和戸川の思い(その11)
和戸川 純

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「103万円の壁」はこう解決する

2024年11月10日

国民民主党が、公約として、抽象的な政策ではなく、具体的な政策を打ち出したことを評価しなければなりません。現状変更を試みれば、既得権益層から必ず批判が出ます。所得税の非課税枠を103万円から178万円に引き上げると、税収が7~8兆円減ることを口実にした反対論が、財務省や自民党から噴出しています。

目の前の問題と取り組まなければならない官僚はともかく、政治家は長期的な展望を持たなければなりません。短期的に国の財政にネガティブな影響を与えても、日本の将来にプラスになる政策は、政治が推し進めなければなりません。

資本主義の原理と相性が悪い、ガソリン補助金と電気・ガス代支援のために、国は11兆円を超える予算を投入しています。この予算のうちの7~8兆円を、「103万円の壁」対策で生じる税収減に充てればいいだけの話です。残りの3~4兆円を、ガソリン・電気・ガス支援の中の最優先される項目へ振り向けます。税収というパイは限られているので、政治が優先順位をつけて予算配分をするのは当然です。 

日本の至る所で労働需給がひっ迫している、といわれます。意図的に短かくされていた労働時間が長くなれば、労働需給のひっ迫がやわらげられます。モノ・サービスの生産量が増えるので、GDPが増大します。178万円の壁まで労働時間が伸びると、どれだけのGDP押上効果があるのかを計算するのは、それ程難しいことではありません。ぜひ政府に計算していただきたい。GDP増大だけではなく、仕事のやりがいが上がる、という心理的な影響もあるはずです。

個人の収入が増えれば家計を助けることになり、消費生活を豊かにし、子供の教育費負担が容易になる、という波及効果があります。それが結婚と出産を促すことにつながります。

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「xxx円の壁」の問題は普通の国民には分かりにくく、国民民主党が大々的に公約に掲げたおかげで、衆目を集めるようになりました。複雑な税制で国民に目くらましをかけているとすれば、言語道断です。税制を誰にでも分かるようにして、国民が常に政治家と官僚の施政を監視できるようにする必要があります。

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軽率極まりない石破安保政策

2024年11月2日

石破首相が、米保守系シンクタンクのハドソン研究所へ、安保政策を述べた論文を寄稿しました。総裁になる前ならば軽率な行動が許される、と思っていたのかもしれません。寄稿文は、9月27日の自民党総裁選よりも早く、23日に公表されました。ハドソン研究所は、政界のトップが演説や寄稿文で政策を表明するところです。トランプ政権で副大統領だったペンスが、2018年に、「アメリカは史上最強の米軍をさらに強くして中国と対決する」という、中国に対する事実上の「宣戦布告」演説を行った場所です(「アメリカの対中国全面攻撃」)。

日米安全保障条約の下、日本は米軍に基地を提供する義務を、アメリカは日本を防衛する義務を負っています。石破は、「米英同盟並みに日米同盟を引き上げることが私の使命」と表明しました。日米安保条約を、「非対称双務条約」から対等な条約に変えることを目指すそうです。在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の改定や、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」構想も示しています。アメリカの核シェアや核の持ち込みも具体的に検討する、としています。このNATOに、将来的には中国も含めることを示唆しています。また、自衛隊を米領グアムや米本土に駐留させることを提起しています。

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アメリカにいろいろな要求を提出する前に、日本が国内でやるべきことがあります。「ウクライナが日本に突きつけた覚悟 」に、私は次のように書きました。「相互防衛条約を結んでいても、自国を防衛する気がない国を、他国が助けてくれるとは思わない。日本人は死にたくない。日本を防衛するためにアメリカ人に死んでもらいたい、などというたわ言が、アメリカ人に通用するはずがない」。

アメリカとの間で対等な防衛条約を結ぶ前に、日本国憲法の改正が必要になります。アメリカが日本を防衛すると同時に、日本がアメリカを防衛する義務を負わなければなりません。日本の防衛ではなくアメリカの防衛のために自衛隊が出動することになり、憲法を改正しなければこの派兵は不可能です。アフガニスタン紛争では、イギリスやオーストラリアばかりではなく、ドイツが4500人の兵力を派遣しました。アメリカのために血を流したのです。自衛隊が米軍と一体になって世界中の紛争に関わる中で、中国が日本へ侵攻した場合の米軍の対応の仕方が決まります。

