big bang

このエッセイ評論は、某所でやった話をもとに書き下ろしました。プレゼン用スライドにはアニメが入っています。第1、2部で宇宙と生物の進化をたどります。生命の誕生と維持に必須な水素原子が、宇宙誕生最初期に生まれ、今でも宇宙に大量に存在しています。地球型生命を構築する分子は、宇宙空間で進化しました。それらの分子を使って、生命は、環境の激変に耐えられる生存メカニズムを作り上げました。第3部で、地球型生命が宇宙に満ち溢れていることは、論理的な考察の帰結になるばかりか、地球型惑星が次々に発見されている現状に触れます。

Essay 26
ビッグバンから始まった生命の進化

2012年5月13日(修正2017年6月19日)

ビッグバン後に誕生した水素原子と原子の進化

life

まず、上の絵を見てください。宇宙の一角に存在する地球。そこで、生命がどのようにして誕生し、進化してきたのかを、象徴的に示しています。
ただし、背景にある話のスケールが余りにも大きいので、この絵を見て、私の言葉を直感的に理解することは、できないと思います。この絵の詳細な説明はあとでします。


evolution

今、地球上の生命体である私たち人類が、ここに存在しています。なにやら意味ありげなこの生命体は、どのようにして存在するようになったのでしょうか?
誰もが、進化という言葉を思い出します。進化というと、普通は生物の進化をイメージします。生物の進化を、過去へどこまでも辿っていくと、地球上に誕生した最初の生命体である、単細胞生物に行きつきます。
そこから先は、質的に異なる事象の進化を辿ることになります。生命構築のもとになった分子や原子の進化、さらに地球が誕生することになった星の進化が、視界に入ってきます。


big bang

宇宙の進化を過去へ辿ると、ついにはビッグバンが見えてきます。
誕生時には、素粒子よりも小さかった私たちの宇宙。この極微の宇宙は、無から誕生したといわれます。
この「無」という言葉を厳密に思索すると、知覚することは勿論、私たちには認識もできない認知の地平のかなたから、私たちの宇宙が誕生したと結論づけざるを得ません。

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その「かなた」に何があるのかについては、いろいろな理論があります。ここでは、ブレーン(メンブレーン、膜)という概念を取り入れた、超ひも理論を採用します。

縦・横・高さで規定される私たちの宇宙は、3次元空間の宇宙です。これに1次元の時間を加えて、4次元時空という言い方をします。私たちの宇宙は、10次元または11次元時空の中に存在しています。
10次元時空には3次元空間宇宙が多数含まれ、これらを3次元ブレーンと呼びます。次元のかなたにある他の3次元ブレーンを、私たちは、観測することは勿論、知覚することもできません。

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10次元時空の中で、2枚の3次元ブレーンが接触すると、新しい3次元ブレーン、すなわち新しい3次元空間宇宙が誕生します。このうちの一つが私たちの宇宙になりました。
私たちの宇宙が他の3次元ブレーンと接触して、新しい3次元空間宇宙が生み出されることも、あるはずです。その有様を想像するだけで、身が震えます。何しろ、10次元時空には、無数といっていいほど、3次元ブレーンが存在していると、考えられるからです。したがって、私たちの宇宙は、今この瞬間にも、他の3次元ブレーンに接触するかもしれません。


atom

真空の相転移によってエネルギーが生み出されたために、誕生最初期に宇宙は猛烈な勢いで膨張(インフレーション)し、重力や電磁力が生まれました。インフレーションは10-33秒後頃に終了し、ビッグバンが継続しました。
インフレーション終了の前後に、クオークやレプトンなどの素粒子が作られました。10-6秒後頃に陽子と中性子が誕生。ビッグバンが終了する38万年後には、最も単純な原子である水素原子が誕生しました。

現在の宇宙には、水素原子が圧倒的といえるほど大量に存在し、全原子の75%を占めています。
宇宙に最も普遍的に存在する水素原子が、生命の構築において、最も重要な役割を果たす原子になっています。生命は、宇宙に直結して存在しているのです。


birth of atoms

宇宙誕生から2億年後に生まれた最初の燃える星・恒星は、水素原子だけで作られました。とても軽い星でした。
恒星の内部で核融合が進み、ヘリウム、炭素、酸素、ネオン、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、鉄などの、水素原子よりも重い原子が誕生しました。

