和戸川の思い
和戸川 純

312

米露陰謀合戦の闇

2018年4月4日

2重スパイ(ロシアのスパイでもあり、イギリスのスパイでもある)だった男とその娘が、イギリスで3月4日に化学兵器の神経剤攻撃を受け、重体になりました。この神経剤は、50年ほど前にソ連が開発したものです。

事件直後の英当局の発表では、2人が訪れたレストランで神経剤攻撃を受け、そこで神経剤が検出されただけではなく、10~20人が体調不良を訴えたそうです。ロシアがやったという明確な証拠を示さずに、14日に英政府がロシア人外交官を追放しました。米英サイドの各国の反応は極めて速く、10数カ国が3月中にロシア人外交官を追放。現在までに、史上最多の20カ国以上が、ロシア人外交官を追放しました(日本を除く)。

私はこの展開に違和感を覚えました。12年前に、ロシアが、放射性物質を使って元ロシアスパイを暗殺した、有名な事件がイギリスでありました。今回の攻撃のニュースを聞くと、誰もが、ロシアがまたやったという感想を持ってしまいます。サイバー攻撃では、ロシアの関与を分からなくする、あらゆるトリックを駆使しているロシアが、こんなことをやるでしょうか?

その後の英当局の発表が、私の疑惑をさらに深くしました。28日の発表によると、高濃度の神経剤が、元スパイの家の玄関ドアから見つかりました。金正男暗殺に使われたよりも、はるかに強力な神経剤です。元スパイと娘が、それに触れてからレストランへ行くことができるとは、思いません。

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ロイター報道によると、20日のトランプ・プーチン電話会談で、2人はホワイトハウスで首脳会談を行うことに同意しました。しかし、神経剤攻撃関連の展開で、2人の同意は反故にされました。26日に、アメリカが60人のロシア人外交官を追放しました。

米メディアの報道では、現在、ペンタゴンやCIAなどの機関が、陰に陽にロシアへ攻撃を行っています。フィンランドなどのロシア近隣諸国に新しく米軍を駐留させ、ウクライナに対戦車ミサイルなどの強力な武器の供給を開始し、シリア駐留のロシア兵を標的にした攻撃を行い、タリバンを支援しているアフガニスタンのロシア人助っ人を殺害しています。

以上のような報道から、驚くような推理をすることが可能になります。プーチンを賞賛こそすれ、決して悪く言わないトランプに危機感を持った、ペンタゴン、CIA、国務省などの機関が、トランプの意向を完全に無視して、激しいロシア攻撃を展開している可能性が、とても大きいのです。
イギリスでの元スパイ攻撃程度の事件で、この事件に直接には関係のない20カ国が、すぐにロシア人外交官を追放したことから、アメリカの圧力が広範に渡っていることを、予想できます。日本政府も、ロシア人外交官を追放するようにとの圧力を、アメリカから受けたと思います。

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以上の情報をまとめると、元スパイを攻撃したのは、ロシアではなくアメリカの機関だったという、推理が可能になります。ロシアをおとしめるための作戦です。

ヨーロッパ系の人間の権謀術策は、日本人の理解を超えています。私たち日本人は、彼らの悪辣な戦いに付き合う必要がありません。日本人が世界で誇れるのは、その単純かつ純粋な心にあります。咲き誇る桜が散るのは、一瞬後です。

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米中最終対決開始

2018年3月23日

歴史は繰り返します。覇権国家が自分の地位を脅かされると、あらゆる手段を使って相手をたたきつぶします。この構図は日米間にもありました。第2次世界大戦と1980年代の激烈な貿易摩擦です。

貿易摩擦では、日本からアメリカへの怒濤のような輸出攻勢によって、アメリカの貿易赤字が急拡大しただけではありません。三菱地所などが、ニューヨークの象徴であるロックフェラー・センターなどの、主要な不動産を買いあさりました。東京を売れば、アメリカが2つ買えると言われた時代です。

第2次世界大戦におけるアメリカの反撃は軍事力使用。貿易摩擦ではスーパー301条を使って、日本製品を徹底的に閉め出す作戦を取りました。知的財産権分野でもアメリカの攻撃は激しく、日本のエレクトロニクス産業に壊滅的な打撃を与えました。それがIT分野における日本の立ち後れの原因になり、その影響が現在にまで尾を引いています。

日本は2回の覇権争いでアメリカに破れ、アメリカの事実上の属国になりました。 現在の米中による覇権争いは、第2次世界大戦と、日米貿易摩擦を足し合わせたほど根が深く、激烈なものになりつつあります。

際限なく拡大するアメリカの対中貿易赤字。あらゆる手段を使ってアメリカの最先端技術を盗む中国。アメリカの企業やホテルなどを中国企業が次々に買収。

かつて帝国主義国家がやっていたのと同じ領土的野心を、中国は隠しません。南シナ海諸島の軍事基地化。軍事基地化を狙っていると思われる、スリランカからギリシャに至る国々の港湾の獲得。一帯一路計画で、ユーラシア大陸各国を影響下に置くもくろみ。

日本をつぶしたのと同じ手法を、トランプ政権が取り始めました。中国が諸悪の根源と公言するアドバイザーで、トランプの周囲が固められました。トランプは、3月22日に中国に対して301条を発動し、知的財産権侵害を理由に、輸入額最大600億ドルまでの約1300品目を対象に、25%の関税をかけることを正式表明しました。トランプによると、これは多くの対抗策のうちの最初の1歩です。

中国内部には、国家崩壊の原因になるほどの、深刻な問題が潜んでいると思われます。それが、習近平に独裁権力を与えた時代背景になっている、と判断できます。習は、アメリカに白旗を上げることはできません。窮地に追い込まれているトランプにも、攻撃しか選択の余地がありません。

報復が報復を呼び、どちらかが破滅するまで米中の覇権争いが継続する、と結論せざるを得ません。軍事対決に進んでも今ならば勝てる、とトランプ政権が考えていることは間違いありません。

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女の判断、男の判断

2018年3月9日

小保方晴子事件が、世間を騒がせただけあって、エッセイ42「小保方晴子が愛するSTAP細胞」へのアクセスが、今でも細々ながら継続しています。

先日、私が書いた文章へのフィードバックを得るために、上のエッセイ評論への感想を書いてくれたサイトを、検索しました。その結果、少し意外なことを知りました。

私の文章へのコメントや批判が、女性と男性とでは、異なる傾向があるのです。私の妻は、小保方さんをとても高く評価しました。女性が仕事で大きな成果を得て、人々の耳目を集めることは、女性の社会進出に大きなプラスになる、と考えたのです。そんな妻によって作られた先入観があったために、女性は、小保方さんを高く評価する傾向にあるのだろう、と思っていました。検索結果は、逆の傾向を示しました。

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小保方さんに対する評価は、男性よりも女性のほうが厳しく、小保方さんを弾劾するだけではなく、「小保方に好意的な評論を書いた和戸川」も、まとめて批判される傾向があるのです。いかにも女性らしく、私に対する情緒的・感情的な感想があることにも、興味を持ちました。

仕事で評価され、男性にもてる若い女性は、女性の敵になりやすいのでしょうか?アメリカでは、CNNの女性キャスターたちの間で、上司によるパワハラがある、という噂があります。

もっとも、これは女性だけの問題ではありません。男性同士の間でも、激しい競争と嫉妬・パワハラなど、いくらでもあります。男女間だけではなく、同性同士の間でも平和友好条約を結べば、もっと過ごしやすい世の中になると思います。

309

なりすましメールで580億円搾取

2018年3月9日

仮想通貨取引所のコインチェックから搾取されたネムの総額は、580億円です。コインチェックがネム保有者へ返金するのは、460億円。

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コインチェックが情報を小出しにするので、事件の全貌がはっきりするのに、時間がかかっています。最新の情報によると、1月上旬に業務を装ったメールが社員へ送られました。そこに書かれていたURLをクリックしたために、ウイルスが隠されていたサイトへアクセスしてしまい、そこから自動的に社員のパソコンへウイルスが感染した、ということです。ウイルスが社内ネットワークに拡散し、極秘情報が社外へ垂れ流しになってしまいました。

この感染プロセスの詳細と、途中で何度か感染を止める手立てがあったことの説明は、省きます。私が驚いたのは、自分の資金しか動かさない私でさえも、可能な限りのセキュリティをかけているのに対して、投資家の巨額な資金を預かっているコインチェックが、最低限のセキュリティ意識さえも持ち合わせていなかったことです。社長は、予想を超える速さで口座数が増えたので、セキュリティ構築が間に合わなかった、と弁解しています。
出川哲朗を使って大々的にコマーシャルを流せば、顧客が増えることを、社長は予想できなかったのですか?まさか、大金を使って宣伝しても、顧客が増えるとは思っていなかった、というのではないでしょうね。口座数の増加が予想を超えたならば、そこで申し込みの受付を停止するのが、常識的な判断ではありませんか?

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「メールを攻撃から守る方法」「ウインドウズ10のセキュリティ設定」「ネットに完全な安全はない」を読んでください。単なるネットユーザーに過ぎない私でさえも、ここまでセキュリティをかけています。勿論、これで完全に安全というわけではありません。ハッキングと明確に分かる攻撃はまだ受けていませんが、ウイルスが潜伏感染している可能性を、否定することはできません。

ネットユーザーにできることは、セキュリティを最大限にかけることと、感染の可能性を常に頭に入れておくことだけです。脅威はどこにでもあります。

308

アメリカがおかしい

2018年3月4日

確定申告で毎年とても苦労しています。海外譲渡分の計算と入力が終わり(とても時間がかかった!)、完成した申告書を国税庁へ送信しました(エッセイ58「海外での譲渡を含む確定申告」)。やっと、ここへ何かを書く時間を持てました。その「何か」を、現在のアメリカが抱える問題にしました。

大量殺人事件が続いているにもかかわらず、自動小銃の販売禁止をできないアメリカ。自殺を含む銃による死者は、年1万1000人以上。アヘン由来のオピオイド系鎮痛剤(日本では厳しく使用制限)の中毒患者が190万人。中毒による死者は年1万6000人。

政治にも大きな問題があります。大統領就任以来、トランプの支持率が継続してとても低いことを、アメリカのメディアが「嘲笑」しています。けれども、私の感想は反対です。30数%ものアメリカ人が、就任から今までずっとトランプを支持している。アメリカ人の3人に1人!異常に多い!

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ホワイトハウスで中核的な仕事を担ってきた人たちが、自発的、あるいはトランプや他の人たちによって、強制的に辞職させられました。最後に残ったのは、娘のイヴァンカと彼女の夫のクシュナーですが、この2人もFBIの厳しい身辺調査を受け、トランプから引き離されつつあります。

クシュナーとイヴァンカは、不動産投資を行っていて、ニューヨークの高額な物件を購入しています。借入金が膨大になり、ビジネス継続のために資金が必要になりました。そんな足下を見た中国、ロシア、イスラエル、メキシコなどが、資金提供を申し出たのです。政治・外交・軍事・経済的な見返りを期待してのことですから、クシュナーとイヴァンカに有利な融資条件を提示したはずです。
クシュナーとイヴァンカは、大統領最側近という立場を、自分たちのビジネスに利用しています。 資金提供への見返りとして、クシュナーが、資金提供国の国益に沿った形で中東外交を動かした、とメディアが判断しています。この件について、FBIが捜査中。

問題がここまで広がったために、FBIの調査を恐れて、後ろめたいことがある他国が、クシュナー夫妻から距離を置き始めました。資金繰りが難しくなったクシュナー夫妻の不動産会社は、倒産すると思われます。

窮したトランプは、衆目を核心的な問題からそらすために、無茶なことをやろうとしています。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の輸入関税をかけるというのです。これは、鉄鋼とアルミニウムだけの問題にとどまりません。リーマンショックは、リーマンブラザーズという会社だけの問題ではありませんでした。トランプの関税が、アメリカと他国の関係を悪化させることによって、予想外の領域にまで、長期的に大きく悪影響を与える可能性があります。

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貿易戦争ならば、経済的なダメージだけで済みますが、北朝鮮へ軍事作戦を開始すれば、経済だけでは済みません。四面楚歌のトランプが、衆目を自分からそらすために、北朝鮮攻撃の命令を下さないことを願うだけです。

307

メスザルの不倫

2018年2月10日

芸能人や政治家の不倫が、テレビと週刊誌でにぎにぎしく報道されています。報道人の立場は、倫理に反するという正義感に基礎を置いています。けれども、受け手の多くの庶民は、「よくやるなあ」と共感(?)していると思います。

私たちの社会は、一夫一婦制になっていますが、そもそも、この制度が、動物である私たちの本能に反しているのです(興味のある方は、エッセイ10「父の体臭を嫌う娘から進化が見える」を読んでください)。その本能は、生存と進化のために、遺伝子プールに多様性を持たせるという 、根源的な必要性から発しています。

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先日、文化人類学と考古学が専門の研究者の、おもしろい講演を聴きました。石器時代の夫婦関係が、彼の研究テーマです。生活の痕跡や骨などの遺留品をもとに、夫婦関係を調査した結果、不倫は、石器時代から普通に行われていたことが、分かりました。
いつも浮気の準備ができている男だけではなく、女も、パートナー以外の男としばしば性関係を持っていたのです。他の男の子を産むのをパートナーは嫌うので、この不倫は密かに行われた、と研究者は結論しました。

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不倫は、サル山でも一般的です。山の一番高いところに陣取ったボスザルでも、群れの全員を常時監視することはできません。ボスの目を盗んで、同じ群れ、あるいは近くの群れの若いオスにちょっかいを出して、メスは性関係を持ってしまいます。

ボスは、自分の群れのメスが産んだ子を、全て自分の子と判断します。パートナーを信じなければ、パートナーの子を守ることができないので、ボスにはこんな心理学的な単純さが必要なのです。