第2次世界大戦後に東西対立が激化した時に、ソビエト連邦(ワルシャワ条約機構)に対する防衛同盟としてNATOが成立しました。軍事同盟には仮想敵国が必要です。中国を同盟に入れると、日本周辺で仮想敵国になる国はどこになるのでしょうか?仮想敵国を具体的に表明することもなく、中国も同盟に入れるなどと軽々しく述べてはなりません。核シェアについても表明が軽すぎます。核を日本に持ち込んでそのまま倉庫に置いておくのではなく、状況次第で他国へ核攻撃をすることになります。核使用に関する具体的な規範なしで、核兵器を持ち込むのは危険です。

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トランプが次期大統領に選出された場合、米軍駐留関連の全てのコストを日本へ要求する可能性があります。日本からの対案は、米軍を自衛隊の指揮下に置くということにすればいいのです。米軍が、日本の外人部隊になります。

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AIは人間を映す鏡

2024年10月17日

チェコの作家カレル・チャペックが、1920年に発表したSF戯曲「R.U.R.(ロボット)」で、ロボットという言葉を初めて使いました(「街全体が世界遺産、プラハそぞろ歩き」)。この戯曲で、現在問題になっているAIに関する疑問が、明確に提示されました。

「ロボット」は、労働のための必要最低限なプログラムしか入力されていません。人間よりも安価で効率的な労働者です。死に対する恐怖心がなく、人間の命令には絶対服従します。労働をしなくても生活できるようになった人間たちは、指一本も動かせないほどに退化しています。ロボットの社会的地位向上を図りたい理想主義者の女主人公が、ロボットに魂(自我)を授けます。自我を得たロボットが人間に対して反乱を起こし、人間を殺し始めます。

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1950年に刊行されたSF「われはロボット」で、アイザック・アシモフが、「ロボット三原則」と呼ばれるロボットの行動原理を提示しました。第1条:ロボットは、人間に危害を加えてはならない。また、人間に危害が及ぶのを見過ごしてはならない。第2条:第1条に抵触しない限りにおいて、ロボットは人間の命令に服従しなければならない。第3条:ロボットは自身の身を守らなければならない。ただし、第1条、第2条に反する場合はこの限りではない。

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イスラエルが、ガザのハマスとレバノンのヒズボラを激しく攻撃しています。AIを使って敵の所在地を特定し、ピンポイントでミサイル攻撃や爆撃などを行っている、とイスラエルが主張しています。ところが、殺された4万数千人の犠牲者の中に、女や乳飲み子を含む子供が大勢含まれています。ゲリラは正規軍ではないので、兵舎などに集まっているわけではありません。普通の人たちと一緒に生活しています。ゲリラがいるという理由で、アパート、学校、病院などを爆撃すれば、ゲリラよりも多くの普通の住民が殺されるのは、自然の成り行きです。現時点では、どの爆弾をいつ投下するのかは人間が決め、ボタンを押すのも人間なので、これらの殺戮は人間によって実行されています。

イスラエル、アメリカ、ロシア、中国などが、AI搭載自立型兵器を開発しています。この開発に成功すれば、敵の居場所の特定から標的の殺害まで、AIによって行われることになります。これは兵器なので、「ロボット三原則」の第1条が「人間を殺さなければならない」となります。これをプログラムするのは人間です。「自立型兵器」においても、AIが人間を殺すのではなく、人間が人間を殺します。

人間社会においては、多くの場合、「善」と「悪」は普遍的な概念ではありません。戦場では敵を殺すのが「善」ですが、相手の立場に立てばそれは「悪」になります。人間によってプログラムされたAI兵器は、あいまいな基準しか持っていない人間の判断をもとにして、殺人を実行します。このあいまいさによって、殺戮に歯止めがかからなくなる恐れがあります。

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「中国の勃興と凋落」を執筆中

2024年9月8日

現在、「中国の勃興と凋落、米中の狭間の日本」というタイトルの本を執筆しています。150ページまで書き進みましたが、最終的にはこの数倍のページ数になると思います。10年ほどをかけて溜めた資料をもとに、論考で中国問題の真相に迫ることを試みています。

