和戸川の思い(その11)
和戸川 純

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豪州一の金持ち女傑が中国に挑戦

2024年7月4日

オーストラリア一の金持ちはラインハートで、パースに住んでいます。ラインハートの父のハンコックが、牧羊場だった西オーストラリアのピルバラ地区で、広大な鉄鉱石の鉱脈を発見し、一躍大金持ちになりました。ハンコックは、孫ほども年齢が違う、家政婦のフィリピン人女性と恋に落ちました。死期が近くなってから結婚したことで、新妻と娘の長い戦いの原因を作ってしまいました。彼の死後に、遺産相続をめぐる峻烈な争いが勃発したのです。

ラインハートは、自分の娘くらいの年齢の義理の母を、悪口雑言で攻め立てました。彼女を犯罪者にするために裁判を起こしました。この顛末を拙著の「誰も知らないオーストラリア、内部からのレポート」に書きました。女の戦いは、ハンコックの死後11年目に終止符を打ち、ラインハートが全ての鉱山資産を相続しました。

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このラインハートが、レアアース事業で対中国の前線に立ちつつあります。西側諸国の2大レアアース鉱山会社を手中に収めました。主要な探索会社も手に入れました。西側のレアアースサプライチェーンから中国を排除するために、レアアース処理施設をオーストラリアとアメリカで建設中です。

上記のレアアース鉱山会社は、レアアース事業で独占的な立場を維持したいと思われる中国から、安値合戦を挑まれ、破産の危機に直面していました。レアアースで中国への過度の依存から脱却したい日本は、ラインハートに肩入れをしました。日本政府と密接な関係にある企業が、レアアース鉱山会社に資金を注入したのです。

鉄鉱石を大量に輸入している中国は、ラインハートの会社にとっては重要な顧客です。けれども、対中国の立ち位置を鮮明にしても、中国は報復をできないはずだという判断があることは、間違いありません。ピルバラの鉄鋼石は極めて良質で、代替品をオーストラリア以外から輸入できないというジレンマを、中国は抱えているのです。彼女は、事業拡大のためならば中国と対決する西側諸国と組む、という冷徹な判断をしました。

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オーストラリア人の甥と投資談義

2024年6月9日

先月、オーストラリア人の義理の甥が、日本を訪れました。甥はビットコインに投資しています。ビットコインは最近大きく値上がりしましたから、今までの投資結果に大満足です。フェラーリを買うつもりなので、更に頑張ると言いました。

浮かれている甥を見て、老婆心ながら、忘れてはならない投資の心構えを話しました。「ギャンブラー」ではなく「投資家」になること。ギャンブラーは引き時を知りません。儲かっていれば、もっと儲かると思って、有り金を全部投資へ注ぎ込みます。損をしていれば、損失を取り戻し、更に儲けを上積みすることを目指して、有り金をはたいてしまいます。儲かっていても損をしていても、賭けを止められないのがギャンブラーです。短期で利益を得ていても、長期では損失のほうが大きくなり、最後に地獄を見る可能性があります。

投資家は引き際を知らなければなりません。多様な引き際があります。個別株の売買における引き際、年間を通して得た全体的な損益を考慮しての引き際、一生の投資における引き際。判断の基準は各々のケースで異なりますが、客観的な基準に基づいた判断が必要なことは、共通しています。「夢」に突き動かされて行動するギャンブラー。「フェラーリを買う」などという目的(夢)を掲げていると、判断を間違える可能性が大きくなります。

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AI関連がいいのか資源関連がいいのか、あるいはその他の業種がいいのかという判断には、客観的な情報の入手がまず必要になります。私は私情を捨てるために、チャートに大きく頼っています。投資候補の銘柄を選ぶときには、5年や10年という長期チャートで、スムーズな右肩上がりになっているものを選びます。勿論、未来が過去の延長線上にあるという保証は、全くありません。しかし、過去において右肩下がりや乱高下した銘柄が、今後反転するには、それなりの大きなきっかけが必要になります。そのようなきっかけは、そうあるものではありません。過去を未来へ外挿するほうが安全です。

売買のタイミングの判断は、1月や5日などの短期チャートを見て行います。ここで大事なのはテクニカル指標です。指標の動きから未来を予測します。これは、過去の指標と値動きとの相関を学ぶことによって、ある程度可能になります。ここでも、私情を捨てることが大事になります。