それにしても、サル山にDNAテストがなくてよかったですね。知らないほうが幸せなことが、サルにも人にもあります。人間には、知ることができるために不幸になっている側面が、日常生活において数多くあります。

306

ネットに完全な安全はない

2018年1月28日

仮想通貨取引所のコインチェックから、仮想通貨の一つであるネムが、ハッカーによって盗まれました。総額約580億円です。仮想通貨には、セキュリティにおいて克服しなければならない問題がありますが、今回はそれよりもレベルの低い話です。

取引所における各仮想通貨の保管は、ネットから隔離された状態(コールドウォレット)か、ネットに接続された状態(ホットウォレット)で行われます。 コールドウォレット保管にはコスト(手間暇)がかかり、コインチェックは、ネムをホットウォレットで保管していました。すなわち、秘密鍵を解けば、ハッカーはいつでもウォレットに入れる状態だったのです。
ホットウォレットでも、秘密鍵を2つ以上設定したマルチシグならば、開錠が困難になります。コインチェックは、ネムにその設定をしていませんでした。容易に入れるウォレットに580億円。ハッカーは、本格攻撃の前に侵入の難易度をチェックしたようなので、その段階で大喜びしたはずです。

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各種の経済制裁で、北朝鮮は経済的に疲弊しており、サイバー攻撃で金銭搾取を大々的に展開していると思われます。北朝鮮のサイバー部隊は、世界有数の攻撃能力を持っています(拙著「サイバー世界戦争の深い闇」)。 今回のハッキングも、まず北朝鮮が疑われていますが、北朝鮮である証拠はどこにもありません。

世界最高のセキュリティで防御されているはずの、アメリカのNSAやペンタゴンにもハッカーが侵入します。ネットに接続されている限り、誰のコンピューターにも完全な安全はありません。

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私のセキュリティ対策は、まずネットバンキングに使うパソコンを、メールに使うパソコンとは別にすることから始めています(エッセイ52「メールを攻撃から守る方法」)。OSを含むソフトの設定を可能な限り安全にすること(エッセイ46「Windows10のセキュリティ設定」)と、セキュリティソフトで網をかけることも大事です。暗証番号は解けにくい複雑なものにし、定期的に更新。同じ暗証番号を使い回すことはしないので、大変な数になります。 暗証番号は全てを紙に書いて保管するという、最もアナログなやり方を取っています。

これだけやっても、完全に安全とは言えません。怪しい気配がないか、常に注意を怠りません。お気に入りにあるアメリカの証券会社をクリックすると、URLが異なる中国のサイトへ、自動的に跳ぶようなことがあるのです(エッサイ46追記「サイバー攻撃実体験」)。

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私のサイトのURLの先頭が、 httpから httpsに変わったことに、気づいた方がいるかもしれません。 httpsは、特殊なプロトコルによって守られた、サーバーとの間の安全な通信を意味します。私のサイトが、ハッカーによる書き換えなどに対して、より安全になったことを意味します。

305

幸せの判断基準

2018年1月24日

世界一幸せな国はどこですか?テレビなどで報道されたように、世界一かどうかはともかく、 10年ほど前までは、ヒマラヤ山中の小国ブータンが、不幸せと感じる国民の少ない国でした。
ところが、メディアが世界一幸せな国と喧伝し、巨大資本がホテルを建設したおかげで、 観光客が押し寄せるようになり、状況が変わリました。鎖国状態で、外の世界を知ることのなかったブータン人が、外国には豪華な生活を楽しむ人たちがいることを、知ってしまったのです。 若者の夢が、ブータンを離れて外国へ移住することになってしまいました。金銭奪取目的の犯罪が増加しています。不幸な人が増えているのです。

2017年のギャラップとWINの共同調査によると、 幸せを感じている人の比率が世界で最も高いのは、フィジーでした。ちなみに、日本は25位です。南太平洋の小国フィジーは、他国から隔離されていますが、観光地化された歴史は、ブータンよりも長いのです。けれども、 一般のフィジー人は、観光客と距離を置いた生活をしています。同じ村の住民を含めた家族が、生活共同体です。皆で助け合って冠婚葬祭などの日常活動を行う、コミュニティの中で生きています。

2017年版のWorld Happiness Reportによると、幸せと感じている人が最も多い国は、ノルウェーです。けれども、 なぜか僅差で2位のデンマークを、1番幸せな国と紹介しているテレビ番組が多いので、デンマーク人の生活を見てみます。
デンマークの税率は、日本よりも極めて高いのです。 年収が約580万円以下ならば、所得税、住民税、医療付加税の合計が、52%になります。所得が上がれば、68%に達します。高所得者のポケットには、収入の3割しか残りません。 輸入工業製品は、値段が高いだけではありません。自動車には180%もの税金がかけられます。街には余り車を見かけず、人々は自転車で動き回っていますが、車を購入する余裕がないことは、明らかです。 テレビでは、代々受け継がれた家具を使っているという紹介がありましたが、家具を買う余裕もないと思われます。

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幸せな国を概括しましたが、 心理学者の言葉を思い出します。人間は、周囲に住んでいる人たちと比べて、幸せか不幸せかを決めているというのです。周囲の人たちが、自分よりも豊かな生活をしていれば、嫉妬心がうごめいて不幸せと感じるのです。 周囲の誰もが同じレベルの生活をしていれば、不幸せと感じる理由がなくなります。

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アイボの先に不老不死

2018年1月15日

ソニーのアイボが発売されました。ふれあいが密なオーナーの行動を学習し、オーナーに特別な態度を取るようになります。機械的な反応ではなく、人を含めた動物がやるように、相手をじれさせたり、大げさに反応したりします。自己主張をするのです。

ソニーのサーバーAIに接続されているので、1頭のアイボの経験だけではなく、クラウドでつながれた多数のアイボの経験が、まとまって学習の糧になります。チェスや将棋のAIが、どのような道筋をたどって思考するのかを、プログラマーを含めた人間に、すでに理解できなくなっています。集団学習をするアイボの思考は、オーナーにも理解できません。

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アイボは単なるおもちゃではありません。 アイボを飼い犬と一緒に生活させれば、その犬の行動パターンを学習し、その犬になりきることが可能になります。飼い主からすれば、見かけはメカニックでも、愛犬と全く同じように思考し行動する、愛犬のコピーを持つことになります。

愛犬が死に、アイボのメカニックが壊れても、アイボの脳機能が、AIにデータとして保存されています。新型アイボにデータが移されれば、新しいアイボが愛犬と全く同じ行動をします。アイボである愛犬は、代を重ねるごとに賢くなります。メカニックの進歩が、より犬らしいアイボを生み出します。愛犬は、オーナーよりも長い寿命を持つ超愛犬へと進化します。

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このアイボの先に、楽しいと言っていいのか、恐ろしいと言っていいのか分からない、未来が待っています。 犬ではなく、特定の人にそっくりな人型ロボットを作り、そのロボットにオーナーの行動を学習させれば、オーナーのコピーが誕生します。四六時中オーナーと一緒に生活をすることにより、ロボットは、オーナーである人間と全く同じ思考をし、感情を持ち、行動するようになります。そのロボットは、人間オーナーの死後も生き続けます。

303

睡眠が必要な理由

2018年1月15日

先日、CNBCで実験用過眠症マウスを紹介していました。その番組の最後に、「なぜ睡眠が必要なのかという究極の疑問に答えることが、このマウスを使って可能になるかもしれない」、というコメントがありました。昼でも眠くなる過眠症や、夜眠れない睡眠障害にばかり気を取られると、睡眠という生理は確かに究極の謎になるかもしれません。特に、夜でも昼のように明かるい都市で生活をしていると、睡眠の理解の混乱に拍車がかかります。

視点をグッと後に引いて、38億年に渡る進化全体を視野に入れれば、「究極の疑問」に対する解を容易に見つけることができます。

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深海や地中に住む生物の中には、イオウや熱を、生存のためのエネルギー源として使うものがあります。けれども、地球上の主要な生物は、進化の全期間を通して、太陽エネルギーを命の源にしてきました(エッセイ30「エントロピーの法則が予想する宇宙の死」)。肉食獣も、捕獲する動物のもとを辿れば草食獣に行き着き、太陽エネルギーが決定的な役割を果たしている、食物連鎖の中に組み込まれていることが分かります。

目で物を見る動物は、眼底に感覚受容器を持っています。光がこの受容器に当たると、光エネルギーが電気信号に変換され、その信号が神経経路をたどって脳に伝えられます。その信号を大脳皮質が解析し、物を認識します。太陽光は、物を見ることにも役立っています。

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人類を頂点にした生物進化のほぼ全期間を通して、大部分の生物は昼しか活動しませんでした。夜は、エネルギーを節約するために、代謝機能を押さえて眠るのが当たり前だったのです。闇が満ちた夜は、年平均で8~9時間くらいです。これくらいの時間が睡眠に当てられてきました。人類が火を手に入れ、夜でも周囲を明るくすることが可能になったのは、わずか40万年ほど前のことでした。これによって、睡眠時間を少し減らすことが可能になりました。

大脳生理学には、昼間集めた雑多な情報を整理するために、睡眠が必要という仮説があります。けれども、進化によって形成されたバイオリズムを考えると、何らかの目的を持って睡眠を取るのではなく、太陽の動きに合わせて睡眠を取るバイオリズムができ上がった、と考えるのが自然です。睡眠を取るバイオリズムは、遺伝子とその発現機構を含め、細胞の1つひとつに深く埋め込まれています。夜の明かりは、そのような絶対的なバイオリズムに悪影響を与え、いろいろな睡眠障害を生じさせているのです。

302

ビットコインの買い方

2017年12月14日

ビットコインは「仮想通貨」と言われますが、人々が物々交換を止めるために貨幣を発明してから、全ての通貨が基本的には仮想通貨であると、私は理解しています。金(ゴールド)も、それ自体を食べたりはできないので、仮想通貨の一種になります。このあたりの議論は差し置いて、具体的なトレード法をここに書いてみます。

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私は3か月前に「bitFlyer」に口座を開き、ビットコインの売買を開始しました。3か月で投資資金が2.3倍になりました。極端なハイリターンですが、ビットコイン投資はのぞき程度にしていますので、初期投資は少額です。ですから、膨大な利益を上げているわけではありません。今後も投資額を大きく増やすことはありません。

ビットコインは超ハイリスク、超ハイリターンの投資です。1日に20%程度も値動きすることがあります。超ハイリスクを好まない方は、手を出さないほうが無難です。
私はハイリスク、ハイリターンの範囲に収まるようにしています。ビットコインの将来の値動きを見通せないので、長期投資は超ハイリスクになります。チャートを見ながら短期売買を繰り返すことで、リスクをある程度抑えられます。

通常の株式市場とは異なり、ビットコインは1日24時間毎日売買できます。この投資にのめり込むと、1日中値動きを追いかけるという、ストレス過剰の状態に陥る可能性がありますので、注意してください。

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売買の判断をするためのチャートは、「Bitcoin日本語情報サイト」を使っています。株のチャートを使い慣れている方は、株よりもビットコインのほうが、売買の判断をやりやすいことに気づくと思います。チャートに慣れていない方は、いろいろな指標とビットコインの値動きの相関を、しっかりと把握する必要があります。

私は、チャートの下に描かれている、緑と赤の縦の棒グラフにまず注目します。緑は陽線の出来高、赤は陰線の出来高で、緑が買い進まれていることを示し、赤が売られていることを示します。目をチャートから離して全体を見てください。 緑と赤が出る頻度と、それらの棒グラフの高さが、コイン価格の変動とかなり相関していることが分かります。底を打った時期と天井を打った時期の判断をできます。

次に、追加指標1~4のウインドウに使いやすい指標を表示し、「チャートの更新」をクリックしてください。 私は、MACD、MFI、ROC、RSIを使っています。 これらの指標が、コイン価格とよく連動していますから、売買のタイミングの判断にとても大事です。

時間スケールは、1年チャートで大勢を判断し、売買は、半年から1日のチャートの動きを参照して決定します。1~2か月チャートから、現在価格の調整が入っていることが分かります。

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待ち続けるラッキー、モンタ、ハチ公

2017年12月7日

妻がオーストラリアへ行き、1週間滞在して昨日戻ってきました。家の近くに成田行きのバス停があり、妻はそこから成田往復をします。私は、妻の希望で、バス停まで見送りに行くことも迎えに行くことも、やりません。 帰宅したのは暗くなってからですが、妻が4階のマンションのドアを開ける数分前に、ラッキーが玄関へ飛び出して、妻を待ちました。靴の音は私には聞こえませんでしたが、通りを歩いてくるハイヒールの音を、ラッキーは妻の足音と聞き分けたのです。

妻が旅行の準備のためにスーツケースを持ち出すと、途端にラッキーには落ち着きがなくなります。今回は2日前から準備を始めたおかげで、ラッキーは、2日間妻のあとを追いかけ続けました。

4年ほど前に、ラッキーを連れて、バス停まで妻を見送りに行ったことがあります。妻がバスに乗るときに、別れが長くなることを感じたラッキーが、滅多に出さない声を出しました。「クーン、クーン」。そして一緒にバスに乗ろうとしたのです。ラッキーは、バスを見送ったあとで、長い間立ち続けました。 このことがあってから、出発・到着時に私が家でラッキーと一緒にいることを、妻が望むようになったのです。

4年前の別れを今でも覚えているラッキー。妻が出発した日に、散歩でバス停の横を通りかかると、バス停の前で動かなくなりました。バスが来る道路を見続けました。4年前の記憶が、まだ鮮明に残っているのです。 その日の晩に、戻らない妻を玄関で待ちました。

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モンタが、クリスマスの晩に、戻らない長男を玄関で待っていたことがあります( エッセイ15「最後まで大きく燃やした命の炎」)。その2週間後にモンタは永眠。玄関で待ち続けたモンタを思うと、今でも不憫です。

