オンライン版「ニューズウィーク」に「中国の台湾侵攻は起こりえない」という記事が載っています。書いたのはジョージ・ワシントン大学のエツィオーニ教授。思想的には、自由主義に対抗する共同体主義を支持しています。
教授の中国観は、中国サイドから国際関係を論じる主張に沿っています。要約すると次のようになります。
中国が台湾をそっとしておくことなどはあり得ません。中国(漢民族)の歴史は、拡張主義によって特徴づけられています。他民族との盛衰を賭けた激しい攻防。エツィオーニ教授だけではなく、中国サイドに立つ論者は、以下の歴史を知らないふりをします。
中国サイド論者は、中国が他国を侵略したことはない、と主張します。これは嘘です。中国大陸内部で、異民族の国への侵略が行われました。その侵略の結果が現在の国境線です。中国共産党が国内で絶対権力を確立し、他国への経済的・軍事的な侵略が技術的に可能になってきたので、中国はさらなる侵攻を開始しました。
一帯一路、九段線、南シナ海諸島の軍事要塞化、第1列島線、第2列島線、第3列島線、ジブチで軍事要塞建設など、今や世界覇権を狙っていることを隠しません。中国の侵攻は今後拡大することがなく、現状で停止すると結論するエツィオーニ教授は、余りにもナイーブ(うぶ)です。軍事費の急増、航空母艦の建造、宇宙兵器の大規模開発などが意味することさえも、理解できないようです。
債務国が中国の圧力によって台湾と断交、債務の肩代わりに港湾提供する債務国、尖閣国有化で激しい報復に会った日本、貿易で締め上げられている中国の意に沿わないオーストラリア。世界が中国の支配下に入れば、中国に恭順の意思表示をしない国は、今よりももっと苛烈な攻撃を受けます。香港のように、中国を批判する言論が封殺されます。デジタル技術を使った言論封殺には、逃げ道がありません。ここに私が書いているようなことも封殺の対象になります。
アメリカ最大級の石油パイプライン会社コロニアルが、7日にサイバー攻撃を受け、操業を完全に停止ました。システムのデータが暗号化され、使用できなくなったのです。12日にパイプラインを再稼働しましたが、燃料切れのガソリンスタンドの完全再開には、まだ至っていません。
報道によると、ロシア系ハッカー集団「ダークサイド」が仕掛け、コロニアルが約500万ドル(約5億4700万円)の身代金を支払いました。身代金支払い後に復元ソフトが届きました。
その後に出たハッカーの声明が奇妙です。「犯行の目的は政治的ではなく金儲けで、社会に問題を引き起こす気はなかった。今から節度のある行動を取り入れ、社会に迷惑をかけない。攻撃を仕掛ける企業を事前に調査し確認する」
ハッカーの言い分をまともに信じる人は、いないと思います。この攻撃は用意周到に準備され、個人のハッカーにできることではありません。国家が関与したプロの集団による攻撃と、アメリカの情報機関が判断しています。
コロニアルのビジネスが何だったかを知らなかった、などということはあり得ません。社会に迷惑をかけて申し訳なかったと思っているならば、身代金を全額返済するのでしょうか?「ダークサイド」は後悔の余り(?)、活動を停止したそうです。
魑魅魍魎が跋扈するネットの闇。アメリカは、インフラなどの実体へのサイバー攻撃を、軍事攻撃と同様と見なし、軍事的な反撃ができることになっています。NSA、CIA、FBIなどが、攻撃者を割り出すだけではなく、すでに反撃を開始している可能性が大です。
「ダークサイド」は、完全に身を隠したほうがいいと判断したと思います。すべての痕跡を消して、ほとぼりが冷めるまで静かにしているはずです。何しろ、ハッカーたちは当分の生活費を稼いでしまったのです。
金だけではなく、大規模なインフラへの攻撃ノウハウを得たことに、注意が必要です。国家が関与しているならば、このノウハウを使って、意図した時期に意図したスケールの攻撃が可能になります。
「コロナ、コロナ」と毎日騒ぎ立てられて、皆さんは疲れているでしょう。ストレスが免疫力低下を招き、無症状か軽症で済むはずの感染者を、重症にしてしまう可能性があります(「万能免疫系を抑えるストレス」)。ここで少し目を遠くへ離して、ウイルスや細菌の存在を大局的に見たいと思います。
人は、地球環境に住む大きな生物家族の一員です。過剰な自意識を捨てれば、「生物の一員に過ぎない」と言えます。他の家族に助けられて生き、他の家族を助けて生かしています(「驚異の生存メカニズム」)。生体細胞は60兆個ですが、私たちの体内には、100兆個の細菌が住みついています。DNA鎖の34%はウイルス由来で、主にイントロンと呼ばれる、遺伝子発現を助ける領域に存在しています。細胞の成長を助ける増殖因子DNAの中に、ウイルス由来のものがあります。
乳酸菌が人々の健康に貢献することは、よく知られていますね。悪者にされがちな大腸菌が、消化を助けています。さらに、細菌は腸からいろいろなシグナルを発して、免疫系を活性化させています。腸内細菌を取り除いた無菌動物は、何でもない感染ですぐに死んでしまいます。清潔オタクの現代人が、体内から寄生虫やカビを取り除いてしまったおかげで、免疫系が暴走しやすくなり、花粉症で苦しむ人が増えてしまいました。
免疫系、ホルモン系、神経系は密に影響しあっているので、免疫系の不調が神経系の不調、すなわち精神状態の悪化につながってしまいます。
フィンランドで「実験」が行われています。都会の保育園へ森林の地面を移植しました。かん木、ベリーの茂み、草、芝、苔の森が、保育園に誕生しました。短期間に、子供たちの皮膚と腸の微生物環境が変化しました。子供たちのからだの微生物に、多様性が生まれたのです。
この実験は2016年に開始されました。幼児期に成立したからだの細菌叢は、ずっと維持されます。ぜんそく、糖尿病、アレルギーなどの、過剰な免疫反応と関係する慢性疾患に、どのような影響が与えられるのか、疫学的な観察が続けられています。
電子版「ニューズウイーク」はお勧めのニュースサイトです。無料でも、記事を出し惜しみすることがありません。週刊誌よりも報道が速いだけではなく、一つのトピックに対して、意見が異なる論者に記事を書かせたりするので、異なる視点からの論評を読むことができます。
そのニューズウイークに、「12年かけて撮影された天の川の圧倒的パノラマ画像が公開される」というタイトルの記事が、掲載されています。フィンランドの天体写真家が、12年間かけて撮影した天の川銀河の写真をつなぎ合わせ、銀河の全貌を明らかにしたのです。
銀河の詳細な構造が可視化されたことに、驚きを感じました。私が特に興味を持ったことがあります。宇宙空間で電離した元素が、光を放出します。その光が、水素は緑、硫黄は赤、酸素は青に色分けされて、カラフルに映し出されています。水素の緑と酸素の青が作った丸いスポットのような領域が、広く散在しています。その領域ではガス濃度が高く、数多くの星が誕生していると思われます。
「ビッグバンから始まった生物の進化」と「無数の惑星に生物が誕生 」に書きましたが、水素、酸素、それにこれら2つの原子が結合してできた水が、宇宙に大量に存在しています。水素と水が、地球型生物の誕生と生命の維持に、絶対に必要な物質です。
上記の天体写真は、青と緑が混ざった領域で、地球型生物が誕生している可能性が大きいことを、示唆しています。そこでは、人類に似た生物が星空を見上げ、天体写真を撮影しているかもしれません。
宇宙における、生物の誕生と進化に重要な意味を持っている、これらの写真。ぜひ電子版ニューズウイークにアクセスしてご覧ください。
3.11の日にラッキーの去勢手術がありました。不幸中の幸いだったのは、地震が来たときに、ラッキーはまだ麻酔から完全には醒めていなかったのです。夢うつつの状態で、強い地震(震度5強)を体験しました。
昨日、震度4の地震がありました。3.11の余震と考えられます。
ラッキーの祖先は、百数十年前まで、地震がないアフリカに住んでいました(「サバンナで生まれた人・犬運命共同体」)。遺伝子で規定された生理(地震波への感度や、地震時のとっさの行動力)が、地震に対応できるようになっていないのは、確かです。
地震を予知する「動物の超能力」は持っていず、私が揺れを感じてから、ラッキーもやっと揺れを感じます。ラッキーは、通常は、ソファーに敷いたシープスキンの上に寝転んでいます。震度1、2の地震が来ると、頭を上げますが、ソファーから降りることはありません。3、4以上では、ソファーから飛び降りてしまいます。向かう先は、別の部屋にいる私です。
ラッキーと同じように、生理的にも心理的にも、地震への備えが十分にできていないヨーロッパ系の妻は、ちょっとした揺れでもパニックに陥ります。遺伝的に地震に強い日本人の私は、震度4程度ではジタバタしません。
この二人の違いをラッキーはよく心得ていて、不安なラッキーが妻のもとへ駆け寄ることはありません。まっすぐに私のところへ来て、からだを摺り寄せます。ラッキーを安心させるために、背中をなでながら「大丈夫、大丈夫」と静かに声をかけます。それで、ラッキーはいくらか落ち着くのです。妻にも、同じように「大丈夫、大丈夫」と声をかけます。妻のパニックを鎮めるほうが、時間がかかります。
「文春オンライン」に、「ペットの死は悲しんでもいい・・・」という記事がありました。愛犬が19歳で亡くなったときの、ジャーナリストの実体験を書いています。
「心臓がすくみ上がった」、「涙とともに「ごめん!」という言葉が溢れて止まらない」、「予想していたはずの「衝撃」に、ほとんど何の備えもできていなかった」、「(飼い犬のために買った)カブで号泣する自分に戸惑いながら、「これはマズい」と思った」
他の飼い主の哀しみの言葉を、SNSなどで読むことができます。
「9年になりますが、未だに思い出すと涙が出ます」、「私も気が変になりそうで苦しんでいます」、「両親を亡くしたよりも辛い思いしています」、「こんなに辛いなら出会わなければ良かったと思ったり、ボロボロの精神状態でした」、「あと何日かでお別れが来るかもしれない・・・って思うと気がおかしくなりそうで・・・」
「逝っちゃいました・・・泣」、「涙が出るばかりで、何も書く事が出来ませんでした」、「もっと、一緒にいてやりたかった…」、「今は思い出しては涙があふれてくるけれど」、「一緒にいた時が長かった分喪失感も大きい」、「ショックで胸が張り裂けそうになって言葉が見つかりません」、「時間が経つにつれ、寂しさが大きくなると思います」
「寂しさと虚無感で何も手につきません」、「一年経っているのに、最近になって心が塞ぐことが多くなり動揺しています」
拙著「人間として生きた犬の心」に次のように書きました。
「嗚咽で私の呼吸が苦しくなった」、「妻とモンタの話をするたびに、2人一緒に涙を流した」、「今までの私の人生で、このように泣き続けたことは一度もなかった」、「そのまま呼吸ができなくなって死んでしまうような、恐怖を感じた」、「死後も、朝目覚めた途端に、モンタの食事と散歩を考えてしまった」、「マンションの掃除のおばさんが、通路で本泣きをしてしまった」
「たかが犬」の死で、人間の飼い主が、なぜこのように深刻な悲嘆に落ち込むのかを、自分の体験をもとに分析しました。詳細は、「人間として生きた犬の心」に書いてあります。読んでいただければ幸いです。一言で言えば、原因は「本能に根ざした深い愛情」にあります。「本能」の出所が本に書いてあります。「本能」なので、自分でコントロールすることができません。
愛犬を亡くした飼い主は、泣いている自分をそのまま認めてください。泣けるだけ泣いてください。
私は、「多様性」の概念を以下のように捉えています。
「一つの集団(宇宙・生物・人間など)を構成している個が画一化されていず、各々が異なる特性を内包している状態」
このサイトで、宇宙から日常生活まで、多様なトピックを論評しています。読んでいる皆さんは気づいていると思いますが、あらゆる存在は多様であるという信念に基づいて、私は書いています。画一化は物事の本質に反し、画一化された集団には未来がなくなります。宇宙から日常生活まで、時々刻々と状況が変化しているので、個々の多様性が最も効率的に発揮されるときに、その集団が発展する可能性が限りなく大きくなります。
1.宇宙進化
私の宇宙論では、高次元時空には無限の可能性(無限の多様性)がある、という前提を置いています。従って、多種多様な3次元空間宇宙が数限りなく誕生しており、そのうちの一つが私たちの宇宙になりました。
2.生物進化
地球環境は、予測不能な宇宙の物理環境の変動を、直接に受けます。生物は絶滅する危機を何度も経験しました。多様な生物集団の中には、新しい環境に適応できる個体(種)が常に存在します。古い種の絶滅の上に立った新しい種の進化によって、人類が地球上に存在するようになりました。単細胞生物が誕生した38億年前から、地球環境が生物にやさしいものだったならば、地球上には、今でも原始的な単細胞生物しか存在していません。
3.社会進化
国ベレルの社会を考えると、多様な国家が世界に存在します。教育・科学技術・医療・産業・文化などで成功した国が、国民に繁栄をもたらします。人間の社会は激しく変動していますから、その変動を有効活用できる国民が多く住む国が、最も繫栄した国になります。新しい環境に適応できる人間は、多様な集団の中にしか存在しません。
4.個人進化
一人の人間の家庭・教育・就職・老後などに影響を与える外部要因も、時々刻々と変化します。この変化に対応できなければ、人は困難な人生を送ることになります。多様な状況に適応できる多様性を、自分の内部に持つ必要があります。その多様性は、学習から得られた心理によって大きな影響を受けます。
アリババは1999年にジャック・マー(馬雲)によって創業された、中国の電子商取引・ITサービス会社で、年8兆円を超える売り上げを誇っています。マーはまだ56歳ですが、2019年にアリババの会長職を退任しました。
2018年10月17日に、私は、このサイトに次のように書きました(「アメリカの対中国全面攻撃」)。
事態は、私が書いたように進みましたが、「辞めてから傷がついた」ことが予想外でした。マーは、公の金融サミットで、銀行業を含む中国政府に対して、次のような批判をしたのです。
