの目は、今にも泣き出しそうにうるんでいた。私は、思わずあとずさってしまった。マイクが私に抱きついてキスをしてくる、「最悪の予感」がしたからだ。
油ぎった顔の毛穴を目の前に見て、私のからだにサッと鳥肌が立った。私には、その手の趣味はないのだ。とにかくマイクに退散してもらいたくて、厳しく言った。
「そんなの、あなたと実の間だけの問題じゃない。ふたりで解決すればいいだろう。私は、そんな話に巻き込まれたくはないよ」

日本人女性の逆襲

私の妻に言わせると、日本人女性は意外に怖いそうだ。妻だけではなく、日本に住んでいる妻の友だちであるスペイン人女性も、そう言っていた。日本人女性は、この男をどうしても自分のものにしようと考えると、考えられる全ての手段を使って、男を追いつめるそうだ。ふたりの外国人女性の意見は、この点で一致している。

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珠美は、そんな日本人女性かもしれない。

東京で、日仏ハーフのカナダ人男性のロンに出会った。ロンは、最初は遊びのつもりだったかもしれない。彼は自分は学生だと言い、間もなく、珠美を残して、東京からパリへ、勉学のためと称して引っ越してしまった。
珠美は、フランスではなくオーストラリアへ行った。語学学校で、3カ月間英語を習った。ロンを追跡するための勉強だった。
英会話をある程度マスターしてから、ロンのいるパリへ飛んだ。そこで珠美は、ロンといっしょに2カ月間を過ごした。ロンがパリで何をやっていたのかについては、珠美から情報を得ることができなかった。その後ロンはカナダへ戻り、珠美も、ロンのあとを追ってカナダへ行った。急がば回れ。珠美の計算どおりに、オーストラリアで英会話を習ったことが、ちゃんと生きたのだ。

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けれども、珠美よりも、もっとすごい日本人女性がいる!彼女の名は麻里。オーストラリア滞在中に、生活全般にわたって、彼女とかなり突っ込んだ話をした。

麻里は、日本で知り合ったベトナム人のダヤンを追って、結婚をすることもなく、世界中を引っ越し回っていた。ダヤンは、カナダ、アメリカ、オーストラリアと、仕事の関係で世界中を移動していた。麻里も、彼にピタッとついて世界中を移動した。
最初の出会いから10年ほど経ってから、私たちの共通の友だちを介して、私の新しい電話番号を知った麻里が、別の街に住んでいた私に、シドニーから電話をかけてきた。そのときの会話から、20年間も、ふたりは結婚することもなく、いっしょに住み続け、世界中を移動していたことを知った。

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この辺で、ちゃんとハッピーエンドに終わった女性の話を、書いておきたい。

久美子は、どちらかというと、日本人ではなく、オーストラリア人のような雰囲気を感じさせる女性だ。海外旅行の経験がたくさんあるだけではなく、海外で長期に渡って生活をしたこともある。勿論、英語はペラペラだ。初対面の人とでも誰とでも、気軽かつクールに話をする。社交的だ。そうはいっても、自分や他人の個人的な問題には、なるべく触れないように気をつけている。まさにオーストラリア人そのものといえた。
グレッグは、少年のときにサムライ映画を見て、武士道にあこがれた。それで、日本語を習っただけではなく、サムライのようになるために、空手の練習に日常的にはげんでいた。空手の黒帯になるために、学生時代に日本へ来た。日本は、サムライと従順で貞淑な女のいる国...のはずだった。日本で久美子と知り合い、結婚をすることになった。

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久美子とグレッグの話を続ける前に、こんなエピソードを紹介しておきたい。

綾は、日本の某有名大学を卒業した、自分に自信とプライドを持っている才女だ。野心を胸に秘めてオーストラリアへ渡った。
あるとき、デートをしたオーストラリア人の男性に言われた。「日本の女性は従順で控え目、いつも男を立てているはずだ」と。それを聞いて、綾はカンカンに怒ってしまった。この男性と激しい口論をした。峻烈な反論を受けたオーストラリア人は、自分の理解は間違っていたことに気づいた。 このふたりのデートは、たった1回で終わってしまった。