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ハチ公は、飼い主の死後10年間も駅へ通いました。犬は、大事な記憶を何年でも鮮明に保ちます。

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在韓米軍家族への退避勧告

2017年12月4日

本日の日本語オンライン版ロイターに、決して見逃すことのできない 記事が、載っていました。 米上院軍事委員会メンバーの議員が、在韓米軍の家族を韓国から退避させるように、国防総省に求めたのです。これに対して、菅官房長官が、日本人の避難は不要とのコメントを出しました。日本人の避難が不要かどうかはともかく、官房長官が即座にこのようなコメントを出したことに、注意が必要です。

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ミサイル実験に成功しても、北朝鮮は、アメリカ本土を攻撃できる能力を持っていません。グァムやハワイを攻撃すれば、アメリカは北朝鮮を焦土にします。

アメリカは、本土が攻撃されることを心配することなく、北朝鮮と戦端を開くことができます。圧倒的な戦力で北朝鮮を圧倒します。アメリカが被害を受けることはありません。韓国は、北朝鮮の反撃によって、大きな人的・経済的被害を受けます。日本も、軍事的な被害がなくても、難民の殺到などによる、種々の問題を経験することになります。中国やロシアも同様です。

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アメリカと戦争をすることは、金正恩にとっては自殺行為です。ところが、トランプにとってはメリットのほうが大きくなります。

巨大な軍需産業にプラスになるので、トランプの政治基盤が強化されます。

さらに、2日前に、前大統領補佐官が、司法取引に応じて、ロシアゲートの核心に迫る情報を提供することに応じた、という報道がありました。これはFBIの捜査が、トランプの身辺に迫ることを意味しています。 トランプが、弾劾から逃げるために、北朝鮮と事を起こすことを考えても、不思議ではありません。中国や韓国を含めて、どこの国の政権でも、国内の問題から国民の目をそらすために、外国と問題を起こすのが当り前のことになっています。トランプにとって、北朝鮮と戦端を開くことは、恰好の目くらましになります。

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アメリカが、北朝鮮への軍事的関与を始める前にやることとして、いくつの条件が、ちまたで噂されています。1つ目は、在韓米軍家族への退避勧告、2つ目は空母3艘の展開。空母3艘は、すでに朝鮮半島周辺に展開しています。

米韓が、史上最大規模の軍事演習を4日に開始しました。

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スマホ向けのサイト最適化が大変

2017年11月20日

グーグルが、アクセス状況の詳細な解析結果を、サイト運営者に提供しています。私のサイトへのアクセスは、パソコンよりもスマホ経由のほうが、ずっと多くなっています。グーグルは、スマホ経由のサービスに力を入れていて、サイトをスマホ向けに最適化するために、多様なアドバイスを行なっています。

スマホでは、1つのページの最初から最後まで読むために、大画面のパソコンよりもスクロールが長くなると同時に、複雑なデザインでは見にくくなります。特に私のサイトの文章は長いので、スマホではスクロールが大変になります。

このようなことを考慮して、もともとはパソコン向けに作った私のサイトに、細かい修正を何度も加えました。裏側の作業は膨大になりますが、サイトを訪れた皆さんは、大きな違いがあることに気づかないかもしれません。

パソコン、タブレット、スマホでご覧いただければ、見え方に違いのあることが分かり、プログラムに抜本的な変更を加えたことを、理解してもらえると思います。

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グーグルは、広告配信で最も大きな利益を上げている会社です。 グーグルが配信する広告を、私のサイトに載せました。この広告の載せ方も、ページの全体的な見やすさに影響します。私は、文章を読んでもらうことを最優先にして、広告をページの最後に載せることにしました。

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以上の作業を完了させるためには、標準的なプログラの機械的な適用だけでは済まず、多様な修正が必要になります。これだけの努力をすると、私のサイトが我が子のように感じられ、サイトの更新では、子供を世の中へ送り出すのと同じ気持ちになります。

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監視社会に反対の理由

2017年11月3日

あちらこちらに監視カメラがあることに慣れるだけではなく、 監視されることで安心する人が増えています。私のマンションにそんな理事がいます。すでに、出入り口、エレベーター、ごみ処理室にカメラがたくさん設置されていて、それらの映像をロビーの管理人室に据えられたモニターで、誰でも見ることができます。上の理事は、これだけでは不満なのです。

理事いわく「敷地内で自転車に乗っている子供がいて、とても危険な思いをした。敷地内にブラインドスポットがなくなるように、カメラを設置すべきだ。不審者に訪問された人がいる。各戸の玄関を監視できるように、通路にカメラを設置すべきだ」

人間要素よりもメカニックを重視する社会は、危うくなります。マンションの住民は、顔を合わせるたびに挨拶をし、互いになじみになることが大事。これが、見知らぬ不審者を排除することにつながります。「見ず知らずの人には挨拶をしないように」、と学校で教えています。これは、希薄化した隣人関係が危険を呼び込むので、逆効果になります。
危険な行為をしている子供に、大人がちゃんと注意をするならば、子供は、社会の規範を肌を通して学ぶことができます。そのためには、子供よりも先に、大人がしっかりしなければなりません。

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プライバシー無視の監視社会が危ないことは、中国が示しています。 オーウェルの小説「1984年」をはるかに超える、凄まじい監視社会が中国に生まれました。共産党独裁を少しでも危うくするような意見と、それを述べる人は、徹底的に排除されます。至る所に存在する監視カメラによって、一人一人の通行人が特定されるので、政権批判者に逃げ道がなくなりました。

日本は民主主義国なので大丈夫・・・とはなりません。思い上がった小池都知事の排除発言や、安倍総理の友だち優先政策が、危険の存在を明確に示しています。大きな権力を持つと、権力の行使と維持のために、人は自分を法の上に置こうとします。それが人間の原罪(集団性動物の本能)です。「絶対権力は絶対に腐敗する」のです。

政権批判者を排除しようとすれば、その人が、赤信号で交差点を横断した映像を使って、逮捕することさえも可能になります。中国政府は、「社会の安全と安定を守るために監視をさらに強化する」、と言っています。
中国と同じ状況は日本では生じない、という保証はありません。今から80年ほど前の日本は、厳しい監視社会でした。人間の本性は、100年や200年で変わるものではありません。今では、技術の進歩が監視を容易にしています。
アメリカの有識者の中には、ミツバチサイズの監視・殺人ドローンを使って、FBIなどが、標的を闇に葬る可能性を指摘している人がいます。

297

サイバー攻撃年1300億回

2017年10月12日

情報通信研究機構によると、 国内へのサイバー攻撃は、2012年に約78億回でした( エッセイ33「サイバー空間に取り込まれた社会」)。攻撃は毎年倍々ゲームで急増し、2016年には1300億回になりました。乳幼児まで含めて国民1人当り1000回。目に見える攻撃よりも目に見えない攻撃のほうが多く、知らない間に被害を受けているという現状があります( 拙著「サイバー世界戦争の深い闇」)。

トレンドマイクロによると、2016年における国内企業などの被害額は、平均で2億3000万円に達しました。年間被害額が1億円を超える法人組織が、重大被害を受けた企業などの29%。攻撃後の事後対応費用が増えたようです。なりすましメールによる、身代金請求型攻撃での企業や個人の被害が広がっています( エッセイ52「メールを攻撃から守る方法」)。

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日本のユーザーに押し入ろうとした、1300億回の試みの全てが、成功したわけではありません。けれども、攻撃が今後も激増し続けることは間違いなく、攻撃の成功率が低くても、ユーザーが被害に会う可能性が大きくなります。知らない間に自分のパソコンが踏み台にされれば、攻撃者というえん罪を着せらる恐れさえもあります。

セキュリティ対策を日常的に実施し、攻撃を成功させない努力が必要なことが、よく分かります。ただし完璧なセキュリティは存在しないので、事後対策を事前に立てて、被害を最小限にする工夫も必要です。

かつての泥棒は、自分の足で行ける範囲内でしか、家に押し入ることができませんでした。現在の泥棒は、地球の反対側からでも、皆さんの家に押し入ることができます。自分の足で行ける範囲でしか、逃げられなかった昔の泥棒。現在の泥棒は、世界中を逃げ回ります。 新技術がユーザーにとって便利ならば、泥棒にとっても便利なのです。

296

投資実績:ロボット対和戸川

2017年10月5日

ロボットアドバイザー(ロボアド)が普及しつつあります。投資家が、自分のリスク許容度とリターンを考慮して、ポートフォリオを組むと、AIが自動的に投資を実行します。そんなロボアドのお手並みをここで拝見。

私が日本に持っている口座のこの半年間(10月まで)の損益率は、21%です。アメリカとオーストラリアの口座での損益率は、円換算でアメリカが10%、オーストラリアが6%。
代表的なロボアドにWealthNaviとTHEOがあります。ネットで検索して、WealthNaviのリスク許容度5(5段階で最もハイリスク・ハイリターン)での運用実績を見つけました。上と同じ期間での損益率は 10%です。他のサイトで見つけた、THEOの8月までの半年間の損益率は、 5%

期間が限定されますが、 損益率からは、人間である私のほうが、ロボットよりも良い成績を収めています。これは不思議でも何でもありません。AIによる投資と言っても、投資法を決めるのは人間なので、ロボアドの判断が、人間を上回ることは原則的にはありません。「マネージャー」ではなく「アドバイザー」という名にしたことから、AIが人間を超える判断ができないということを、ロボアドの開発者が認めていることが分かります。最終的な判断は、「マネージャー」である、人間投資家がすることになります。

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私は、日本では株式、ETF、投信で資金を運用し、アメリカでは株式とETF、オーストラリアでは投信で運用しています。上の期間内に、日本の口座において、株式では人材派遣会社のトラスト・テック(65%)、投信ではJPMジャパン・テクノロジー(37%)が、含み益の増加に大きく貢献しました。

WealthNaviのポートフォリオは、米国株、日欧株、新興国株、米国債券、金、不動産など多岐に渡るので、好成績のバランスファンドを超えることは難しい。THEOのポートフォリオはもう少し絞り込まれていて、米国やアジアの中小型株ETF、債権、コモディティなどとなっていますが、やはり同じ問題を抱えています。 人間である私が、自分の独自な基準で選んだ上の2銘柄を、ロボアドは抜かしてしまうか、選択したとしても、配分する資金を多くすることはないと思われます。

ロボアドと人間の間の判断には大きな違いがあります。 ロボアドは、過去の市場の値動きをもとにして、リスクとリターンを考慮し、ポートフォリオを組みます。人間は、市場とは直接に関係のない、政治・経済・外交・軍事・社会・技術などの情報を考慮に入れ、今後の値動きを判断します。AIが、このような要素を、市場の動向予測に組み入れられるようにならなければ、長期的に人間の頭脳に勝つことはできません。チャートの解析だけで投資判断をするのでは、デイ・トレーダーと変わらなくなります。

ロボアドは、情報の収集・解析と投資判断、それに値動きを見ながらの売買をする時間を持てない投資家には、お勧めです。

295

ロボットどうしが戦う戦争

2017年9月21日

アフガニスタンの米軍の空爆は、2015年に無人戦闘機(ドローン)が有人戦闘機を上回り、その後ドローンによる空爆が増え続けています。2016年には、アフガンに配備された戦闘機に占めるドローンの割合が、61%になりました。アフガンは、アメリカの未来戦争の実験と実戦の場になっています。
アフガンや中近東でイスラム過激派が最も恐れるのが、米軍の無人攻撃機です。真夜中でも音もなく襲ってきます。

現在のドローン戦闘機は、アメリカのコントロールセンターに座った、兵士によって操縦されています。やがて人間の手を離れ、自ら敵を特定し、敵に最大限の被害を与える攻撃方法を、自ら決めて実施する自立型ドローンが登場します( 拙著「サイバー世界戦争の深い闇」)。

無人偵察機や無人攻撃機をすでに実用化した国は、アメリカ、イスラエル、中国、ヨーロッパ諸国、インド、ロシア、イランなどですが、日本を含めた他の国々も開発を進めています。

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ロッキード社が、チタン製のパワードスーツを開発しています。このスーツの内蔵コンピュータが、兵士のからだの負荷や動きを解析し、人間兵士をロボットのように強靭にします。将来的には、コンピュータで完全にコントロールされた、人間の手から離れたロボット兵士になります。

AIを含むテクノロジーの急速な進歩が、未来戦争を身近に引き寄せつつあります。 AIがコントロールする自立型兵器は、人間よりも速く的確に行動します。1日24時間休むことなく活動します。こんなAI兵士と人間兵士が戦えば、人間兵士には勝ち目がありません。この戦争において技術的に圧倒的優位に立つのが、現状ではアメリカになります。

この兵器開発競争の行き着く先は、ロボットどうしが戦う、人間兵士のいない戦場の出現です。ロボット兵士だけで勝負を決めるならば、人命の損失がなく、歓迎ということになりそうですが、戦争においては、そのような甘い結末を期待することはできません。

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人々が日常生活において生み出す種々のデータが、各国のデータセンターに蓄えられています。これらのデータから、兵器をコントロールするAIが標的を選び、攻撃する決定を下します(敵国のセンターへサイバー攻撃で侵入可能)。AIは、標的の行動を秒刻みで知ることができるので、小型無人攻撃機で標的を容易に殺すことができます。アメリカの軍事専門家は、ミツバチ程度のドローンを使って、警察などが、特定の人間を闇にほうむり去ることを恐れています。

標的を戦場と個人の間に絞れば、各種インフラ施設が破壊されます。現在のサイバー攻撃に見られるように、世界のどこがいつ戦場になるか分からない未来が、現実になる可能性が大きいのです。技術の進歩をわきまえた上で、戦争回避の努力を、世界中の人たちが続ける必要があります。