西側の企業家ならばまっとうな発言と受け取られるが、「無謬の共産党」が支配する国では、この発言が共産党政権への挑戦状と受け取られたようです。どのように偉大な企業家でも、共産党の絶対的な既得権益を侵害することができません。
昨年11月に、アリババ集団の金融サービス会社アントの株式上場が、上海と香港で予定されていました。3兆6000億円もの資金が調達される、と見込まれていました。ところが、上場2日前に、突然に上場延期の決定が出されました。その後3カ月間、マーの行方が知れなくなったのです。1月21日に教育関係者とのオンライン会議に参加し、短いスピーチを行いました。
マーは共産党員です。アメリカから徹底的にたたかれている、ファーウェイ創業者のジン・セイヒ(任正非)も共産党員です。マーは元教師、ジンは元人民解放軍兵士。共産党へ絶対忠誠を誓っているジンは、中国では安泰です。下にジンの発言を書いておきます(作者の思いNo.351「死闘ファーウェイ」2019年1月23日)。
エッセイ72「ウェブサイトに埋め込まれた罠」は、SNS、掲示板、金融サイトなどで広く使われている、動的ページへのサイバー攻撃に対して、皆さんの注意を喚起するために書きました。
私は、株式、ETF、ファンドの検索と売買のタイミングを決めるために、価格チャートを日常的に使っています。このチャートも動的で、いくつかの価格チャートに、不正スクリプトが埋め込まれていることを知りました。この不正スクリプトを検出したのは、アドオンの「NoScript」です。
セキュリティの問題は、「ウェブサイトに埋め込まれた罠」を読んでいただくとして、ここでは現在私が投資候補にしている、アメリカの株式とETFの29銘柄に関して情報を追加します。
●株式
アマゾン(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、アドビ(ADBE)、チャーチヒル・ダウンズ(CHDN)、ペイパル(PYPL)、ウォルマート(WMT)、ショッピファイ(SHOP)、サーモ・フィッシャー(TMO)、エヌビディア(NVDA)、ASML(ASML)、台湾セミコンダクター(TSM)、テスラ(TSLA)、ラムリサーチ(LRCX)、キヤリア・グローバル(CARR)、リストレーション・ハードウェア(RH)、クアルコム(QCOM)、イントゥイット(INTU)、スクエア(SQ)
●ETF
米テクノロジー(IYW)、米ソフトウェア(IGV)、セミコンダクター(SOXX)、アーク・イノベーション(ARKK)、セミコンダクター(SMH)、グローバル・テレメディシン&デジタルヘルス(EDOC)、グローバル・テクノロジー(IXN)、セルフドライビングEV(IDRV)、アーティフィシャル・インテリジェンス(AIQ)、グローバル・フィンテック(FINX)、グローバル・クリーンエネルギー(ICLN)
Yahoo!Finance USAや日本Yahoo!ファイナンスなどで、上の銘柄の価格チャートを調べてください(エッセイ72「ウェブサイトに埋め込まれた罠」)。コロナ・ショックで2020年3月に急落した価格が、その後急上昇していることが分かります。ここで注意が必要です。
世界中の政府が、コロナ経済対策として、莫大な額の財政投融資を実施しています。このおかげで、行き場を失ったマネーが積み上がっています。日本でも、一律10万円の給付が預金の増大をもたらしました。収入が激減して困っている人たちがいるのに対して、不都合な現実が世界に存在します。
余ったマネーが株式市場に流れ込み、コロナ・ショック後に、株価の急騰を演出している側面があります。株価急騰の原因が財政投融資ならば、コロナ渦が落ち着けば、反動で急騰した銘柄が急落する、と考えたほうがいいと思います。下に、コロナ・バブルで特に暴騰した銘柄を挙げておきます。
アマゾン(AMZN)、ペイパル(PYPL)、ショッピファイ(SHOP)、サーモ・フィッシャー(TMO)、エヌビディア(NVDA)、台湾セミコンダクター(TSM)、テスラ(TSLA)、リストレーション・ハードウェア(RH)、クアルコム(QCOM)、スクエア(SQ)、アーク・イノベーションETF(ARKK)、セミコンダクターETF(SMH)、グローバル・クリーンエネルギーETF(ICLN)
今年の後半以降は、逃げの投資が必要になる可能性が高く、投資家の皆さん、くれぐれもご注意ください。
2017年7月に、「教育と医療の重大な欠陥」をこのサイトに書きました。私が指摘した問題がずっと残っていて、コロナ渦で、日本の医療体制の不備が白日の下にさらされました。
日本の人口1000人当りの病床数は13床で、他の先進5か国に比べて、群を抜いて多くなっています。2位のドイツ8床の1.6倍です。
在院日数に至っては差がさらに広がり、日本の31日に対して、2位のドイツはたった9日です。
これほど病床が多く在院日数が長ければ、医師や看護師の数が極端に多くなるのが、自然です。ところが、1000人当りの医師数は2.3人で、他の5か国よりも少ないのです。5か国の平均は3.3人。1000人当りの看護師は10.5人で、5か国の平均10.1人とほぼ同じです。
在院日数が長いと医療費が増えるのが当然ですが、1人当り医療費は3649ドルで、先進6か国の中では5位。日本よりも少ないのはイギリスだけで、アメリカに至っては日本の2.4倍の8745ドルも使っています。
日本では、医師と看護師に極端な負担をかけています。それに見合った賃金を支払っていません。精神論を振りかざして過重労働を強いれば、結果は明らかです。疲労困憊した医師や看護師が判断ミスを犯すか、やるべき仕事を放棄することになります。
公的負担が少ない上に、医療行為からの収入が少ないために、ベッドを増やして、入院が不要な患者まで入院をさせ、収入源にするという構造的な問題が存在するのです。
上の問題の解決には時間がかかります。今すぐできることは、コロナウイルスを「指定感染症」からはずし、インフルエンザウイルスと同じ「5類」へ格下げすることです。これで、より柔軟な対応ができるようになります。
無症状者や軽症者は自宅待機を原則とし、他の疾病と同様に、重症化の懸念が高まったときにだけ、入院させればいいのです。「自宅待機中に急死する患者がいるので、感染即ホテル隔離か入院が必要」という意見があります。高血圧でも他の感染症でも、「自宅待機中」に急死する例がたくさんあります。だから、軽症でも即入院ということにはなりません。全ての疾患に目配りをし、全体を俯瞰した上での医療体制の確立が必要なのです。
地球上の全生物(ウイルスは不完全生物)の祖先は、共通です。ウイルスも大腸菌もカビも木もカエルもネズミも、人類の身内です(「絶滅をバネに進化する生物」、「驚異の生存メカニズム」)。コロナウイルス感染のように、人類に一時的な被害が生じることがあります。このような災難も、愛しく小さな惑星における、生物の進化の過程に組み込まれているのです。
地球上に誕生した最初の生物に関して、誰もが納得する結論は得られていません。RNAやDNA(遺伝情報分子)だったのか、遺伝子のない細胞だったのか、あるいは遺伝子を持つ細胞だったのか、まだ分かりません。
38億年前までに、DNAを持つ単細胞生物が、原始の海に存在していました。原始的な単細胞の時代に、現在の生物が持つ、DNAの基本的な骨格が完成しました。大雑把に言えば、その後の進化は、単細胞集団の高度組織化の歴史でした。その証拠に、単細胞である卵子と精子が合体することによって、原始の海に似た母胎内で、私たちのからだが形成されます。60兆個の細胞の高度な共同作業によって、からだが機能するようになります。
単細胞生物から最初の多細胞生物が誕生したのは、15億年前。キノコの祖先の誕生が12億年前。チョウの祖先は5億8000万年前、ゾウの祖先は9000万年前、ネズミの祖先は8000万年前、チンパンジーの祖先は600万年前に誕生。これらのキノコ、チョウ、ゾウ、ネズミ、チンパンジーの祖先は、人類の祖先でもあります。
各生物が親類縁者であることは、遺伝的にも証明されています。バナナ遺伝子の約60%が、人と共通なのです!私たちのからだの一部はバナナ!ハエやニワトリも約60%。ウシは約80%、ネズミは85%、ネコは90%。チンパンジーでは96%もの遺伝子が人と共通。周囲の人を見ると、「自分と遺伝的に大分違うな」という感想を持つかもしれません。ところが70億人の人類の間で、遺伝子の相違はたった0.1%しかありません。
進化の視点から見ると、人々は一卵性双生児のようなものです。皆さん、家庭でも、隣近所でも、仕事でも、世界でも、誰とでも仲良くしましょうね。世界に平和を!
38億年前に、地球上に単細胞生物が誕生しました。それ以来、生物とウイルスは、敵になり味方になり、複雑な関係を維持してきました(「驚異の生存メカニズム」、「ウイルス免疫誘導のダイナミズム」)。
地球上には、生物の数をはるかに超える、莫大な量のウイルスが存在しています。マスクを付けようが手を洗おうが、ウイルス感染を完全に止めることは、不可能です。人々は、コロナ感染でそれを実感。
人類に初めて感染したウイルスは、強い病原性を示すことが多々あります。人々の間で感染が継続するにつれて、宿主である人と寄生体であるウイルスが、共存関係に入ります(「日本でコロナ死者が少ない複合要因」)。今できるコロナ対策は、重症者や死者を減らすこと。無症状者や軽傷者が増えることによって、集団免疫が成立し、コロナウイルスとの共存関係成立に必要な、時間稼ぎができます。
ビタミンDが、コロナウイルスに対して有効で、感染率や死亡率を下げることが、疫学的な調査によって分かりました(「日本でコロナ死者が少ない複合要因」)。この所見が、2020年8月に発表された、ビタミンDをコロナウイルスの治療薬として使う研究報告によって、裏打ちされました(「新型コロナが重症化してしまう人に不足していたビタミンの正体」)。
76名のコロナ患者を、ビタミンD服用群50名と非服用群26名に分けました。ビタミンD服用群では1名(2%)が重症化したのに対し、非服用群では13名(50%)が重症化。さらに、服用群では1名の死者も出なかったのに対して、非服用群では2名が死亡。
ビタミンDの作用としては、ウイルスの増殖を抑制したり、免疫物質サイトカインの産生を調節することが、あげられます(「ウイルス免疫誘導のダイナミズム」)。別の大事な作用に骨形成があります。骨の形成は、カルシウムを摂ればいい、というような単純なものではありません。古い骨を壊す破骨細胞と、新しい骨を作る骨芽細胞が協力しあって、骨を形成します。ビタミンDは、この骨代謝サイクルを制御します。
ビタミンCにも、ウイルス疾患に対して効果があります。ウイルスに対する直接的な抗増殖作用と、免疫強化作用があります。高濃度のビタミンCが、コロナ患者に有効だった、という中国からの報告があります。
オーストラリアのモリソン首相が、17日から2日間日本に滞在しています。帰国後に14日間の隔離が必要になるのを、覚悟の上での訪日です。自衛隊と豪軍の相互訪問を法的に保証する、「日豪円滑化協定」について大枠で合意。
中国が早速反応しました。18日付のオーストラリアの新聞The Ageに、「'If you make China the enemy, China will be the enemy': Beijing's fresh threat to Australia」というタイトルの記事が載っています。
この記事は、オーストラリアを非難する中国政府の声明文を解説しています。中国大使館が、この声明文をオーストラリのメディアに配布し、中国政府高官が、記者会見で声明の内容を説明しました。「中国は怒っている。あなた方が中国を敵にするなら、中国はあなた方の敵になる」、と述べたそうです。注目すべきは、オーストラリアを攻撃する文書と共に、この激しい言葉が発された場所が、首都キャンベラだったことです。
外交においては、言葉が重大な意味を持っています。相手国の首都での遠慮会釈のない中国外交官の言葉は、オーストラリアなどどのようにでも懐柔できる、と考えている北京政府の本音から出ています(「中国浸透工作の全貌」)。日豪協定のもう一方の当事国である日本の首都では、中国はこのような威嚇を行っていません。中国にとって、日本のほうが格上のようです(!?)。当事国がアメリカならば、中国がワシントンでこのような威嚇を行うことは、決してありません。
弱い相手を激しく攻撃する中国共産党。オンライン版The Ageのこの記事にオーストラリア人が強く反応し、600件以上のオピニオンが書き込まれました。大多数のコメントが、中国を厳しく批判しています。中国の「戦狼外交」がマイナスになって、中国に跳ね返る。
独裁国家では独裁者の言葉が絶対で、批判は許されません。裸の王様になる独裁者。情勢を客観的に見ることができなくなり、状況に合わせた方向転換は勿論、正しい判断ができなくなります。そうやって、全体主義国家は最後には崩壊します。
尖閣を取り囲む第1列島線、沖縄を含む日本の南半分が入る第2列島線、西太平洋全域を勢力下に置く第3列島線。中国は、覇権奪取の意図を明確にし、計画に沿って軍備を拡大しています。東シナ海から太平洋へかけての海域で、活動を活発化させているだけではありません。西太平洋の島嶼国を借金漬けにし、属国化を狙っています。
中印国境と南シナ海で領土を拡大し、台湾への軍事侵攻を示唆。尖閣周辺への浸透を続けています。中国の軍事力は、今後も強大化しますから、周辺地域への軍事侵攻の可能性が、限りなく大きくなります。
日本の選択肢として、次の2つをあげられます。
共産党などの主張は、太平洋への中国の進出を容易にさせ、第1・2列島線を完成させます。自国を守る気概のない日本を、アメリカが血を流して守ることは、考えられません。中国は、日本の属国化に向けて容赦なく圧力をかけてきます。
債務漬けになった西太平洋の多くの島嶼国が、中国の圧力によって台湾と断交しました。同様のことが、アメリカの足元のカリブ海周辺諸国でも起こっています。
香港、内モンゴル、新疆、チベットを見れば分かるように、中国共産党の支配は、冷酷かつ徹底しています。「中国の特色ある社会主義」以外の選択は、認められません。上記の野党の主張を受け入れれば、日本に悲惨な結果がもたらされます。野党は、なぜ日本をそちらへ押しやりたいのでしょうか?野党の本音は?