過去は現在に影響を与え、現在は未来に影響します。歴史的な視点から現状を把握すると同時に、時間の流れとともに変化する、中国、アメリカ、日本が関与した今後の地政学的問題を指摘する予定です。現在はまだ歴史に絞り込んだ章を書いています。

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「中華民族は5000年を超える悠久の歴史を持ち、中華文明は人類に不滅の貢献をしてきた」、「中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現するために、引き続き奮闘努力しなければならない」や「強国建設と民族復興の推進のために、われわれの世代のしかるべき貢献を果たさなければならない」などという習近平の表明は、単なるスローガン以上の危険性を含んでいます。理屈抜きの拡張主義に結びつくからです。
南・東シナ海や中印国境ばかりではなく、朝鮮半島や沖縄、更には満州沿いのロシア領に至るまで、偉大な民族が失った失地を回復するために、領土を武力で奪い取る可能性がゼロではないことを、肝に銘じて置きたいと思います。中国の地図や教科書に、既にその気配が感じられます。

喧伝されている歴史観から離れて中国史を客観的に見れば、「5000年の歴史」は偽史であることが分かります。漢民族が建立した王朝は、秦、漢、晋、明の4つに過ぎず、他の全ての王朝は遊牧・狩猟民によって建立されました。時間的には、4つの王朝は全歴史の25パーセントしか占めていません。即ち、中華民族の歴史は途切れ途切れな上に、最長でも5000年ではなく2500年ほどです。「常識」とは違って、中国の最初の統一王朝である秦は、チベット系の部族によって建立されたと思われます。

ユーラシア大陸の文明、即ち人類の文明は、オリエントを中心にして発達しました。大陸を席巻した遊牧民が、オリエントの古代文明を中国の平原へもたらしました。漢字を創った殷もアーリア系(インド・ヨーロッパ語族)の遊牧・狩猟民の国で、オリエントの影響を受けていました。

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原始細胞塊に似た細胞ロボット

2024年8月8日

「危機を乗り切る驚異の生存戦略 」で、38億年前に誕生した最初の生物である、単細胞生物の進化を述べました。原始の海の中で1個の単細胞生物が分裂・増殖すると、子孫の細胞群が1箇所に集合することになります。環境が生存に困難になる、即ち危機が到来すると、細胞群は生存の仕方を変えます。最外側に並んだ細胞が壁の役割を果たし、群の中へ有害物質が入るのを阻止しながら、有益な物質を通過させるようになる、と考えられます。集団として生き残りを図るのです。こうして、最も原始的な多細胞生物が誕生しました。

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私の上の推理を裏付ける2つのニュースを見つけました。

中国の研究チームが、15億6000万年前の円盤状化石の謎を解明しました。この化石は、今までは多細胞真核生物と考えられていました。即ち、初期の多細胞生物という判断です。ところが、最新の機器を使って多様な分析を行った結果、単細胞生物である微生物の集合体が、微生物膜で覆われている化石ということが分かりました(「中国の研究チーム、15億6000万年前の「円盤状化石」の謎を解明」)。生存に適した微小環境を微生物が自ら作り、極限環境下で生き残りを図った、と私と同じ結論を出しています。

もう一つのニュースは、ヒトの細胞で作った微小ロボットに関するものです(「Tiny living robots made from human cells surprise scientists」)。このロボットを作るために使われた細胞は、繊毛という細い毛を持つ気管の細胞です。ヒト気管の細胞を1個分離して、培養器で培養しました。その細胞は増殖して、容器の中で細胞の塊になりました。細胞塊の表面に繊毛があり、疑似器官のような形態を取ったのです(オルガノイド)。そのオルガノイドは、繊毛を動かしながら容器内を自由に移動しました。細胞塊の外の細胞集団と情報交換をすることが確認されました。

15億6000万年前の化石と最先端の細胞研究が、進化の重要な局面を解明するためのヒントを与えてくれます。

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豪州一の金持ち女傑が中国に挑戦

2024年7月4日

オーストラリア一の金持ちはラインハートで、パースに住んでいます。ラインハートの父のハンコックが、牧羊場だった西オーストラリアのピルバラ地区で、広大な鉄鉱石の鉱脈を発見し、一躍大金持ちになりました。ハンコックは、孫ほども年齢が違う、家政婦のフィリピン人女性と恋に落ちました。死期が近くなってから結婚したことで、新妻と娘の長い戦いの原因を作ってしまいました。彼の死後に、遺産相続をめぐる峻烈な争いが勃発したのです。