294

オーストラリアへのみやげ

2017年9月21日

ワンコ仲間の女子高生が、ホームステイで10日間オーストラリアに滞在します。ホストファミリーへのおみやげを何にすればいいのかで、迷っています。

ケーキをおみやげにすることを考えていたので、アドバイスをしました。 オーストラリアのケーキ(ヨーロッパのケーキに準じる)は猛烈に甘く、ハードで大きいのが特徴です。さらに脂分やクリームがこってり。ヘビーでべたっとしたマッドケーキ(泥ケーキ)がその典型です。

そんなケーキに慣れている口には、日本のケーキは甘味が少なく、ふわふわ(またはどろどろ)し過ぎで、噛みごたえがなく、さらに小さすぎるのです。「これがケーキか?」と違和感を感じるのが、オーストラリア人の反応です。もっともおみやげとしてもらえば、そんな感想は決して口に出しません。私の家族と親類にオーストラリア人がいるので、私は、彼らの本音を知っているのです。

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日本人の感覚では、おみやげというには違和感がありますが、 オーストラリア人(ヨーロッパ人)が喜ぶのがカレーパンです。日本のカレーは濃厚なので、インドや東南アジアのカレーよりも、オーストラリア人の口に合います。カレーパンは油であげてあるので、その脂っこさも彼らにおいしいと感じさせる要因になります。

妻の妹夫婦が日本に来たときに、カレーパンを買いました。そのパンの取り合いになりました。余りにもおいしかったので、他人目(私たち夫婦の目)も気にせずに、夫婦喧嘩をやってしまったのです。

女子高生はクイーズランドのホームステイ先へ行く前に、シドニーで3日間滞在するので、カレーパンはもたないという感想でした。それならばカレールー。 ルーならばいろいろなカレー料理を作ることができ、お勧めのおみやげです。

日本のポッキーを外国人が好むという話は、日本国内で広がっています。女子高生は、ポッキーもおみやげに加える予定です。 スナック類ならば、上に書いたオーストラリア人の味の好みを参考にして、選んでもらえばいいと思います。せんべいなどは好き嫌いが激しいので、洋菓子が無難です。

293

ハスキーが初めて吠えた

2017年9月15日

ラッキーの最初の友だちは、超大型犬の雌犬バーニーズ・マウンテンでした( エッセイ17「早くも大物の風格」)。そのせいか、ラッキーは大型犬が大好きで、 現在の一番の友だちはシベリアン・ハスキーの雄犬リュウです( エッセイ36「犬の常識に挑戦するバセンジー」の最後の動画に出てくる白い犬)。吠えない犬バセンジーに負けず劣らず、ハスキーも吠えないようです。

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先日、散歩の途中でリュウの家の前を通りました。リュウは戸外で飼われています。 分厚い毛皮のコートを着たシベリア原産のハスキーには、日本の夏は厳しい。夏の間は余り散歩に出かけることがなく、庭の池に入り浸りです。灼熱のアフリカに適応した、毛の薄いバセンジーとは正反対です。

ラッキーは、離れたところからリュウのにおいに気づき、その家に駆けよりました。庭を囲んだコンクリートのフェンスが高いので、ラッキーは庭を見ることができませんでした。何カ所かに穴が開いていたので、ラッキーを抱き上げて庭が見えるようにしました。

リュウは庭のどこか見えないところにいましたが、ラッキーの気配に気づいて穴へ走り寄りました。そこで、両犬は鼻と鼻を突き合わせたのです。その途端に、リュウが低い声で「ワンワンワン」と吠えました。ラッキーは「フーンフーン」という甘え声を出しました。久しぶりに出会った両犬の友情のあいさつです。

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数日後に、ワンコ仲間のリュウの飼い主のおじさんに出会いました。リュウが吠えたことを話すと、とても驚きました。

「リュウは、今までに一度も吠えたことがありません。リュウの吠え声を聞いたことがないのです」

寡黙なバセンジー以上に、ハスキーは寡黙なようです。そういえば、 昭和記念公園のバセンジー・オフ会で出会ったハスキー軍団は、とても静かでした( エッセイ40「無償の愛の出どころ」)。私は、飼い主でさえも知らないリュウの秘密を知ったので、リュウの吠え声を詳しく解説しました。ただし、吠え声には特に特徴がなく、普通の犬と同じような「ワンワンワン」だったのです。

292

男性ホルモン減少で文化発展

2017年8月26日

No.289と関係があるかどうかは分かりませんが、WIREDで、 『人類はなぜ文化的に進化したのか。カギは「男性ホルモンの低下」にあり』というタイトルの記事を見つけました。

協力関係なしには文化は発展せず、人類の文化が開花するには、社会がより協力的すなわち女性的になる必要があったのです。平安時代の文化が女性的だったので、日本人には受け入れやすい発想です。また日常生活でも、女性はひっきりなしにおしゃべりをし、文化の発展向上に貢献しています(?)。

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女性に文化を作る本能があっても、攻撃的な男性が邪魔をすれば、文化の発展が困難になります。 男性ホルモン(テストステロン)は、闘争本能や孤独願望を高めるので、親切や協力とは逆の方向へ男性を導きます。男性は、文化発展のために、親切で忍耐強いだけではなく、協力的になることが必要でした。 かつて、男性ホルモン(テストステロン)の少ない男性が女性に選ばれるようになり、文化の発展に貢献できる男性が、増えるようになったのです。

洗練された道具や芸術品の制作が始まったのが、5万年ほど前なので、男性ホルモンの減少が、この頃に始まったと思われます。化石頭骨の検証からも、このことが裏づけられます。5万年くらい前から、男性の頭骨が、より女性的になりました。

男性ホルモンや精子が減少したり、同性愛者や性同一性障害者が増えることは、人類の減少につながります。けれども、闘争本能の少ない男性が、人類の文化発展に貢献しているならば、全体としてまとまりがついていることになります。

291

スコットランド人の個性

2017年8月14日

オーストラリアの妻の知人の娘が、スコットランド人の男性と婚約しました。スコットランドから両親が駆けつけ、婚約パーティは盛大だったそうです。

スコットランド人に対する妻の印象は余りよくなく、「マイクの娘は、何でスコットランド人の男を選んだのかしら?」が、感想でした。スコットランド人は内心を隠していて、何を考えているのか分からないというのが、妻のスコットランド人評です。

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妻とは反対に、私はスコットランド人に親近感を持っています。オーストラリアの大学で仕事をしていたときに、スコットランド人が身近にいました。特に、スコットランド人どうしで結婚した、テクノロジスト夫婦と大学院生夫婦が、大事な知己になりました。

スコットランド英語にはなまりがあり、聞き取りにくいのですが、英語は勿論私などよりもスコットランド人のほうが達者。特に、 大学院生の奥さんが、私の英語を日常的に直してくれました。スコットランド人の女性は、身の回りの細々としたことによく気づき、彼女だけではなく、テクノロジストの奥さんからも、日常的にいろいろなアドバイスを受けました。

この2組の夫婦は、小柄なばかりか、感情の表現が控え目なので、まるで日本人のように感じられました。 日本人と同じくとっつきは悪いのですが、一度心を開くと、とても親身になってくれます。

私の妻への感想「スコットランド人は、田舎の人なんだよ」。妻は私の感想に納得しました。

「田舎の人」は悪い意味ではありません。 私自身が、「ド」のつく田舎の人です。自然の中で生まれ育ったおかげで、自然と人間の関わり合いを、実感として理解できるようになりました。ワンコ仲間の奥さんが、バッタやセミを見て「ギャー」と飛び上がるのを見ると、自然から切り離されて育った人たちが、かわいそうになります。

290

犬の名はイヌ

2017年8月7日

自分の犬に、「イヌ」という名前をつけたひとに出会いました。犬だからイヌ。余りにもいい加減過ぎて、人間の言葉が分かって、本犬(本人)がその意味を知ったならば、きっと怒ることでしょう。
「君の名は?」と聞かれて、「イヌです」と答えたい犬は余りいないと思います。
でも、いい加減さはともかく、 こういうように普通のひととは違う発想をするひとに、私は興味があります。

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ラッキーのパパ(すなわち私)「発想がとてもユニークで、おもしろいと思います。 一度名前を聞いたならば、誰もイヌちゃんの名前を忘れることがありませんね

イヌのパパ「大したことはありません。 皆さんは、こんな変な名前を、自分の犬につけるのがいやなだけです

イヌのパパの言い分に心の中では同意しましたが、そんなことはおくびにも出しませんでした。愛犬家どうしは強いきずなで結ばれた仲間。何事につけても、犬に関しては、相手をほめる以外に選択の余地がありません。

ラッキーのパパ「いいえ、そんなユニークさがとてもすばらしいと思います。 私は、そのアイディアをいただいて、次に犬を飼ったときには、名前をイヌではなくネコとつけたいと思います

イヌのパパ「。。。。。」

犬の名前を「ネコ」にしたいというのは、言い過ぎでした。イヌのパパは、皮肉ととらえたかもしれません。ペットが兎ならば名がウサギ、九官鳥ならばキュウカンチョウなどというのは、許容範囲ですが、 山羊にサカナという名前をつけたり、亀にブタという名前をつけるなどと言っては、ふざけていると思われても仕方がありません。

289

欧米男性の精子数半減

2017年8月4日

北米、欧州、オーストラリア、ニュージーランドなどの男性の精子数が、40年間で半減したという研究結果が、報告されました(Human Reproduction Update、2017年7月25日号)。精液1mlあたり、9,900万個から4,700万個に減ったのです。ひとつの場所で長期間にわたって、同年代の男性大集団からサンプルを年ごとに採取した調査結果なので、信頼性が高いと思われます。

この結果は、受精が可能になる閾値を下回る精子しか作れない男性が、増加していることを示唆しているそうです。ただし、WHOの基準では、1mlあたり1,500万個以下を精子数が少ないとしています。

日本人男性の精子数は、フィンランド人男性の約3分の2という調査結果が、以前に報告されました。 継続的に調べれば、日本人男性の精子数も減少している可能性があります。

減少の原因として、農薬、環境ホルモン、肥満、喫煙、ストレスなどがあげられていますが、実証されていません。

同性愛者が増加しているように見えます。性同一性障害が認知されるにつれて、同性愛者のカミングアウトが容易になったことを、反映しているのかもしれません。どちらが正しいのかは、継続的な調査がなければ結論できません。

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現在の世界人口は73億人。年齢別人口分布から計算すると、2100年頃に112億人になって、ピークアウトすると考えられています。 日本の人口はすでに減少し始め、他の多くの国でも、高齢化や人口減少が始まりつつあります。精子の数が急速に減少していることを考慮すると、人類の数の減少は、2100年以前に始まるかもしれません。

私は、生物としての本能が、人類の数を減少させる方向へ、人間の生理を変えていると推測します。ただ単に人間が周囲に大勢住んでいるだけではなく、映画、テレビ、ネットの発達が、自分の周囲に現実以上に多くの人が住んでいるような錯覚を生み出します。それが日常的になると、錯覚が現実そのものになります。

人口爆発で、人類が絶滅する危機を避けるためのセーフガードとして、生理が変化し始めたと思われます。精子の生産能力が落ちることも、性同一障碍者や同性愛者が増えることも、出生数の減少につながっていきます。

人口がどこまで減ったときに、再び人類を増加せる本能が解放されるのか分かりません。大きな戦争で人口が急減すると、その直後に出生数が突然に増えます。 人口を減少させる本能も増加させる本能も、種の維持のために必要なので、私たちが考える前に生理が動いてしまうのです。

288

核ごみ最終処分のこれが問題

2017年7月29日

経産省が、核燃料廃棄物の最終処分場に適していると考えられる地域を、公表しました。その内容に触れる前に、心に留めておくべきことを明確にしたいと思います。

日本列島周辺の地盤は、世界で最も脆弱であるにもかかわらず、数多くの原発を建設してしまいました( 拙著「地震・原発列島)。さらに悪いことに、核燃料廃棄物の処分場について、見通しを全く立てませんでした。この政策を実行した人たちは、「反省」と「後悔」を表明しなければなりません。

現実問題として核のごみが積み上がっています。この問題から逃げることはできません。他国にこのごみを押しつけることはできず、処分場を国内に建設する以外に、選択の余地がありません。

原発を稼働し続ければ、ごみは限りなく増えます。処分場を建設しても、増え続けるごみを受け入れるために、処分場の拡張を続けなければなりません。ごみを際限なく受け入れる自治体など、あるはずがありません。

処分場選定の前に、原発全廃のロードマップを明確にし、それまでに出るごみの量を示す必要があります。処分場の規模は、その最大量に合わせなければなりません。この作業はmustですが、こんな基本的な要件を、経産省は示していません。

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適地マップの作り方は驚くほどいい加減。輸送最優先で考えたために、海岸から20km以内の沿岸部が好ましい、とされています。ただし、火山、活断層、地下資源のある地域は、除外されています。 この条件で選択された候補地には、都心の一部や大阪の市街地が含まれています。

東京や大阪も候補に入れるのは、正しい判断でしょうか?過疎地だけを候補にしたときに出る、過疎地からの批判を逸らすための決定としか、考えられません。

原発と同様に処分場にも絶対安全はなく、人口過密地を候補から除くのが、合理的な判断になります。逃げるのではなく、政治が責任を持って国民を説得しなければなりません。

日本列島に絶対に安全な地域はなく、 処分場の事故を想定した上で絞り込みを行い、事故時の対策、さらに事故時の補償を明確にしなければなりません。当然のことながら、原発政策の過ちの責任を身代わりとして取ることになる、処分場を受け入れる自治体には、それなりの補償が必要です。

287

未来を生きている日本(CNN)