西側の親中国評論家の多くが、中国の少数民族問題を批判されたときに、判で押したように同じ反論をします。「中国には14億人の人々が住んでいる。わずか何千万人の少数民族について、問題にすること自体がおかしい」。日本には1億2千万人余。中国の属国になれば、日本人は少数民族になります。評論家の言を敷衍すれば、「日本人に対する圧政は問題にならない」、となります。野党は日本をそうしたいのか?
米政権交代、中国問題、コロナ渦など、対世界で考えなければならない問題が、山積みしています。これらの問題に対する対応を間違えれば、日本没落に拍車がかかります。
11月8日の日経新聞で、最近4日間の、衆参予算委における野党側の質問時間が、報道されています。学術会議関連が、衆院で47%、参院で34%に達しています。こんなことに熱を上げていて、日本を停滞させたいのですか?野党は、どこかの国のエージェントなのですか?
国会議員は、市町村議会の議員ではありません。天下国家を見渡して、世界における日本の立場を強くし、国を繁栄させることに全力をつくさなければなりません。政府の足を引っ張るのではなく、政府を助けて、国が進むべき道を一緒になって探すのが、野党の仕事なはずです。
体たらくな野党がそろっているので、野党はいつになっても政権を取れない。政権を取れないのは自民党のせいではなく、国民が国の運営を任せられない、野党の体質に原因があるのです。こんな体質の野党が、自民党政権が長期に渡って続くことを助けています。
日本学術会議は、内閣総理大臣が所轄し、国の予算で運営されています。行政の首長である内閣総理大臣が、学術会議会員の任命権を持っています。この任命権を放棄するほうが問題です。常識的に考えれば、総理大臣の任命権を奪おうとする、野党の主張に問題があることは、誰にでも分かります。
菅総理の言う通り、人事の判断について説明する必要はありません。総理は、この人事の結果を含めて、学術会議全体の成果に対して責任を持っています。学術会議が体たらくならば、それが総理の責任になります。
「中国共産党中央統一戦線工作部」が、中国の国内外において、組織や個人への多様な工作を担当しています。ハミルトンの「目に見えぬ侵略」に、その活動が詳述されています(エッセイ71「中国浸透工作の全貌」)。「統一戦線工作部」は、「中国人民政治協商会議」と連携しています。
「協商会議」の構成メンバーに、「中国科学技術協会」が入っています。「協商会議」の任務の中に、「科学者と技術者を、国家の政治生活に参加させるために、組織化すること」などの項目が、あります。ほとんどの機関に党組織が設置されているので、「科学技術協会」にも、党の組織(党委員会、党支部)があると思われます。
「日本学術会議」は、2015年に、この「科学技術協会」と協力覚書を締結しました(No.398)。かなりの数の元日本学術会議会員が、中国の大学などで活動しています(「中国のネットから消された「千人計画」と日本学術会議研究者たち」)。
「中国で仕事をしても、外国人は軍事研究に関われないから、軍事研究とは無関係だ」、という言い訳があります。本当にそう考えているならば、ナイーブ(お人よし、無警戒)すぎます。国家情報法と軍民融合政策のもとで、人民解放軍は、軍事に転用できる可能性のある全ての技術を、入手できます(No.398)。研究者は拒否できません。
軍事転用が可能かどうかを判断するのは、日本人ではなく中国人の専門家です。場合によっては、中国に協力している日本人の技術が、日本へ向けられた刃になる。
この覚書のもとでの人的交流の記録が、残っています。人的交流だけでも、中国が浸透工作を開始するための、有力な手がかりを与えます(「目に見えぬ侵略」)。
「日本学術会議」の大西元会長が、「覚書を交わしたが活動実績はない」、と説明しました(「学術会議、中国との活動「覚書どおりに開催」は誤り」)。そもそも、活動するあてがないのに、国際的な覚書の締結をしたことが、問題であることを、分かっていないのでしょうか?5年間も活動実績がないならば、すぐに破棄をすることをお勧めします。「日本学術会議」は、税金で運営されていることを忘れないでください。
「中国は、他国を侵略したことのない平和な国だ」と主張する評論家が、世界中にいます。何らかの理由で、意図的に親中国の立場を取っていると思われます。
「中華民族の偉大なる復興」が、中国共産党の統治理念です。「中華民族」は「中国人」と同義語。中国人の90%以上を占めるのが漢民族で、もともとの居住地は、黄河流域の中原に限定されていました。ここに、のちに漢民族になる華夏族(かかぞく)が住んでいたのです。紀元前数百年の頃でした。
その後、周辺の異民族と、支配・被支配の激しい戦いを繰り広げました。チベット人、トルコ系のウイグル人、モンゴル人、ツングース人などが、覇権争いをした民族です。最終的に漢民族が勝利して、現在の中国の版図が確定されました。満州に住んでいたツングース系の人たちは、漢民族に完全に呑み込まれました。チベット、新疆、内モンゴルでは、現在も、漢民族による、完全支配のための戦いが進められています。
中国の歴史は侵略の歴史です。農耕民族の大陸国家だったために、漢民族は、現在まで、狩猟・牧畜民族のモンゴル人のような領土拡大をやっていません。しかし、軍事力の拡大とともに、他国への広範な軍事侵攻の意図を、隠さなくなっています。中印国境、南シナ海、台湾、東シナ海では、人民解放軍が、他国の領土・領海・領空へ侵入・侵攻しています。ハワイから西の太平洋を、中国の管轄下に置こうとしていることを、隠していません(作者の思いNo.392「尖閣」)。宣戦布告のない戦争。
中国政府は、この侵略を正当化するために、近代史における100年の屈辱、という概念を持ち出します。けれども、中国史は支配・被支配の歴史なので、この100年が特別というわけではありません。
人民解放軍と企業・大学が、軍民融合政策のもとで一体化されています。また国家情報法によって、全ての組織と個人が、国の情報活動に協力しなければなりません。ファーウェイ創業者が、西側ジャーナリストとの会見で、「私は共産党員で中国の愛国者です。社員には党員が大勢います」と言い切りました(作者の思いNo.351「死闘ファーウェイ」)。
日本学術会議は、日本政府への政策提言機関ですが、現在はその機能を発揮していません。2017年3月24日づけの「軍事的安全保障研究に関する声明」によると、「国家の安全保障に関する研究は、学問の自由と相反するので絶対に行わない」、となっています。
日本学術会議は、2015年に中国科学技術協会と、協力関係の覚書を締結しました。よく知られているように、中国はあらゆる手段を使って、技術や情報を窃取しています(エッセイ71「中国浸透工作の全貌」)。
学術会議は、中国と協力することに、何も問題を感じないのですか?人道・人権無視の全体主義国家と、日本の政府政策提言機関が協力することを、疑問に思う会員はいないのですか?
人民解放軍と一体になった中国科学技術協会を、批判しないでいいのですか?もしも人民解放軍と中国科学技術協会との関係が不明と言うならば、実態を調べるのが当然ではないですか?
中国の大連に京都の街が出現したことを、No.374「中国に京都が出現」に書きました。今度は、なんと歌舞伎町!報じたのはサーチナ(No.393「重要な中国関連情報サイト」)です。記事のタイトルは、「広東省に突如出現した日本街「一番街」、ネットで賛否両論」。
日本街が作られたのは、広東省の仏山市。日本街の建設に、日本人は関与していないと思われます。この日本街は、公には「金沙州一番街」あるいは「南海一番街」と呼ばれています。サーチナの記事には写真が付いていて、日本街通りの入り口に「歌舞伎町一番街」の看板があります。これはサーチナによるイメージ写真のようです。入り口が、本当にこの写真のようになっているのか、今後の日本人観光客の報告を待つしかありません。
記事によると、「立ち並ぶ日本語の看板に日本語の道路標識、路上には日本のタクシーが停車している。(中略)一見すると日本の普通の歓楽街のようだが、看板をよく見ると、どこかおかしい。(中略)アニメ関連の看板がやたらと多い。それに、左側通行になっている。(中略)日本の歓楽街をそのまま再現したこの「一番街」にネットでは賛否両論になっている。」
日本人としては、喜んでいいのかどうか微妙です。多分喜んでいいのでしょう。日本の日常生活の一部にでも興味を持ってもらえるならば、国家間の摩擦にプラスの影響を及ぼします。菅首相は、海外からの観光客に日本を見てもらうことが、対外関係に大きなプラスをもたらす、と考えています。サーチナには、日本を嫌っていた高齢の女性が、孫と一緒に日本を訪れ、日本に対する感情が変わった、という記事があります。
サーチナの他の記事に、「日本人が中国を嫌っているなんて納得できない!中国人は日本に友好的になったのに」があります。いろいろな世論調査で、日本を嫌う中国人よりも、中国を嫌う日本人のほうが多くなっています。
経済・外交・軍事では、日本の立場を明確に主張し、妥協する必要はありません。しかし、庶民レベルでの好感情が、両国間の対立をやわらげます。日本人も多様な視点から中国を見て、好感情の相互反応のレベルを上げたほうが良さそうです。
隣人のドラマを書く前に、住環境を説明します。私はマンション4階の角部屋に住んでいて、エレベーターまでおよそ60m。郵便受けが、1階のエレベーターホールの横にあります。運動を兼ねて、新聞を取りに行くときには、階段を使います。階段の降り口までは10m余で、問題の隣人が、その手前に住んでいます。
隣人の家族は3人、夫婦と小学高学年の息子。全員が太り気味で、体形が同じです。毎朝、出かける夫と息子が、家に残る妻(母)と大声で会話を楽しむ(?)ので、窓を開けているとうるさくてやりきれません。
本日、朝のドラマの全貌を目撃したので、ここに書き残します。
私が、新聞を取りに行くために玄関のドアを開けたとき、隣のご主人が、一足早くドアから出ていました。
ドアの向こうにいる奥さんへのご主人の言葉「必要だったら電話するからね」
奥さん「ハーイ」
新聞を持って1階の階段入り口に着いたとき、外でご主人がスマホで会話をしていました。「....(それまでの会話は聞き取れなかった)。必要なんだよ」
その必要な物を持って奥さんが通路に出、4階から下にいるご主人を見下ろした様子。ご主人は耳にスマホを当てたまま、上を見ながらとても大きな声でどなりました。「そう、それだよ。そこから投げて」
その途端、黒い風呂敷のような物が、ご主人めがけて落ちてきました。
私が3階の踊り場を通り過ぎたときに、奥さんがスマホで話しながら階段を下りてきました。手には黒い小さなバッグのような物。「今、階段を下りているわ。車へ持っていけばいいの?」
奥さんが階段から出て、駐車場へ向かうのを横目で追いながら、私は自分の家の前にたどり着きました。事態がどう発展したのか、とても気になったので、立ち止まって駐車場の入り口を見ました。しばらく経っても奥さんが戻らないので、あきらめて家へ入りました。ドラマはどのように終わったのでしょうか?