誤解の奇妙な結末

綾に会う前のこの男性の理解が、日本人女性に対する外国人男性の一般的な理解だ。逆に、日本人女性は、「オーストラリアの男性はやさしく、そして紳士的。いつでも女性を立てて、下にも置かないように扱っている」と、思っている。
そんなように考えている、オーストラリア人男性と日本人女性が結婚をした場合には、奇妙なことが起こる。 オーストラリア人男性は、噂に聞く日本人男性以上に、横暴な日本人男性的になる。日本人の奥さんに、噂どおりに夫を立てる、従順な日本人女性像を期待する。逆に、日本人女性は、夫に、噂どおりのやさしいオーストラリア人男性像を期待する。自分は、欧米的な気の強い女性のように振るまおうとする。
横暴なオーストラリア人の夫と、自己主張ばかりする日本人の妻というカップルが、往々にしてでき上がるというわけだ。日本人よりも、もっと日本人的なオーストラリア人、あるいは、オーストラリア人よりも、もっとオーストラリア人的な日本人と結婚してしまったと、ふたりが気づくまでに、そんなに長い時間はかからない。

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グレッグと久美子が、そんなカップルというわけではない。ただ、少なくとも結婚するまでは、多かれ少なかれ、互いに今書いたような期待があったことは、ほぼ間違いがない。結婚をしてから、互いに誤解に気づいて、それなりの調整をしたと思われる。私が知る限りでは、ふたりはとてもなかよくやっていた。

年寄りと6回も結婚した日本人女性

先に書いた話とは展開が逆になるが、こんなにすごい日本人女性がいることも、書いておこう。これはハッピーエンドに終った例.....と言っていいのかどうか、判断が難しい。

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明美は、独身のときにオーストラリアへ行った。そして合計6回も、オーストラリア人と結婚をしたのだ。一妻多夫を認めていないオーストラリアのことだ。これだけ結婚をするには、普通ならば、離婚を何度も繰り返さなければならない。離婚を5回も繰り返すのは、エネルギーを消耗してしまい、心底からウンザリするはずだと、普通の人間である私は考える。それは、多分明美も同じはずだ。
しかし、明美は、離婚という人生の不幸を、何度も繰り返し経験したわけではない。老人ばかりを選んで結婚をしたのだ。その結果、結婚した夫と次々に死に別れてしまった。私がオーストラリアにいた間に、6人目の夫も天国へ旅立ってしまった。素直に考えれば(素直すぎるだろうか?)、悲劇の女性ということになる。

ここで大きな疑問が湧いてくる。若い明美は、自分よりも、遥かに早く亡くなることが分かっている老人ばかりを選んで、なぜ結婚したのだろうか?彼女の心中までは、私には知ることができない。

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6回も夫に死に別れた明美は、遺産をたくさん相続して、とても豊かな生活を送っている。それで、「死期が近い老人の遺産を目当てに、結婚を繰り返したのだろう」と、誰でもすぐに推測をする。
彼女の意図はともかく、夫になった老人の側から見れば、若い女性に身のまわりの面倒を見てもらいながら、あの世へ行けたのだ。こんなにいいことはない。けれども、若い女性と結婚したことが老人の死期を早めたという、邪推をすることもできる。たとえそれが事実としても、死期が近い年寄りの男性には、夢のような話になる。当事者どうしが互いに幸せで、他の誰にも迷惑をかけていないのならば、第三者が批判をすることはない。

夫との6回の死別後の明美は、かなりな年になっていた。ずっと年上の男性と結婚をしようにも、自分よりも年上の男性の適格者は、もうそんなに多くはないという年令だ。今度は逆に、若い男性と恋をしているかもしれない。

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似たような話が他にもある。この話には、日本人は無関係だ。

資源会社を所有しているパースの億万長者が、フィリピン人のメードと結婚した。この億万長者は高令で、メードの年令は孫に近かった。
巨額の資産を、フィリピン人女性に奪われることになった、実の娘との間で、壮絶なバトルが勃発した。この娘は、自分よりも若い新しい母を、「フィリピン人の売春婦、泥棒」と呼んだ。有利な立場にあるフィリピン人女性は、逃げの一手だった。しかし、実の娘の追撃は執拗だった。「父の殺害を計画した」という汚名を着せるために、裁判にまで持ち込み、女の戦いは長引いた。おかげで、大きな城のような億万長者の邸宅は、観光名所になってしまった。

<和戸川 純>

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