最も重い鉄原子が、恒星内部に限界まで蓄積されると、恒星は超新星爆発を起こします。
この時、高温のエネルギー乱流の中で、過剰な中性子が鉄分子などに入り込み、原子核を不安定にします。そして、亜鉛、チタン、銀、金、ウランなどの重い原子を誕生させます。
宇宙のあちらこちらで超新星爆発が起こり、新しく作られた原子が、宇宙空間へ放出されました。そうやって、元素表に載っている全ての原子が、この宇宙に出揃ったのです。


宇宙空間で誕生する生命に必要な分子

molecules

次の段階の進化は、惑星上で生命が生まれるために最も大事な、分子進化になります。
原子が高密度に集合した星間雲の中で、原子どうしが結合して分子を作ります。
高密度とはいっても、地球上の雲の中の分子密度に比べれば、真空とほとんど変わりません。近傍の恒星からのエネルギーが結合を助けますが、極低温の空間での結合になります。人間の尺度からは、途方もなく長い時間をかけて、分子進化は進むのです。

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ここで注目すべき分子は、水分子です。宇宙空間で、水素、ヘリウムに次いで3番目に多い酸素原子。その1個に、水素原子2個が結合した単純な分子です。互いに電子を共有する、非常に安定した化学結合によって、水分子は構築されています。
宇宙空間には、地球型生命の誕生と維持に不可欠な水分子が、大量に存在します。 水分子の形成の過程を考えれば、大量の水分子の存在は容易に納得できます。

分光分析や電波観測によって、水分子以外に、次のような分子が星間雲に存在していることが、証明されています。メタン、メタノール、エタノール、一酸化炭素、二酸化炭素、アミノ酸、核酸塩基、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、塩化ナトリウム、塩酸、酢酸、ケイ酸塩、アンモニア、ホルムアルデヒド、アセチレン、エチレン、ベンゼン、ダイヤなど。
すなわち、 惑星上で生命を生み出すために必要な全ての分子が、宇宙空間で作られるのです。


生命誕生に必要な地球の海を作った彗星

comet

宇宙誕生は137億年前。それから91億年後、今から46億年前に太陽が誕生しました。島宇宙の中では、とても平凡な渦巻き型の私たちの天の川銀河。太陽は、その腕の一本の中に存在する、最もありふれた主系列星の一つにすぎないことを、頭に入れておいてください。

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太陽系が誕生したとき、中心部の周辺に、宇宙塵が円盤状に集合しました。そして、太陽の周囲に惑星が形成されました。
太陽系外縁では、塵は惑星ができるほどの密度にはなりませんでした。ここで、太陽系外縁天体といわれる、主に氷から成る小天体が、無数に誕生したのです。
そこは、カイパーベルトやオールトの雲と呼ばれています。この領域は、海王星のすぐ外側から、太陽から海王星までの距離の数万倍のところにまで、広がっています。

太陽の引力に引かれて、太陽周辺へ近づく太陽系外縁天体が彗星です。彗星は、「汚れた氷の塊」という言い方をされます。いろいろな宇宙塵や分子、原子で汚れているのです。

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太陽系外縁天体が、地球上の生命誕生に決定的な役割を演じたと、思われます。

地球誕生直後に、地球は灼熱の火の玉になり、生命誕生に必要な水を蒸発させてしまいました。 地球が冷えてから、地球へ落下した無数の彗星が、海水の大部分の供給源になりました。広大な海原の水が、はるか彼方の太陽系外縁から供給されたことを知ると、宇宙の無限のロマンを感じます。
外縁天体は、水ばかりではなく、生命誕生に必要な各種の分子も供給しました。NASAが宇宙探査船を使って、彗星にはアミノ酸のグリシンが含まれていることを、直接に証明しました。


water planet

水や氷が存在できる距離にある、地球よりも外側の惑星と衛星で、水や氷の存在が既に広範に証明されています。
月の極の地下に氷が存在します。 木星以遠の惑星や衛星には、大量の氷や水が存在します。 土星の衛星エンケラドスの表面は、純度の高い氷の層によって被われ、その層を突き破って水が噴出している画像が、宇宙探査船によって得られました。


大絶滅を大進化のバネにする生物

big evolution

自然環境は、一瞬も休むことなく変化し続けています。一日の間にも太陽が動き、気温が上下し、風が変化します。四季の変化も大きい。長期的な気候変動が、環境の変化にさらに輪をかけます。
生物は、これらの変化に合わせて代謝を調節します。個体が調節できる範囲を超えた変化には、世代を変えることによって、対応できるようにします。そうやって種が存続できるのです。
環境の激変に適応できないで、滅びる種があります。しかし、適応できた種が生き延びて、進化を続けます。