ドアのところでの彼らの毎日の朝の会話。「それじゃないわ」、「待って」、「取り出して」、「もう少し考えなさい」、「チェックした?」、「それ置いてって」、「どっちでもいいわ」、「カバンの中を見た?」、「もっと入れれば」、「早すぎるんじゃない」、「どこかに置いておいて」、「急げ」、「頑張らなくちゃダメじゃない」、.....と、大声で延々と続くのです。何かのアクションも同時進行。
息子は自転車で塾や部活に通っていて、玄関前からエレベーターまで、通路を自転車で走ります(自転車を玄関前に置くのも、通路を自転車に乗って走るのも、マンションの規約違反)。あるとき、走り始めた途端に、親に突然呼び止められたようです。急ブレーキをかけたことによって、玄関前からエレベーターの方向へ、自転車のタイヤの跡が数メートル続いていました。その跡が、先端で180度のUターン。
タイヤの跡を気にした奥さんが、床を洗剤とブラシで磨き上げました。けれども、ゴムの跡は取れず、床の汚れだけがきれいに取れたので、真っ白になった床で、タイヤの跡がはっきりと見えるようになってしまいました。
Essay 70「日本でコロナ死者が少ない複合要因」に、種々の解析をもとにして割り出した、死亡者数を抑える要因をいくつか明示しました。特に重要なのがBCG接種です。接種国と非接種国における死亡者数には、劇的な違いがあります。免疫学の知見を使って、BCGが、コロナ感染者の重症化を抑える過程を描き出しました。
「BCGワクチンにコロナ感染症への保護効果、その免疫訓練のメカニズム」と題する論評が、WIREDに載りました。BCGワクチンが、呼吸器感染症全般に効果がある、と述べた科学論文をもとにしています。
この研究は、オランダのメディカルセンターで2年前から行われています。高齢の入院患者の退院時に、BCGワクチンを接種します。1年間の追跡調査をして、BCG接種が、どのような感染症に対して保護機能を示すのかを、調べています。
プラセボ(偽薬)を投与した場合、42%の被検者が感染症を発症。BCGを接種した被検者では、発症率が25%に下がりました。呼吸器感染症に限定すると、プラセボ群に比べて、BCG接種群の発症率が、75%も減少したのです。ウイルス性呼吸器感染症の予防に、最も効果があることが分かりました。コロナウイルスとの関連では、まだデータが少ないようです。
この効果を、研究グループは「免疫の訓練」と呼んでいます。これは、自然免疫能を上げることを意味します(「ウイルス免疫誘導のダイナミズム」)。
BCGは弱毒化した結核菌なので、肺に親和性があります。不活化ワクチンとは違い、生きた菌は、複雑な免疫回路のすべてを活性化します。これによって、自然免疫能のベースが、肺を中心にして上昇することが、考えられます。呼吸器感染症全般が抑制されることから、このような推測が可能になります。
これから冬になると、コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時流行が、心配されます。有効なコロナウイルスワクチンの開発が、短期間で成功するとは思えません。BCGワクチンは両ウイルスに対して有効ですから、高齢者などへの投与を、すぐにでも開始したほうがいいと思います。特に、日本人は、幼児期にBCGワクチンを接種されているので、自然免疫へのブースター効果を期待できます。
中国政府による事前威嚇(No.392)にもかかわらず、尖閣諸島への本格的な侵犯はなさそうです。中国の暴発を食い止めているのは、日米の本気度にあると思います。
7月29日に、在日米軍のシュナイダー司令官が、「アメリカは、尖閣諸島の状況について、日本政府を支援するコミットメントを100%忠実に守る」、と述べました。8月4日に、河野防衛大臣が、「中国公船の活動に対して、海上保安庁が対処している。自衛隊が対応しなければならない事態になったならば、しっかりと対応する」、と述べました。
海上自衛隊のプレスリリースによると、7~9月にかけて、次のような日米共同軍事演習が実施されています。
●7月23日~9月18日 護衛艦「いせ」、「あしがら」:日本からハワイ諸島海域
●8月6日 護衛艦「あまぎり」、米陸軍UH-60L 2機:関東南方海空域
●8月15~17日 護衛艦「すずつき」、米駆逐艦「マスティン」:東シナ海
●8月15~18日 護衛艦「いかづち」、米空母「ロナルド・レーガン」ほか艦艇数隻:沖縄南方海空域
以上の演習で、次のことに注意が必要です。2年毎に行われる、アメリカ海軍主催のリムパック(環太平洋合同演習)が、8月17~31日に、ハワイ周辺海域で実施されています。「ロナルド・レーガン」は、本来ならばこの演習に参加しなければなりません。尖閣諸島から遠くない海域での演習は、異例で、厳しい警告を中国に発しています。
禁漁が解除され、中国海警局の船が誘導する漁船団が、中国の港を一斉に出港したのが、16日でした。出港前に、漁師は、「尖閣諸島から離れて操業するように」、という指示を当局から受けました。
南シナ海周辺国、インド、オーストラリアなどに対する、中国の恫喝外交には、遠慮会釈がありません。しかし、アメリカが前面に出ると、途端に張子のトラになってしまいます。弱い者には強く、強い者には弱い。
日本は、このような中国政府の実態から、多くのことを学べます。尖閣諸島を、日本の領土として、より明確に既成事実化しなければなりません。この規制事実化には、堅固な構造物の建造を含みます。短期的には、中国からの猛反発を予想できます。けれども、中国が南シナ海でやっていることに比べれば、大したことではありません。長期的には、あいまいにしたままのほうが、日中間の火種になり続け、両国にとって不幸です。
なお、台湾も尖閣諸島の領有権を主張しているので、台湾を日本に取り込む努力が、同時に必要になります。台中関係の悪化を見据えれば、台湾との交渉を進展させる術が見えてきます。
中国共産党直属のメディアが発する情報は、ゆがめられている可能性があります。普通の日本人が中国の真実を知るのは、とても難しい。中国語の達人でも情報取得は困難です(私には中国語は理解不能)。
ネットのグレートファイアウォール(万里の長城)が、中国と世界の間にそびえていて、情報の流れを遮断。米主要紙の記者が追放され、中国情報の流れにさらに制限がかかりました。CIA職員が寝返り、中国に潜むスパイの情報を中国当局へ教えました。CIAのシステムがネット経由で侵入され、極秘情報が盗まれました。その結果、中国に潜んでいた数十人の情報提供者が処刑され、アメリカの諜報網がほぼ壊滅した、と言われています。CIAでさえも、情報を得るのが困難になっているのです。
中国関連の情報を高頻度で更新している、2つのサイトがあります(日本語)。
バイドゥ、百家号、テンセント、新東方などの、主要なメディアポータルサイトに書かれた、日本と関連のある記事を、翻訳して紹介しています。運営しているのは、投資信託の格付けなど、金融・経済情報を提供しているモーニングスター。SBIホールディングスの傘下にあるので、立場は中立です。
アクセスランキング上位5つの記事は、次の通りです。中国政府を直接的に批判する記事はありません。
1.中国高速鉄道も新幹線のように気軽に利用できれば良かったのに。
2.日本嫌いの祖母、訪れた日本に感動する。
3.日本と中国の差はビルを見ればわかる。
4.日本はなぜソ連崩壊の機に北方四島を奪い返さなかったのか。
5.日本人が恐ろしい民族と言われる理由。
日本に好意的な意見が羅列されています。中国政府の攻撃性にうんざりしている日本人は、これらの記事を読むとほっとするはずです。このような記事を、一般中国人が読んでいることを知るのは、日本人としては大事かもしれません。
法輪功傘下のメディアグループが運営しています。法輪功は、中国で生まれた気功修練団体ですが、共産党によって過酷な弾圧を受けています。中国では、臓器移植が容易に行われます。法輪功学習者が、臓器狩りの犠牲者になっている、と言われています。
今週のピックアップとして挙げられている、上位5つの記事は次の通りです。
1.中国共産党を犯罪組織指定することを70超の団体が米政府に要請。
2.臓器狩り関与の中国人医師リスト提出。
3.対日工作のパイプ役はNPOや創価学会。
4.中国がブータンの生物保護区を自領土と主張。
5.76%の米企業が中国から移転の意向。
日本のメディアには現れにくい、センシティブな記事が並んでいます。必要に応じて真偽の確認が必要です。ニュースの取り上げが他のメディアよりも速く、情報網を広範囲に張り巡らしていることが、分かります。
テレビで、お笑いタレントが、「尖閣を中国に取られてもいい」と言いました。
民主主義国では、政権交代が、国の基本的な政策に変化をもたらします。共産党独裁の中国では、基本的な政策に永続性があることを、頭に入れておく必要があります。
1990年代以降に、中国が海洋戦略を策定しました。九州南端を起点にして、南西へ向かって引かれた第1列島線(「中国をつぶすアメリカの戦略」)。沖縄諸島の北辺を通り、尖閣諸島と台湾を取り込んで、フィリピンの北から南シナ海へ入ります。南シナ海のほぼ全域を囲む九段線が、第1列島線の延長線上に存在します。この範囲内で、制海権・制空権を確保し、米太平洋艦隊の進出を阻止。最初の予定では、2010年頃までに阻止能力を完成するはずでした。
第1列島線の確立後、2020年(今年!)までに、第2列島線を構築することになっています。房総沖を起点にして、小笠原諸島・グアム島に沿って南西へ伸び、ニューギニアの西に達します。この範囲内で海上・航空優勢を掌握。
2040~2050年代までに、太平洋を南北に分断する、第3列島線を確立することを目指しています。2007年に、人民解放軍司令官が、太平洋分割案を米太平洋軍総司令官に提案しました(「中国の覇権奪取戦略」)。ハワイから東にある太平洋をアメリカに渡し、西側を中国が取ることになっています。
第1・第2列島線の目標年度までの達成は、不可能です。しかし、南シナ海での軍事要塞建設、台湾軍事進攻の示唆、尖閣海域への侵入など、計画に沿って動いているのが分かります。西太平洋における中国艦船の活動が、活発化しています。
2003年に、胡錦涛が、「ヨーロッパ人よりも早く、中国人がオーストラリア大陸に住み着いた(偽史)」、とオーストラリア議会で演説しました(「中国浸透工作の全貌」)。翌年に、共産党中央委員会で、オーストラリアを属国化することが、正式に決定され、以後激しい浸透工作が進められています。
第2列島線が完成した暁には、日本の南半分の領海へ、中国の艦船が侵入することを、想定内にしておく必要があります。中国の今までの横暴ぶりを見ると、東京湾に中国艦隊が侵入する事態も、フィクションとは言えなくなります。
この侵入の根拠として、偽史ではなく、捻じ曲げた真史を使うことが考えられます。日本は中国に対して、かつて朝貢貿易をやりました。この朝貢貿易を盾にして、日本は歴史的に中国固有の領土で、中国の核心的な利益を形成する、と主張。尖閣を渡せば、この流れに道をつけます。侵攻が尖閣で止まることは、決してありません。
中国政府は、8月15日ごろに東シナ海での漁業を解禁します。海上民兵を送り、中国海警局(沿岸警備隊)や、海軍に支援された大型トロール船を航行させることを、中国政府が明言。尖閣を占拠し、軍事要塞を建設することを目指していると思います。
ポンペオ米国務長官が、この1カ月ほど、ほぼ毎日対中批判を繰り広げています。批判の対象は広範囲に渡りますが、特に重要な2つの演説がありました。
●7月13日「中国の南シナ海の権益に関する主張は、完全に違法だ。略奪的な中国の世界観は、21世紀にはあり得ない」(「中国浸透工作の全貌」を参照)
これによって、アメリカ政府として、南シナ海における中国の権益を、初めて完全に否定しました。
●7月24日「習近平は、破綻した全体主義のイデオロギーの信奉者だ。自由主義の各国に、敵意をむき出しにしている。中国国民は、中国共産党と全く違う。14億人の中国国民は、共産党に監視され、抑制されて発言ができなくなっている。自由な国家は、同じ原則に基づいて方針を打ち出さなければならない。私たちが共産主義の中国を変えなければ、彼らが私たちを変える」
自由主義国家の団結を訴えています。同時に、中国共産党と中国国民を分断し、国民を米側へ誘い込む意図が、明確に見えています。
2018年10月4日のペンス副大統領の演説は、中国に対する事実上の宣戦布告、と受け取られました(「アメリカの対中国全面攻撃」)。その後のアメリカの対中政策は、時間と共により厳しくなっています。ポンペオの演説によって、米中対立は、異なる体制がぶつかり合う、新たな段階に入りました。かつての冷戦と同じような対決に、変貌したのです。
ペンスの演説を含めて、このような演説は、本来ならば大統領が行うものです。しかし、同盟国との間に距離を保っているトランプが、この種の演説をできないことは、容易に理解できます。習は大の親友、などとトランプは臆面もなく言います(「中国をつぶすアメリカの戦略」を参照)。同時に、中国を危険視する政治勢力の力が圧倒的になり、トランプの意思を無視してでも、政府として強硬方針を打ち出さざるを得なくなった、と理解できます。
習近平の専制政治を批判する人は、中国の知識人ばかりではなく、共産党幹部の中にもいます。代表的なのが任志強(じん しきょう)で、共産党の高級幹部の家庭に生まれ、北京銀行監事、華遠地産会長などの要職を務めました。度々、当局や体制を批判し、批判は、民主主義制度実現の要求にまで及んでいます。彼が一般中国人ならば、すでに消されています。
7月に、道化師(暗に習を指す)が権力集中を進めることを、間接的に批判しました。コロナウイルスへの対応も批判しました。任は紅2代(毛沢東と共産革命に参加した指導部の子弟)なので、口うるさくても今まで生きながらえました。しかし、中国が置かれている環境は、中国にとってとても厳しくなっています。任は、ついに、汚職などの重大な規律違反を犯したとして、党籍を剥奪されました。任の事例は、刑事事件として検察機関に送致されました。
1970年代に、日本がオーストラリアの輸出に占める割合は、30%超に達しました。貿易摩擦が発生しましたが、日本の外で日本語を学ぶ人の数が、オーストラリアで最も多くなったのです。そのポジションが中国にとって代わられ、中国の占める割合が30%超になっています。