甥は私の意見を素直に聞いてくれました。上の判断で選んだ米株を甥に教えました。私が選んだ銘柄のチャートを見て、甥は私の話に納得してくれました。

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中学生の時に行った太陽面の観測

2024年5月15日

誰もが毎日太陽を見ているにも関わらず、普段は注意を向けません。生物の命の源である太陽が、無視されているのです。
そんな太陽が今注目を集めています。太陽の活動が活発化したために、日本でもオーロラが観測され、アメリカでは電力系統やGPSなどに異常が発生しました。太陽の活動は約11年周期で減弱を繰り返します。今回の活動のピークは来年と言われているので、まだしばらくはメディアを賑わせそうです。

私は、子供の頃から太陽の活動に強い興味を持っていて、中学生の時に1年半程太陽面の観測を行いました。その結果に対して学生科学賞が授与されました。

太陽面

上の図は観測ノートの一部です。天体望遠鏡に投影版を取り付け、そこに置いた記録用紙に太陽の黒点をスケッチしました。極度の集中力と忍耐力が必要な作業です。

太陽が活動期に入っていたので、ただ単に黒点の数が多いだけではなく、皆さんがニュースの映像で見るような巨大な黒点群が認められます。黒点は見かけ上東から西(左から右)へ移動し、現れてから消えるまで2週間ほどかかります。
上図には、太陽面全体で合計12個の黒点群があります。No.96と98が翌日の観測で一体化していました。両群の黒点の合計が44個だったのに対して、一体化した翌日には30個に減っていました。この観測結果から、太陽の活動が短期間で激しく変動することが分かります。

黒点群が細長い場合は、赤道に対する傾斜角を求められます。角度が余り変わらない黒点群もあれば、一回転するものもあります。
黒点の特徴を調べることによって、太陽の活動状況を推測できることが、観測のまとめに書かれています。また、北半球、赤道、南半球で黒点がどのように変化するのかが述べられ、その変化が連動している可能性が指摘されています。

一つの黒点群において、黒点が増す時間が、減る時間よりも長いことが分かりました。増える時間が長くなればなるほど、減る時間が縮まることが指摘されています。これは、黒点を生み出す、太陽内部の動きを推測するための重要な所見になります。

黒点周囲の温度が高い部分が白く見え、それは白斑と呼ばれます。図で白く描かれています。白斑の辺りでフレアが発生し、高エネルギーの粒子が放出されます。

少年時代の私がよくここまで観測できたと、我ながら驚きます。好奇心の強さと集中力の高さが相まって、これだけの観測ができたのだと思います。今やれと言われてできるかどうか...。

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有限な宇宙を無限に感じる理由

2024年5月6日

「Microsoft Start」などの情報サイトで、「宇宙は有限なのか?無限なのか?」という、昔から繰り返されてきた質問を目にしました。この質問に対する答えはとても簡単です。

私のサイトに書いた宇宙論(「外側から見た私たちの宇宙」など)や拙著の「無から湧き出る宇宙」で繰り返し強調しましたが、3次元空間宇宙は、高次元空間宇宙を構成する要素の一つと考えるのが、自然です。

人間の空間認知能力は、縦・横・高さの空間指標で規定される、3次元空間にしか及びません。3次元に加わる空間指標は認知できず、高次元空間宇宙は、人間の認知能力からは完全に「無」になります。
3次元空間宇宙が高次元方向へ曲がっていても、その曲がりを私たちは知覚することができません。物理的な観測機器は人間の知覚能力の延長線上でしか機能せず、どのような観測機器を使っても、高次元方向への曲がりを測定することはできないのです。

以上のことを考慮すると、前記の質問に対する答えを容易に導き出せます。3次元空間宇宙が高次元的に曲がっていても、その曲がりを私たちは認知できません。3次元空間宇宙は無限に広がっているように思えてしまいます。

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誕生直後に宇宙の直径が1㎞だったことがあります。そこに私たちがいたとします。高次元方向へ曲がった宇宙は、直径1㎞でも無限に広がっているように思われます。まっすぐに500m歩いても宇宙の端に到達することはなく、歩き始めてから間もなく、自分が出発点に戻ったことに気づくことになります。

現在の宇宙の直径は930億光年ということになっています。この直径はどのようにして求めたのでしょうか?一言で言ってしまえば、誕生してからの宇宙の膨張速度をもとにして現在の宇宙の直径を割り出した、ということになります。
現在の宇宙の膨張速度は高速の3倍を超えています。この膨張が止まっていると仮定して、観測者がまっすぐに歩けば出発点に戻ります。歩いた距離が宇宙の円周になり、これが分かれば、感覚的には無限に大きい宇宙の直径を正確に割り出すことができます。

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