地球上に生命が誕生してから38億年。 多くの種が絶滅する危機が、繰り返し地球を襲いました。驚くべきことに、これら最大の危機が、大進化の引き金になりました。生命は、危機を生き延びる術を学んだばかりか、生き残りのために、積極的に危機を利用するようになったのです。

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大絶滅と大進化の歴史をざっと辿ってみます。

地球の原始の海に誕生した単細胞生物は、酸素が存在しない地球上で、硫化水素や二酸化炭素の還元によって、エネルギーを得ていました。これらは嫌気性細菌です。この生物の危機が、25億年前にやってきたと思われます。当時の地球環境に適応しすぎた、嫌気性細菌が大増殖し、海中の栄養源が枯渇してしまったのです。

27億年前に、太陽光を利用してエネルギーとなる有機物を作り出す、光合成細菌が誕生しました。この細菌は、光合成で有機物を合成するときに、水素を必要としました。そこで、周囲に大量にある水を分解し、廃棄物の酸素を放出したのです。地球上に、酸素が存在するようになりました。
このシアノバクテリアの子孫のストロマトライトは、今でもオーストラリアの西海岸に生息しています。
25億年前の嫌気性細菌の大量死と、赤道直下まで大氷河に被われた、24億年前の全球凍結(スノーボールアース)が、効率的にエネルギー変換をするシアノバクテリアを生き残らせ、暖かくなった地球上で、大繁栄させることになりました。
これが地球の酸素濃度を押し上げ、嫌気性細菌のさらなる大量死をもたらしました。地球の覇者になった、シアノバクテリアの子孫の好気性細菌の中には、巨大化して自ら大量死するものがありました。

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単細胞生物の時代は、26億年間近く続きました。12億年前までに、単細胞生物は、多細胞生物化していたと思われます。10億年前に、カイメンに進化する、原始的な多細胞の動物(側生動物)が誕生しました。

7億年前に再び全球凍結。地球が温暖化すると、生き延びた生物の中から、エディアカラ生物群が誕生しました。6億年前のことです。軟体性のエディアカラ生物群の中には、大型化するものがあり、地球上で繁栄しました。
5億5000万年前に、超大陸の形成過程で大規模な造山・火山活動が発生し、エディアカラ生物群は絶滅しました。この危機が、現存する全ての動物の先祖が突然に誕生した、5億4000万年前の、驚異のカンブリア大爆発(第2部で詳述します)の伏線になったと思われます。

4億4000万年前に、85%の生物種が絶滅しました。それまで栄えていた、オウムガイ、筆石、コノドント、三葉虫などが、大量死したのです。原因は、5000~6000光年離れたところで起こった、超新星爆発と考えられます。大量のガンマ線が、瞬間的に地球へ降り注ぎました。他に、激しい大陸の造山運動が原因になったという説が、あります。

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4億年前に、まず植物と節足動物が地上への進出を果たしました。巨大な海サソリなどの節足動物が住む海を逃げて、陸を目指した魚類の一種が、3億7000万年前頃に両生類に進化しました。

3億7000万年前に再び氷河が地球を襲い、82%の生物が絶滅しました。その後、3億2000万年前頃に、爬虫類が誕生しました。

2億5000万年前に、知られている限りでは最大の絶滅が発生しました。地球上に住んでいた生物種の95%が絶滅したと、考えられています。
激しい造山運動によって、シベリアに長さ1000キロにも及ぶ地球の割れ目ができ、大量のマグマが噴出した上に、オーストラリアの西の海に巨大隕石が落下したことが、その引き金になったという説があります。この時期に、大気と海洋中の酸素濃度が極端に減少したことが、知られています。

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この危機を生き延びたのは、気嚢を持つことによって、低酸素環境に適応できた主竜類でした。これが恐竜に進化しました。一方、単弓類の中で、横隔膜を発達させ、腹式呼吸を身につけた動物群が、低酸素の危機を乗り越えました。これが哺乳類の先祖になりました。そして、2億3000万年前に哺乳類が誕生しました。

2億1000万年前に気温が上昇し、恐竜が大型化して繁栄しました。この時期に、前回の危機を乗り越えた、哺乳類である獣弓類がいました。しかし、俊敏で攻撃的な恐竜との生存競争において、敗者となり、大型化することはありませんでした。ネズミのように小さな哺乳類へと進化したのです。
恐竜全盛時代のジュラ紀、白亜紀に、人類の先祖が恐竜との戦いに敗れたことが、人類の誕生につながりました。進化においては、負けることも大事なのです。