最も重要な貿易相手国になった中国に対して、オーストラリアは新中国的な施策を、次々に取り入れました。しかし、対する中国の政策が、かつての日本とは根本的に違っていたのです。胡錦涛時代の2004年に、共産党中央委員会の秘密会議で、オーストラリアを属国化することが決められました。その後の政治・経済・文化などのあらゆる領域における、中国の浸透工作はすさまじいものです。
現在、オーストラリアの対中政策は、日本以上に厳しくなっています。この政策転換に大きく貢献したのが、2018年にオーストラリアで出版された、ハミルトンの「目に見えぬ侵略(中国のオーストラリア支配計画)」です。出版はオーストラリアの大手3社から拒否され、最後にやっと中小出版社から発売されました。日本語版は、2020年5月に飛鳥新社が発売。
研究所の所長でもあり大学教授でもあるハミルトンは、学者らしく、緻密かつ正確に、中国の浸透工作の全貌を描いています。その内容は驚くべきものです。多くの元首相を含む、オーストラリアと中国の各界のトップばかりではなく、北京の先兵になって動く中国人学生まで、実名で描き出されています。中国は、金と欲と名誉に突き動かされる、人間の弱みにつけ込みます。さらに、海外の中国人が反中国的な活動をすれば、中国に残る家族に危害を加える、という恐怖まで使います。
膨大な引用元が示されていますから、情報の信頼性は高いと思います。情報提供者は北京にもいて、共産党の極秘情報まで開示されています。この莫大な量のセンシティブな情報から、ハミルトンには諜報機関からの助けがあった、と推測できます。中国は、ハミルトンへの情報提供者を知ることに、大きな関心があるはずです。北京寄りの中国人ばかりか、親中国のオーストラリア人からも攻撃される危険をおかしてまで、この本は書かれました。
かつて、中国が豊かになれば自然に民主化するはずだ、という期待が、アメリカなどにありました。ニューヨークタイムズ紙が、李克強の個人資産が1兆2千億円あることを報じたときに、激しいサイバー攻撃に見舞われました。情報提供者を特定することが、目的だったと思われます。噂では、習近平の資産は20兆円に達する、と言われています。親類縁者の銀行口座が、海外でいくつも確認されています。
中国が民主化すれば、共産党トップの腐敗や、ウイグル人、チベット人、法輪功などに対する悪行に、光が当てられます。これに責任のあるトップが、犯罪者として裁かれますから、トップが主導する民主化は、決して起こりません。
民主化を完璧に抑えるために、監視と懲罰のシステムと情報・思想の統制が、休みなく高度化されています。これは、中国人だからということではありません。独裁者は、例外なくこのように行動します。
香港の国家安全法が明確にしている通り、国外に住んでいる非中国人まで逮捕できる法律を、制定するような国です。もっとも、共産党は法律を超越しているので、法律自体が無意味です。
WIRED(ワイアード)というアメリカの雑誌があります。ビジネス、インターネット、科学、ジャーナリズム、カルチャーなど、多様なテーマで書かれた評論が載っています。日本語のオンライン版で読むことができます。印刷した雑誌とは違い、オンライン版では記事を毎日更新しています。原著に基づいた評論とオリジナルな主張が多く、内容の信頼性が高いと同時に、とても参考になります。皆さんにお勧めします。
ドラキュラのモデルが何人かいます。16世紀後半にハンガリーにいた、バートリ伯爵夫人が有力候補です。彼女は、若い女性の血を飲んだり浴びたりすると若返ると信じ、女性を次々に殺害しました。このおぞましい伝説を知っていると、ちょっと気味が悪くなる、NATUREに掲載された論文の解説記事が、WIREDに載っていました。
若いマウスと高齢マウスの血管をつなぐと、高齢マウスの器官の多くが若返ることが、実験で確かめられています。一卵性双生児のような近交系マウスならば、こうなります。ヒトでは、拒絶反応によって両者に多臓器障害が発生します(念のためにお断りしておきます)。
血液から赤血球と白血球を除けば、細胞成分のない血漿を得られます。血漿中に最も多く含まれているたんぱく質は、アルブミンです。アルブミンは栄養・代謝物質の運搬役をになっています。また、筋肉・皮膚・肝臓・腎臓など多くの器官で、アミノ酸として利用されています。アルブミン量は加齢とともに低下。血中のアルブミンが不足すると、筋力が低下したり、認知症になる可能性が高まります。免疫力も低下します。
NATUREに載った論文によると、アルブミンを含む生理食塩水で高齢マウスの血漿を希釈し、高齢マウスに戻すと、この高齢マウスが若返ったのです。若いマウスの血は必要ありませんでした。
人間にもこの効果があるならば、誰でも簡単に若返ります。テレビなどでうんざりするほど宣伝している、若くなるための有象無象の商品が、売れなくなります。
加齢で上昇する、炎症誘発性たんぱく質の濃度が低下し、血管形成を促進する、たんぱく質の産生が大きく増すことが、上の研究で示されました。老化によって上昇または蓄積する有害物質の除去が、若返り効果に貢献する、と示唆されています。
まだ確定的な結論を出す段階ではありません。減少したアルブミンを補給することに、意味がありそうです。しかし、この補給がもたらす広範な影響の研究は、一筋縄ではいきません。
上のタイトルの記事をネットで見つけました。ユーザーの質問に他のユーザーが回答する、中国の質問サイト「知乎(チーフー)」の書き込みを、日本人ルポライターの安田さんが解説しています。私は中国語を理解できないので、安田さんの解説を読み、感じたことをここに書きます。私のサイトに書いたことと、直接的に関係があるからです。
質問は、日本の化粧品、女性、恋愛、AV、弁当、それに日本人が中国をどう見ているのか、日本の中国よりもダメなところ、民度の高い日本人がなぜ日中戦争でひどいことをしたのか、中国はなぜ日本だけを憎んでいるのか、などと多岐に渡っています。
安田さんが特に興味を持ったテーマが、日本の悪いところを指摘したものでした。回答者は、日本生まれの中国人で、5歳の時に両親と一緒に中国へ帰国したそうです。
外国人からの指摘には、うれしくなることも不愉快になることも、含まれています。大事なことは、余りにも当たり前すぎて、普段は全く意識していないことに、気づかされることです。
「なるほど」とうなずかされるが、優越感の下にあるコンプレックスまでは、思いが及ばなかったようです。エッセイ8「世界は日本化する」に、私は次のように書きました。
「ヨーロッパの伝統や文化、それに人間に対して、歴史的にコンプレックスを持っている。ヨーロッパ系の人たちの日本批判には、関心を持つが、アジア系の人たちからの批判には、聞く耳を持たなかった。それどころか、「日本人はアジア人とは違う」と言われることに、快感を感じていた」
日本人に格下と見られていた中国人。日本人のコンプレックスまでは気づかず、上のような感想が自然に出てくるのは、仕方がありません。
2.日本は改革をやりたがらない。中国が進歩を模索しているのとは大違い。この意見にも、歴史的な視点が抜けています。日本人は、高度成長期には、現在の中国人並みにやる気満々でした。中国の高齢化は、日本よりも速く進むことになります。中国人の心理が、今の日本人に追いついてきます。
日本人が余り知りたくない、世界から遅れている点を、エッセイ56「教育と医療の重大な欠陥」に書きました。
中国が進歩を模索するのは、大いに結構です。けれども、国際法と常識を無視するごり押しは、止めてもらいたい。世界制覇を目指す中国の進歩を、誰も望んでいません(エッセイ61「中国の覇権奪取戦略」)。共産党独裁維持のために、日本人までも犠牲になるような世界を、日本人は望んでいません。
3.中国人は「井戸の外」を見ることを好む。日本人は、「ものごとをもっと知りたい」という冒険心を全く失っている。高度成長期には、日本人留学生がアメリカなどへ押し寄せました。現在の中国が、その歴史をたどっています。
4.日本人は他国からの眼を非常に気にする。取るに足らないくだらないものごとを見つけて、「世界で日本が大人気」といった曲解を行いたがる。中国に対する小さな批判に、一つひとつ細かく倍返しをする、自分の国の政府を忘れたようです。
この意見は、私の評論に対する反論になっています。私がエッセイ8「世界は日本化する」とエッセイ45「世界が日本人に注目している」に書いたのは、日本人である和戸川の、ナルシスティックな自己評価ではありません。海外で実施された世論調査をまとめたものです。即ち、外国人の眼が見た日本です。
これらの国際世論調査において、日本に対してずば抜けて厳しい評価をするのが、中国人と韓国人です(「世界が日本人に注目している」)。逆に、中国や韓国を嫌っている日本人が大勢います。隣人同士では、長所よりも短所のほうがよく見えるようです。
5.日本人は極めて誠実で善良だ。ただ彼らには正義の概念がない。正しいことと間違っていることを明言できない。 この指摘に対する正確な答えが、エッセイ8「世界は日本化する」に書いてあります。キリスト教国の強烈な正義感。イスラム教国の峻烈な宗教観。それが、血で血を洗っても終わらない対決を、生み出しています。
「中華民族の偉大な復興宣言」で中国の正義を大上段に構え、世界制覇の目論見を明確にした中国(エッセイ61「中国の覇権奪取戦略」)。私たちは、暴力を使ってでも世界制覇を目指す、中国の植民地になることを望みません。
日本も、かつて大東亜戦争で日本の正義を声高に叫びました。中国がその犠牲になりました。
「すみません」とまず謝る日本人の心理が、この小さくなった、数万発の核弾頭が存在する世界に必要なのです。
新型コロナウイルスの感染を止める、ワクチンの開発が待たれるという意見が、メディアで強調されます。専門家を含めて、「ワクチンを絶対視する」人々が多くいます。けれども、ワクチンが誘導する免疫反応のメカニズムについては、無関心なようです。
そもそも、ワクチン投与は人為的なウイルス感染です。コロナウイルスの感染を避けることに必死になりながら、わざわざウイルスを感染させる。この方法に矛盾があることを、頭に入れておく必要があります。
免疫誘導には、自然感染のほうが有効です。本来ならば、スウェーデンが試みたような集団免疫の確立が、理想的です。ワクチン接種は、免疫的な効果が下がっても、病原性が低いウイルス使うことに意味がある、という論理で行われます。
私たちが持っている免疫系は、38億年に渡る進化の過程で、生物が一度も遭遇したことのない宇宙からの病原体も、排除してしまいます。この頼りになる免疫系の万能性獲得のメカニズムを、「万能免疫系を抑えるストレス」に書きました。
免疫系は、病原体ばかりか、自分の細胞が異常になってできた、がん細胞も攻撃します。体内で常時大変な数の細胞が死んでいます。これらの細胞のクリーニングも行います。この複雑なネットワークの様相を、「ウイルス免疫誘導のダイナミズム」に書きました。
以上の2評論で、免疫学の基礎知識を得てもらった皆さんに、ぜひ「日本でコロナ死者が少ない複合要因」を読んでもらいたいと思います。今までメディアで流されていた、新型コロナウイルスに関する情報とは異なる、解析結果があります。メディアの情報は、ウイルス側に立つ専門家の意見が多く、新型コロナウイルス感染で重症化する恐怖が、強調されます。
ここで抜けているのは、防衛する免疫側からの理解です。免疫学には、未知の領域が大きく広がっています。免疫側からの理解で、ウイルス感染を説明できる専門家が少ないことが、問題を大きくしています。さらに、メディアには、防衛よりも攻撃のほうが話題としてはおもしろい、という先入観があります。
ウイルス側に立った情報ばかりが流されると、人々に大きな精神的ストレスを与えます。見えない死神が自分を狙っている!ストレスが、ウイルス感染において重症化をもたらすことを、上の3評論で強調しました。新型コロナウイルスの対策としてやっていることが、重症化をもたらす要因の1つになっているのです。
私は、自分のサイトで、多様なテーマでエッセイや評論を書いています。今月アップした上の3評論が、私のもともとの専門に最も近い評論であることを、お断りしておきます。
学校を休校にせず、夜のレストランが繁盛しているスウェーデン。規制が日本よりもずっとゆるい、スウェーデンのコロナによる死者数をNo.385に示しました。5月7日付のオンライン版CNBCに、スウェーデンの現状に関する報告が載りました。
スウェーデンのコロナウイルス対策チームを率いている疫学者が、以下のような結論を出しています。
「学校において、目に見えるような問題が全く発生していないので、学校を開いておくことができます」
子供の感染者が極めて少ないことは、すでに中国の知見から明らかでした。正確に言うと、感染者が少ないのではないと思います。No.380と381に書いたように、大人と同様に子供にもコロナウイルスは感染しますが、ウイルスが増殖する前に、自然免疫によって体内から除去されている可能性が、極めて大きいのです。大人の体内でウイルスの除去を主に行うのは、感染によって得られる、ウイルス特異的な獲得免疫です。
子供の体内で何が起きているのかについては、慎重な研究が必要です。しかし、結果として、子供の自然免疫と大人の獲得免疫が、同じようにウイルスを体内から除去しているならば、獲得免疫を得た大人たちと同じように、子供たちが、集団内の感染を止める役割を果たすことになります。
過密が感染拡大をもたらすならば、塾や放課後自習室が、学校よりも過密になっている現在、集団感染が起きてもおかしくありません。そのような報道はありません。
休校によって、社会の隅々へ困難が広がっています。ひとり親や共働き夫婦の間で、経済的に困窮し、ストレスを抱える例が増えています。ストレスは、コロナ以外の病原体の感染を容易にするだけではなく、がん免疫の低下をもたらし、がんの発症率を上げてしまいます。心臓や脳の機能に異常をもたらします。もちろん、うつ病などの精神性疾患ももたらします。イギリスの家庭内暴力が、2倍以上に増えていると報道されています。
この感染が収束したならば、コロナ以外で亡くなった人々がどれくらいいたのか、統計を取る必要があります。パニックがもたらす社会的コストを明らかにすることによって、今後種々の感染において、的確な対策を取ることができるようになります。