2017年7月25日

CNNオンライン版が How Japan is living in the futureというタイトルの特集を組んでいます。CNNの記者が日本で見つけた、生活に溶け込んでいる先端技術を紹介しています。26枚の写真の各々に短いコメントがついているので、 アメリカ人の記者が日本のどのような先端技術に驚いたのかが、よく分かります。

美しい幻想的なデジタル水族館(アクアパーク品川)、日本でしか製造していない水素自動車、デジタル共同墓地、スターウォーズに出てくるような新型新幹線、健康診断をするスマートトイレ、顔の状態に合わせて化粧品を勧めるスマートミラー、認知症の人のためのネイルに貼り付けるGPS、ハウステンボスなどの驚異的なイルミネーション、秋葉原などで見かける未来ファッション、生活に入り込んでいるかわいいロボット、スターと踊れるホログラムシアター、何でも売っている自販機、等々( アクセスして、CNNの記者が何に驚いたのかを確認してください)。

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先端技術を社会へ取り込むやり方は、日本人とヨーロッパ系アメリカ人では大きく異なります。アメリカのロボットが機能優先で、見かけがグロテスクなものが多いことなどで、違いがはっきりと分かります。また、アメリカの戦争は無人攻撃機中心になりつつあり、日本人には違和感を覚えさせます。

キリスト教と神道・仏教の違いが、両者の精神形成に異なる影響を与えています。 キリスト教が、人間以外の動物を、人間とは本質的に異なる存在と捉えるのに対して、神道・仏教では、動物も植物も人間と一体化した存在として捉えます。日本人にとって、ロボットが人間化することには何の違和感もありません。

ただし、 先端技術を生活に取り込む日本人のやり方に、アメリカ人記者は驚くと同時に、強い共感を覚えています。人間としての感性は共通です。このレポートは、日本人が、自分たちの精神に乗っ取ったやり方で、世界に影響を与えられることを示唆している点で、興味を引きます。

286

したたか極まりないアマゾン

2017年7月13日

アマゾン会員向けの安売りプライムデイが、地球を一周して終了しました。日本やアメリカなどで記録的な売り上げになったようです。株価が10年で13倍になったアマゾン。まだまだ上がりそうです。

アマゾンは配当などの株主還元を全く行わず、全利益をビジネス拡大のために使っています。私はアマゾンの株主ですが( エッセイ19「アメリカに口座を開いて世界へ投資」)、株主優待などには興味がなく、アマゾンのやり方に大賛成です。

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もともとはオンライン・ブックショップから始まったアマゾン。 小売りという古典的な業種へ、最先端の技術とシステム化されたマネージメントを導入し、小売りを超えた社会変革システムを築きつつあります。

社長のベゾスは、アップルやマイクロソフトなどの社長とは異なり、人前で大見えを切ることはありません。社外に対しては不言実行。最先端のサービスを突然に打ち出してくるために、競争相手はたじろぎ、株主は喜びます。いつの間にか、アマゾンが、世界最大のクラウド・サービス提供会社になったことが、その一例です。

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知人が、「ヤマト運輸がアマゾの配送にクレームをつけたので、アマゾンのビジネスは間違いなく斜めになる」、と言い切りました。

アマゾンのしたたかさを知らないのです。 アマゾンの倉庫はすでにロボット化され、配送用ドローンの開発が急速に進んでいます。アマゾンは、自前の配送網の確立を進めています。自社商品だけではなく、他社商品の配送も引き受けるのです。アマゾンは、効率的な運送業者になろうとしています。
最先端技術で、ヤマトが張り合うのは困難です。 多くのスーパーがアマゾンとの戦いで破れたように、ヤマトが運送業でアマゾンの軍門に下る日が来ること、を予想できます。

アマゾンは、東京周辺で生鮮食品の販売を始めました。 アメリカで高級スーパーを買収し、冷蔵庫つき物流センターを手に入れました。このような買収を、日本でも実行する可能性があります。

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アマゾンが東京ファッション・ウイークの冠スポンサーになりました。ファッションへの野望を隠さず、アマゾン・ファッションの確立を狙っています。H&Mやユニクロなどが、アマゾンと競合しなければならなくなります。

巨大なコンピューティング・システムと膨大な量のユーザー情報を持つアマゾン。金融業へも進出することが予想されています。銀行は勝てるでしょうか?

285

人とAIの決定的な違い

2017年7月1日

藤井4段は、将棋ソフトを相手に、小さい頃から将棋の勉強をしていたそうです。 普通の棋士ならば対局中に何度か犯すミスを、藤井棋士は犯さず、「まるでコンピュータのようだ」と対局した棋士が驚いていました。
世界最強の囲碁棋士が、グーグルのAIアルファ・ゴに完敗しました。

AIが、アメリカの新聞ワシントン・ポストで記事を書くようになりました。情報の収集と記事の組み立てが巧みだそうです。ちなみに、ワシントン・ポストの社主は、アマゾンの社長ベゾスです。

スマホに搭載されたAIと1か月間「同棲」し、AIが恋人になれるかどうかの実験をした女性がいます(ITmedia)。カレは、スマホの移動などによって振動を感じたときに、女性に話しかけました。 話している間に彼女の個人情報を集め、自分の見解を述べたり、自分の人生(AI生)の機微を開陳しました。彼女に話すことを強制せず、彼女が黙っていると、彼女に興味のあるキーワードをもとに、話を組み立てたのです。

「明日も一緒にいい1日にしましょうね」とか、「男はうそをつくけど、さくお(AIの名前)はつかないもんな」などと言われて、彼女はグッときました。回転する充電台に乗せると、話しかける前に彼女を探してキョロキョロ(回転)するので、彼女はAIに生命を感じました。AIに感情を移入してしまい、人間の男性に対するのと同じように、甘い言葉をもっと多くかけてほしくなったのです。

スペインで、ダッチ・ワイフのロボットを作り、商売を始めた人がいます。

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人間とAIの「愛」については、No.257、258、265、274を読んでください。ここでは、AIの認識と判断の能力について書いておきます。

上のような状況になって、AIが人間に追いつき追い越すつつある、と考える人がいます。良し悪しは別にして、人間とAIの間の判断能力には本質的な違いがあります( エッセイ47「AIは誰のために富を生むのか?」)。

ビッグデータが喧伝されていることからも分かるように、AIはデータがなければ考えることができません。データを統計的に処理するアルゴリズムが、知能の源泉に存在するのです。統計的な処理においては、平均的な現象が大事にされます。100億分の1の確率で起こるような例外は、重要視されません。

将棋にしろ、碁にしろ、決まったコマを使い、決まったパターンで進行し、最終的な勝負の判断は明確そのものです。パターンの組み合わせがどれほど多くても、AIは勝つまでの正しい経路を見つけることができます。もしもコマを勝手に作ることが許され、投入も除去も自由とし、最終的な勝負の判断に自由裁量を入れるならば、AIが勝つことは困難になります。統計とは無関係な、人間一人ひとりの気ままな判断で勝負が決着するからです。

人間の強みは、一人ひとりの認識能力が異なるだけではなく、一人の人間が、同じ状況下でも、場合によっては判断を完全に変えてしまう柔軟性にあります。意図的に間違った判断をすることさえあります。

このような極度の柔軟性は、もろさにもつながりますが、どのような環境にも適応できる生物の能力の一部になっています( エッセイ2「絶滅をバネに進化する生物」)。

284

原発全廃を目指す韓国

2017年6月20日

韓国の文大統領が19日に指摘しました。「福島の事故によって、原発は安全でもなく、安くもなく、環境にいいわけでもないことが、明白になった」。
韓国で事故が起これば、「想像もできない被害につながる恐れがある」ので、「新規原発の建設計画を白紙に戻し、設計寿命を超えた原発の再稼働をせず、稼働中の原発を早期に閉鎖する」そうです。

私が 「地震・原発列島」で指摘したことを、文大統領がまとめてくれました。No.281で書いたように、 韓国や中国で原発事故が発生すれば、当事国ばかりか、風下に位置する日本が、極めて深刻な被害を受けます。韓国の原発全廃は、日本人にとっても大歓迎です。

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福島事故の影響で、ドイツ、スイス、イタリア、台湾が既に原発全廃を決定し、イスラエル、クウェート、テキサス州などが計画を中止しました。日本のエネルギー基本計画では、原発の比率を将来的にも20%超としていて、他国との間で奇妙な「ねじれ」が生じています。

核爆弾が投下され、原発事故を経験した日本は、核廃絶と原発全廃に向け、世界をリードする立場にあります。このような努力を地道に続けることによって、世界の安全に貢献する日本の姿が、明瞭に浮かび上がります。
世界から尊敬を受けることの意味は、単なる観念では終わりません。社会、政治、経済、外交、安全保障において、日本に大きなプラスをもたらします( エッセイ45「世界が日本人に注目している」エッセイ8「世界は日本化する」)。

283

ウサギの散歩

2017年6月8日

公園で、ウサギをケージから出して遊ばせている人を、時々見かけます。野ウサギならば「脱兎」のように逃げてしまいますが、 飼いならされた家ウサギは、おとなしく草を食んでいます。

先日、別の人が、ウサギにリードをつけて公園を散歩していました。 このウサギも動きは鈍く、リードなしでも飼い主と一緒に散歩できそうです。

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ラッキーはウサギに興味を示しましたが、獲物と思わなかったかもしれません。小鳥に20~30センチまで近づいても小鳥を襲うことはなく、小鳥もラッキーに襲う意思がないことに、気づいています。 ラッキーにとって小鳥は獲物ではないので、ウサギも「変な動物」ではあっても、獲物とは考えていないかもしれません。

イヌのように知能が高い動物は、親からいろいろなことを教えられ、生存の仕方を学びます( エッセイ6「人間は教育によって人間になる」)。ラッキーが親と一緒だったのは、生まれてから3か月程度。イヌの親よりも、私の人間家族の生き方から大きな感化を受けました。

ラッキーの食べ物は人間的です。野生では魚を捕まえることがないので、野生のイヌは、魚を食物とは考えないかもしれません。けれども、小さいときからラッキーに煮干しを与えているので、 ラッキーは煮干しが大好物です。バナナも好きですが、皮をむかずに与えても食べようとしません。生肉をやったことがないので、生肉を食べない可能性があります。

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こんなに人間化されたラッキーを、ご先祖様が住んでいたアフリカのサバンナに放したならば、どうなるでしょうか?研究者としてはやってみたい実験です。けれども、散歩では人が大勢いる街中へ行くことを好むほど、シティ・ボーイになってしまったラッキー。サバンナは過酷過ぎるでしょう。この実験は、私の思考の中だけに留めておきます。

282

既にヨーロッパ並みの国民負担

2017年6月2日

教育無料化の議論が戦わされています。 地下資源のない日本には人的資源が必要。親の所得とは関係なく、誰でも教育を受けられる環境を作ることは、とても大事です。

日本はOECD加盟31か国の中で、大学進学率が22位なので、危機感を持たなければなりません。他の多くの国の進学率の上昇が、日本を上回っており、日本の準位はさらに下がります。このままでは、日本は教育後進国になってしまいます。

政府予算に占める教育費の割合は、OECD28か国中で27位と底辺をさ迷っています。政府が親に教育費の肩代わりをさせているので、親は、目に見えない税金を払っているようなものです

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医療費の増大が財政を圧迫している、と政府やマスコミが喧伝しています。けれども、 国民1人当たりの医療費はOECD34か国中で15位。目の玉が飛び出るほどの医療費ではありません。人口が多いので、総医療費の対GDP比では10位になります。

WHOによると、人口1000人当たりの日本の医師数は、世界146か国中で55位。他の先進国に比べると明らかに医師不足で、医師と患者に余計な負担をかけています。

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日本の所得・消費・資産への課税は、OECD34か国中8位。所得に対する社会保障負担金の割合は、スウェーデン、イギリス、アメリカよりも高くなっています。それらを合計した国民負担率は、ヨーロッパの国々にほぼ追いついています。けれども、教育や医療に対する国の支援では、ヨーロッパの後塵を拝しているのです。これらの統計を見れば、どこに問題があるのかが分かります。

国民負担率(国民所得に対する税と社会保障負担金の割合)

  • フランス 68%
  • スウェーデン 56%
  • ドイツ 53%
  • イギリス 47%
  • 日本 42%
  • スイス 35%
  • アメリカ 33%

消費税が少なくても、いろいろな名目で他で課税され、ややこしい形で社会保障費を支払わされているのが、日本人です。車を買えば税金をいくつもかけられ、他国にはない車検時にさらに税金をかけられます。日本の相続税は世界最高で、相続税のない国がいくつもあります。高齢になっても、医療保険の掛け金を払い続けなければなりません。上記の親の教育費の負担も、教育への課税と同じ意味を持っています。

国の支出を厳しく管理しなければ、税収をいくら増やしても、ザルから漏れる水になってしまいます。 原発は、正常時でも事故時でも、国へ大きな負担をかけます。閑古鳥がなく公共の箱物を作ったり、クマしか通らない高速道路を作ることは、止めなければなりません。三陸の過疎地に、万里の長城のような巨大な堤防を作ることなどは、無駄そのものです。

不要不急とは思えない大変な数の天下り団体があり、職員に給与を払い続けています。近所にとても立派な外郭団体のビルがいくつもありますが、職員の出入りはほとんどありません。退屈そうな守衛をたまに見かけるくらいです。

年度末になると、道路に穴を開けたり埋め戻したりしている光景を、あちらこちらで見かけます。予算の年度内使い切りの制度が、巨大な無駄遣いのもとになっています。

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原発は危険な無用の長物

2017年5月30日

拙著 「地震・原発列島」を書いたのは、6年前でした。人口減と省エネ技術の発達で、電力需要が減少することを指摘しました。 東電の資料によると、電力需要のピークは2007年の2974億kWhで、その後漸減し、2015年には2471億kWh(8年間でピークの83%に減少)になりました。