6500万年前に、ユカタン半島に直径約10キロの大隕石が落下しました。隕石の落下後に、陸上や海洋中の多くの植物が死に絶え、大気中の酸素濃度が低下しました。大量の酸素を必要とした恐竜は、これによって死に絶えました。
私たちの先祖は、ネズミのように小さかったおかげで、酸素を大量には必要とせず、この危機を乗り切ったのです。地上の覇者がいなくなたった広大な大地で、哺乳類の進化が始まり、今私たちがここにいます。


驚異の遺伝子構造と機能発現

DNA

この宇宙に存在する地球に誕生した生命を、危機は日常的に襲います。このあとは、生物がどのようにして危機に対応できるようになったのかを、説明します。

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まず、 生物は、環境の激変を乗り越えて生き延びるために、最も基本的な遺伝子の構造を、極端に単純化させることによって、安定にしました。物理化学的環境が劇的に変化しても、遺伝子の骨格が、決定的なダメージを受けないようにしたのです。

DNAの最外側は、ヒストンというタンパク質で被われています。ヒストンは強い塩基性のタンパク質で、酸性のDNAと高い親和性を示します。すなわち、遺伝子のとても安定した皮膜といえます。
遺伝情報が書き込まれているDNAの塩基部分は、リン酸基と糖の鎖の間に並んでいます。何よりも驚くべきことは、遺伝情報を書き込んでいる塩基が、たった4種類しかないことです。しかもアデニン(A)はチミン(T)と、グアニン(G)はシトシン(C)としか結合しません。

DNAの基本的な構造は、30数億年前の単細胞生物時代に構築されました。

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遺伝情報を子孫に伝えるために、A-TあるいはG-Cの間が開裂します。結合と乖離という、矛盾した仕事をしなければならない塩基部分の結合部位には、宇宙に最も普遍的に存在する、水素原子が使われています。


gene

いつどのような危機が襲ってくるのか、地球上に誕生した生命には、全く分かりません。そこで、未知の危機に対して、驚くべき(何度も驚いてすみません)対応策を、遺伝子の中に組み込みました。

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塩基配列は30億対に達します。ところが、遺伝子として機能している部分は、たった2%しかないのです。すなわち、わずか6000万対しか、遺伝子として機能していません。

DNA鎖のほとんどの部分は、ジャンクと呼ばれています。無意味などうでもいい部分という、語感になってしまいます。ところが、決して無意味な部分ではありません。日常的に襲いかかる危機を相手にして、無意味なDNAを持つ余裕は、地球上に生きる生命体にはありません。
保守的で安定した2%の遺伝子を、環境の激変に対応して発現させるために、このジャンク部分が、決定的に重要な役割を果たしているのです。 遺伝子の発現をコントロールするばかりか、今後必要になる遺伝子が、このジャンク部分で眠っている可能性があります。また、今まで機能していた遺伝子が、環境が変わって、ジャンク部分で眠っていることも考えられます。


gene function

さらに、ご先祖様に感謝。 遺伝子の発現は、どのような環境の激変にも耐えられるように、とても柔軟になっています。

教科書的には、一つの遺伝子が一つのタンパク質を作る、ということになっています。タンパク質の種類は10万を超えるので、遺伝子解析が進む前は、10万以上の遺伝子があると、考えられていました。
ところが、遺伝子の数は、たった2万2000個しかなかったのです。この数は、植物程度です。ある種の単細胞生物の遺伝子数は、この数を超えます。
遺伝子数を最小限にしたままで、数多くの機能タンパク質を作り上げるメカニズムが、進化の過程で構築されました。

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まず、異なるコドンが、同じアミノ酸をコードすることがあります。 コドンとは3つの塩基配列で、一つのアミノ酸を指定します。すなわち、コドンの連なりが一つの遺伝子になります。このため、 同じ遺伝子が、異なるアミノ酸配列のタンパク質を作ることが、できるのです。
逆に、同じアミノ酸配列が、異なる機能を持つことがあります。すなわち、 同じ遺伝子が、異なる機能タンパク質を作る可能性があるのです。
以上の組み合わせによって作り出されるタンパク質の質と数は、とても多様かつ多数になることが想像されます。

<和戸川 純>

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