科学的に根拠のある、重症者を減らすための規制は必要ですが、それ以外の規制を止めなければなりません。ウイルス感染を完全に止めることは不可能です。集団免疫を確立し、ウイルスと共存することを政策の目標することが、大事です。
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学が、新型コロナウイルスの感染者と死者の数を、毎日報告しています。数は実数です。人口の多い国では、感染率が低くても実数が多く出てしまうので、この統計結果は誤解を与える可能性があります。日本の人口(1億2千7百万人)に合わせて数を修正すると、主要な国々の死者数が、下のようになります。感染者数は、PCR検査の実施数によって変化するので、ここでは除きます。
アメリカで、感染したことが分かる抗体検査をランダムに始めました。まだ検査数が少ないので、地域によって陽性率にバラツキがありますが、PCR検査の陽性者よりも、10~70倍程度の感染者がいる、という結果が出ています。平均すれば数十倍。感染者の致死率が数十分の1になるので、致死率は0.1%程度と考えればいいと思います。
スペイン 66,266人 | アメリカ 25,376人 |
イタリア 58,731人 | ドイツ 10,171人 |
イギリス 51,580人 | イスラエル 3,362人 |
フランス 48,025人 | 韓国 623人 |
オランダ 36,474人 | 日本 455人 |
スウェーデン 33,693人 | 中国 417人 |
スイス 25,907人 | シンガポール 350人 |
死者の実数ではアメリカが世界一でも、人口当たりではスペインが一番になります。感染初期から厳しいロックダウンを実施したイタリアをはじめ、ヨーロッパの国々の死者数が多いことが分かります。ドイツはPCR検査数が多いだけではなく、感染者への医療処置が徹底的かつ合理的になされている、と評価されています。さらに、2人以上での外出を禁止するなど、ロックダウンも徹底的に行いました。そのドイツの死者数が、日本の22倍強になっています。
中国では、習近平の感染収束宣言後に、新規の感染者も死者もゼロかゼロに近くなりました。この統計結果には疑問符をつけざるを得ません。しかし、武漢がロックダウンされる前に、500万人の住民が武漢を離れたといいますから、中国全土で感染爆発が起こっても不思議ではありませんでした。そのような兆候は認められず、厳しいロックダウンが行われた武漢だけで、感染者と死者の数が爆発したと考えられます。
韓国の死者数は、日本を少し上回る程度です。宗教団体のクラスター感染が爆発した大邱市で、厳しい防疫対策が取られましたが、ロックダウンは行われませんでした。
パンデミックの初期に中国人観光客が押し寄せ、クルーズ船を下船した感染者が各地へ広がった日本。外出規制はあってもロックダウンは行われていません。ヨーロッパでは、スウェーデンが、ロックダウンどころか外出規制も行っていず、対策は日本よりもずっとゆるくなっています。しかし、死者数は、ヨーロッパの多くの国々よりも少なくなっています。
以上の事実は、何を意味するのでしょうか?ここで何度か指摘しているように、ロックダウン下でストレスが増大した人々の免疫力低下が、感染の増大と重症化をもたらしている可能性があります。すなわち、厳しい規制は逆効果をもたらすのです。さらに、日本、韓国、中国などの極東の国民には、新型コロナウイルスに対する耐性があることを予想できます。
ゆるい規制下でなぜ感染が爆発しないのか、その理由は極めて重要ですが、危機意識をあおり立てる為政者と「専門家」の前では、冷静な判断が難しくなっています。
私の電子書籍の販売に関連して、グーグルのすごさを体験しました。私は7冊の電子書籍をアマゾン、アップル、楽天で販売しています。
今月、さらにGoogle Playブックスで販売する手続きを行いました。全7冊のアップロードをし、アメリカのための税務登録を申請しました。税務情報の登録が終了したというメールを受け取ったのが、4月21日の2時17分でした。ところが、同日の18時1分に、次のような警告のメールを受け取ったのです。
「次の書籍は弊社のポリシーに違反しているために無効になりました。XXX(私の実名)様のGoogle Playブックスパートナーセンターアカウントは引き続きご利用いただけますが、下記のコンテンツを公開することはできません。
サイバー世界戦争の深い闇:xxxxx(キーナンバー)
弊社には複数の関係者から上記の書籍が送信されており、関係者の一部またはすべてがその書籍の出版権を所有している可能性がございます。弊社では正規でないコンテンツは認めておらず、(以下略)。」
「サイバー世界戦争の深い闇」はまぎれもない私の著作で、著作権も出版権も私が所有しています。そこで、同書のアマゾンにおける販売開始日(2014年1月)と、同書の内容は、私のウェブサイトの評論を反映させたものであることを、書き送りました(22日13時55分)。
驚いたことに、1時間も経たないうちに(14時40分)、それに対する英文の返答メールが届きました。同書が販売されている、プラットフォーム(電子書籍店)の情報を知らせるように、とのことでした。そこで、販売開始の時期を含めた、3つの電子書籍店における書籍情報を英文で書き、メールを送信しました(23日9時55分)。さらに驚きました。わずか2時間後(11時55分)に、同書をreactivate(削除取り消し)する手続きを取ったという英文のメールが、届いたのです。
莫大な数の問題を抱えているグーグルのチームが、私の一書籍の問題を、これほど短時間のうちに処理するのを知ったのは、本当に驚きでした。他社ならば、問題解決までに1週間も1か月もかかるかもしれません。ちなみに、私はグーグルの株を持っているので、株主としては喜びでした。
グーグルメールのタイトルは、「Googleサポートへのお問い合わせ[xxxxxx問い合わせ番号]お知らせ」となっていました。私はこのような問い合わせをしていないので(著者ですので、当たり前です)、誰かが意図的に私の著書を削除しようとしたことになります。この「誰か」の情報をグーグルは知らせないので、私には見当がつきません。ただし、7冊のうちのサイバー戦争に関連した著書だけを削除しようとしたことが、想像力をかきたてます。
感染者と死者が増えた、というニュースが連日連夜流されています。政策立案者は、状況を危機的とあおり、厳しい規制を繰り出すことによって、自分の評価を高めたいと考えています。このような状況下では、パニックにならないほうが不思議、と言えます。しかし、パニックの代償が極めて厳しいことを、知っておく必要があります。
発症者が少ないことと、コロナウイルスの感染力が大きいことを考えると、コミュニティの多くの人たちが、すでに感染したことを予想できます。子供でも若者でも、免疫力が低下していれば発症します。子供や若者の発症者が増えている、という報道がありますが、これは感染者の数の増加によると思われます。発症率に変化がなくても、母数の感染者が増えれば、発症者は増えます。
ただし、コロナパニックが、子供や若者の発症率を上げてしまっている可能性を、否定できません。
日本の対応はユルイ、と海外メディアから批判されることがあります。そのユルイ日本へ感染者を乗せたクルーズ船が寄港し、感染者数が、中国に次いで世界第2位になった時期がありました。他国ならば、爆発的な感染拡大になったかもしれません。
イタリアは、中国以外の国では、感染の初期に初めてロックダウンした国になりました。米ジョンズ・ホプキンス大学の4月11日づけのまとめによると、イタリアでの感染者は147,577人、死者は18,849人で、死者数が世界第1位を保っています。日本の感染者は6,005人、死者は99人で、感染者はイタリアの4%、死者は1%に過ぎません。日本の人口はイタリアの約2倍なので、人口割りでは感染者も死者もさらに少なくなります。
人種による違いが感染に関係している、という報告はありません。中国の武漢で大規模感染があり、感染者数が現在世界第1位のアメリカでは、発症者の70%強が黒人であることを考えると、日本とイタリアの差を人種以外に求めなければなりません。
武漢、クルーズ船、イタリア、アメリカの例から、強いストレスにさらされた集団の免疫力の低下が、極めて大きく、重症化の深刻な原因になっていることを、うかがわせます。持続的な強いストレスを受けると、免疫細胞の働きを低下させるステロイドホルモンや神経伝達物質の生産が、増大することが、よく知られています。ロックダウン下の集団の免疫力を検査する必要があります。免疫の専門家にとっては、恐ろしい結果が出ることを予想できます。
自宅待機や休校で、親と子供に強いストレスがかかっている現在、子供の発症率が上がっている可能性を、否定できません。30~50歳代の発症者が増えていますが、仕事のストレスが最もかかる世代なので、発症率が上がっているのかもしれません。
欧米では、コロナウイルスに対する抗体検査が始まりつつあります。ウイルスの存在を実証するPCR検査よりも、はるかに容易に抗体検査をできます。抗体にはクラスがあり、IgG抗体の検出が最適です。IgM抗体よりも感染の後期に出現し、より強力な病原体排除の能力を持っています。この検査が陽性ならば、ワクチン接種と同じ経験を自分がしたことが分かり、ストレス解消に役立つだけではありません。働き盛りのこの人たちが、医療や経済などの活動に積極的に関わることができます。
過去の世界大戦で、男性の数が戦死によって急減しても、戦後、人口がすぐに元通りになりました。種としての人類の存続のためには、子を産む女性の数が十分ならば、男性は少なくても何も問題はないのです。
進化が、種の絶滅を避けるために、子孫を直接に産み出す女性(あるいはメス)を、生物学的に強くしました。その総合的な結果が、女性の長寿です。
自己免疫疾患には、リウマチ、エリテマトーデス、バセドウ病、シェーグレン症候群、橋本病、クローン病、1型糖尿病など、多様な病態があります。罹患率の男女差は圧倒的で、発症率は女性のほうが2~10倍高くなっています。自己免疫疾患の多発と女性の長寿との関連について、いろいろな説があります。女性の免疫能が男性を上回っているために、副作用としての自己免疫疾患が生じる、というのが最も素直な理解です。致死的な疾患である感染やがんにおいて、女性のほうがより効率的に、病原体やがん細胞を体内から除去しているのです。
上の仮説の正しさが、コロナ感染でも証明されました。コロナウイルスによる感染者と死者の性別を、今までに明らかにしたのは、中国、フランス、ドイツ、イラン、イタリア、韓国の6カ国です。CNNの分析によると、コロナウイルスの感染者が男性に多いだけではありません。死者に占める男性の割合が、54%(韓国)から70%超(イタリア)に渡っています。6カ国平均では、男性が死亡する確率が、女性よりも50%も高くなっています。
飲酒や喫煙などによる生活習慣病が男性に多いことが、上のような結果をもたらしている、という推測があります。それを証明する統計はありません。生物系の基礎研究をやってきた私には、いろいろな知見から、女性が生物学的に強いことは、疑いようのない事実です。
「見えない敵」ということで、世界が、新型コロナウイルスに対して集団性パニックに陥っています。疫学の知見や研究室における実験で、すでに次のようなことが分かっていて、ウイルスは見えてきています。
ウイルス陽性者のうち、85%が無症状か軽症で回復。ウイルス検査では子供の陽性者は少ないが、感染は大人と同様に起きていると思われる。体内へ入ったウイルスが容易に除去されるので(No.380)、ウイルス増殖による細胞破壊がない。そのために子供は発症しない。ウイルスが体内で増えなければ、普通の健康状態にある子供が感染源になることは、考えにくい。ストレスが、子供や親に免疫力低下をもたらすので、休校は見当違い。
空気中に漂っているコロナウイルスは、感染力を3時間保つ。物体に付着した場合は、物によって4時間から3日以上感染力を維持する(米国アレルギー感染症研究所)。空気中の湿度が高ければ、コロナウイルス不活化までの時間が短くなる(米国ロッキーマウンテン研究所)。コロナウイルスに対する免疫反応は、インフルエンザウイルスと同じ(豪州ピーター・ドハーティー感染・免疫研究所)。
ウイルス感染を完全に防ぐ方法はありません。無菌動物の飼育は、完全な無菌環境下で行いますが、人間の日常生活で無菌環境を作ることはできません。ウイルスとの共存が、ウイルス感染への基本的な哲学になります(No.379)。
イギリスは学校を休校にせず、他国よりもゆるい対策を実施しています。 基本的な考え方は、感染の拡大を容認し、集団に免疫を獲得させることが、長期的なウイルス対策になる、ということのようです。
そもそも、ワクチン接種は、感染を人為的に行うことを意味します(No.380)。感染拡大の容認を、集団へのワクチン接種と同様に考えるイギリス方式は、とても冷静(冷徹?)な対策と言えます。この対策には、発症者に適切な治療を実施できる、医療体制の構築が必要になります。
武漢とクルーズ船からの経験は、極度のストレス下にある集団では、免疫力の低下が著しく、それが重症化の要因になることを示唆しています。イタリアの医療体制はお粗末な上に、極端な街の封鎖で住民に極度のストレスを与えています。急激な感染拡大と重症化は、それらの結果です。
日本の対策はゆるいと批判されましたが、集団へのストレスが少なかったことが、抑止に効いたはずです。対策に免疫の専門家の意見を反映させなければ、逆方向の対策ができてしまいます。
ウイルスが感染力を失うことを不活化と言います。感染力を失わせたウイルスが不活化ワクチンで、感染力を保っているのが生ワクチンです。一般的に、不活化ワクチンよりも生ワクチンのほうが、免疫力の亢進に貢献します。生ワクチンの接種は、人工的にウイルス感染を引き起こすことを意味します。自然感染で免疫力が高まっているならば、ワクチン接種の必要はありません。
実験室環境で、インフルエンザウイルスが不活化されるまでの時間は、金属やプラスチックの表面に付着している場合は、2時間程度です。布や紙の中に存在していれば、不活化までの時間が長くなります。気温と湿度が高ければ、不活化までの時間が短くなります。夏に風邪の患者が減ることは、自然環境下のウイルス活性が、急速に低下することを示唆しています。また、体温の上昇によって代謝が亢進するために、免疫系が活性化されることも、風邪の流行が夏に減少する理由の一つになります。