ラインハートは、自分の娘くらいの年齢の義理の母を、悪口雑言で攻め立てました。彼女を犯罪者にするために裁判を起こしました。この顛末を拙著の「誰も知らないオーストラリア、内部からのレポート」に書きました。女の戦いは、ハンコックの死後11年目に終止符を打ち、ラインハートが全ての鉱山資産を相続しました。

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このラインハートが、レアアース事業で対中国の前線に立ちつつあります。西側諸国の2大レアアース鉱山会社を手中に収めました。主要な探索会社も手に入れました。西側のレアアースサプライチェーンから中国を排除するために、レアアース処理施設をオーストラリアとアメリカで建設中です。

上記のレアアース鉱山会社は、レアアース事業で独占的な立場を維持したいと思われる中国から、安値合戦を挑まれ、破産の危機に直面していました。レアアースで中国への過度の依存から脱却したい日本は、ラインハートに肩入れをしました。日本政府と密接な関係にある企業が、レアアース鉱山会社に資金を注入したのです。

鉄鉱石を大量に輸入している中国は、ラインハートの会社にとっては重要な顧客です。けれども、対中国の立ち位置を鮮明にしても、中国は報復をできないはずだという判断があることは、間違いありません。ピルバラの鉄鋼石は極めて良質で、代替品をオーストラリア以外から輸入できないというジレンマを、中国は抱えているのです。彼女は、事業拡大のためならば中国と対決する西側諸国と組む、という冷徹な判断をしました。

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オーストラリア人の甥と投資談義

2024年6月9日

先月、オーストラリア人の義理の甥が、日本を訪れました。甥はビットコインに投資しています。ビットコインは最近大きく値上がりしましたから、今までの投資結果に大満足です。フェラーリを買うつもりなので、更に頑張ると言いました。

浮かれている甥を見て、老婆心ながら、忘れてはならない投資の心構えを話しました。「ギャンブラー」ではなく「投資家」になること。ギャンブラーは引き時を知りません。儲かっていれば、もっと儲かると思って、有り金を全部投資へ注ぎ込みます。損をしていれば、損失を取り戻し、更に儲けを上積みすることを目指して、有り金をはたいてしまいます。儲かっていても損をしていても、賭けを止められないのがギャンブラーです。短期で利益を得ていても、長期では損失のほうが大きくなり、最後に地獄を見る可能性があります。

投資家は引き際を知らなければなりません。多様な引き際があります。個別株の売買における引き際、年間を通して得た全体的な損益を考慮しての引き際、一生の投資における引き際。判断の基準は各々のケースで異なりますが、客観的な基準に基づいた判断が必要なことは、共通しています。「夢」に突き動かされて行動するギャンブラー。「フェラーリを買う」などという目的(夢)を掲げていると、判断を間違える可能性が大きくなります。

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AI関連がいいのか資源関連がいいのか、あるいはその他の業種がいいのかという判断には、客観的な情報の入手がまず必要になります。私は私情を捨てるために、チャートに大きく頼っています。投資候補の銘柄を選ぶときには、5年や10年という長期チャートで、スムーズな右肩上がりになっているものを選びます。勿論、未来が過去の延長線上にあるという保証は、全くありません。しかし、過去において右肩下がりや乱高下した銘柄が、今後反転するには、それなりの大きなきっかけが必要になります。そのようなきっかけは、そうあるものではありません。過去を未来へ外挿するほうが安全です。

売買のタイミングの判断は、1月や5日などの短期チャートを見て行います。ここで大事なのはテクニカル指標です。指標の動きから未来を予測します。これは、過去の指標と値動きとの相関を学ぶことによって、ある程度可能になります。ここでも、私情を捨てることが大事になります。

甥は私の意見を素直に聞いてくれました。上の判断で選んだ米株を甥に教えました。私が選んだ銘柄のチャートを見て、甥は私の話に納得してくれました。

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中学生の時に行った太陽面の観測

2024年5月15日

誰もが毎日太陽を見ているにも関わらず、普段は注意を向けません。生物の命の源である太陽が、無視されているのです。
そんな太陽が今注目を集めています。太陽の活動が活発化したために、日本でもオーロラが観測され、アメリカでは電力系統やGPSなどに異常が発生しました。太陽の活動は約11年周期で減弱を繰り返します。今回の活動のピークは来年と言われているので、まだしばらくはメディアを賑わせそうです。