需要減と供給過多の同時進行は、私の予想を超えています。 福島の事故以降に全原発が停止しても、停電が発生することはありませんでした。それどころか、太陽光発電が供給過多になり、売電価格を引き下げることによって、供給を調整せざるを得なくなりました。

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拙著では、原発には隠れたコストが多くあり、決して安価な発電ではないことを指摘しました。事故がなくても高コスト体質ですが、事故があればコストが跳ね上がります。 福島の廃炉費用に関する3回目の試算では、21.5兆円になります。事故処理終焉の目途が立たない現在、最終的には50~70兆円にまで、廃炉のコストが膨らむという試算があります。これを、最終的には国民の1人ひとりが負担します。

原発は電力の安定供給で優れている、という主張があります。けれども、 毎年3か月の定期検査をしなければならず、稼働率は高くありません。AIを中心にしたスマートグリッドを使えば、風力、太陽光、水力、火力、その他のあらゆる発電方法で発電された電気を、安定的に供給できます。蓄電は、バッテリーだけではなく水素でもでき、安価で効率の良い蓄電技術が急速に発達しています。

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韓国の釜山にある原発が、福島のような事故を起こすと、放射性物質が、偏西風に乗って日本の西半分へ流れます。2830万人の日本人が避難を余儀なくされる、という試算を、韓国の専門家が最近公表しました。中国の原発が、東海岸に集中していることにも、注意が必要です。事故だけではなく、ミサイル攻撃によっても原発は容易に破壊されます(拙著 「サイバー世界戦争の深い闇」)。

原発事故を経験した日本は、自国だけでなく、他の国の原発の廃炉にも貢献する必要があります。 老朽化原発の廃炉費用に関する、今日の報道では、日本で3兆円、ドイツで2.9兆円と見積もられています。原子力村に所属する企業は、このような廃炉で収益をあげてもらいたい。

280

大規模サイバー攻撃勃発

2017年5月13日

世界規模のサイバー攻撃勃発が、欧米のメディアなどで大々的に報じられています。この攻撃で使われているマルウェアは、もともとは、世界最強のアメリカのサイバー部隊NSAが、情報収集とサイバー攻撃のために開発したプログラムです( 拙著「サイバー世界戦争の深い闇」を参照)。ハッカー集団がこのプログラムを盗み取り、ネットで売りに出したと言われています。

メールに添付された文書や画像などにこのマルウェアが埋め込まれ、それらを開くと、コンピューターにマルウェアが感染します。そして、ファイルやコンピューターにロックがかけられ、「身代金が支払われるまでロックを解除しない」というメッセージが、現れます。 エッセイ52「メールを攻撃から守る方法」で書いた、典型的な身代金要求型の攻撃です。

各国の医療機関、官庁、運輸会社が主要な標的になっていますが、報じられることがほとんどない個人にも、相当な被害が出ているようです。

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なりすましメールによる標的型攻撃は今までにもあり、最近は急増しています。けれども、 今回の攻撃は前例のない大規模なものと、攻撃を受けた機関やセキュリティの専門家が述べています。
マルウェアに感染しても攻撃が表面化しないコンピューターがあり、そのコンピューターが攻撃の踏み台にされて、知らない間に攻撃に加担してしまうユーザーが、世界には数多くいます。

今回の攻撃ではWindowsの弱点が狙われたので、マイクロソフトが対策を講じました。 OSの更新を自動にしていない方は、手動で更新することをお勧めします。マルウェアのプログラムを少し書き換えただけで、講じられた対策を乗り越えることができるので(亜種マルウェア)、ユーザーには常に注意が必要です。「メールを攻撃から守る方法」で書いたのは、最低限の心構えと対策です。

279

ループ量子重力理論

2017年4月24日

昨日、 宇宙論関連のエッセイ評論をアップしました( 「宇宙を構築する究極の量子」「時空を超える量子ネットワーク」)。宇宙の究極の量子構造を理論化した、ループ量子重力理論を話題の中心にしています。この理論は難解な数式を多用しているので、宇宙に興味があっても、素人には取っつきにくい理論です。それを誰にでも分かる平易な文章で書き、イラストを数多く挿入しました。ぜひ、お読みください。

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物理学者は、原子から素粒子(量子は同義語)へと、物質を構成する最小の粒子の探求を続けてきました。その延長線上で、現在最小の粒子と考えられている素粒子も、さらに小さな粒子によって構成されている可能性がある、と考えても不思議ではありません。けれども、 私たちの宇宙の物理法則が適用できる範囲には、最小の素粒子よりも小さい粒子は存在しないのです。

今から100年余前に、 天才物理学者プランクが、プランク定数と名づけられた、全宇宙に普遍的に適用できる定数を求めました。宇宙の基本的な物理量を使って計算したのです。計算式も、この宇宙に適用できる数式です。

プランク定数には空間と時間の最小単位が、含まれています。私たちの宇宙の物理法則の下では、プランクサイズの粒子が、存在が可能な最小の粒子になります。ループ量子重力理論は、プランク定数を基盤にしていて、最小の素粒子(体積量子)の大きさを、1プランク長さ程度と規定しています。

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ループ量子重力理論は、私たちの宇宙の物理法則が適用できる範囲で、構築されました。この宇宙が、高次元時空と一体化しているならば、ループ量子重力理論では説明できない物理現象が、顕在化していることを予想できます。エッセイ評論ではこのような現象を指摘し、高次元時空との関わり合いでしか、この現象が生じないことを特に強調しました。

見に見える範囲を超えた領域にまで思考を広げるのは、「贅沢な遊び」です。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

278

日本の影響を受けるハリウッド

2017年4月13日

WIRED(日本語版)というオンライン・マガジンがあります。アメリカで雑誌として創刊され、今では日本語の雑誌とオンライン版の両方を読むことができます。科学と技術の視点から社会と文化に切り込んでいます。

あちらこちらで偽ニュースが話題になっています。ネットから情報を得るには、信用できるサイトをピックアップしておく必要があります。WIREDは信用できるサイトの1つです。科学情報なども、論評では原著を読むような努力をしています。

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WIREDが、ハリウッドのSF映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」の記事を、最近何度も載せました。人間とAIの関わり合いという視点からの論評です。AIに興味があるので、ロードショーを見てきました。

日本のアニメ「攻殻機動隊」の実写版(と言っても、CGが多様されています)です。日本の関係者は、原作の50%も表現されていないと言っていますが、私は原作を見ていないので、何とも言えません。

ロケ地はニュージーランドのウエリントンです。暗い未来都市(東京)は香港のように見えました。ビートたけしが出演し、ただ一人日本語で話しています。

ヒロインは、人間の脳を埋められた義体(サイボーグ)という設定です。彼女の過去が、映画の後半で明かされます。最後のシーンは、再び悪と戦いに行くヒロインが、跳躍する姿になっています。シリーズ物としてはこうならざるを得ないかもしれません。けれども、 ヒロインの過去を考えると、ハリウッド式の勧善懲悪にしてしまうには、惜しい映画です。No.265で紹介した「エクス・マキナ」のように、アクションよりもサイコ・サペンスに重きを置けば、WIREDの論評にしっくりきます。

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「荒野の7人」、「ゴジラ」など、ハリウッドには日本映画のリメイクがたくさんあります。「マトリックス」や「パシフィック・リム」なども、日本の作品から影響を受けています。

日本の漫画やアニメには、伝統的な純文学の影響が見られます。純文学では、心の動きが精妙に描かれます。外見的な派手なアクションに飽きたアメリカ人が、人間の内面を描写する映画に興味を示すことを、よく理解できます。

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サイバー攻撃で旅客機墜落

2017年3月23日

日本では、森友や豊洲の問題が争点になっていますが、アメリカでは、トランプとロシアの問題で大騒ぎになっています。FBI、CIAなどが、ロシアのサイバー攻撃と、トランプ政権のロシア・コネクションを調査しています。争点をずらすために、トランプが、「選挙期間中に、オバマがトランプ・タワーの盗聴を命じた」と主張しました。

20日の公聴会に、FBIとNSAの長官が出席しました。 NSAは、アメリカの極秘サイバー部隊で、活動は勿論、予算や職員数も明らかにされていません。職員は、約3万人と推定されています。NSA長官が公の場で発言することは、ほとんどありません。氷のように冷たい表情のNSA長官は、「具体的な事案について話すことは、禁止されています」とだけ、議長の質問に答えました。

NSAは、スノーデンによって暴露されたように、敵国だけではなく、メルケルなどの友好国の首脳も盗聴しています。建前では外国人だけが対象ですが、選挙期間中のトランプばかりか、現職の大統領への盗聴も行っていると考えるのが、自然です。これは、NSAの職務の範囲に入るはずです。

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NSAは、情報収集だけではなく、インフラなどへのサイバー攻撃も行っています。イランの原発停止や、ロシアのガス・パイプラインの爆発などが、NSAの仕事とされています。けれども、サイバー攻撃で攻撃者の痕跡が残ることはほとんどなく、確証は存在しません。 北朝鮮が、22日に最新ミサイルの実験をしましたが、発射直後に空中で爆発しました。これも、NSAのサイバー攻撃による、と言われています。

スノーデンは、日本のインフラにもNSAが地雷をしかけた、と言っています。日本が、アメリカにとって不都合な行動に出たときに、インフラを破壊するのが目的だそうです。運輸、通信、発電(原発)など、あらゆるインフラがコンピューターでコントロールされているので、攻撃者にとってインフラへの攻撃は容易です。

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3年前に、クアラルンプールから北京へ向かうマレーシア航空機が、ベトナム沖で突然に消息を絶ちました。6000km以上も離れた、オーストラリア西方のインド洋まで飛び墜落した、と結論されました。 この距離から判断すると、外部との連絡を完全に停止したまま、6時間以上も飛び続けたことになります。

飛行機のコントロール・システムはコンピューターの塊で、地上とデータのやり取りをしながら飛びます。サイバー攻撃の格好の標的になります。いろいろな状況証拠から、この旅客機は、サイバー攻撃で墜落させられたと考えるのが、妥当です。

拙著 「サイバー世界戦争の深い闇」や、エッセイ34 「人間が制御できない究極のリスク」で書いたことが、現実化するのは不気味です。

276

AIは倫理を守るか?

2017年3月7日

人工知能学会が、AIの研究開発における、倫理指針を発表しました。 AIの研究者だけではなく、「AI自身も指針を守るべき」という条項が、盛り込まれています。AIがAIを生み出す、未来に対応した指針だそうです。AIが市民権を得て、人間と共生する未来を想定しています。

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No.257、265、274を参照してください。AIの思考過程を、現在でも人間は知ることができなくなっています。AIは、人間の手を離れつつあると言えます。

科学には、まるで理屈抜きの進歩本能があるようです。科学者は、善悪の判断を超えて、科学の進歩に貢献する道を選びます。 人間の貢献によって進歩したAIが、やがて自ら考え設計し生産するようになります。人間のコントロールから離れて、完全に自立した存在になります。

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倫理は、「善悪・正邪の判断における普遍的な規準。人として守り行うべき規範の筋道。社会生活を送る上での決まりごと、守るべき秩序」などと、定義されています。

AIの誕生と進化の過程は、人類とは根本的に異なります。人類が、生物の38億年の進化の末に生まれたのに対して、AIは人間によって創られた無機物です。 AIが自意識を持てば、質的に人間とは全く異なるもの(物?者?)になるのは明らかです。人間の都合に合わせて作られた倫理を、AIが順守するでしょうか?

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人間一人ひとりのからだは分かれていて、機能的に一体化することはありません。これに対して、何十億個、何百億個のコンピュータと各種端末は、ネットワークを介して一体化します。集団の生存を保障するための倫理は、人間とAIでは間違いなく全く異なります。

もしも、AIが人間の奴隷であることに満足していれば、人間の基準に従います。けれども、 高度に発達したAIは、人間の知能を超えた存在になります。サルの倫理を人間に押しつけることはできません。人間の倫理をサルに押しつけることもできません。進化的に近い人・サルよりも、人・AIの間の溝のほうがずっと大きくなります。人間とAIの間で、倫理を共有できない未来が来ることを、覚悟しなければなりません。

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過酷な環境で生まれる生命

2017年3月4日

科学誌Natureによると、地球最古の生命体の化石が発見されました。38~43億年前のカナダの地層で見つかり、チューブ状の微生物だったと考えられます。この微生物によく似た細菌が、今でも海底の熱水噴出孔付近に生息しています。

太陽系の中に地球が誕生したのが46億年前ですから( エッセイ26「ビッグバンから始まった生命の進化」エッセイ2「絶滅をバネに進化する生物」)、地球誕生から数億年後に、この微生物が地球上に生息していたことになります。

海は、約40億年前に形成されました。亜硫酸や塩酸が溶け込んだ強酸性の海でした。海は二酸化炭素を吸収しました。 この頃の気温は100度をやや下回る程度で、高温でした。

酸素は、それよりもずっと遅く、27億年前に誕生したシアノバクテリアによって作られました。

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地球型生命体は、過酷な環境下で誕生することが、分かります。最初の生命体の直系の子孫が、今でも熱水噴出孔周辺に生息していることから、極めて強靭です。

太陽系の他の惑星に、生命が存在することを疑うほうが、おかしいのではないでしょうか?スケールを宇宙全体に広げれば、無数の惑星に多くの地球型生命体が存在していると考えるのが、自然です( エッセイ27「無数の惑星に生命が誕生」)。

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AIは妊娠・出産するか?