インドネシアにおいて、コロナウイルス感染者の数が極めて少ない。高温多湿の環境が、上のような感染拡大の歯止めになっていることを予想させます。
免疫細胞が集まっているリンパ節には、神経細胞の末端が網の目のように張り巡らされています。脳の活動が免疫系に影響を与え、免疫系の活動が脳にフィードバックされるのです。笑いがNK細胞(免疫細胞)を活性化することは、よく知られています。ホルモン系も、神経系・免疫系と一体化していて、ストレスで増えるステロイドが、免疫反応を抑制します。武漢とクルーズ船は、大きなストレスにさらされて免疫力が低下した集団において、風邪程度の病原性のウイルスが、どのように広がるのかという実験場になってしまいました。
中国で得られた知見から、子供たちの感染者が少ないことが知られています。発症する子供は、免疫力が低下した子供で、健康な子供にコロナウイルスが感染しても、急速に排除されてしまうことを示唆しています。まだ多くの病原体にさらされていない子供たち。特異的な免疫は数が少ないはずです。しかし、非特異的な免疫能が高く、コロナウイルスには十分に対応できると思われます。
メディアが、「今日は何人感染した」というニュースばかり流すので、感染者の数が毎日毎日膨大になっているような印象を受けます。実際には、回復者がいて、その分、現時点における感染者の数が少なくなります。中国では、少なくとも感染者の半数は回復したようです。回復した人の血清を感染者に注入する治療が行われていますが、これは、回復者の血清に抗体などの可溶性因子が含まれているためです。集団感染の収束のためには、全員が免疫を獲得する必要はなく、免疫獲得者が集団に散在するだけで、これらの人たちが壁になり、感染の広がりを阻止します。
腸の周囲には免疫細胞が集合していて、腸は重要な免疫器官でもあります。乳酸菌が免疫系の亢進に寄与することはよく知られているので、コロナウイルス対策として乳酸菌飲料を取ることには、意味があります。ビタミンCが免疫細胞を活性化することも、実験的に証明されています。心配ならばビタミンCも呑んでください。そして、毎日十分に笑ってください。
現在までの感染状況を見ると、コロナウイルスはそれほど恐ろしいウイルスではない、と結論できます。
中国発のコロナウイルスの感染が、連日連夜報道されているために、インフルエンザへの注目度が落ちています。アメリカでの2019~20年におけるインフルエンザによる死者数が、1万人を超えています。今期のインフルエンザ感染は、日本においては比較的穏やかです。それでも死者数は3000人弱になります。
コロナウイルスによる死者数は、インフルエンザよりもはるかに少ないので、コロナウイルスは心配する必要がない、という論理は常識的には受け入れられません。ヒト(生物)にとってウイルスとは何か、という進化論的な視点からウイルスに対する理解を深めると、心が少しは穏やかになるかもしれません。
私たちが持っているDNA鎖のなんと34%もの領域が、私たち生物のものではなく、ウイルス由来なのです(エッセイ27「脅威の生存メカニズム」)。ウイルス由来DNAは、遺伝子の情報発現を助けていて、ウイルスDNAがなくなれば、私たちは生きていくことができません。
ウイルスは、宿主を生かすことによって、自分たちの子孫を生き残らせているのです。宿主に死をもたらすことは、自分たちの絶滅を意味します。
宿主(例えばヒト)に新しく感染したウイルスは、宿主との共存能力がなく、自分たちが増えることによって宿主に死をもたらしてしまいます。動物からヒトへ感染したエボラウイルスが、そのような実例になります。インフルエンザウイルスによる死亡率が高いことは、動物からヒトへ感染するようになってから、まだ日が浅いことを示唆しています。
ウイルスは変異します。感染個体を生き残らせて、宿主として利用するために、病原性の低いウイルスへと変貌していきます。また、宿主の側でも、ウイルスに抵抗性のある個体が生き延びることによって、新しいウイルスに抵抗性のある個体が増えていきます。最後には、上に書いたような共生関係に入ります。これが進化の絶妙なメカニズムです。
4億4000万年前に、地球上の85%の生物が死滅したことがあります(エッセイ2「絶滅をバネに進化する生物」)。数千光年以内の宇宙空間で発生した超新星爆発が、危機の引き金を引いたと考えられます。降り注ぐガンマ線がオゾン層を破壊したばかりか、生物を直撃しました。
オリオン座に、明るく輝く1等星のベテルギウスがあります。昨秋から突然に光度が減少し、明るさが3分の1程度になりました。超新星爆発の前兆と予想されています。ベテルギウスまでの距離は650光年。室町時代に出たベテルギウスの光が、今やっと地球に届いています。日常的な感覚からは、とても遠くに存在する星ですが、宇宙的な距離感では、太陽系に密着していると言えます。
超新星爆発は明日起こるかもしれませんし、100万年後かもしれません。1日と100万年の時間の差は、人間にはとても大きいと感じられます。けれども、宇宙的な時間感覚では、どちらも一瞬の時間になります。即ち、宇宙スケールでは、太陽系の近傍ですぐに超新星爆発が発生することになります。
地球上の生物に大量絶滅の危機が来るのでしょうか?
ベテルギウスまでの距離を考えると、その危機の可能性は極めて大きい、と考えざるを得ません。100万年以内に大量絶滅が発生する、という恐ろしい予想。しかし、生物が大量死をまぬがれる可能性は極めて高い、と考えていい理由があります。ベテルギウスの自転軸が、太陽系に対して20度ずれているのです。ガンマ線は自転軸方向へ放出されるので、地球がガンマ線の大量照射を受けることはありません。
よかった!!
アメリカ国家安全保障局(NSA)は、その存在自体が秘匿されていました。スノーデンによる暴露(拙著「サイバー世界戦争の深い闇」)が、世界に衝撃を与えましたが、現在でも活動の大部分が秘匿されています。予算額や人員数でさえも公表されていません。
NSAが、警告を一般向けに発することは、今までにありませんでした。その慣例を破って、今月、Windowsに深刻な欠陥があることが、NSAによって指摘されました。OSの核になる機能にぜい弱性があるのです。ハッカーが攻撃に成功すると、端末にインストールされているソフトウェアを、悪意のあるソフトウェアに自由に変えることができます。これによって、世界中の個人、ビジネス、国家機関に深刻な影響が広がることが、NSAによって指摘されました。
NSAの警告は、マイクロソフト社に発されただけではなく、全てのWindowsユーザーは勿論、ソフトウェアの開発者にも向けられています。
三菱電機が大規模なサイバー攻撃を受け、情報が流失したことが、今月、報道されました。個人情報と企業機密が、外部に流出した可能性があることが、確認されました。防衛・電力・鉄道などの社会インフラに関する機微な情報と、機密性の高い技術情報や取引先に関わる情報は、流出していない、と報道されています。これらの情報は、外部から物理的に隔離されたサーバーに、収められていたようです(エッセイ52「メールを攻撃から守る方法」)。
三菱電機は防衛関連の業務を行っていて、以前から他国からのサイバー攻撃の対象になっています。今回の攻撃は、中国系のサイバー攻撃集団Tickによるとみられています。プロのハッカー集団による犯行は、当事者の特定でさえも容易ではありません。
私には一コマ漫画を描く趣味があり、電子書籍の黎明期に、一コマ漫画を5冊の電子本にまとめて出版しました。合計600点ほどになりました。
黎明期の電子書籍には、ファイル・サイズの上から厳しい制限がありました。サイズが大きいと、かつての遅いインターネットでは、ダウンロードに時間がかかったからです。そのために、絵を小さくし、描きこみを抑えざるを得ませんでした。
現在のネット環境下では、アマゾン650MB、アップル2GB、楽天100MBまでのファイル・サイズが、認められています(「電子書籍の確実な作成法」)。
現在、600点の中から300点ほどを選んで、アンソロジーを作成中です。絵を大きくし、描きこんでインパクトを強くする作業を行なっています。最初からデジタルで描いていたので、色彩でのインパクト強化を含めた描きこみを、容易にできます(「お描きの個人史」)。
「クールでカラフルな一コマ漫画」という副タイトルを、本につける予定です。政治や社会をテーマにした、風刺風の白黒の一コマ漫画が多いので、明確に差別化する必要があります。アニメ(「アニメと小説の工房」)の中に、一コマ漫画のネタをもとにして作成した作品があります。私の一コマ漫画の作風は、アニメのようになります。一コマにアニメのストーリー性を持たせています。
我が家の最初の犬モンタは、10年前の1月7日に永眠しました。しばらくの間、骨壺を居間のキャビネットに置いていました。2年前にペット可の墓地を購入し、現在はそこで眠っています。
死の2週間前のクリスマス・イブに、モンタは帰ることのない長男を、玄関で待ち続けました。そのような行動を取ったのは、その年のクリスマスだけでした(「最後まで大きく燃やした命の炎」)。モンタの死は、私たちには突然にやってきました。けれども、死を本能的に悟っていたモンタが、死ぬ前に長男に会うことを熱望した、と家族は理解しています。
犬には、クリスマス・イブという1年の特別な日に、一緒に成長した長男が、家に戻ることを理解し、記憶する能力があります。
昨年のクリスマスには長男が帰ってきて、自然にモンタが話題になりました。しかし、10年経った今でも、モンタの最後の日々を思い出すのはつらく、妻は涙を流しながら、「その話はここで止めたい」、と言いました。ペットの死は、子に先立たれた親の心境を、飼い主にもたらすのです。
日本人がもっと注目していい、中国発のニュースがあります。京都の街並みが、大連に作られているのです。広さはディズニーランドの1.2倍弱で、完成は2024年の予定です。別荘や商店、レストラン、ホテルなど、1600もの建物が設けられます。予定されている店舗数は300。日本からの実店舗も入れる予定です。総工費は約1000億円。
京都の街並みにそっくりな別荘地で、完成した200棟が売りに出され、あっという間に完売しました。大きな家の価格は1億5000万円以上。富裕層しか購入できません。
街並みだけではなく、室内も日本風にこだわっています。旅館の部屋を写真で見ると、高級旅館のような雰囲気です。天然温泉もあります。建材も日本製にこだわり、輸入しているそうです。旅館の料理は徹底して和にこだわり、日本人の料理人を招聘して、従業員の訓練を行いました。旅館はすでに営業を始めていて、一泊で最低2万7000円の部屋が、需要に追いつかないそうです。
開発している企業の副総裁によると、京都には唐の文化残されているので、中国人にはなじみやすいのです。漢字もそうですが、中国の古い文化が、本国よりも日本のほうでよく保存されている、という現実があります。
完成後には、日本、特に京都が大好きな中国人観光客が、大挙して押し寄せることを予想できます。副総裁は、日本人観光客も、Made in Chinaの京都を訪れることを期待しています。
ここまで日本を好きになってくれることは、日本人としては喜ばしいですが、何事にも負の側面があります。京都を完璧にコピーしているので、中国の京都滞在で満足して、日本へ来る中国人観光客が減るかもしれません。登録商標などの不正使用が起こりそうです。日本で作られた日本製品のように見えながらも、商品名を勝手に使ったコピー商品が出回ることは、日本にとっては好ましくありません。
日本は、昔からの伝統を残したままで欧米化された、世界でも稀有な非欧米国として知られています。アメリカの旅行雑誌(月100万部発行)による世界最良の都市ランキングで、京都が1位になりました(「世界が日本人に注目している」)。歴史と現代がほどよく混ぜ合わされた京都の街に、世界中のひとがひかれます。
天皇の即位に伴う行事が進行しています。費用や政教分離の視点からの批判が、メディアに見受けられます。
日本書紀の中に、日本武尊が自分を現人神の子と述べた、とあります。天皇を明確に神格化したのは、明治政府です。第2次世界大戦では、現人神である天皇が、他国侵略のために徹底的に利用されました。戦後は、人間宣言によって神格性が架空のものになりました。
大嘗祭などの行事で、天皇は神ではなく、人間の代表として神に平和と繁栄をお願いする立場にあることが、よく分かります。神は伊勢神宮に存在し、天皇はそこへ向けて祈りを捧げます。このような行事の内容から、天皇は卑弥呼の流れをくんでいる、ひとと神の間の仲介者と理解したほうがいいようです。
キリストがひとと神の間を取り持つように、天皇もひとと神の間を取り持つのです。キリスト教と神道は、全く異質な宗教のように見えますが、人間の本質から出る種々の宗教には、本質的な違いがありません。
私たちは、日常的には天皇の存在を意識していません。けれども、1300年もの間、伝統的な行事を執り行っている天皇家の存在が、日本人の精神形成に影響を与えていることは、間違いありません。
権力者は、自分の権力を誇示するために、軍事パレードのような、これ見よがしの権力誇示を行うのが普通です。ところが、大嘗祭などは、ひとに見せるための行事ではなく、日本の伝統を精神の内面に埋め込み、保持し続けるための行事になります。世界の権力者の中で、このような秘儀を行う天皇家は、極めて異例と言えます。
天皇家の行事は、それが現代にふさわしいかどうかが、問題ではありません。古い伝統を守り続けることに、大きな意味があります。
中国では、中央委員会全体会議で、共産党の路線が決定されます。先月末に開催された会議の採択事項が、公表されました(日経新聞11月7日)。
中国が置かれている状況が厳しさを増しているために、習近平を中心にした、共産党政権の独裁強化が決議されたことが分かります。習体制の絶対化が、超核心的利益なのです。
採択事項で、一党支配の強化のために有効なIT技術の開発促進や、統治が容易な国有企業の巨大化をうたっています。
技術それ自体は、良くも悪くもありません。技術を悪くするのは、悪意を持っている人間です(拙著「サイバー世界戦争の深い闇」)。核分裂は発電に有効ですが、核爆弾にも使われます。ネットは、人間のあらゆる活動を効率的にしますが、世論操作やスパイ活動にも使われます。