私は、子供の頃から太陽の活動に強い興味を持っていて、中学生の時に1年半程太陽面の観測を行いました。その結果に対して学生科学賞が授与されました。

太陽面

上の図は観測ノートの一部です。天体望遠鏡に投影版を取り付け、そこに置いた記録用紙に太陽の黒点をスケッチしました。極度の集中力と忍耐力が必要な作業です。

太陽が活動期に入っていたので、ただ単に黒点の数が多いだけではなく、皆さんがニュースの映像で見るような巨大な黒点群が認められます。黒点は見かけ上東から西(左から右)へ移動し、現れてから消えるまで2週間ほどかかります。
上図には、太陽面全体で合計12個の黒点群があります。No.96と98が翌日の観測で一体化していました。両群の黒点の合計が44個だったのに対して、一体化した翌日には30個に減っていました。この観測結果から、太陽の活動が短期間で激しく変動することが分かります。

黒点群が細長い場合は、赤道に対する傾斜角を求められます。角度が余り変わらない黒点群もあれば、一回転するものもあります。
黒点の特徴を調べることによって、太陽の活動状況を推測できることが、観測のまとめに書かれています。また、北半球、赤道、南半球で黒点がどのように変化するのかが述べられ、その変化が連動している可能性が指摘されています。

一つの黒点群において、黒点が増す時間が、減る時間よりも長いことが分かりました。増える時間が長くなればなるほど、減る時間が縮まることが指摘されています。これは、黒点を生み出す、太陽内部の動きを推測するための重要な所見になります。

黒点周囲の温度が高い部分が白く見え、それは白斑と呼ばれます。図で白く描かれています。白斑の辺りでフレアが発生し、高エネルギーの粒子が放出されます。

少年時代の私がよくここまで観測できたと、我ながら驚きます。好奇心の強さと集中力の高さが相まって、これだけの観測ができたのだと思います。今やれと言われてできるかどうか...。

466

有限な宇宙を無限に感じる理由

2024年5月6日

「Microsoft Start」などの情報サイトで、「宇宙は有限なのか?無限なのか?」という、昔から繰り返されてきた質問を目にしました。この質問に対する答えはとても簡単です。

私のサイトに書いた宇宙論(「外側から見た私たちの宇宙」など)や拙著の「無から湧き出る宇宙」で繰り返し強調しましたが、3次元空間宇宙は、高次元空間宇宙を構成する要素の一つと考えるのが、自然です。

人間の空間認知能力は、縦・横・高さの空間指標で規定される、3次元空間にしか及びません。3次元に加わる空間指標は認知できず、高次元空間宇宙は、人間の認知能力からは完全に「無」になります。
3次元空間宇宙が高次元方向へ曲がっていても、その曲がりを私たちは知覚することができません。物理的な観測機器は人間の知覚能力の延長線上でしか機能せず、どのような観測機器を使っても、高次元方向への曲がりを測定することはできないのです。

以上のことを考慮すると、前記の質問に対する答えを容易に導き出せます。3次元空間宇宙が高次元的に曲がっていても、その曲がりを私たちは認知できません。3次元空間宇宙は無限に広がっているように思えてしまいます。

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誕生直後に宇宙の直径が1㎞だったことがあります。そこに私たちがいたとします。高次元方向へ曲がった宇宙は、直径1㎞でも無限に広がっているように思われます。まっすぐに500m歩いても宇宙の端に到達することはなく、歩き始めてから間もなく、自分が出発点に戻ったことに気づくことになります。

現在の宇宙の直径は930億光年ということになっています。この直径はどのようにして求めたのでしょうか?一言で言ってしまえば、誕生してからの宇宙の膨張速度をもとにして現在の宇宙の直径を割り出した、ということになります。
現在の宇宙の膨張速度は高速の3倍を超えています。この膨張が止まっていると仮定して、観測者がまっすぐに歩けば出発点に戻ります。歩いた距離が宇宙の円周になり、これが分かれば、感覚的には無限に大きい宇宙の直径を正確に割り出すことができます。

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