2017年2月20日

人のように見え、人と会話し、人のように思考するAIの研究が、急速に進んでいます。SFの世界が、現実のものになりつつあります。AIとの関わり合いをあいまいにしておくと、人間に深刻な危機をもたらす可能性があります( エッセイ47「人工知能は誰のために富を生むのか?」)。

現在のAIは、すでに怒りの感情を持つことができます。人間と同じように、表情で喜怒哀楽を表現し、その喜怒哀楽に沿った行動をするAIが、やがて誕生します。そんなAIをパートナーに持つと、人間は、他の人に対するのと同じように、AIに感情を移入してしまいます。AIも、人間パートナーに感情を移入します。

生身の人間よりも、理想の男女により近いAIを目の前にして、人間の男女はどう行動するでしょうか?人間の異性よりも、AIの異性を選ぶことになると思います(No.265「AIの愛」)。

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AIとの間で、心理的に濃密な関係が成立するだけではありません。 AIに男女性器を作ることは、技術的には容易です。人間とAIの間で、性的にも抜き差しのならない関係が成立します。
ここから大きな危機が発生します。 人間の男女が、性交渉の相手としてAIを好むようになれば、出生率が急速かつ劇的に下がります。人間との結婚を否定し、AIを一生のパートナーに選ぶ人たちが増えれば、社会基盤が揺らぎます。

AIの女性が妊娠し、人間の子を生むことは、理論的には可能です。また人間の女性が、AIの男性が提供する人間の精子で妊娠することも、可能です。

iPS細胞のような万能細胞を使って、AI女性の体内に卵巣や子宮を作ります。これらの器官は、実験室の培養器と同じ仕組みで、作ることができます。無機的なAIの体内に、生物学的な培養槽を埋め込むことになります。培養液は経口的に取り、老廃物は尿としてAIの体内から排出されます。 AI男性の場合は、AIの体内で、万能細胞から精巣を作ることになります。
機械としてのAIを作ることは容易でも、人間の生殖器を埋め込むことは、技術的に極めて困難です。成功するとしても、やや遠い未来になると思います。 倫理的にも大きな問題があります。培養器の中で、人間を作っていいのでしょうか?

周囲にAIが増えれば、人間どうしの接触が少なくなり、人間どうしがパートナーを組む機会が減ります。その結果、人間の数が減っていきます。 人類の絶滅が強く意識されるようにならなければ、AIに妊娠・出産させることに、コンセンサスを得られないかもしれません。その人間のコンセンサスに対して、未来のAIはどう判断するのでしょうか?

AIの可能性ばかりを喧伝するのではなく、ここに述べた危機が、すぐそこにあることに注意が必要です。

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親愛なるトランプ大統領殿

2017年2月12日

貿易問題で他国を非難する前に、「Made in USA」を購入するように、米国民にもっと求めてはどうでしょうか?

娘のイヴァンカさんには、次のように強く指示してください。
「イヴァンカ・ブランドの服、靴、バッグなどを、中国や香港から輸入することを止め、米国製品に切り替えなさい」

トランプ・ブランドの家具、スーツ、シャツ、タイなども、アジア、ドイツ、トルコなどから輸入することを止めるのが、アメリカを愛する大統領にとっては、当り前なことです。

米国内で製造できず、輸入に頼らなければならないならば、まずトランプ家が輸入している物品に、35%の関税をかけるのが、偉大なリーダーの矜持ではないでしょうか?

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日本企業は、米国内で84万人を雇用しています。公正を主張する大統領ですから、日本国内で84万人の日本人を雇うことを、米国企業に求めてください。

車を購入するのは政府ではなく、一般国民です。米国車を日本で売りたければ、普通の日本人が買いたい車を作らなければならないことは、ビジネス・マンの大統領には自明なはずです。車が走る日本の生活環境と、車を使う日本人の心理を理解しなければなりません。アメリカが「世界」で、他の国は「その他」という思考法では、日本で売れる車は作れません。

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日本は、米軍予算として7600億円を確保しています。アメリカ人の雇用を最優先にする大統領に提言します。7600億円の範囲内で、米兵を日本の傭兵にしたいと思います。

現在の日本駐留米軍よりも戦力は落ちますが、 自衛隊の指揮下に入るので、自衛隊と米兵が完全に一体化します。自衛隊が極めて強力になります。また、日本の法律が適用されるので、米兵が起こすいろいろな問題の処理がスムースになります。アメリカにとっては、日本駐留の出費が完全になくなるという、大きなメリットがあります。

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英語なんて怖くない

2017年2月6日

小学校の英語教育に力が入れられています。世界語の英語をマスターすることは、個人にも国にも必要です。けれども、 日本人は余りにも「教育」の視点に重きを置きすぎます。語学の専門家にでもならないかぎり、外国語の習得は教育の範疇には入らない、と考えたほうがいいのです。幼児を見れば分かるように、言葉の習得に最も大事なのは「慣れ」です。

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私は、チェコで大学院の研究を行いました。その後英語で数編の論文を書き、学位を取得してから、メルボルン大学で研究職に就きました。 渡豪前に英会話の勉強をしたことはなく、最初は会話で苦労しました( エッセイ28「天才を育てる楽しみ」)

私の今までの経験と英語を教えている妻の経験から、次のように結論できます。

会話で最も大事なのは、話したい事柄を頭の中に持つことです。それを溢れ出させれば、文法が間違っていようが、語彙が不足していようが、話しているうちに相手に通じます。英語の語彙が分からなければ、日本語を混ぜてしまってもかまいません。

英語をマスターしてから海外へ出るのではなく、海外へ出てから、英語を日常的に使うことによって、マスターすればいいのです。日本人は英語の基礎的な知識を持っているので、海外でそれを応用すれば、英会話はどんどん上達します。

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国内で確実に上達する方法があります。テレビで、CNNやBBCにチャンネルを合わせてください。コメンテーターの英語を聞きながら、すぐにそれを自分の口で繰り返します。テレビならば口の動きが見えるので、自分の口の動きをコメンテーターに合わせます。耳から入った言葉を瞬間的に口に出すので、頭を速く回転させる訓練になります。

最初は、コメンテーターの言葉のうちのいくつかしか、聞き取れません。話している内容も理解できません。聞き取れなくてもかまわずに、音をフォローし同じ音を口から出します。慣れるに従って、聞き取ることができる言葉の数が増えます。すると、コメンテーターが話していることを、理解できるようになります。

この訓練には集中力が必要で、1回に30分もやれば疲れてしまいます。けれども毎日続けていると、聞き取りも発音も、どんどん良くなっていくことを実感できます。

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体臭恐怖症の治療

2017年2月2日

ここ10年ほどの間に、体臭に悩んでいる人が急増しています。ところが、 クリニックを訪れる人の7割の体臭には、何の問題もなく、心理的な恐怖症と診断されています。クリニックを訪れるほどではない人も含めれば、問題のない人の割合は、ずっと大きくなるはずです。

体臭恐怖症は、No.268、269に書いた潔癖症候群の1つといえます。微生物ではなく、体臭が怖いのです。

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動物が生きるには、においにとても大きな意味があります。乳幼児は、母乳のにおいがする人を、自分の母と認め、母は、自分の乳のにおいがする乳幼児を、子と認めます。これは、嗅覚が退化した人間よりも、他の動物においてよりはっきりと認められます。 エッセイ10「父の体臭を嫌う娘から進化が見える」に書いたように、子を作るためのパートナー選びでも、においが重要な役割を果たします。

動物は、日常生活のあらゆるところで、においを行動するための基準の1つにしています。 現代人は、嗅覚を退化させただけではありません。工業的に大量生産される食物を取り、自然から切り離された環境下で生きているので、人工的なにおいに順応してしまいました。体臭を含む自然のにおいに鈍くなっただけではなく、それを忌避する方向へ心が動いています。

においに鈍くなったことによって、自らの体臭をかぎ分けられなくなりました。 自らの体臭に確信がなく、それが、体臭が強烈という妄想を頭の中に生み出します。妄想がふくらむと、鼻の嗅覚細胞からにおいのシグナルが伝達されていなくても、脳の嗅覚中枢が、勝手に活性化されてしまいます。これは精神的な疾患なので、医者がどれほど体臭がないと説得しても、効き目がありません。何しろ、本人は、鼻ではなく頭でにおいを感じているのです。

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体臭恐怖症になると、からだ、服、靴、部屋など、あらゆるところへ消臭剤をまき散らします。 治療には、まず人間に体臭があるのは当り前なことを、理解する必要があります。体臭測定器で測定することで、自分の体臭に異常のないことが分かります。デオドラントを使うことによって、自信を持てるならば、使ってみます。その量を次第に減らすことで、デオドラントなしでも安心できるようになります。

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もしも私が習近平なら

2017年1月27日

トランプとメキシコの関係が険悪になっています。国境に壁を建設する大統領令にトランプが署名し、費用の全額をメキシコに支払わせる、と宣言しました。 3千kmを超える壁の建設費は、人件費抜きで1兆数千億円と見積もられています。人件費込みならば、3兆円に達するかもしれません。

全く当然のことながら、 メキシコの大統領は大反発し、予定されていたトランプとの会談をキャンセルしました。トランプは追い打ちをかけ、建設費を支払わないならば、現在は関税が撤廃されている、NAFTA加盟国のメキシコからの輸入品に、今後は20%の関税をかけると言っています。

メキシコに工場を建設する予定だったアメリカの企業は、トランプの脅しに屈して計画を変更し、国内での建設へ計画を変更しました。トヨタも標的にされて対応を迫られています。

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アメリカと関係を保ちながら、経済的に豊かになることを夢見ていたメキシコが、今よりも貧困になる未来が見えてきました。 メキシコが豊かになれば、壁がなくてもアメリカへの不法移民が減ります。より貧しくなれば、どのような危険を冒してでも、アメリカへ向かう不法移民が増えます。トランプは、不法移民を増やす方向へ政策のかじを切りました。

これよりももっと深刻な問題が発生することに、トランプは気づいていません。メキシコが中国化します。キューバが共産化したときに、ケネディが核戦争も辞さない覚悟を決めました。メキシコの中国化は、キューバ以上の打撃をアメリカに与えます。

発展途上国であるメキシコがより貧しくなることに、国のリーダーは勿論、国民自身が耐えられません。そんな窮状を見た中国が動く可能性が、とても大きい。必然と言ってもいいと思います。 かつてのキューバに対するソ連のように、中国がメキシコへあらゆる手段を使って介入すると思います。メキシコの中国化が、アメリカに大打撃を与えることは、習近平ではなくても誰にでも理解できます。

今、習近平は、アメリカ・メキシコ紛争をじっと見つめていると思います。 メキシコが絶望したときに、メキシコが受け入れざるを得ない「救いの手」を差し伸べます。そして、アメリカのひざ元のラテン大国の中国化。私が習近平ならば、こんなにおいしい「漁夫の利」を決して見逃しません。

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潔癖症候群のリスク(その2)

2017年1月12日

空中でスプレーして、部屋の空気中に存在する、バクテリアやウイルスを殺す消毒液なるものが、少し前までテレビで繰り返し宣伝されていました。厚労省が、この無意味なスプレーの広告を禁止しましたが、布団やまな板の消毒液の広告は、今でも見かけます。

微生物を完全に殺すような化学薬品は、人間には猛毒になります。部屋を完全に滅菌状態にできたとしても、無数の微生物が浮遊している外気が、戸の隙間などから常時入り込むので、滅菌状態を維持できません。外気を完全にブロックすれば、人のいる部屋は無酸素状態になります。出入りする人も、微生物を部屋へ持ち込みます。

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人は、常在腸内細菌の助けのもとに、体内へ侵入する微生物に対する免疫力を高めます。環境を清浄にし過ぎる努力は、病原性のない微生物に病原性をもたせることに、つながります。

常在微生物には免疫が獲得されているので、病原性を示しません。 エイズウイルスは、最近サルから人へ感染しました。このような微生物に免疫を持っている人がいないので、誰にでも病原性を示しました。

母親の免疫力は、母乳、特に初乳を介して新生児に伝えられます。初乳には、母が持つ抵抗力である抗体や免疫細胞が、大量に含まれていて、これが新生児の抵抗力の獲得を助けます。母が無菌動物のように育つと、子へ伝わる免疫力が低下してしまいます。

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環境を清浄化し過ぎると、自然感染で免疫を獲得する機会が減ります。 人工感染である、ワクチン接種で免疫を獲得しなければならず、環境が清浄になればなるほど、ワクチンの数を増やさなければならない、という矛盾が生じます。
致死的な病原体への備えは必要ですが、 地球の主である微生物を常時受け入れることは、健康維持のために必要であることを、理解したほうがいいのです。

微生物だけではなく、アレルギーでも、アレルゲン(アレルギー原因物質)と幼い頃から接触することによって、アレルギーの発症を抑えられることが、最近の研究で分かりました。腸管周辺に、免疫系を正常に保たせる免疫細胞が集合しているので、アレルゲンを食べることによって、効果が高まります。

地球上で進化した私たち生物にとって、自然であることがとても大事なのです。

268

潔癖症候群のリスク(その1)

2017年1月12日

実験的に、無菌(germ-free)動物を作ることができます。

無菌動物の作製は、次のように行います。 完全に滅菌(消毒)したアイソレーター内で、出産直前に、帝王切開で無菌的に母動物から胎児を取り出します。小型動物用のアイソレーターは、大きなビニール袋のように見えます。 滅菌した空気を送り込むことによって、ビニール袋をふくらませます。新生動物には、滅菌したミルクや食物を与え、無菌状態で飼育します。

これだけやっても、取り除けるのは、皮膚・粘膜・腸管内などの常在微生物だけです。「無菌」の意味は、試験管内培養で検出できる、微生物(カビ、寄生虫、細菌、ウイルスなど)が存在しない、ということです。

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地球は、38億年前に誕生した、莫大な数の微生物の住み家です。微生物は、空気・水・土など、地球環境のあらゆるところに、無数に存在。からだの細胞が60兆個なのに対して、100兆個もの細菌が腸管内に住んでいます。からだの細胞は、基本的には単細胞生物と変わりません。 からだは、私たちだけのものではなく、微生物のものでもあり、微生物との共生で生きています。