中国国外に住む非中国人の私たちが、特に注目すべき項目があります。ネットの世論管理を、「国内外で強化する」ことを盛り込んだのです。国外で、中国人だけに絞って世論管理することは不可能なので、他国の人たちの情報管理も強化する、と読むことができます。
一帯一路を受け入れている開発途上国へは、資金にものを言わせて圧力をかけ、中国の外交政策に従わせようとしています。典型的には、台湾との断交です。オーストラリアやイギリスなどの先進国では、潤沢な資金を使って、政治家や大学などを操作する活動が、行われています。
香港問題に関しては、「一国二制度」の「二制度」は、「一国」から派生すると述べ、統治の主権が北京にあることを明確にしています。「香港人が香港を統治する」と述べていますが、「愛国者を主体とする」という条件が加わり、北京の息がかかった人以外は、香港の統治に関わることができないようにしました。ファーウェイの任CEOは、共産党員の愛国者です(作者の思いNo.371)。
中国人の平均給与はまだ低く、給与水準からは、中国は開発途上国にあります(エッセイ61「中国の覇権奪取戦略」)。言論統制による多様性の否定は、国の活力を低下させます。強硬な軍事進出などは、他国から反発を受け、長期的には、国全体の発展を阻害する要因になることは、間違いありません。
香港の大陸化ではなく、大陸の香港化が、中国人全体にとっての長期的な繁栄につながります。けれども、独裁政権は、国の長期的な繁栄よりも、現在の権力維持にこだわります。
政治家であれ、企業人であれ、権力を握った人たちは、それを滅多に手放そうとはしません。あらゆる手段を使って、権力を維持しようとするばかりか、権力の更なる拡大に努めます。この衝動は、集団性動物である人間の本能から発している、と言えます。
憲法を改正してまで、永世主席になる道を確保した習近平が、あくなき権力欲の典型例になります。
中国では、多くの著名な中国人が行方不明になっています。当局によって拘束されていると思われますが、拘束した理由は公表されていません。北海道大学教授を含む十数人の日本人も、「スパイ容疑」で拘束されています。
インターポール(国際刑事警察機構)総裁の中国人ホンウェイが、中国へ帰国した昨年9月に身柄を拘束されました。彼の現状は、公表されていません。新疆大学(中国ウイグル自治区の大学)のティップ元学長は、東京理科大学で博士号を取得しました。中国共産党員であるウイグル人のティップ氏。北京の空港で2017年に拘束され、秘密裁判で死刑を宣告されました。死刑は、すでに施行されたか、間もなく施行されます。
ファーウェイの任CEOが、初めてメディアの前に立ったときに言った言葉。「私は共産党員で中国の愛国者です。社員には党員が大勢います」
中国国家情報法によると、国が情報提供を命じたならば、国民は拒否できません。拒否すれば、処罰が待っています。国民全員が、諜報活動に参加することになります。
香港の人たちの「反乱」は、日本人の想像を超えています。若者たちは、自分の将来を棒に振ることだけではなく、死をも覚悟しているように見えます。同じ中国人が確立した、大陸の政治システムを完全拒否する香港の中国人。
以上の点と線を結んだ上で、中国の顔認証システムの高度化を見ると、肌寒くなります。スマホでさえも認証に必要ではなく、出入り口に取り付けられたタブレット端末に、自分の顔を認識させるだけで、買い物が終了し、電車に乗れるのです。
誰一人として監視カメラから逃げることができません。逃げられる手段を見つけた人は、それだけで要注意人物になってしまいます。揺りかごから墓場まで、独裁政権が全国民の動向を把握。権力者は、それを権力維持のための強力な道具として使います。社会信用システムで国民にポイントを付け、ポイントが低ければ、電車にも乗れず、買い物もできなくなります。体制批判をする人たちは、突然に行方不明になります。
Googleが、ウェブ管理者向けに、Googleアナリティクスというサービスを行っています。サイトへアクセスした人の、いろいろな個人情報を教えてくれるのです。勿論、ネットユーザーのプライバシーを侵害しない範囲での、統計的なデータしか教えてくれません。それでも、ウェブ管理者にとっては、自分のサイトのプローモーションに役立つ、貴重な情報になります。
「夢と現実のエッセイ評論」は、各ページの論評が長く、スマホで読むのは大変です。私は、スマホでも読みやすいレイアウトにするために、最大限の努力をしています。けれども、長文であることを変えることはできません。
私のサイトへは、画面が大きいデスクトップからのアクセスが、最も多いのだろう、と以前は勝手に想像していました。Googleアナリティクスのサービスを受けるようになってから、その先入観が間違っていたことを知りました。
最近の1か月の間に、私のサイトへのアクセスに使われた「デバイスのランキング」は、以下のようになります。
使われた「ブラウザのランキング」は次の通りです。
上のデータが示していることは明確です。小さな画面では読むのが大変な私の書き物を、デバイス別では、iPhoneユーザーが、最も多く読んでくれているのです。
以下の「モバイルデバイス別のランキング」が、さらに上の確信を補強します。
モバイルユーザーの皆さん、時々目を休ませながら、私の長文を読んでください。
「死人に口なし」。関西電力の社長や会長が、「お世話になった」高浜町の元助役に罪をなすりつけています。
社長の弁解にいろいろな「違和感」を感じました。特に、「元助役からとてもお世話になったので、金品を受け取らざるを得なかった」、という発言には驚きました。世間一般の常識では、金品が動くルートは逆になります。お世話になった人が、お世話をしてくれた人にお礼をするのが、世間一般の常識ですよ。さらに驚いたのは、「金品の原資の出所については、全く考えが及ばなかった」という発言です。まさか、町役場の助役が、3億数千万円の金品を自分のポケットマネーから捻出した、などと考えていたのではないでしょうね。
日本列島は、世界で最もぜい弱な地盤に乗っています( 「地震・原発列島」)。今まで活断層が発見されていない地域でも、新しい活断層が突然にできる可能性があります。若狭湾周辺には、活断層が網の目のように張り巡らされているのです。京都や大阪に近いこんなところに、14基の原発が作られたことに、私は今までとても強い「違和感」を持っていました。
今回の問題が暴露されたことで、「なるほど」と、違和感の一部が解消されました。国税が解明したので、国税にエールを送りますが、税務署にしか解明できなかったところに、問題があります。建設費だけで、数千億円から1兆円を超える金が動く、原発事業の深い闇。今回の暴露で明らかになったことは、氷山の一角に過ぎないと思います。
米食品医薬品局(FDA)が、日本にある米製薬企業の研究所を、査察したことがあります。査察官は、接待を完全にことわっただけではありません。社員食堂で昼食を取ることもなく、帰りに日本の民芸品をおみやげとして渡そうとしても、決して受け取りませんでした。「受け取らなければ日本人の気分を害するから、受け取っておこう」、などとは考えないのです。
国際市場調査会社IDCによると、中国国内の公共監視カメラの設置台数が、2022年に27.6億台に達する見込みです。なんと国民一人当たり2台。NGOフリーダム・ハウスによる調査では、中国国民の自由度は、アンゴラよりも評価が低く、世界最低国のうちの一つになっています。
香港のデモの参加者は、マスクで顔を隠しています。監視カメラで撮影された映像が、中国当局へ流れている可能性があるのです。通りを歩くデモに参加しただけで、一国二制度の崩壊後に、社会信用システムで減点されるかもしれません。
先週、次のようなレポートがオンライン版CNBCに載りました。
ビデオの顔を、リアルに他人の顔に変えてしまうアプリZaoが、中国で大人気です。アンドロイドとiPhoneで、無料でダウンロードできます。このアプリを使って、実写と変わらないディープフェイク・ムービーを、作ることができます。
プライバシーが限りなく軽い中国で、メディアが珍しく批判をしています。Zaoの提供企業が、ユーザーが作ったフェイク・ムービーのデータを、自由にできることが問題だと言うのです。また、SNSのWeChatが、Zaoで作った動画の投稿を禁止しました。Weibo(中国版ツイッター)は、個人の生体情報を保存しないことを約束しました。中国企業が、プライバシーの問題でこのようにすばやく声明を出すことは、珍しいのです。しかし、具体的にどう対応するのかが不明なので、プライバシーが守られる保証はありません。
新しいものを、なんでもすぐに取り入れるように見える中国人ですが、技術に対する不信感が芽生えているようです。 ディープ・フェイクが急速に拡大することに対して、不安を感じるユーザーがいます。Zao提供企業が、中国政府の司法に組み込まれていることが、不安を増大させます。提供企業は、「安全保障」や「公衆衛生」にとって脅威になったり、当局や裁判所が望むならば、個人のデータを消去しないで当局に提供する、と言っています。
ディープ・フェイクは、政治的に利用されるだけではなく、個人攻撃にも使われることを予想できます。ディープ・フェイクで作られたオバマ大統領が、話題になったことがありました。個人が、知らない間に犯罪を犯したことになる可能性があります。
私が「中国をつぶすアメリカの戦略」を書いたのは、1年3か月前の昨年5月でした。その論評で、アメリカが中国へ提出した「枠組みの草案」が、明確な最後通告であることを指摘しました。それ以前の事態の推移を考慮すると、「中国をつぶすアメリカの戦略」が正式に発動されたことには、疑いの余地がなかったのです。けれども、識者の多くが、その当時も現在もノンビリしています。昨日のオンライン版CNBCに、次のような論評が載っていました(要旨)。
「米中貿易紛争はすでに第2次冷戦の初期段階」
米中紛争はトランプの手を離れた。この紛争は、貿易だけではなく、技術と地政の覇権争いになっている。この争いを、もはやトランプには止めることができない。
私の判断では、ディール重視のトランプは日和見主義者です。ZTEへの支離滅裂な対応がそれを示しています(「中国をつぶすアメリカの戦略」)。
アメリカと中国(それに日本)を含む世界史の視点から解析し、米中衝突は必然であると結論したことを、「中国の覇権奪取戦略」と「アメリカの対中国全面攻撃」に書きました。トランプだけではなく、対中戦略を動かしているナバロもライトハイザーも、中国側の習近平も、歴史の必然に呑み込まれている操り人形にすぎない、ということが可能です。推論をこのように展開すると、米中対決がますます厳しくなることを予想できます。ナバロの冷徹な分析をもとにして書かれた、「米中もし戦わば」(文藝春秋)が、現在と今後の状況の動きを予想するための重要な資料になります。
「無から湧き出る宇宙」の執筆に、私は全力をつくしました(No.364)。販売開始は、我が子を世に送り出したような気分です。当然のことながら、皆さんからの反応が気になります。
今、「Amazon売れ筋ランキング」をチェックしました。販売開始からほぼ1か月後の現在、「無から湧き出る宇宙」のランキングは、次のようになっています。このランキングは時々刻々と変わります。
宇宙・天文学 9位
私の予想以上に「我が子」が健闘しています。理論天文学分野で5位になっていますので、私の空想理論天文学に興味を持っていただいた方が、多いのだと思います。この本に興味を持ち、わざわざ購入までしていただいた皆さんに、深く感謝をします。
「無から湧き出る宇宙」の電子書籍作成を終え、過去に作成した電子書籍には、修正が必要なことを理解しました。
電子書籍には、規格としてリフロー型と固定型があります。リフローはウェブサイトのレスポンシブと同じで、画面サイズに合わせてページの表示が変化します(パソコン、タブレット、スマホ)。これは、レイアウトが変化することを意味します。固定では、どのような画面サイズでも、レイアウトに変化がありません。リフローにすると、端末によってはレイアウトが崩れてしまうことがあります。そこで、全書籍の規格を固定にして、レイアウトを安定させ、バージョンアップを実施しました。
もう1つの修正は、読みやすさに関するものです。電子書籍のページの操作は、紙の本よりもやりにくいと思います。それは、読みにくさにつながります。そこで、著者として強調したい文章を太字にしました。私のウェブサイトが、そのスタイルになっています。ページを読み飛ばすときに、著者が強調したい文章が真っ先に目に入り、著者が意図している内容の理解が容易になるはずです。
本を執筆するのには大きな努力が必要ですから、著者の意図を作品から容易に読み取ってもらえるように、著者には読みやすさの追求が必要になります。
アマゾンの電子書籍では、旧バージョンの購読者は、無料で新バージョンをダウンロードできます。読みやすくなった新バージョンを、ぜひダウンロードしてください。
「無から湧き出る宇宙」をやっと書き終え、アマゾンから販売を開始しました。情報の収集と整理を始めてから脱稿するまでに、4年に近い月日が経過しました。
私のサイトでアクセス数が一番多いページは、「外側から見た私たちの宇宙」です。このエッセイ評論をおもしろいと思った方には、拙著をさらにおもしく読んでいただけると思います。
私たちの宇宙の経験則を使って確立された、物理法則と数学公理は、目に見える範囲の宇宙空間にしか適用できません。アインシュタインもホーキングもその外側へ踏み出さないように、理論を注意深く構築しました。誕生前の宇宙には既知の物理学も数学も適用できないばかりか、そこを認知することも不可能です。完全に「無の宇宙」になります。一般的な天文学の著書には、「宇宙は無から誕生した」という記述があり、説明はそこで止まってしまいます。
量子力学が解き明かしている物理現象は、「有の宇宙」が「無の宇宙」と一体化していることを、示唆しています。目に見える範囲で生じている現象が、認知の地平のかなたとの相互作用によって生じる、と考えなければ、種々の物理現象の説明が不可能になるのです。
人間の認知能力が極めて限定されているために、思考には厳しい制約がかかっています。「常識」から自らを解き放つことによって、見えない宇宙の片鱗が見える可能性があります。「無から湧き出る宇宙」が、思考の限界に挑戦することに興味を持っている皆さんに、少しでもお役に立つならば幸いです。