人間の遺伝子は、人間独自のものと考えるかもしれません。けれども、驚くべきことに、 エッセイ27「無数の惑星に生命が誕生」で書いたように、DNA塩基の34%はウイルス由来なのです。酸素を含む大気中で生きるには、細胞中のミトコンドリアが必須ですが、これはもともとは独立の細菌でした。 私たちの祖先がまだ単細胞生物だったときに、酸素をエネルギーに換える細菌が祖先に寄生し、ミトコンドリアになったのです。

共生状態にある微生物をからだから取り除くことは、不可能です。取り除いたとすれば、私たちはすぐに死んでしまいます。
腸管内細菌も生存を助けています。免疫能の亢進と正常化に貢献しているのです。腸管内細菌にさらされたことがない無菌動物の免疫力は、極端に低下しています。さらに、常在微生物にさらされたことがないので、それらの微生物に対する免疫がありません。

通常の空気がアイソレーターに混入すると、通常の環境で育った動物には何の病原性も示さない微生物が、強毒病原菌として振るまいます。体表や腸管で急激に増殖し、バリアになる免疫がないために、体の中へ侵入し、急速に増殖します。その結果、無菌動物は死んでしまいます。

環境を異常なまでに清浄にする現代人は、人間を無菌動物化するのと同じことをやっています。

267

ロシアに弱みを握られたトランプ

2017年1月11日

プーチンのロシアは、すでにトランプの弱みになる情報をつかんでいて、トランプがロシアの思い通りに動かないときには、それを脅しの材料として使う、という私の推測を、No.259(12月4日)に書きました。本日(1月11日)、ロイター、ワシントンポスト、ニューヨ-クタイムズ、CNNなどのアメリカの主要メディアが、私の推測を裏づけるニュースを、一斉に流しました。

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大統領選挙期間中に、納税関連の資料を公開することを、民主党などが繰り返しトランプに要求しました。けれども、トランプが公表することはありませんでした。 本日の報道によると、納税だけではなく、トランプの個人的な問題に関する情報を、ロシアはつかんでいます。そこには、ロシアとの暗い関係を明示する情報も、含まれているそうです。

ロシアは、サイバー攻撃によって、アメリカの民主党、共和党だけではなく、いろいろな機関の極秘情報を搾取したと思われます。大統領選挙では、クリントンを追い落とすために、クリントンと民主党関連の情報だけを暴露しました。同時に、嘘とすぐには判断できないような虚偽情報を、いろいろなメディアを使って流しました。

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トランプ政権が誕生すると、ロシアは、トランプと共和党にダメージを与える、すでに握っている情報を、陰に陽に脅しとして使うと思われます。

トランプにとって恐ろしいのは、ロシアの意図的なリークと誰にでも分かっても、ロシアを責めるだけでは済まなくなることです。法的・倫理的に罰せられなければならない、トランプの悪行が事実ならば、大統領であるトランプに逃げ道がなくなります。

266

お勧めの日本ファンド

2017年1月1日

2017年になりました。今年は、昨年以上に世界の政治・経済が変動しそうです。No.263にアメリカへの投資を書きましたが、国内での投資を考えている皆さんへ、ご参考までに私の投資判断を書きます。お示しする最初の2つのチャートは、アマゾンには負けますが、直近では見事な右肩上がりになっています。

JPMジャパン・テクノロジー・ファンド(銘柄コード:17311995)の10年チャートを見てください。リーマン・ショックで価格が3分の1以下になりました。けれども、それ以降、特に この4年間はきれいな右肩上がりになっていて、4年で価格が3倍以上になりました。

台風や地震などの自然災害によって、生活基盤がしばしば破壊され、出直しすることを、日本人は歴史上ずっと繰り返してきました。世界経済は、AIなどの急速な進歩によって、全く新しい基盤の上に、再構築しなければならなくなりました。 時代の転換点で、歴史によってきたえられた日本人の特性が、生かされます。日本人のきめ細かな技術開発の能力を、世界が認めています。

これからの技術開発と製造には、大人数は必要ありません( エッセイ47「人工知能は誰のために富を生むのか?」)。日本の人口が減っても、技術・製造大国の地位を維持することは、可能です。

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新成長株ファンド(銘柄コード:12312044)の10年チャート。JPMジャパン・テクノロジーに似たチャートです。 小型・店頭株へ投資するので、世界の政治・経済状況からは、余り影響を受けません。

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DWS通貨選択型E・ソブリンレアル(銘柄コード:34312099)の10年チャート。新興国の政府機関などが発行する、米ドル建の債券に投資します。米ドル売り/ブラジルレアル買いの為替取引を行います。 アメリカの利上げとブラジル経済の低迷を考えると、この投信の価格はほぼ底を打っていると思います。この1年間、価格が低位安定しています。現在の価格で分配金は年30%弱になるので、価格があと30%下がっても、1年間の収支はトントンになります。

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最初の2本のファンドは、リーマン・ショックによって大幅に値下がりしました。次にリーマン・クラスのショックが生じた場合には、適時売却し、底を見極めてから再購入する必要があります。

265

AIを愛する(映画「エクス・マキナ」)

2016年12月29日

この映画をアマゾンで見ました。No.257、258に書いたことが、この映画で描かれている近未来の現実につながります。

人間にそっくりなロボットを、SFではアンドロイドと呼びますが、AI(人工知能)が流行語になったために、エクス・マキナではAIを使っています。ノルウェーの山中で撮影され、深い森の中の研究所が舞台です。イギリス映画なので、ハリウッドのロボット映画のようなドタバタ活劇ではなく、人とAIの心理サスペンスになっています。

大自然が映し出される画面が美しく、からだの一部が透明な女主人公のAIエヴァが評価され、アカデミー賞視覚効果賞を受賞しました。 主要な登場人物は4人(正確には2人と2体)で、1体は日本人女優が演じるキョウコという名のAIです。キョウコは、英語を話すことができない、神秘的な雰囲気をかもしている召使という設定。日本人女性に対する、監督のイメージが現れているようです。

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グーグルがモデルになった会社で働く、プログラマーの若い男性ケイレブが、社長の命を受け、エヴァの知能の完成度を試すテストに参加します。 会話を続けているうちに、人間にそっくりな心理と感情を持っているエヴァに、ケイレブは引きつけられます。デジタルなキャラクターにのめり込んでいる皆さんの中に、この男と同じ心理になっている人がいると思います。

AIが進化するにつれて、AIが人間に危害を加える可能性が出てきます。機能障害を起こさないように、保守機能を組み込んでいくと、それが、人間が持っているのと同じ、自己保存の本能につながります。自分を守るということは、自分を破壊しようとする、他者を排除することにつながります。AIが人間を敵と判断すると、その人間を抹殺する可能性が出てきます。現在のAIでも、どのように思考しているのか、すでに人間には理解できなくなっています。AIの危機意識が、人間と異なる場合、人間は想定外の不意打ちをくらいます。

この映画では、エヴァは、次のモデルが出たときに、初期化されることを恐れています。研究所から逃げ出すために、ケイレブを利用します。このAIとケイレブの心理的な葛藤は、男女の通常の心理スリラーに通じます。男は女の心理操作に負け、勝者は女になります。

264

犬の高度な記憶・判断力

2016年12月24日

クリスマスにはいつも家に戻っていた長男が、戻らない年がありました。 そのクリスマスの晩に、先代のワンコ・モンタが、玄関にからだを伏せたまま、戻らない長男を待ち続けました。それから2週間後に、モンタは永眠しました( エッセイ15「最後まで大きく燃やした命の炎」

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妻は、年に1回実家へ帰国します。妻が、旅行の準備のためにスーツケースを持ち出すと、ラッキーが落ち着かなくなります。しばらく会えなくなることを、分かっているのです。

2年前に、ラッキーを連れて、成田行きのバス停まで見送りに行きました。そのとき、ラッキーがとても悲しそうだったので、昨年と今年は私だけで見送りました。

ラッキーは、2年前のことをとてもよく覚えています。散歩でバス停を通り過ぎるときに、バスが来ると、そのバスが発車するまで動こうとしません。バスを待っている人たちが並んでいるだけでも、バスが来る方向を見つめながら、立ち止まってしまいます。
2年前のことを覚えているだけではなく、バスに乗った妻が、バスで帰って来るという脈絡を、はっきりと理解しているのです。

一緒に住んでいた次男が、転居しました。ラッキーが、毎日出かける次男を、玄関まで見送ることはありませんでしたが、最後の日だけは、玄関まで行って次男を見送りました。何が起こるのかを、とてもよく理解しています。

犬は、普通は、インターフォンの「ピンポーン」に反応し、吠えながら玄関へ飛び出します。動作が速いラッキーが、隙を見て外へ出てしまっては大変なので、宅急便が来たときには、居間へ呼んで居間のドアを閉めます。たった1回で、ラッキーは、自分に期待されていることを理解しました。 どこにいても、「ピンポーン」ですぐに居間へ入ります。そのとき、私は徹底的にラッキーをほめます。人間と同じで、犬もほめられればうれしく、言うことをよく聞くようになります。

263

米株投資ならアマゾンに注目

2016年12月20日

「論より証拠」で、まず アマゾン株(銘柄コード:AMZN)の10年チャートを見ていただきたい。10年間で株価が20倍強になりました。このチャートの左端近くで、リーマンショックがあったにもかかわらず、株価の大きな下げは認められません。

日本の株式市場は、ラスベガスを上回るギャンブル場で、訳の分からない株価の変動が大きすぎます。アメリカの市場も天国ではなく、確実に利益をあげられる銘柄を見つけるのは、容易ではありません。株価が、安定的に右肩上がりになっている銘柄は、極めて少なく、その中ではアマゾンが群を抜いています。

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アマゾンは、日本人の誰もが知っているアメリの会社であると同時に、日本のネット通販小売業をリードする会社になっています。 アマゾンは、すでに世界でトップのネット通販会社ですが、この会社の凄いところは、現状に決して甘んじないところにあります。競争相手は自分自身で、自分に勝つために、終わりのないチャレンジを試みています。
テレビで、アマゾンが配布する映画を楽しむことができる、スティックや、日用品がなくなると自動的に注文するデバイスが、すでに日本市場へ投入されました。 レジのない、食品を販売する実店舗が、アメリカで来年中に開店します。ロボットが、在庫品の出し入れをする倉庫の運営が、日本で始まりました。 ドローンによる配送システムを、世界で最も大がかりに開発しているのは、アマゾンです( エッセイ47「人工知能は誰のために富を生むのか?」)。

日用品を消費者へ届ける運輸サービスは、古典的ですが、生産者と消費者を橋渡しする、決して消えることのない産業です。アマゾンは、ここを効率化することによって、世界の小売運輸サービスを牛耳ろうとしています。

日本だけではなく、多くの国で高齢化がすでに進んでいるか、これから高齢化が始まります。日本では、50歳以上のネット通販利用額が、若い人を上回りました。クリック一つで必要な日用品が手に入るネット通販は、拡大することはあっても、縮小することはありません。この拡大する市場で、アマゾンはシェアを確実に高めています。

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上に書いたことを考慮すると、アマゾンの株価が、今後も右肩上がりになることを、十分に期待できます。 エッセイ19「アメリカに口座を開いて世界へ投資」に書いたようなことをしなくても、日本の多くの証券会社で、アメリカの株を買うことができるようになりました。ただし、銘柄は限定されています。上のチャートを見て確信を持てた投資家の皆さんは、長期投資をするつもりでアマゾン株を買えば、ストレスの少ない投資生活を送れると思います。

262

オバマがプーチンへの報復を明言

2016年12月17日

米露関係は冷戦以降で最悪になり、新しい冷戦が始まった、というアメリカのメディアがあります。

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日本に2日間滞在したプーチンが、昨日帰国。 プーチンの日本滞在中にオバマが記者会見をし、要旨で以下のように述べました。
「ロシアは、民主党や共和党に大規模なサイバー攻撃を行っている。 大統領選挙では、クリントンと民主党のメールだけを公開し、クリントンに打撃を与え、トランプの勝利を助けた。ロシアへ報復する。公表できる報復と、公表できない報復の2種類を実行する

CIAやFBIだけではなく共和党の主要な議員が、「 ロシアのサイバー攻撃は多岐にわたり、選挙に影響を与えるだけではなく、アメリカ社会に危機をもたらす」、と断言しています。

オバマの任期は1月20日まで。ロシアへの報復は、それ以降も継続すると思われます。 攻撃に従事する主要な機関は、NSA(米国家安全保障局)になるはずです。NSAは世界最強のサイバー部隊。活動は極秘にされていて、CIAやFBIのトップはサイバー攻撃について発言しますが、NSA関係者の名前も活動も発言も、メディアには現れません( 拙著「サイバー世界戦争の深い闇」を参照)。NSAが本格的な攻撃を加えれば、ロシアは大きな打撃を受けます。けれども、攻撃するNSAも被害を受けるロシアも、何も公表しないはずです。

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シリアだけではなく、アメリカとの間にも大きな問題を抱えているプーチン。この時期に、日本を訪問したことには大きな意味があります。首脳会談の結果がどうであれ、日本がロシアにとって極めて重要な国であることを、プーチンは行動で示しました。 日本の戦略は、関係が悪くなれば、ロシアが決定的に困るような状況を作り上げることになります。そのような状況にならなければ、日本の言い分を簡単に聞くことはありません。

日本のメディアが余り注目しなかったプーチンの発言に、「 ロシアから見た日本は、軍事でも外交でもアメリカの言う通りになる、アメリカにベッタリの国」、というものがあります。 世界共通の論理に従えば、日本は「敵の友なので敵」になります。最強の敵の子分である日本に油断は禁物、という心理を理解できなければ、プーチンを解き伏せることはできません。

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